この1年間で、世界のデジタル行動は、コロナ禍を含む過去数年と比較しても目まぐるしい変化を遂げています。
最新の調査で、これらの行動が想定外の方向に進化していることも明らかになりました。
MeltwaterとWe Are Socialが共同作成した「Digital 2023 Global Overview Report (デジタル2023グローバル概要レポート)」には、最新トレンドを理解するためのあらゆるデータとインサイトが盛り込まれています。
目次
Digital 2023のハイライト
デジタル統計の集大成
データに関する重要な注意事項
10のトップトレンド
Digital 2023レポート全文
Digital 2023:数字で見るトレンド
2023年の展望
最後に
Digital 2023のハイライト
Kepiosの主要レポート「Digital 2023」のハイライトは以下の通りです。
- 世界のインターネットユーザー数の大きな変化
- オンライン活動の各側面における驚くべき減少傾向
- 進化するソーシャルメディアプラットフォームのニーズに関する豊富なインサイト
- 各種デジタルコンテンツやサービスへのアクセスに使用するデバイスの変化
- 世界のウェブ検索行動における想定外の変化
- 目覚ましい成長を遂げるデジタル広告
400以上の図表を掲載したオリジナルレポートの一部にすぎませんが、インターネット、ソーシャルメディア、モバイルデバイス、オンラインショッピングプラットフォームにおける人々の行動に関する調査結果を紹介します。
また、1万ワードに及ぶ豊富なコンテキストとインサイトに加え、今年のデータについて深く掘り下げた記事もあります。詳細記事のリンクからご覧ください。
デジタル統計の集大成
本年度のレポートは、これまで発表してきたデータとトレンドのレポートの中でも最大規模となりました。
このような広範かつ高度な調査が実現したのは、ひとえに素晴らしいパートナーの皆様のおかげです。
まず、Global Digital ReportのメインパートナーであるMeltwaterに心から感謝申し上げます。
Meltwaterは、ソーシャルおよびメディアインテリジェンスにおけるグローバルリーダーとして、各企業が世界の様々な動向のモニタリングや理解、影響を与えるための支援を行っています。
また、本レポートを12年間も絶えず支えてくださっているWe Are Socialにもお礼を述べさせていただきます。
同社は、社会的視点に基づいてマーケティングに関するサービスを提供するソーシャルクリエイティブエージェーンシーです。
MeltwaterとWe Are Socialとのパートナーシップのもと、本年度のGlobal Digital Reportが完成しました。このレポートの価値を実感していただき、ぜひ以下までご意見やご感想をお寄せください。
Global Digital Reportの制作にあたり、さまざまな情報を提供してくださった以下のデータパートナーの皆様にも感謝を申し上げます。
データに関する重要な注意事項
数値の検証に入る前に、データに関する詳細な注意事項をご一読の上、情報源や調査手法の変更が今年度の数値にどのような影響を与えたかをご確認いただくことをお勧めします。
特に、以下についてご留意ください。
- インターネットユーザー数:世界各国のインターネット普及状況の調査や報告には複雑な作業が伴うため、最新データの発表まで時間を要します。ついては、2021年以降のインターネットユーザー数は、実情を反映していない場合があり、実際のユーザー数や成長率は、本年度のレポートに掲載された数値よりも有意に高くなる可能性があります。
- ソーシャルメディアユーザー数:各種プラットフォームで発表された数値が大幅に修正されるため、本年度のレポートに掲載されたソーシャルメディアユーザー数は、これまでのレポートで発表された数値と直接比較することはできません。当社では、世界の主要ソーシャルメディアの広告リソースに掲載されているデータを使用して、ソーシャルメディア全体の使用状況に関する数値を公開しているため、元となるデータの修正によって、当社レポートの数値全体に影響を与える可能性があります。そのため、本年度のレポートに掲載されたソーシャルメディアユーザーに関する数値は、これまでのレポートで発表された数値よりも低くなるケースが多くなります。しかし、これは実際のユーザー数の変化を意味するものではありません。当社の分析でも、ソーシャルメディア全体のユーザー数に顕著な減少は認められていません。
本年度のレポートの数値に影響を与える要素は他にもあります。データに関する詳細な注意事項をご一読の上、最新の情報をご確認ください。
では、調査結果をご紹介します。
10のトップトレンド
まずは、この動画をご覧ください。今年度のハイライトとトレンドを10分間でまとめたものです。
動画を視聴後に、以下のレポート全文をご覧ください。
Digital 2023レポート全文
レポートの全文は以下に埋め込まれています(見られない場合はこちらをクリック)。
これらの数値が、個人やビジネスにどのような意味を持つかを包括的に分析するために最後までご覧ください。
それでは、分析結果を見ていきましょう。
Digital 2023:数字で見るトレンド
まず、世界のデジタル動向に関する最新情報を把握しましょう。
- 世界の人口は、2022年11月15日に80億人を突破し、2023年初めには80億1,000万人に到達しました。現在、世界の人口の57%強が都市部に居住しています。
- 2023年初頭の携帯電話ユーザーは54億4,000万人で、これは世界人口の68%に相当します。携帯電話のユニークユーザー数は、過去1年間で3%強増加、1億6,800万人が新たに携帯電話を利用するようになりました。
- 現在、世界のインターネットユーザー数は51億6,000万人で、世界人口の64.4%がオンライン環境にあります。データ上では世界のインターネットユーザー数は過去1年で1.9%増加していますが、データ発表の遅れにより、実際の増加率はこれよりも高くなると考えられます。
- 現在、全世界のソーシャルメディアユーザー数は47億6,000万人で、これは世界人口の60%弱に相当します。しかし、ソーシャルメディアユーザーの増加はここ数カ月で鈍化しており、今年度の新規ユーザーの純増数は1億3,700万人で、年間成長率はわずか3%にとどまっています。
このようなデータは、世界のデジタル利用に関する興味深い現状を示すものですが、人々の行動が実際にどのように変化しているかを理解するためには、より深く掘り下げていく必要があります。
さらに詳しいデータをご紹介します。
順に見ていきましょう。
インターネットユーザー数の大幅な修正
この数週間で、インターネット利用状況の世界的な調査機関である国際電気通信連合(ITU)とGSMA Intelligenceが、世界各国のインターネットユーザー数を修正しました。
この修正を受け、当社でもインターネットユーザー数を大幅に見直し、最新のユーザー数の世界総計は51億6,000万人となりました。
これは、2022年10月に発表した50億7,000万人という数値より大幅に増加していますが、この3カ月間でインターネットユーザーが9,000万人増えたわけではありません。
実際、最新のデータを分析したところ、過去1年でインターネットユーザーは9,800万人しか増えていないことが明らかになりました。
これは、前年比2%弱の成長率に相当し、2010年代の成長率より大幅に低下しています。
上述の「データに関する重要な注意事項」で触れたとおり、インターネットユーザーに関する調査の実施、処理、報告には時間がかかるため、直近1、2年の数値は、実際の成長率よりも低くなっています。
このような報告の遅れを考慮したとしても、Kepiosによる最新のデータ分析によると、実際にここ数カ月間でユーザー数の成長は鈍化しています。
とはいえ、世界の10人中6人がすでにインターネットを利用している現状を考慮すると、想定の範囲内であると言えるでしょう。
過去数カ月の成長率の減速にもかかわらず、現状では2023年末までに世界人口の3分の2近くがインターネットを利用するようになるだろうと予想されています。
Global Digital Report 2023の全文のダウンロードはこちらから。
各国のインターネット利用状況
依然として、インターネットの利用状況は国によって大きな差があります。
ランキング上位層では、8カ国で普及率が99%以上となり、55カ国で90%を超えています(注:インターネット普及率は99%を上限としています)。
