Web広告は、広告媒体全体の中でも右肩上がりで市場規模が成長している分野です。Web広告を運用し、売上をアップさせたいと考える広告担当者も多いでしょう。一方で、これまでWeb広告運用を担当したことがなく、不安を抱えている担当者も多いかもしれません。この記事では、Web広告運用に関する基本知識から必要なスキル、未経験者向けの勉強方法までを解説します。一読すればWeb広告運用に関する基本が掴めるようになっていますので、参考にしてみてください。
Web広告の運用とは?
Web広告の特性
Web広告の市場規模
運用される主なWeb広告の種類
Web広告の運用担当者の仕事内容と流れ
Web広告の運用担当者に求められるスキル
Web広告の運用担当者に向いている人の特徴
【未経験者向け】Web広告運用の勉強方法
Web広告の運用に挑戦してみよう
Web広告の運用とは?
Web広告の運用とは、インターネット上で展開する広告の管理・運用業務全般を指します。Web広告は、WebサイトやSNS、スマホアプリなどに表示されます。こうしたWeb広告について、入稿作業、入札価格の設定、改善、レポートなど多岐にわたる業務を行うのが運用担当者です。運用担当者には、広告に表示するテキストやデザインなどのクリエイティブな業務だけでなく、予算の管理やデータ分析、戦略立案などについてのスキルも求められます。
Web広告の特性
新聞や雑誌広告、テレビCMなどのマス広告と比較した場合、Web広告には主に以下の特性があります。
- 詳細なターゲティングができる
- 効果測定ができる
- 少額から始められる
Web広告では、ターゲットの年齢や性別、地域、職業、趣味、生活パターンなどの属性を詳細に設定してターゲティングできます。たとえば、「20代女性、関東在住、Webデザイナー、趣味はカフェ巡り」「30代男性、関西在住、自営業、趣味は筋トレ」といったようなターゲティングが可能です。また、Web広告ではさまざまな指標についてデータ測定ができるので、どのような広告がターゲットに刺さるかを微調整しながら配信できます。さらに、Web広告は新聞・雑誌や看板広告に比べてコストを抑えられる点もメリットです。
Web広告の市場規模
Web広告の市場規模は拡大しています。2022年3月に公表された電通の調査レポート「2022年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2022年3月)によると、2022年の日本の総広告費は7兆1,021億円(前年比104%)です。、このうち、Web広告費にあたる「インターネット広告費」は3兆912億円(前年比114.3%)で、総広告費の43.5%を占めており、新聞やテレビメディアなどの「マスコミ四媒体広告費」が占める33.8%を上回っています。
インターネット広告費から制作費と物販系ECプラットフォーム広告費を差し引いた「インターネット広告媒体費」は2兆4,801億円(前年比115.0%)に達し、広告費全体の34.9%です。(出典:電通 2022年 日本の広告費 )
また、同じく電通の調査レポートによると、2023年のインターネット広告媒体費も継続的に拡大し、前年比112.5%の2兆7,908億円まで拡大すると予測されています。以上のデータから、Web広告の市場規模は拡大の一途をたどっていることが分かります。
運用される主なWeb広告の種類
Web広告の種類には、主に以下の3つがあります。Web広告を運用する際は、自社の目的に適した広告を選ぶことが重要です。
- リスティング広告
- ディスプレイ広告
- SNS広告
それぞれの概要や特徴について、以下で紹介します。
リスティング広告
リスティング広告は、検索エンジンの画面上に表示されるテキスト広告です。ユーザーが検索したキーワードに関連した広告が表示されるようになっています。広告主は、広告を表示させたいキーワードや広告の見出し、テキスト、入札額を設定します。同じキーワードに対して複数の広告主が出稿することも可能です。その場合、入札額と広告の質の総合判断で表示される広告が決定します。したがって、入札額が一番高い広告主であっても、内容の質によっては広告を表示できない可能性もあります。競合が出稿しているキーワードや広告の内容を調査した上で、目的や戦略に合わせた適切なキーワード選定や広告の作成が必要です。
ディスプレイ広告
ディスプレイ広告は、Webサイト上に設置された広告枠に表示する広告です。テキスト以外にも画像や動画を載せることができ、ブログやSNS上にも表示されます。印象的な画像や動画で視覚的にユーザーの興味を引くことができる点が特徴です。
ディスプレイ広告のリンクをクリックすると、商品紹介ページや資料ダウンロードページなどのランディングページ(LP)に遷移する仕組みになっています。商品購入や申し込みなど、ユーザーのアクションを期待するページに直接誘導できる点がメリットです。
また、ディスプレイ広告はWebサイトに関連のある商品の広告を表示させるため、商品・サービスのことを知らない潜在層の目にも触れることになります。
