究極のPRガイド2021: フォローアップインタビュー・ブログ・パート 2
はじめに
究極のPRガイド2021に関連して先日アップしたブログパート1では、メルトウォーターの日本のクライアントにおけるPRとマーケティング部門の連携の状況について、メルトウォーター・ジャパンのシニアマネジャーたちとのインタビューをお届けしました。今回のパート2では、シンガポールを拠点とするメルトウォーターのシニアディレクター&パートナーのミムラ・マームードにインタビューし、この領域での海外のトレンドについて聞きます。 ミムの率いるチームは、アジアパシフィックのクライアント向けに、データを駆使した競合他社とのベンチマーキングのための包括的オンラインプラットフォーム構築のお手伝いをしています。聞き手はメルトウォーターの日本におけるカントリーヘッドを務めるジョセフ・ラテッリです。
Q1:
ジョセフ:ミムは、オンラインのデータを駆使して特定ブランドのパフォーマンスを競合と比較分析するソリューションを長年提供していますが、最近、その分野で何か新
しいトレンドがありますか。
A1:
ミムラ:日本語ホームページでのインタビューの機会をいただき、感謝です。前回のブログで石垣さんも話していたように、いまやブランドのコミュニティーはそのインフルエンサーと熱烈なファンの間の自由なやりとりを通じて、オンライン上で自然発生的に生まれます。デジタル時代のブランドのレピュテーションのカギはカスタマーです。この現実を認識し、その状況をしっかり分析する用意のないブランドにとって、これはゆゆしき事態ですが、逆に、ツールを使いデータサイエンスによって戦略的に分析に行っているブランドにとってはチャンスです。またそうしたブランドは、ソーシャルなデータをオンラインで集め、競合との比較を客観的に行うことができます。私はアジアパシフィック発のグローバルブランド向けに、手軽に使える競合ブランド比較用のオンラインダッシュボード構築のお手伝いを長年やってきました。この地域の多くのグローバルブランドは、感覚ではなくサイエンスに基づくブランド評価に取り組んでいます。市場で確立したい自らのイメージがクリアーでブレがないブランドは、大変効果的にデータを活用できています。そうしたブランドは自分たちのインフルエンサーが誰かをしっかり認識しており、競合との比較で何を測定し分析すべきかが首尾一貫しています。
Q2:
ジョセフ:究極のPRガイド2021では、PR部門はメディアリレーションズというこれまでの狭い守備範囲から抜け出して、ペイド、アーンド、シェアード、オウンドのすべてのメディアに関わる重要性を説いています。PRのチームは日々、競合やインフルエンサーと呼ばれる層をモニターしており、そこでの知見がブランドのマーケティング戦略を作り上げるうえでの大きな助けになるということですが、アジアパシフィック地域のクライアントはこの点にどう向き合っていますか。
A2:
ミムラ:この地域のグローバル企業の間には、この両部門は統合すべきか否か、という哲学的な疑問はありません。この地域ではソーシャルメディアの普及が日本より進んでいることもあり、対外的なコミュニケーションに関わるプロフェッショナルはブランドを左右するのは誰か、についての感度が高いからです。
したがってこの地域では、PRとマーケティングの両部門は共通のインフルエンサー・カスタマーに関するデータベースを使いながら、ほぼ一体となって市場での成功に向けて活動しています。日本でも、両部門をうまく統合して世界的に見ても最も進んだコミュニケーションチームを作っているクライアントはいます。例えば、2013年以来のクライアントのある国際的な高級車ブランドでは、あらゆるマーケティングキャンペーンを通じて、この両部門が世界の各地域で、エージェンシーも含めて共通のデータ測定基準を活用してデジタルのリテラシーを高め、共通認識を持てるような仕組み作りを心掛けており、私たちはそのお手伝いをしています。私の経験からしても、このクライアントのように、ブレないブランドビジョンとトップダウンでのデータ重視アプローチを採用している企業は、統合されたコミュニケーションチームによる成果を最大限に引き出しています。市場におけるブランドの成功に向けたデジタルの活用のヒントに関して、私が数年前にポストしたブログがあり、その内容は現在でも応用できると思うので、是非ご参照ください。“Going Digital: A Roadmap to Digital Transformation in PR” .