意外に思われるかもしれませんが、北米は、EU諸国や英国の普及率を下回る普及率です。
ITUの分析では、現在、米国の人口の91.8%がインターネットを利用しており、世界で第45位となります(注:下のグラフでは一部の主要経済国のデータのみ表示されています)。
これは、世界のインターネット人口の約6.7%に過ぎません。
米国のデジタルトレンドは、常に世界の他の国々に影響を与えていますが、米国のデジタル習慣がほかの国々に波及することはめったにありません。
したがって、現地のデータを精査して、リーチおよびエンゲージしたい特定のオーディエンスの間で実施に何が起こっているかを理解することが重要です。
一方、普及率の下位グループでは、北朝鮮は引き続き最下位にとどまり、一般市民はいまだにインターネットからほぼ切り離された状態にあります。
南スーダンとソマリアにおいても、インターネットユーザー数は人口の10%にも達しておらず、最下位の北朝鮮のすぐ上にランキングしています。
全体として、インターネット普及率が20%を下回っているのは9カ国で、全世界の61カ国ではインターネットユーザーが人口の半分に達していません。
参考:各国のデジタル化に関する概要は、当社の「Digital 2023 Local Country Headlines」レポートをご覧ください。また、2023年2月中旬には国別レポートの完全版も公開予定です。
オフライン人口(非インターネットユーザー数)
絶対値で見ると、インドは世界最大の「オフライン」人口を抱えており、2023年初めの時点で7億3,000万人がインターネットを利用していません。
一方、中国はインターネット普及率が70%を超えているにも関わらず、世界第2位のオフライン人口を抱えており、3億7,500万人近くがまだインターネットを利用していません。
とはいえ上述した修正データによると、今年度のオフライン人口の世界総数は、昨年同期と比べるとかなり減少しています。
しかし、インターネットユーザーの増加率が鈍化した場合、世界の28億5,000万人がいまだオフラインという現状を考慮すると、国連が掲げた「2030年までに普遍的な接続を達成する」ことが難しくなります。
オフライン人口を減らすための取り組みに関するデータと分析の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
インターネット利用時間の減少
今年度のレポートで最も注目すべきは、オンラインで過ごす時間が前年比で5%近く減少しているという点です。
GWIの調査によると、典型的なインターネットユーザーの利用時間は、前年同期と比較して1日あたり約20分減少しています。
1年前の同社の調査では、働く世代のインターネットユーザーは、1日平均7時間近くをオンラインに費やしていましたが、最新の調査では平均6時間37分までに落ち込みました。
これは、新型コロナウイルス感染拡大が世界のデジタル行動に大きな影響を与える直前の、2019年第3四半期の1日平均に非常に近い数値です。
しかし、直近3カ月間でインターネット利用平均時間は変化していないため、今後さらなる減少を見せるかどうかは不透明です。
とりわけ中国では最近「ゼロコロナ」政策が緩和されました。今後数週間で同国のインターネットユーザーがオフラインでより多くの時間を費やすことで、インターネットの利用時間が減少することも考えられます。
また、中国が世界のインターネットユーザー数の5分の1以上(20.4%)を占めていることから、中国でのオンライン行動の変化は、世界の平均値に大きな影響を与えることになるでしょう。
国別のインターネットユーザー利用時間
インターネットユーザーのオンライン時間は、地域や人口動態によって大きく異なりますが、全体としては減少傾向にあります。
例えば、フィリピンでは1日平均9時間以上がオンラインに費やされていますが、最新の調査で明らかになった9時間14分という数字は、「Digital 2021 Global Overview Report」で発表された平均10時間56分から大きく減少しました。
しかし、オンライン時間の全体的な減少傾向には例外もあります。
中国のインターネットユーザーの1日平均オンライン利用時間は、2022年第3四半期に前年同期比の3分増となりました。
ただし、中国では、2022年第3四半期中も新型コロナウイルス感染拡大に伴う厳しいロックダウン規制が実施されていました。したがって、この数値は「コロナ禍効果」を反映している可能性も考慮する必要があります。
地域、年齢、性別のインターネット利用状況の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
インターネット利用時間の傾向
オンライン時間の世界的な減少傾向から、各国のデジタル行動の変化について何が読み取れるでしょうか。
まず、人々の生活にとってインターネットの重要性が低下していることを示すデータは一切無いことを強調しておきます。
むしろ、データの詳細な分析から、人々がオンライン行動について、その意味と目的をより強く意識するようになっていることが明らかになりました。
つまり、量より質を重視しているということです。
この傾向の背景には何があるのでしょうか?
仮説のひとつとして、コロナ禍のロックダウン中における習慣の「巻き戻し」が考えられます。これについては後ほど詳しく取り上げます。
しかし、最近のオンライン行動の変化は、ロックダウンから解放された結果だけではありません。
GWIのトレンドチームは、最新の「Global Media Landscape」のレポートで以下のように指摘しています。
オンライン時間の大幅な減少は、コロナ禍後の環境の変化や時間的余裕の減少を反映したペースの低下を示していますが、ソーシャル疲れ、サブスクリプションの解約、生活費危機などの複合的な要因も絡んでいます。
さらに、GWIの示唆に富んだレポート「Connecting the Dots 2023(点と点をつなぐ:2023)」では、より率直な見解が示されています。
1日の時間は限られており、多くの人が効率的にオンラインで時間を費やしたいと考えています。
当社では「Digital 2022 October Global Statshot Report(デジタル2022年10月グローバルスタットショットレポート)」で、より高い目的意識でインターネットが利用されるようになった背景について検証を始めました。この傾向は、今、あらゆる最新のデータを通して精査すべき事柄です。
インターネット利用の目的
世界各国でオンライン検索行動が進化していることが最近明らかになりましたが、今日でも「情報を見つけること」がインターネット利用の最たる目的です。
GWIの最新調査から、働く世代のインターネットユーザーのほぼ10人に6人(57.8%)が、情報収集のためにインターネットを利用していることが明らかになりました。
- 家族や友人とコミュニケーションを取るため(53.7%)
- 最新のニュースや出来事を知るため(50.9%)
- 動画を視聴するため(49.7%)
近年の傾向として、インターネット利用目的の上位の順位は比較的安定しています。
コロナ禍の最盛期以降「最新のニュースや出来事を知るため」の相対的な優先順位が下がり、ロックダウン時に順位が下がった「家族や友人とコミュニケーションを取るため」が2位に戻ったことが注目されます。
とはいえ、この調査結果から、インターネットユーザーの大半がオンライン行動において比較的安定した選択肢があることがわかります。
また、この数値をさらに掘り下げると、より興味深い傾向が明らかになりました。
全体として、世界の働く世代のインターネットユーザーがインターネットを使用する目的の平均数は、過去4年間で11%強減少しています。
この平均数が増加したのは、コロナ禍のロックダウンにより、多くの人々が日常生活のほとんどをインターネットに頼るようになった2020年第2四半期でしたが、その後コロナ禍以前の減少傾向が戻り、現在7.04という過去最小の数値となりました。
利用するウェブサイトやアプリの種類についても同様の減少傾向が見られ、GWIの調査回答者が選択した平均数は過去5四半期で3.5%減少しています。
チャットアプリやメッセンジャーなどの定番ツールに関しても、これらを選択するユーザー数はこの1年間で1%近く減少しました。
では、ロックダウンから3年経った現在、継続している習慣とそうでない習慣について見てみましょう。
コロナ禍前に完全に戻れることは可能か?