SNS広告
SNS広告は、TwitterやInstagramといったSNS上に表示される広告です。年齢や性別、興味のあるジャンルなど、SNS登録時のユーザーの属性に紐づけて表示されるという特徴があります。したがって、高い精度でターゲティングできる点がメリットです。
また、SNS広告はTwitterのリツイートなどにより拡散されやすいのも特徴です。ユーザーが広告を拡散することで、自社の商品やサービスをより多くのユーザーの目に触れさせることができます。したがって、ユーザーが思わず広めたくなるような内容の広告を考えることも大切です。
Web広告の運用担当者の仕事内容と流れ
Web広告の運用担当者の主な業務の流れは以下の通りです。
- Web広告のプランニング
- アカウントの構築
- Web広告の出稿・運用
- 効果測定と改善
このように、運用担当者の業務は多岐にわたります。以下では、それぞれの業務について詳しく説明します。
1|Web広告のプランニング
Web広告の運用では、最初に広告のプランニング(企画)を行います。広告出稿の目的や予算、出稿媒体、スケジュールなど運用の全般的なことを決めていきます。また、広告で達成すべきKGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)などの数値目標の設定も大切です。データ分析による効果的な運用に役立てるためにも、項目ごとに達成すべき数値を具体的に設定しておきましょう。
出稿媒体は、ターゲティングしたいユーザーの視点に立って検討することが大切です。ユーザーの目に触れやすく、アクションを起こしやすい媒体へ出稿することにより費用対効果が高まります。最適な媒体を選択するためには、出稿の目的を明確にしておくことが必要です。
2|アカウントの構築
プランニングの内容に沿って自社のアカウントを構築します。リスティング広告を例にすると、以下の階層ごとに必要な項目を設定していきます。
- アカウント:支払情報など
- キャンペーン:予算・ターゲティング
- 広告グループ:同テーマの広告をグルーピング
- 広告:タイトル、説明文、リンク先
- キーワード:検索語句
3|Web広告の出稿・運用
アカウント構築後は広告を作成・出稿します。ターゲットの興味を引くクリエイティブを選定し、出稿することが大切です。また、競合他社と差別化するために、オリジナリティのあるアピールポイントやベネフィットを分かりやすく表示することも必要です。
出稿後は、広告を運用しながら収集した各種データを分析します。分析には、各媒体が提供する公式ツールや外部ツールを使います。オークションで広告順位が決まる場合は、入札金額の高低だけでなく配信地域、期間などの項目も調整しつつ運用することが必要です。
4|効果測定と改善
Web広告の効果測定を行い、結果に基づく改善をします。測定すべき主な項目は以下の通りです。
- 表示回数
- クリック率
- 離脱率
- CPA(顧客1人あたりの獲得単価)
- CPR(顧客1人あたりの申し込み獲得単価)
- CPC(クリック1件あたりのコスト)
効果測定では、日々のデータを収集するだけでなく、よりよい運用につなげるための分析も行います。分析結果から改善点を抽出し、反映させた上で次の運用施策を検討します。たとえば、日ごとの表示回数やクリック率の増減、離脱率の変化についてまとめ、「なぜそのような結果となったか」を考え、次回の運用に活かすことが大切です。この流れを繰り返すことで、広告の費用対効果を高めることにつながります。
Web広告の運用担当者に求められるスキル
Web広告の運用担当者に必要なスキルとしては、主に以下のものが挙げられます。
- 広告運用に必要なツールの操作スキル
- 効果的なWeb広告を企画するスキル
- 予算配分やKPIの設定・調整スキル
- データの分析スキル
これらのスキルを備えていれば、効果的なWeb広告運用を行うことができます。以下では、それぞれのスキルについて説明します。
広告運用に必要なツールの操作スキル
Web広告の運用においてまず求められるのは、運用に必要なツールの操作スキルです。広告運用では、アカウント構築・設定、入稿作業、広告媒体における管理画面の操作などを行わなければなりません。したがって、これらの場面で使用するツールを操作できることがWeb広告運用における必須スキルになります。
また、アカウントを構築して広告を配信するだけでなく、配信期間中の効果測定と分析も必要です。そのため、Google Analyticsのような効果測定、アクセス解析ツールを使いこなすスキルも求められます。
効果的なWeb広告を企画するスキル
Web広告運用で成果を出すためには、ユーザーニーズに沿った広告の企画を生み出すスキルが必要です。設計の段階からターゲットとなるユーザーのニーズを把握し、企画内容に盛り込むスキルが求められます。また、ユーザーの興味を引くライティングやデザイン、広告に適した媒体の選定ができることも必要です。