Q3:
ジョセフ:ありがとうございます。このデジタル・ソーシャルのコミュニケーションの時代に、より明確なブランドビジョンが必要とされるという点に関連しますが、ソーシャルコマースという新しい流れが起きていますね。これは各ブランドが自らの商品をソーシャルメディアのチャネルで直接カスタマーに販売するモデルですが、このモデルだとマーケティング活動は、インフルエンサーによるレビューと、それがブランドコミュニティーに与える影響により直接影響されます。ソーシャルリスニングと、オンラインデータを通じた業界・競合分析がますます成功のカギになっていきます。そうなればPRとマーケティングの統合は「あってもいい」動きというより「あるべき」動きになるでしょう。この点でメルトウォーターは今後どのようなクライアントサポートができるでしょうか。
A3:
ミムラ:この重要なポイントに触れてくれてありがとうございます。このソーシャルコマースのトレンドが中国で爆発的に広がり、それがアジア全域に波及し始めるようになったことを受け、私は主要クライアントの間でこのモデルに対する認識を高めるべく、ここ数年来活動してきました。私がこのテーマで書いたものがここにあります。 I first wrote about social commerceこのモデルがいかに重要になってくるか、そしてそれがいかにマーケティングの分野でのニューノーマルとなっていくか、について述べたものです。この領域で私たちがクライアント向けに提案した戦略のなかで成功したものの一つが、カスタマーの嗜好をより深く理解し、競合ブランドを含む全商品カテゴリーを通じて広く知見を得るためにLeverage User-Generated Content というものです。
ソーシャルコマースのプラットフォームでは、購入意欲のある人々の会話が展開されるので、購入決定プロセスに関する多くの情報が明らかになり、ブランドにとっては意思決定に必要な各種データの宝庫となります。
ソーシャルコマースは中国の外ではまだメインストリームになっていませんが、マーケティンングに関わっている皆さんは、Reddit、トリップアドバイザーやアマゾン等で展開されているレビューのサイトを現時点ではチェックしておくといいでしょう。そこで自社、競合のブランドや業界全体について交わされている会話からカスタマーやビジネス全体の状況についてより正確な認識が得られます。私はクライアントから、こうした場所でデータを集めるだけでなく、それをインサイトとしてまとめることを期待されています。例えば、私のチームではある有名化粧品ブランド向けに、将来に向けた商品開発のロードマップづくりにつながるカスタマーインサイトのレポートの取りまとめを求められました。
ここでご紹介するのは、2018年からメルトウォーターのクライアントになっているこの日本の化粧品メーカー向けに提供したレポートの一部です。当社のソーシャルリスニングのツールMeltwater's Social Listening tool,を使って、大量のソーシャルデータを分析し、最もポジティブな評価の多い口紅商品と、最も人気のカラーのトップ10を特定したものです。
ソーシャルコマースのプラットフォームからは、ユーザーの生み出したコンテンツがますます重要な意味を持つようになっていることが明らかになっています。グーグルのサーチエンジンのような、一般に手に入る信頼性の高いアルゴリズムによって、そうしたコンテンツをマイニングすることが容易になりました。マーケターの皆さんは、構造・非構造のデータが無限に混在するネットの世界からカスタマーベースに関してより多くのインサイトを獲得しなくてはなりません。メディアインテリジェンスおよびカスタマーインサイトに関するレポートは、カスタマーを知るうえで重要な骨組みとなり、的確な戦略を用意できれば、彼らを最も熱烈なブランド支持者に変えることができます。
ソーシャルコマースではオンライン上のブランド価値がブランドの利益に直結します。だからこそ、そこではPRとマーケティングのチームが手を携えてブランドのイメージを作り、維持・発展させていく必要があります。
まとめ
ジョセフ:メルトウォーター・ジャパンでは、多国籍で大規模のクライアント企業に対して包括的なオンラインソリューションを提供するエンタープライズサービスのチームを立ち上げようとしていますが、その過程におけるミムのサポートに感謝します。ミムのチームのサポートを受けながら、そうしたクライアント企業に国際的なインサイトとべストプラクティスを提供し、メルトウォーターが持つ最新の技術とソリューションで彼らの世界市場での成功を後押ししていきたいと思います。今後も日本に対する支援をよろしくお願いします。
最後に、当社のリソース資料にご興味のある方は、最新のPR戦略、優良事例や効果的なツールをご紹介する「究極のPRガイド2021」を是非ご覧ください。
スピーカープロフィール:
ジョセフ・ラッテリ様 プロフィール
Meltwater Japan株式会社 Country Manager, Japan
2019年4月よりMeltwater Japan株式会社 Country Managerに就任。2007年、オレゴン大学卒業。アメリカで日本法人の創業メンバーとして内定後、東南アジア・英国勤務を経て日本での新規顧客開拓やチームビルディングを担当。その後2年半アジア太平洋5拠点の採用ディレクターを経験。2011年以後8年間に渡り、代理店パートナー営業部長、既存顧客営業部長、クライアント・サクセス部統括部長を歴任。その知見の広さと人望の厚さから、日常的に社内・社外問わず多くのイベントや会合でスポークスマンやリーダーを務めている。小学生の子供の父であり、趣味はキャンプやバスケットボール、ラグビー、サッカー等。
ミムラ・マームード様プロフィール
Meltwater Singapore Senior Director / Partner
シンガポールを拠点とするメルトウォーターのシニアディレクター&パートナー。アジアパシフィック地域内の製品ロードマップメインアドバイザーを務めている。メディアとデジタル部門で25年の経験を持つミムは、キーノートスピーカ、業界アドバイザーとして定期的にプレゼンを行っている。ミムの率いるチームは、アジアパシフィックのクライアント向けにデータを駆使した競合他社とのベンチマーキングのための包括的オンラインプラットフォーム構築のお手伝いをしている。