「Digital 2020 April Global Statshot Report(デジタル2020年4月グローバルスタットショットレポート)」で論じたとおり、コロナ禍の暗い困難な時期に現れたトレンドの大半は、多くの人々が自宅に閉じこもるという異例の事態によってもたられたものです。
しかし、規制が緩和され、人々が社会に復帰するにつれて「コロナ禍の習慣」の多くが薄れ、コロナ禍前に見られた行動パターンに戻ろうとするケースが増えています。
さて、コロナウイルスは、コロナ禍初期に多くの人が予測したような、デジタル行動への永続的な影響を与えたのでしょうか?
2020年の初めに広まった誇張された情報の多くが不正確であったことが判明しましたが、調査結果によると、デジタル世界が実際に「一変した」例も多くあります。
しかし、このような変化が見出しのように極端なものであることはごくまれです。
もう少し詳しく見ていきましょう。
オンライン購買行動の変化
オンライン購買行動の変化は特に注目すべき好例です。コロナ禍前と比較して、eコマースを利用する意欲が高まったことを裏付けるデータが多く揃っているからです。
Sea Limitedのグループチーフエコノミストは、Bain & CompanyとMetaが共同で発表した最新のレポートの中で次のように指摘しています。
コロナ禍前は、eコマースの利用者は、主にファッション、美容、電子機器などのカテゴリーの商品を購入していました。食品飲料の購入はごくたまにで、日常的に食料品や日用品の購入を検討する人はほとんどいませんでした。それが一変したのです。いちどそのやり方を覚えて、その利便性と柔軟性を実感してしまうと元に戻るのは難しくなります。
つまり、新しい習慣を身に付ける必要性に迫られたものの、結果としてその習慣のメリットに納得した場合、それが定着する可能性は十分にあります。
ただし購買習慣は多様であり、コロナ禍による規制が緩和された途端に多くの消費者が実店舗に戻ってきたというデータもあります。
Statistaの調査で、過去1年間で世界の小売支出(オンラインおよびオフライン)が全体的に減少したにもかかわらず、2022年のオンラインチャネルの支出比率は前年を上回ったことが明らかになりました。
しかし同時に、過去1年間の世界の小売支出に占めるオンラインチャネルの比率は17.1%に過ぎないことも判明しています。
つまり、世界的に見て、消費者の小売支出に占めるeコマースの割合は、まだ6米ドルに1米ドル程度に過ぎないのです。
これでは、新型コロナウイルス感染拡大によってショッピング行動が根本的に変化したとは言えません。
また、多くの消費者が小売チャネルを自由に選べるようになったことから、オンラインとオフラインを組み合わせたショッピングを楽しむようになることも十分予想されます。
しかし、ロックダウンの結果、多くの消費者がeコマースに慣れたことから、コロナ禍前と比較してオンラインチャネルを選択する可能性が高くなっていることは重要なポイントです。
GWIとStatistaによる現行の調査でも、購買行動全体と小売支出に占めるeコマースの比率は今後数年にわたり増加することが示唆されており、この仮説はデータでも裏付けられています。
Shopifyの「Commerce Trends 2023(2023年版コマーストレンド)」レポートには、今日のハイブリッド型小売のチャンスを理解するために必要な、最新のインサイトとトレンドが詳述されています。レポート全文はこちら。
世界におけるテレビ視聴行動の変化
Netflixのような動画配信プラットフォームも、ロックダウンが世界のデジタル行動に与えた影響の恩恵を広く受けた例として挙げられています。
しかし、このようなコロナ禍の行動様式は続いているのでしょうか?
各企業はさまざまな課題に直面してる中、世界のテレビ視聴時間全体に占めるオンライン配信の割合は増加の一途をたどっています。
例えば、GWIの最新調査によると、現在NetflixやDisney+などの動画配信サービスに、テレビ視聴時間の45%超を費やしているのは、働く世代のインターネットユーザーです。
この数値は、2019年第3四半期以降、相対的に10%(+4.3%ポイント)増加しており、今では、平均的なインターネットユーザーが動画配信やオンラインテレビを視聴する長さは、1日平均1.5時間を超えています。
しかし、最近の成長傾向はコロナ禍前と同じであり、従来型テレビ放送(衛星放送、CATVなど)が依然として世界の総テレビ視聴時間の半分以上を占めていることも注目されます。
一方、GWIの調査結果によると、世界の経済大国では、働く世代のインターネットユーザー10人中9人以上は、すでにテレビ番組や映画をオンライン配信で視聴しているため、普及率が上昇し続ける余地はあまりないと考えられます。
しかし同時に、16歳から64歳のインターネットユーザーのうち、映像配信のサブスクリプションを利用しているのは3人に1人に満たないことも明らかになっています。
したがって、広告付きサブスクリプションサービスの開始が、テレビ視聴時間全体に占めるオンライン配信の割合に有意な影響を与えるかどうかが注目されます。
人々の変化し続ける動機や優先順位が、オンラインの視聴行動にどのような影響を与えているかの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
デジタル広告の急増
広告付きコンテンツに関して、ロックダウンによる世界のデジタル行動の変化から最も大きな恩恵を受けているのは、デジタル広告業界だと考えられます。
Statistaの調査によると、世界の広告費全体に占めるデジタル広告の割合は、2019年の57.4%から2022年の73.3%と、相対的に27.7%増加しています。
しかし、絶対値で見ると、コロナ禍前の2019年の3,750億米ドル弱でだったデジタル広告の収益は、2022年には6,670億米ドル超となり、3年間で78%もの大幅増となっています。
下のグラフのとおり、世界のデジタル広告の収益が最も大きく増加したのは2021年で、2020年の約3割増となりました。
コロナ禍は、世界の広告投資を大きく変化させました。このデジタルシフトの勢いは、今後も継続するでしょう。
しかし、ご承知のとおり、デジタル広告への投資は国によってかなり差があります。
Statistaの調査結果を分析したところ、2022年にデジタル広告への投資額第1位となった米国では企業がオーディエンスにリーチするために、インターネットユーザー1人当たり年間合計で約880米ドルも投資したことがわかりました。
これに対してランキング下位では、同様の目的でも、インドでは1人当たり年間合計で5.26米ドル、ガーナはわずか1.43米ドルしか投資していません。
デジタル広告の世界では、ソーシャルメディアプラットフォームがデジタルシフトの最大の恩恵を受けていると考えられます。
Statistaの分析によると、世界のデジタル広告支出に占めるソーシャルメディアの割合は、2019年の約4分の1から、2022年の約3分の1に増加しています。
これは注目すべき傾向ですが、支出額の絶対値はさらに驚くべき結果となりました。
Statistaの「Advertising & Media Outlook(広告&メディア展望)」に掲載されたデータによると、ソーシャルメディア広告に対する全世界の支出額は、コロナ禍以降2倍以上増加し、2022年には2,260億米ドルに達することが示されています。
ソーシャルメディア行動の進化
ロックダウンが、ソーシャルメディアユーザーの習慣に与えた影響について見ていきましょう。
ソーシャルメディア利用の増加は、コロナ禍のロックダウン期間中の最たる話題のひとつであり、ほぼすべての大手プラットフォームが、主要な指標において目覚ましい成長を遂げました。
しかし、2020年第2四半期に起こった突然かつ劇的な変化は、普遍的なデジタル行動となったのでしょうか?
