少しずつ家庭に浸透しはじめているスマート家電ですが、国によって普及率や消費者の受け入れ具合は大きく異なります。そのため、国ごとの政策の違いや市場規模について理解し、効果的なマーケティング戦略を立てなければなりません。
今回の記事では、「アメリカ・中国・韓国・日本の最新普及率」「各国市場の特徴」「成長予測」をまとめました。さらに、スマートスピーカー・冷蔵庫・洗濯機・照明といった代表的なスマート家電の特徴と訴求ポイントも紹介します。
各国のデータを分析して市場の実態を把握し、自社の製品やサービスにマッチする市場セグメントを特定しましょう。
スマート家電とは?
スマート家電とは、インターネットに接続してスマホやタブレットから遠隔操作できる家電製品です。
たとえば、外出先からエアコンの電源を入れたり、洗濯の終了をスマホに通知させたりといった便利な機能を持つことが特徴です。また、冷蔵庫では食材管理やレシピ検索が可能になり、重複買いや買い忘れを防げます。
スマート家電の大きな魅力は利便性のほかにも、各家庭のライフスタイルや使い方にあわせてカスタマイズできるところにあります。くわえて、スマート家電を導入すれば電気の節約や家事の効率化が実現し、より快適でサスティナブルな暮らしを送れます。
【国別】スマート家電の普及率
以下の4か国のスマート家電普及率について、わかりやすく解説します。
- アメリカ
- 中国
- 韓国
- 日本
各国の経済状況や政府政策の違いによって、普及率や市場規模にどのような差が出ているのかに注目しましょう。
アメリカ
アメリカのスマート家電の世帯普及率は非常に高く、2024年時点で約40%の家庭が少なくとも1台を所有しています。年平均10%の普及率増加が見込まれており、2028年までに約1億世帯がスマート家電を使用するようになると予測されています。
スマート機器ごとの普及率を、以下の表にまとめました。
参考:Market.us Scoop「Smart Home Statistics and Facts(2,025)」,The Farnsworth Group「7 Reasons Why the Major Home Appliance Market is Forecasted to Grow between 2,025 and 2,028」
中国
中国のスマート家電の世帯普及率は非常に高く、2024年に85.3%、2029年に98.7%にまで上昇すると見込まれています。
高い普及率の背景には「中国の経済成長に伴う可処分所得の増加」「都市部での生活向上への需要」があります。また、中国政府のスマートシティやIoTデバイスに対する支援政策も、スマート家電市場の成長を後押ししているのです。
中国のスマート家電市場は2023年には約100億ドルでしたが、2029年までに約1,500億ドルに達すると予測されています。
参考:LinkedIn「The Development Status and Future Trends of China's Smart Home Industry」,Renub Research「China Smart Home Market, Numbers, and Penetration by(Energy Management, Comfort and Lighting, Home Entertainment, Control and Connectivity, Security and Smart Appliances) Company Analysis」
韓国
韓国のスマート家電の普及数は2024年時点では600万世帯で、世帯普及率は約26%、市場規模は約63億ドルです。
現在、韓国政府はスマート家電を積極的に支援しており、大手企業も最先端のスマート家電開発に乗り出しています。たとえば、2023年にサムスンが発表した「SmartThings Station」では、さまざまなスマート家電の一元管理が可能です。
韓国のスマート家電市場は、2024年から2030年にかけて年平均成長率24.1%で急成長すると予測されています。
参考:iGATE Research「South Korea Smart Home Market, Number, Household Penetration & Key Company Analysis - Forecast to 2,025」,Next Move Strategy Consulting「South Korea Smart Home Market to Reach $23.31 Bn by 2,030」
日本
日本のスマート家電普及率は2023年の調査によると約13%となっており、やや低い水準であると考えられます。
ただし、2020年のスマートスピーカー普及率は5.8%でしたが、2026年には1,500万世帯以上に普及する見込みです。スマート家電市場は認知度も上がり、2018年には約3兆円でしたが、2025年には11.5兆円にまで成長する見通しとのことです。
参考:一般社団法人LIVING TECH協会「RoomClipとLIVING TECH協会、共同でレポートを発表/スマート家電・スマートホームの日本と海外の普及の開きは5倍以上」,Spherical Insights「Japan Smart Speaker Market Trend, Growth, Forecasts to 2,033」,GlobeNewswire「Japan Smart Home Market Forecast to 2,025 with Profiles of Key Players: Panasonic, Sony, iTSCOM, Secual, Connected Design」,Mordor Intelligence「Japan Smart Home Market Size & Share Analysis - Industry Research Report - Growth Trends」