また、広告の中身だけでなくプロモーションなどの戦略立案ができるスキルも求められます。ユーザーが購入や申し込みなどのアクションを起こしたくなるような広告のアイデアを生み出す発想力も重要です。
予算配分やKPIの設定・調整スキル
Web広告運用においては、クリエイティブ面のスキルだけでなく、予算やデータ調整のスキルも必要です。広告運用の前には、目標達成のために最適なKPIを設定し、適切な予算配分を行わなければなりません。また、広告配信中にはアクセス数などのデータをもとに配信内容を調整し、必要であれば予算スケジュールを組み直したり、KPIを設定し直したりすることもあります。このように、広告運用で目標達成するためには、クリエイティブ面だけでなく予算やKPIについての知識とコントロールスキルが求められます。
データの分析スキル
効果的なWeb広告運用を行うためには、配信した広告に関する各数値データを収集、分析し、的確な改善策を実施する必要があります。したがって、データ分析スキルも担当者に求められる重要なスキルの一つです。Web広告の売上やページビュー(PV)、クリック率(CTR)などは全て数値化されるため、それらのデータから「成功した点」と「改善すべき点」を洗い出し、次の戦略を立案することが大切です。運用担当者には、ただ数値データを収集するだけでなく、それらのデータを的確に読み取るスキルが求められます。
Web広告の運用担当者に向いている人の特徴
Web広告の運用担当者に向いている人として、主に以下の特徴が挙げられます。
- 数字への耐性がある人
- 粘り強い継続力がある人
- 消費者の立場になってものを考えられる人
- プレゼン力の高い人
- コミュニケーション能力の高い人
Web広告運用では、日々の数値データの収集、管理、分析が重要です。数学の難しい理論を理解する必要はないものの、毎日数字を見続けられる耐性が求められます。また、データの収集、分析、戦略立案を継続して続けなければならないため、業務に対する粘り強さも必要です。
消費者の立場でニーズを考えることが好きな人にも向いています。さらに、Web広告運用はチーム内外でコミュニケーションをとりつつ業務を進める場面も多いため、プレゼン力やコミュニケーション能力に優れているとなおよいでしょう。
【未経験者向け】Web広告運用の勉強方法
Web広告運用は未経験者や初心者でも始めることが可能です。もっとも、効果的な運用を行い、成果を出すためには専門知識とスキルがあるに越したことはありません。そこで、Web広告運用の勉強方法について解説します。
Web広告運用の全体像を把握する
まずは、Web広告運用について大まかな全体像を把握することが大切です。Web広告運用に関する情報を発信しているオウンドメディアを検索し、いくつか閲覧しましょう。複数のサイトに目を通すことで、Web広告運用についての全体像を把握することができます。
この段階では、細かな部分を深堀りする必要はありません。まずは概要の把握を優先することが大切です。Web広告運用に関するサイトを見つけたら、最初は見出しだけに目を通し、全体像を掴んだ上で本文を読むと理解しやすくなります。分からない部分があっても深堀りはせず、大まかに概要を掴むことを意識してください。
具体的な情報をインプットする
全体像を把握した後は、Web広告に関する書籍を読んだりセミナーに参加したりして具体的な情報を得るようにします。広告媒体の特徴や仕組み、成果が出るまでの流れなどの基礎的な知識の習得を目指しましょう。Web広告に関する書籍にはさまざまなタイプのものがあります。インターネットのレビューを参考にしたり、実際に書店で手に取って確かめたりして勉強しやすいものを選ぶことが大切です。
Web広告運用は実際に業務を行うことで学べることも多いので、本やセミナーの内容を完璧に理解する必要はありません。基礎的な知識の習得に集中しましょう。
実際に広告を出稿してみる
Web広告運用について基礎知識を得た後は、実際にWeb上に広告を出稿してみます。Web広告運用は、Webサイトや書籍を読むだけでは運用に必要なスキルを身につけることができません。特に、設定項目に関する具体的な内容や手順は、実際に経験してみなければ学べないケースもあります。少額から始められるので、まずは出稿を経験してみることが広告運用への理解につながります。
実際に広告を出稿する中で不明点や疑問点が生じた場合は、各広告媒体のヘルプページなどを活用しましょう。時間はかかりますが、疑問点は根気強く解決していきながら実務に慣れていくことが大切です。
Web広告の運用に挑戦してみよう
Web広告の運用は、詳細なターゲティングがしやすく、少額から始められるなどのメリットがあります。また、売上や広告に対するユーザーの反応や売上などを解析ツールによって効果測定できることも特徴です。運用の仕方によっては、大きな成果を得られる宣伝方法といえます。
Web広告の運用は、実務で経験を積むことがスキルアップへの近道です。全体像を掴んだ後は、実際のWeb広告運用に挑戦してみてください。