全体的に見るとその答えは「イエス」ですが、注意すべき点があります。
増加し続けるソーシャルメディアユーザー
コロナ禍による変化が持続していることを最も端的に示しているのは、全体的なソーシャルメディアユーザー数です。
Kepiosの分析によると、世界のソーシャルメディアユーザー数は、コロナ禍が始まって以来30%近く増加しており、過去3年間で10億人を越えるユーザーが加わったことになります。
その後もユーザー数の増加は続き、コロナ禍がソーシャルメディアの普及を加速させたことを意味します。
例えば、2020年から2021年の1年間は、前年比のほぼ2倍の急成長となり、2021年から2022年も引き続き2桁増を達成しています。
しかし、直近の1年間の成長率は大幅に低下しており、Digital 2023レポートで報告している世界の成長率は、これまでで最も低い数値となっています。
ただしここで注目したいのは、ユーザー数が依然として増加傾向にあることです。
つまり、ソーシャルメディアの「終焉」が迫っていると予言するメディアの、無数のクリックベイトを裏付ける確かな証拠はないのです。
このような根拠のない主張を覆すデータは、ユーザー数の増加だけではありません。
ソーシャルメディア利用時間の増加
ソーシャルメディアの平均利用時間が過去最長となったことが、GWIが発表したデータから明らかになりました。
同社の最新調査によると、働く世代のインターネットユーザーによるソーシャルメディア利用時間は、1日平均2.5時間を超え、過去最高の数値となりました。
昨年同期比で3分増に過ぎませんが、増加傾向が続いていることに変わりはありません。
注目したいのは、上述のとおりインターネット利用時間が全体的に減少しているにもかかわらず、ソーシャルメディア利用時間が増加している点です。
インターネット利用時間のうち、ソーシャルメディアの利用に占める割合は過去最大となっており、10分間に4分間近くがソーシャルメディアに費やされています。
参考として、この数値は、働く世代のインターネットユーザーが、従来型テレビ放送(衛星放送、CATVなど)の視聴よりもソーシャルメディアの利用に費やす時間が30%長いことを示すものです。
このことからも、ソーシャルメディア広告への投資の増加が妥当であることがわかります。
国、年齢、性別のソーシャルメディア利用時間の詳細については、こちらの記事からご覧ください。
ソーシャルメディアのトレンドの変化
近年の誤解を招くようなタイトルの急増は、ソーシャルメディアに限ったことではありません。各種媒体でも事実と異なる情報が氾濫しています。
このような誤った情報は、根拠のない憶測や不十分なファクトチェックに起因するものもありますが、有名メディアでさえ、意図的に誤った情報を発信する傾向が見られるようになっています。
次のセクションでは、信頼できる複数の情報源から得た最新情報を検証し、ソーシャルメディアユーザーの実際の行動についての事実をご紹介します。
しかし紙面の都合上、ここですべてを網羅することはできません。より詳細な全体像についてはこちらの記事をご覧ください。
MAUから見るソーシャルメディアプラットフォーム
最も整合性のある比較基準とされている月間アクティブユーザー数(MAU)に基づいて、ソーシャルメディアプラットフォームを順位付けしたMetaの最新の公式発表では、Facebookが依然として世界第1位となりました。
Meta社の2022年第3四半期の投資家向け業績報告書によると、FacebookのMAUは29億5,800万人で、これは世界総人口のほぼ37%に相当します。
一方で、YouTube社の公式発表では、YouTubeの月間ログインユーザー数は20億強となりますが、同社の広告リソースには、毎月25億人を越えるユーザーがYouTubeにアクセスしていることが示されています。
また、Kepiosの2022年10月レポート以降、ソーシャルメディアの頂点に君臨し続けているInstagramは、先日、MAUが20億人に達したことを発表しました。
この数値はWhatsAppと肩を並べる規模ですが、Meta社の発表によると、現在WhatsAppが1日20億人のアクティブユーザーを集めており、MAUはさらに高くなることがわかります。
テンセント社のWeChatが上位5位に入り、同社の最新の投資家向け業績報告書で、MAUが13億人を突破したことが発表されました。
ただし、WeChatの全ユーザーの大半を依然として中国のユーザーが占めていることがKeipiosの分析で明らかになっています。
世界で最も多く使用されるソーシャルメディアアプリ
Digital 2023レポートでは、data.aiとのより緊密な連携の結果、モバイルの世界の現状について従来より詳細かつ広範な情報提供が実現しました。
本題に入る前に、中国のアプリ市場は他国とは根本的に異なっているため、アプリのMAU分析には中国のデータが含まれていないことにご留意ください。
今年度のレポートのMAUのランキング基準は、以前のレポートの基準とは異なります。これは、プリインストールされたアプリ(Android端末にプリインストールされたYouTubeなど)をデータに含めることできるようになったためです。
より多くのデータを分析できるようになった結果、興味深いインサイトが得られました。
data.ai Intelligenceのデータから、YouTubeはソーシャルメディアアプリに限らず、あらゆるモバイルアプリの中で世界最大のMAUを獲得していることが明らかになりました。
この総合ランキングのソーシャルアプリ部門で、Facebookは第2位となっていますが、data.aiのデータでは、FacebookのMAUが過去12カ月間にわたって増加し続けていることが注目されます。
WhatsAppは第3位で、最新のMAUはFacebookに次ぐ数値となっています。
加えて、InstagramとMessengerもMAUで10位圏内として市民権を獲得しており、Google社とMeta社のアプリが上位10位を独占しているという結果になりました。
TikTokについてはどうでしょうか?