スマート家電の例
実際にスマート家電とはどのようなものなのかについて、以下の4つを例として紹介します。
スマート家電の具体例からイメージを把握し、どのようなマーケティング戦略・販売戦略が描けるかを検討しましょう。
スマートスピーカー
スマートスピーカーは音声認識技術とAI機能を搭載したスマート家電です。ユーザーの音声コマンドに応じて、音楽再生・情報検索・家電操作などさまざまな機能を実行できるアイテムです。
スマートスピーカーの機能の例を、以下の表にまとめました。
機能 | 内容 |
---|---|
音楽再生 | 音声指示で好みの曲をストリーミングサービスから再生 |
情報提供 | 天気・交通・ニュースなどをリアルタイムで音声案内 |
スケジュール管理 | 音声で予定を確認・登録 |
スマート家電連携 | 家電製品を音声で操作 |
メモ機能 | 音声でメモを記録しスマホで確認 |
オーディオブック | 家事や作業の間に書籍を音読 |
冷蔵庫
スマート冷蔵庫はインターネット接続されており、スマホアプリと連携して外出先からでも庫内の状況を確認できます。そのほかにも、以下のような機能を備えています。
機能 | 内容 |
---|---|
内蔵カメラ | 冷蔵庫内の食材をリアルタイムで確認し無駄な購入を防止 |
食材管理システム | 賞味期限を自動追跡しスマホに通知を送り食品ロスを削減 |
レシピ提案 | 登録された食材をもとに献立を提案 |
AI節電機能 | 生活パターンを学習し最適なタイミングで省エネ運転を実行 |
洗濯機
スマート洗濯機はスマホとの連携により、外出先からでも洗濯の状況確認や操作が可能なスマート家電です。スマート洗濯機に搭載されている機能の例を、以下の表にまとめました。
機能 | 内容 |
---|---|
遠隔操作 | スマホから洗濯開始や運転状態確認 |
完了通知 | 洗濯完了時にスマホに通知 |
自動投入機能 | 洗剤と柔軟剤を適量自動注入 |
消耗品の管理 | 洗剤残量不足時に自動発注・購入案内 |
AIコース提案 | 洗濯物に最適なコースを提案 |
天気連携 | 洗濯に適した日を提案 |
照明
スマート照明は従来の機能にくわえ、Wi-FiやBluetoothを介してスマホやタブレットから遠隔操作する機能を持つ家電です。スマート照明の機能の例は、以下のとおりです。
機能 | 内容 |
---|---|
調光・調色機能 | 部屋の雰囲気にあわせて明るさ・照明の色を変更 |
音楽と連動 | 音楽にあわせて光の色や明るさを変更 |
タイマー機能 | 生活リズムにあわせた自動照明制御 |
音声アシスタントと連携 | 音声命令での操作 |
人感センサー | 人の動きを検知して自動点灯・消灯 |
スマート家電のメリット・利便性
スマート家電全般に共通するメリット・利便性は、以下のとおりです。
- 外出時にも操作ができる
- 日々の家電操作の手間が省ける
- 節電につながる
スマート家電は生活の質を向上させるだけでなく、省エネや時間の節約にもつながるため大きな注目を集めています。
外出時にも操作ができる
スマート家電は外出先からでもスマホを通じて操作できるため、日常生活にさまざまなメリットをもたらします。
たとえば、「鍵の閉め忘れ」「電気・エアコンの消し忘れ」を外出先から確認し、遠隔でオン・オフすることが可能です。また、冬にスマホでエアコンを起動させておけば、帰宅後に寒い思いをしなくてすむといった使い方もあります。
ほかにも、スマート冷蔵庫を導入すれば外出中でも庫内の食材を確認できるため、無駄買いや買い忘れを防げます。食材管理が容易になるため、「食品ロスの削減」「家計の節約」「家事負担の軽減」といった効果があるのが魅力です。
日々の家電操作の手間が省ける
スマート家電を使用すると日々の家電操作の手間を大幅に削減できるため、より快適で効率的な生活の実現が可能です。
たとえば、スマートカーテンを使用すれば、朝日を検知して自動的に開けたり、就寝時間にあわせて閉めたりできます。また、スマート電球やスマートスイッチを使用すれば、「帰宅時に自動点灯」「就寝時に徐々に暗くなる」といった設定も行えます。
節電につながる
スマート家電を導入すれば、自分の生活スタイルにあわせて、手間をかけずに効果的な節電を実現できます。
具体例をあげると、スマートエアコンは室内の温度・湿度、外気温をリアルタイムで分析し、最適な冷暖房設定を自動で行います。くわえて、周囲の温度や利用者の生活パターンに基づいて自動的に電力を最適化するため経済的です。
また、スマートプラグは外出時にすべての家電製品の電源を一度にオフにできるので、消し忘れの予防が可能です。
スマート家電の注意点
スマート家電には便利な機能が多いのですが、注意点もあるため以下の表にまとめました。
ユーザーにとってどのような注意点やデメリットがあるのかを理解し、マーケティングに活かしましょう。
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スマート家電とは、インターネットに接続して、スマホやタブレットから遠隔操作できる家電製品です。外出先からのエアコン操作や洗濯終了通知の受信など便利な機能を持つことが特徴で、各家庭のライフスタイルにあわせてカスタマイズできます。
スマート家電は、「外出先から操作できること」「家電操作の手間が省けること」「節電ができ経済的であること」などが主なメリットです。一方、「セキュリティリスクがあること」「初期費用の高さ」「インターネット接続に依存すること」「操作の複雑さ」などの課題も存在します。
急成長するスマート家電市場を分析して各国の状況を把握し、新たな販売戦略やマーケティング手法の開発に取り組みましょう。
この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。