当然ながら大人気を誇るショート動画プラットフォームTikTokは、世界第6位に入っていますが、これにはTikTokの姉妹アプリDouyinの数字は含まれていないことは注目に値します。
第7位にTelegram、第8位にTwitterと続いており、SnapchatとPinterestはソーシャルメディアアプリの月間MAU上位10位圏外へと外れています。
しかし、絶対ユーザー数だけでは全体像を把握できません。ソーシャルメディアアプリの利用時間についても詳細を見てみましょう。
ソーシャルメディアアプリの利用時間
このデータにはさまざまな見方がありますが、全ユーザーの利用時間合計と、ユーザー1人当たりの平均利用時間の分析から最も深いインサイトを引き出すことができます。
data.aiによる1カ月間のソーシャルメディアアプリの利用時間合計のランキングには、同社による月間MAUランキングと多くの共通点が見られます。
ただし、利用時間合計のランキングではTikTokとFacebook Messengerが入れ替わり、LINEの順位が上がりSnapchatを抑えています。
商業的価値があるため、各プラットフォームの具体的な利用時間合計の数値は開示できない代わりに、ランキングと各プラットフォームのユーザー1人当たりの平均利用時間を公表しています(データ分析の詳細については、data.aiまでお問い合わせください)。
ユーザー1人当たりの平均利用時間から興味深い事実が明らかになりました。
世界で利用されているソーシャルメディアアプリの中で、TikTokは2022年のユーザー1人あたりの月間平均利用時間が最多となっています。
このショート動画プラットフォームのAndroidアプリユーザーの2022年1月~12月の間の1カ月あたり平均利用時間は約23.5時間でした。次いでYouTubeが1カ月あたり平均23時間9分となります。
TikTokの第1位への躍進は驚くことではないかもしれませんが、この結果をもたらしたデータには特筆すべき点があります。
例えば、TikTok独自のデータによると、#fyp(”for your page" (おすすめのページ))のタグ付け投稿は現在合計35兆回も視聴されています。
視聴時間が1秒だったとしても、#fypのタグが付いた動画の視聴時間だけの合計で100万年を超えることになります。
しかし、最近の主流メディアをご覧になっていればさらに驚くことに、data.aiの調査結果では、Facebookはユーザー1人当たりの1カ月間の平均利用時間がほぼ20時間と第3位に入っています。
また、data.ai Intelligenceによると、Facebookユーザー1人がAndroid用Facebookアプリを利用する時間は、2021年の月平均19.6時間から、2022年には19.7時間と、過去1年間で増加しています。
Statcounterのデータでは、現在使用されているスマートフォンに占めるAndroid端末の割合は72%となっています。
また興味深い点として、平均的なInstagramユーザーのアプリ利用時間は、TikTokユーザーの利用時間の半分程度に過ぎません。
しかし、Instagramの利用状況は国によって大きく異なります。
例えば、トルコの平均的なInstagramユーザーのAndroid用Instagramアプリの利用時間は月平均21.4時間ですが、韓国のユーザーは月平均6.1時間です。
data.aiの旗艦レポート「State of Mobile 2023(2023年版モバイル動向)」には、モバイル端末の世界の使用動向ついて重要なデータとトレンドが詳述されています。レポート全文はこちら。
ソーシャルプラットフォームのトラフィック
各プラットフォームのウェブサイト訪問者数には、頻繁にログインしていない訪問者も数に含まれているため、別の興味深い観点からソーシャルメディア利用について検証することができます。
ウェブトラフィックの推定値は、情報源によって大きく異なるものの、YouTubeとFacebookの数値は複数の情報源においても比較的一貫しています。
例えば、Semrushの最新のデータでは、月間ユニークビジター数58億5,000万人のYouTubeを世界のウェブサイト第2位、24億8,000万人のFacebookを第3位に位置付けています。
ただし、このユニークビジター数は実際には「訪問者数」ではなく、「端末数」を示していることに着目する必要があります。
Similarwebが発表している数値はSemrushとは大きく異なりますが、ランキングは同様です。月間ユニークビジター数19億4,000万人のYouTubeが第2位、16億1,000万人のFacebookが第3位です。
人々がウェブブラウザやモバイルアプリでソーシャルコンテンツを利用する機会が増加していることを裏付ける多くのデータがあり、こうしたウェブ行動の増加は、ソーシャルメディアのオーディエンスを増やしたいと考えている人にとって重要な意味を持つことになります。
この傾向に関する調査結果の詳細は、当社の「Digital 2022 October Global Statshot Report」の分析記事からご覧ください。
世界のソーシャルメディアの「お気に入り」ランキング
これまで検証してきたソーシャルメディアのデータはすべて、各プラットフォームのアクティブな利用に基づいていますが、そのデータからは、各プラットフォームに対するユーザーの親和性や日常生活における位置づけを読み取ることはできません。
しかしこの度、GWIの豊富なデータによって、この観点からの検証も可能になりました。
データの説明に入る前に、GWIではYouTubeをソーシャルメディアではなく動画プラットフォームと分類しているため、YouTubeはGWIの「favourite social platform(お気に入りのソーシャルプラットフォーム)」データに入っていないことにご留意ください。
ただし、これらのデータからはいくつかの注目すべきインサイトが得られました。
まず、総アクティブユーザー数では第3位のWhatsAppは、現在「お気に入り」のソーシャルメディアプラットフォーム世界第1位です。
もちろん、「お気に入り」の解釈は人によって異なるため、このランキングにある程度の主観的要素が入ることは避けられません。
しかし、その主観も個人が各プラットフォームをどう感じているかの重要な指標であり、データの正確性が損なわれるどころか付加価値を与えています。
InstagramとFacebookは、ランキングの2位争いが続いており、「お気に入り」と答えた人の割合は全世界でほぼ同じです。
第4位のWeChatは、中国語で「微信(Weixin)」と呼ばれており、中国のインターネット人口の規模の大きさを示しているだけでなく、テンセントを代表するスーパーアプリとして高い人気が続いていることがわかります。
意外に思われる方もいるかもしれませんが、世界の働く世代のソーシャルメディアユーザーが、TikTokをお気に入りのプラットフォームとして挙げたのはわずか6.1%で、最新ランキングでは第5位となりました。
ただし、TikTokを「お気に入り」と答えた人の割合が、前年同期比から相対的に42%(+1.8%ポイント)も増加しており、人気上昇中であることは間違いありません。
では、若いユーザーからも人気があるのでしょうか?
年齢・性別によるソーシャルメディアの好み
GWIのデータで、16~24歳のインターネットユーザーの「お気に入り」のソーシャルメディア第1位は依然としてInstagramであることが明らかになりました。
また、TikTokの人気も上昇し続けており、16~24歳の女性のうち、このショート動画サービスを「お気に入り」のソーシャルメディアプラットフォームとして挙げた人の数は、過去1年間で3分の1以上も急増しています。
しかし、同じ年齢層では、TikTokをお気に入りに挙げたほぼ2倍の数の女性がInstagramをお気に入りと答えています。(Instagram:23.1%、TikTok:12.0%)。
若年層の男性は、TikTokよりもInstagramを選ぶ傾向がさらに強くなっています。16~24歳の男性のうち、Facebookをお気に入りソーシャルプラットフォームと選んだ人がTikTokを選んだ人よりも多かったことが非常に興味深い点です(Facebook:10.5%、TikTok:7.7%)。
また、WhatsAppはこの年齢層のお気に入りの第2位で、世界で人気のメッセンジャープラットフォームが、TikTokを抑えて若い世代でも性別を問わず人気を集めていることがわかりました。
ゼロサムゲームではないソーシャルメディアの選択
ここまでご紹介したデータから、2023年度のソーシャルメディア計画策定に必要な情報を十分に得られたのではないでしょうか。
しかし、Digital 2023レポートのチャートの中で、ソーシャルメディア計画策定に最も価値があるのは、ソーシャルメディアオーディエンス間の重複に関する調査結果でしょう。
このチャートについては、当社の最近の分析でも取り上げていますが、今回のレポートでは、この重複を特定するための手法を改善したため、最新の調査結果は以前よりもさらに充実したものとなりました。
今回の調査による重要な発見として、以前のレポートではオーディエンスの重複を過小評価していたことが挙げられます。
GWIの豊富なデータに対するKepiosの最新の分析から、任意のソーシャルメディアユーザーの中で、実際のユニークユーザーはわずか1%であることが明らかになりました。
また、GWIのデータによると、当社の分析対象のプラットフォームの中で最大のユニークユーザー数を獲得しているのはYouTubeです。
働く世代のYouTubeユーザーの中で「他のソーシャルプラットフォームを一切使用していない」と答えたのは1.0%に過ぎないため、「最大」という表現には語弊があるかもしれません。
また、GWIの調査では、YouTubeに関する質問文は、その他のプラットフォームとは別の箇所に掲載されており、もしYouTubeが他のすべての選択肢と一緒に掲載されていた場合、この1%という数値はさらに低くなる可能性があります。
一方で、1%のユニークリーチ率を獲得できるプラットフォームは他にありません。TikTok、Snapchat、Twitterなど、多くの場合、ユニークユーザーは1,000人当たり1人しかいません。
プラットフォーム選択の複雑性
この同じデータを別の角度から検証すると、オーディエンスの重複は、多くの人がこれまでのお気に入りを捨てて、新しいソーシャルメディアへ移行しているという通説を覆すものでもあります。
例えば、全世界で16~64歳のユーザーの動向は以下の通りです。
- 82.5%のTikTokユーザーがFacebookも毎月利用している
- 84.3%のTelegramユーザーがWhatsAppも毎月利用している
- 60.7%のSnapchatユーザーがTwitterも毎月利用している
ソーシャルメディア利用に関する、クリックベイトや検証不足の記事には惑わされてはいけません。この数字から、ユーザーは今でも毎月、幅広いラインナップからさまざまなソーシャルメディアを活用していることが明らかです。
このデータは、マーケティング担当者にとってより深い意味を持ちます。
つまり重要なのは、潜在的リーチ数を増やしたい場合、あらゆるソーシャルメディアプラットフォームを駆使しても大きなリターンは得られないという点です。
実際、上位の1つか2つのプラットフォームに存在感を示すだけで、必要なリーチ数をほぼ確保できます。
例えば、FacebookとYouTubeを組み合わせて活用すると、働く世代のインターネットユーザーの10人のうち9人以上に毎月リーチできる可能性があります(中国を除く)。
この2大アプリは、広告付きソーシャルプラットフォームの中で最多のユニークオーディエンスを誇っており、この2つに別のプラットフォームを追加するたびにオーディエンスが重複する可能性が非常に高くなります。
しかし、FacebookとYouTubeの組み合わせが唯一無二の選択肢というわけではありません。
この調査結果は、単に潜在的リーチ数の増加に関するものであり、リーチ数はソーシャルメディアポートフォリオやメディアミックスの検討の際に考慮すべき指標のひとつに過ぎません。
しかし、このオーディエンスの重複に関するインサイトによって、ニーズに合った最適なプラットフォームの選択がスムーズになります。
つまり、大規模プラットフォームを1つか2つ活用してリーチ数を確保すれば、小規模でニッチなプラットフォームを活用してさらに新しいクリエイティブな機会を得たり、広告費を削減したりすることもできます。
次に広告費について見ていきましょう。
CPMは2022年第4四半期に大幅な低下を記録
Skai.ioの調査から、ソーシャルメディアオーディエンスにリーチするための広告費は、2022年末の大事なホリデーシーズンの四半期に大幅に低下したことが明らかになりました。
同社の分析によると、ホリデーシーズンである2022年第4四半期のソーシャルメディア広告費総額は、前年同期比で約3%増加しています。
一方、2022年第4四半期の広告主のソーシャルメディア広告への支出額は、前四半期(2022年7月~9月)よりも8.4%増加しています。
同時に、2022年第4四半期にソーシャルメディアプラットフォームに表示された広告インプレッション数は、前年同期比で57%増加したことも明らかになりました。
このような傾向は、前述したアクティブユーザー数や利用時間の増加を考えると不自然ではありませんが、広告費総額の3%増に対してインプレッション数は大幅な増加となりました。
インプレッション数の増加が広告費総額の増加を上回ると、平均インプレッション単価が低下します。
Skaiのデータから、ソーシャルメディアのCPM(ソーシャルメディア広告が1,000回表示されるごとに発生する費用)が前年同期比で35%低下したことがわかりました。
現在の経済環境に関連するコスト圧力が平均CPM低下の要因となった可能性がありますが、在庫の大幅な増加が影響していることも考えられます。
したがって、ソーシャルメディアで、広告を目にする機会が以前より多くなったように感じていたら、それは気のせいではないことをこのデータは示唆しているのです。
成長を続ける検索マーケティング
このような傾向は、ソーシャルメディア広告に限ったことではありません。Skaiのデータから、世界の検索広告においても同様の傾向が見られます。
全体として、数十億米ドルの広告費を分析した結果、広告主が2022年第4四半期に検索広告へ投資した額は、前年同期比で7%増加していることが明らかになりました。
そして、ソーシャルメディア広告と同様に、総広告費よりもインプレッション総数がはるかに急増していることもわかりました。
Skaiのデータによると、ホリデーシーズンの2022年第4四半期に検索エンジンに表示された広告インプレッション数は、前年同期比で23%増加しています。
さらに、2022年第4四半期の検索広告のインプレッション数は、前四半期比で30%以上増加しています。
その結果、2022年を通して平均クリック単価(CPC)は着実に低下し、第4四半期にはわずか0.60米ドルまで下降しました。
これは、前年同期比で約12%、前四半期比で7%低い数値です。
しかし、過去数カ月間のマーケティングに関する大きな話題のひとつである世界の検索行動の変化を考慮すると、このような検索広告の傾向はさらに興味深いものとなります。
昨年の今頃、当社は世界のオンライン検索行動のさまざまな傾向について調査を実施しました。
しかし、過去の傾向が将来の行動を示す信頼できる指標となるとは限らず、当時の傾向は予想通りには変化しませんでした。
ソーシャル検索やディスカバリーの活用が増加するなど、変化が加速しているケースも見られます。
一方で、音声アシスタントの利用など、2022年初めから逆の成長を見せるケースもあります。
それぞれの傾向については、世界の検索行動の変化を詳述したこちらの記事をご覧ください。
モバイル端末の利用時間
本年度のレポートで最も重要な項目のひとつとして、モバイルユーザーが1日平均5時間以上スマートフォンを使用していることが挙げられます。
data.aiの分析によると、2022年の1日あたりの平均スマートフォン利用時間は前年と比較して7分増え、2.4%増となっています。
平均睡眠時間を7~8時間と仮定すると、活動時間の約30%をスマートフォンに費やしていることになります。
data.aiの分析は、一部の大きな市場を持つ国のデータに基づくものですが、もしこの平均値が世界中の全モバイルユーザーに当てはまるとして利用時間を合計すると、年間10兆時間という驚異的な数値となり、これは約11億年に相当します。
さらにdata.aiによると、世界のAndroidユーザーはスマートフォン利用時間の40%以上をソーシャル・コミュニケーションアプリに費やしており、1日平均2時間以上スマートフォンでこれらのサービスを利用しています。
写真・動画アプリに費やす時間は1日のスマートフォン利用時間の4分の1となっており、2番目に大きな割合です。
合計すると、この2つのカテゴリーのアプリに費やす時間は、Androidユーザーの1日の利用時間の3分の2を占めることになります。
3位のウェブ閲覧は、スマートフォン利用時間のわずか8.1%であり、現在のスマートフォン利用の大半をネイティブアプリが占めていることは明らかです。
また意外にも、ゲームに費やす時間はわずか8%となりました。
しかし、この比較的低い割合にもかかわらず、Google Play StoreとiOS App Storeでは、モバイルゲームのダウンロードが最多となっていいます。
デバイスの選択
スマートフォンの平均利用時間が増加しても、GWIの最新のデータによると、インターネットの使用においては依然としてコンピューターが大きな割合を占めています。
多くの発展途上国では、スマートフォンがインターネット利用の主流となっていますが、GWIが調査した46カ国中18カ国では、デスクトップ、ラップトップ、タブレットがその半分以上を占めていることがわかりました。
特に、米国、カナダ、ヨーロッパのほとんどの国で、コンピューターがオンライン活動の中心となっている点が注目されます。
ベルギー(57.5%)がインターネットにコンピューターに依存する割合が最も高く、デンマーク(55.0%)がこれに続きます。
一方、インドネシア、タイ、インド、中国では、60%以上がスマートフォンからインターネットを使用しています。
このようなデータに加えて、GWIは、ラップトップとタブレット端末の所有率がここ数カ月で着実に減少していることも報告しています。
働く世代のインターネットユーザーのうち、ラップトップまたはデスクトップコンピューターを所有しているのは10人中6人未満で、3分の2弱が共有デバイスや雇用主から貸与されたコンピューターなどを利用していることが明らかになりました。
このようにコンピューターの所有率が低下していることから、2023年にかけてもスマートフォンからのインターネット利用時間が増加すると予想されます。
とはいえ、コンピューターは少なくとも今後数年間はオーディエンスの行動に重要な役割を果たし続けると考えられるため、「モバイルファースト」が必ずしも「モバイルオンリー」を意味するわけではないことが重要なポイントです。
広告リーチの数値を修正し続けるMeta
当社では、Metaが発表した同社のさまざまなプラットフォームの潜在的広告リーチの数値を最近より定期的に「修正」していることに着目しています。
こうした修正は決して新しい動きではなく、私がこのデータを収集・分析してきた13年間で、同社は平均12~18カ月ごとに修正を加えてきました。
しかし、私の分析によると、過去6四半期のうち少なくとも4四半期において同社は意味のある修正を加えています。
修正頻度が高いため、何が起こっているのかを特定するのは困難です。
例えば、同社の最新データでは、過去3カ月間、世界のほぼすべての国でFacebook広告リーチが大幅に減少しており、減少していない国は6カ国のみとなっています。
また、これらの6カ国すべての広告リーチの数値は10月以降修正されていません。これは、過去3カ月間で潜在的なリーチが増加していないことを意味します。
Instagramの広告リーチの数値も同様の傾向がみられ、3カ国のみが修正の影響を受けていません。
同様に、その3カ国はいずれも前四半期に報告されたリーチの数値から変更されていません。
しかし、この2つのプラットフォームの役割とこれまでの成長過程が異なることを考慮すると、この変化は、ユーザーの突然の流出ではなく、重複アカウントや認証されないアカウントの大規模な削除の結果である可能性が高いと思われます。
時間の経過でユーザー数が変動するのは当然ですが、すべての地域で一貫して減少していることから、大規模な技術的障害が発生していない限りは、最近の減少に最も大きな影響を与えているのはMetaによる数値の修正であると考えられます。
潜在的リーチの減少
リーチの減少理由がなんであれ、結果は変わりません。Metaは広告主に対して、同社のプラットフォーム上でリーチできるユーザーが、以前の推定値よりも減少していることを伝えているのです。
Metaの最新のデータによると、世界規模ではFacebook広告がリーチしたユーザーは、過去1年間で1億2,700万人減少し、前年同期比で6%減となっています。
Instagramに関する数値には、さらに大きな「修正」が認められました。同社のデータによると、ユーザー数が過去1年間で1億6,000万人減少し、前年同期比でほぼ11%減となっています。
Messengerも修正されており、2023年初めにMetaが発表したリーチ数は、2022年初めに発表した数よりも6%ほど低くなっています。
ここでは紹介しきれないほどの多くの情報があります。詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
TikTokは10億人を越える成人にリーチ
TikTokの広告リソースに掲載されたデータから、同プラットフォーム上の広告が10億人を越える18歳以上のユーザーにリーチしていることが明らかになったのは、広告主にとって朗報です。
この数値は、ユーザー自身が現実と異なる生年月日を申告する「年齢詐称」によって多少歪曲されている可能性があることに留意してください。
しかし、このTikTokの広告リーチ数が18歳未満のユーザーを含んでいたとしても、注目に値することには変わりはありません。
また、同社のデータによると、TikTokの広告リーチは2022年10月から2023年1月の3カ月間に11%増加しており、1億人を越える新規ユーザーを獲得しています。
さらに、同じデータから、TikTokの広告リーチが前年同期比でほぼ19%増加して、1億6,600万人の新規ユーザーを獲得。最新の合計数は10億5,000万人に達していることが判明しました。
Twitterオーディエンスの増加
イーロン・マスク氏にとっても朗報があります。最新のデータによると、Twitterもこの数カ月で広告リーチが増加しました。
同社の広告ツールに掲載されたデータによると、2022年10月以降、リーチしたユーザー数は1,200万人増加し、昨年同期から合計1億2,000万人の増加となっています。
Twitterの広告リーチ数は、この短期間でも大きく変動しており、この総リーチ数には、おそらく多くの「人間以外」(企業、音楽グループ、ペットのアカウントなど)のリーチが含まれていることが注目されます。
Kepiosがウェブトラフィックデータとモバイルアプリの利用状況を分析した結果、マスク氏の買収時に多くの人が予測したような「流出」の兆候は見られませんでした。
Twitterが依然として「ダイヤモンドの原石」である理由については、こちらの記事をご覧ください。
その他のトピック
今年度のレポートでは、さらに多くの興味深いデータやインサイトを紹介していますが、紙面の都合上、ここではその内容をいくつかの見出しに絞り、詳細記事へのリンクを掲載します。
オンラインオーディオに対する注目度が上昇
インターネットユーザーが、音楽ストリーミングサービスやポッドキャストを利用する時間は、以前より増加しています。しかし、「ソーシャルオーディオ」に関する現状はもっと複雑です。
詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
ブロックチェーンの課題
昨年の今頃は、ブロックチェーンの話題で持ちきりでしたが、現在、世界の多くのインターネットユーザーは暗号通貨やNFTに対して冷めた見方になったようです。
バリュエーションの急落、ハッキング、スキャンダル、詐欺などが後を絶たず、投資・投機以外でデジタル通貨を利用する機会がほとんどないため、多くの人が懐疑的な姿勢を崩していません。
しかし、暗号通貨は消滅したわけではありません。
詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
メタバースは縮小傾向?
同様に、アクティブユーザーのデータは、仮想世界のユーザー数が伸び悩んでいることも示しています。
最新のデータから、一部の仮想環境が広く普及している一方で、減少しているケースも多いことが明らかになりました。
詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
ウェアラブルの台頭
働く世代のインターネットユーザーの約10人に3人が、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェラブルデバイスを所有しています。
また、この層は、ゲーム機(20.3%)よりもスマートウォッチ(22.5%)を所有する傾向があることも明らかになりました。
データの全体像についてはこちらの記事をご覧ください。
新しいマイルストーンに到達したLinkedIn
LinkedInの最新の広告リーチ数から、この世界最大のビジネス特化型ソーシャルネットワークの登録メンバー数が9億人を突破したことが明らかになりました。
当社の分析によると、毎月のアクティブユーザーは全登録者数の3分の1に過ぎませんが、LinkedInがマーケティング担当者にとって魅力的であることには変わりません。
詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
オンライン金融サービスの動向
当社の分析によると、銀行や金融サービスにおいては、デジタルディスラプションはまだ進んでいません。
また、すでに多くの人がオンライン金融サービスを利用していることが調査で明らかになっていますが、その主なユーザー層は意外な結果となりました。
詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
2023年の展望
ご紹介したデータや分析から、デジタルの現状について十分にご理解いただけたと思います。
しかし、今後1年でどのように変わっていくでしょうか?
ここでは、今後四半期ごとに発行されるStatshotレポートで注目すべき点をご紹介します。
- クリエイティブ分野へのAIの台頭:
ChatGPT、Dall • E、Midjourney、Stablediffusion、Synthesiaなどのツールは、クリエイティブAIの到来を告げるものに過ぎません。性能の飛躍的向上、実世界への画期的な応用が期待されるとともに、合法性、倫理性、悪用の可能性をめぐる議論の激化が予想されます。 - 目的意識の高いマーケティング:
インターネットがより吟味されて使用されるようになるとともに、時間の浪費を避けたいという思いが、引き続きオンライン活動を変化させるでしょう。この変化自体が注目に値しますが、広告主にとっては特に重要な意味を持つこともあります。インターネットユーザーが、割り込み広告から完全には逃れにくくなっている中、人々の生活に意識的に付加価値を提供し、かつ人々が積極的に望むようなマーケティングは成功する可能性が高くなります。 - マクロ経済的な影響:
世界がポリクライシス(複合危機)を乗り越えようとする中で、人々が経済状況に応じてサブスクリプションを見直したり、メンタルヘルスに応じてニュース行動を変化させたりする兆候を探すことになるでしょう。また、地政学的緊張が新たな制裁やプラットフォームの利用禁止につながる可能性も高まっており、それはユーザーの行動や広範なデジタル環境を変容させるかもしれません。 - ソーシャルの再考:
現在「ソーシャル」と呼ばれているプラットフォームは、生活への影響を拡大し続け、情報収集場所、エンターテイメントの利用方法、世間へ影響を与える意見や行動の発信主に変化をもたらすでしょう。コミュニケーションや共有体験は、今後もプラットフォームサービスの中心的要素となると考えられます。プラットフォームという枠組みから離れ、「ソーシャルメディア」のような包括的な定義が薄れていくこと対して、ますます説得力が高まっていきます。 - 誤った情報の氾濫:
残念ながら、デジタル動向を報じる際に、事実を故意に歪曲するメディアが増えると予想されます。ChatGPTのようなAIツールの普及は、コンテンツの「リサイクル」を通じて、誤った情報をさらに増幅させるかもしれません。そのため、マーケティングに関する意思決定に役立つ正確かつ適切なデータを見つけることがこれまで以上に重要になります。当社は、2023年以降も世界トップクラスの研究者による信頼できる最新の調査結果と知見を提供していきますのでご期待ください。
以上で、今回のレポートについての紹介はほぼ終わりです。なお、2月中旬にはDigital 2023の国別レポートを2月中旬から公開します。準備が整い次第こちらからご覧いただけます。
最後に
最後に、私のお気に入りのGlobal Digitalデータのひとつである「battle for the internet(インターネットをめぐる戦い)」の最新情報をぜひお伝えしたいと思います。
2023年の大きな話題のひとつは、この1年間、猫と犬の2つのグループが大きな貢献を果たしてきたことにあります。
実際、Googleの検索結果では、昨年の今頃と比較して、猫と犬に関するページが2倍多く表示されるようになりました。
しかし、この結果から意外なことも明らかになりました。犬がウェブを席巻したようで、現在、Googleの検索結果では「猫」よりも「犬」が4億5,000万件多く表示されています。
Google検索では、この1年で「猫」の検索数は微増でしたが、「犬」の検索数は「猫」の2倍近くにのぼりました。
しかし、2022年のウィキペディアのページビューは、猫のページが犬のページの3倍以上あったという衝撃的な事実が判明しました。
しかし、「最高の友だち」である犬は、ソーシャルメディアを支配しています。
現在Instagramでは、#dogでタグ付けされた投稿は3億5,000万件以上あるのに対して、#catのタグ付けされた投稿は2億7,000万件です。
TikTokでも同様の比率が見られ、#dogでタグ付けされた投稿は合計3,500億回近く視聴されているのに対し、#catでタグ付けされた投稿の視聴回数は2,700億回にとどまっています。
また、Twitterでも、ユーザーの犬への関心が猫よりも高いことが報告されています。
同社の広告ツールによると、犬に「関心がある」Twitterユーザーは3億8,600万人以上であるのに対し、猫に「関心がある」ユーザーは6,200万人に過ぎません。
今年度の分析結果をここで公開しますが、猫の検索数が今後数カ月で巻き返しを見せるのかが注目されます。来年の1月にこの重要なトピックの最新情報をお伝えしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。
ディスクロージャー:Simon Kempは、GWIおよびdata.aiのブランドアンバサダーです。