ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディアや口コミサイトなどのネット上の消費者の声を収集・分析して自社のビジネスに役立てる手法のことです。
「聞いたことはあるものの、どのように実施すればよいのかわからない」。そのような方に向けて、ソーシャルリスニングが重要視されている理由や分析手法、企業事例などを紹介します。
ソーシャルリスニングとは?
ソーシャルリスニングが重要視される理由
ソーシャルリスニングで分かる情報
ソーシャルリスニングを実施する手順
ソーシャルリスニングの分析手法
ソーシャルリスニングを成功に導くポイント
ソーシャルリスニングの事例
まとめ|ソーシャルリスニングについて解説しました
ソーシャルリスニングとは?
ソーシャルリスニング(Social Listening)とは、X(旧Twitter)やFacebook、InstagramといったSNS上での会話を収集・分析して自社のビジネスに活用する手法を指します。ブログや口コミサイト、YouTubeのコメントもソーシャルリスニングの対象に含まれます。つまり、ネット上での自社に関する情報すべてが対象です。
商品やサービスを利用したユーザーの本音が把握できるため、商品開発やブランド戦略、広告宣伝など幅広い領域で企業活動に役立てることが可能です。
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ソーシャルリスニングとアンケート調査との違い
ソーシャルリスニングは、ユーザーの声をヒアリングする点でアンケート調査と似ています。一方、以下のように様々な違いがあります。
ソーシャルリスニング | アンケート調査 | |
---|---|---|
データ元 | ソーシャルメディア、ウェブフォーラム、ブログ、SNSなど | 調査対象者からの回答 |
サンプル数 | 多い | 少ない |
メリット | リアルタイムのトレンドを把握できる | 特定の調査目的に基づいたデータを収集できる |
デメリット | 誤った情報も含まれている可能性がある | サンプル数が少ないと正しい分析ができない |
アンケート調査では質問の数や調査対象者数に限りがあるので、結果として回答の内容も限定されてしまうというのがデメリットです。また、本音を書かない回答者もいるので、正しいデータを収集できない可能性もあります。
一方、ソーシャルリスニングは、ユーザーが自由に発言したものを分析するため、率直な意見や感想を収集できます。自社が想定していなかった課題や魅力を発見できることもメリットです。
ソーシャルリスニングが重要視される理由
SNSが広く使用されるようになり、ソーシャルリスニングは重要視されるようになってきました。その背景と理由を整理していきます。
1. 口コミが購買活動に大きな影響を与えるようになったから
ソーシャルリスニングが重要視されるようになったのは、口コミを確認してから商品・サービスを購入するユーザーが増えているからです。SNSの普及によって、商品やサービスに関する評価が簡単に共有できるようになったことが大きく影響しています。
例えばパソコンを買うときにレビューを確認すれば「使いやすいのか」「不便なことはないか」を事前に知ることが可能です。基本的に、販売元の発信する広告やメッセージはネガティブなことには触れられませんが、口コミは商品・サービスの良い面だけでなく悪い面も把握できます。
口コミが購買活動に大きな影響を与えているのは、以下の表からも明らかです。
参照:SNSのクチコミが 生活者の購入・来店に与える影響を調査(アジャイルメディア・ネットワーク株式会社)
購入を検討した際に2人に1人が「たまたまSNSで見つけた」投稿に影響を受けています。友人や知人からの口コミよりも影響力が大きいのが特徴です。一方「口コミの影響は受けない」人はたったの11%です。
上記の結果からも、SNS上の口コミは重要視すべき要素であることが分かります。
▶あわせて読みたい:口コミ分析とは?分析すべき口コミの種類や分析手法を解説
2. リアルタイムで対応できるから
ソーシャルリスニングを活用すれば、時代の変化や変わりゆくトレンドにスピーディに対応することが可能です。例えば、自社の商品やサービスが高評価を得ているのであれば、プロモーションを強化することで、拡散させる可能性を高められます。また、ネガティブな内容が発信されているようであれば、すぐに対応することで炎上リスクを抑えることも可能です。
このように、SNSのリアルタイム性を自社のビジネスにも活かしていく必要性が高まっています。
ソーシャルリスニングで分かる情報
ソーシャルリスニングを活用することでどのようなことが明らかになるのか、見ていきます。
1. 消費者が持つブランドイメージ
ソーシャルリスニングを活用すれば、消費者が自社に対してどのようなブランドイメージを持っているか把握できます。SNS上ではユーザーが自由に意見や感想を発信できるため、自社または商品・サービスに対する本音を知ることが可能です。
消費者の意見に応じて、プロモーションや商品開発などを改善し、自社が理想とするブランドイメージとのギャップを埋められます。
▶あわせて読みたい:消費者インサイトとは?事例や調査方法、活用のポイントを解説
2. 業界や競合他社の動向
ソーシャルメディア上で業界全体に関する発信や話題をモニタリングすることで、市場動向が見えてきます。また、競合他社の商品やサービスに関する口コミや評判を追跡すれば、自社の課題や競争優位性を再確認できます。ソーシャルリスニングでは、リアルタイムで情報を収集・分析できるので、スピーディに自社のビジネスに反映できます。
3. プロモーションの反響
ソーシャルメディア上の投稿やコメントを分析することで、実施したプロモーションに対する反響を把握することが可能です。ポジティブな感情やネガティブな感情などがどの程度含まれているかで、プロモーションの受け入れ度合いを判断できます。消費者の反応にもとづいて、臨機応変に対応すれば、プロモーションの成功確率を高められます。
4. 風評被害や炎上リスクの早期発見
自社に関連する口コミや評判を普段から把握する仕組みを設けていれば、風評被害や炎上リスクを早期に発見することが可能です。SNSの普及によって消費者は手軽に情報を発信できるようになりました。拡散しやすいX(旧Twitter)のような媒体の場合、自社にとってネガティブな口コミがあっという間に広がってしまうおそれがあります。ソーシャルリスニングを活用していれば、被害や損害が大きくなる前に食い止めるのに有効です。
ソーシャルリスニングを実施する手順
ソーシャルリスニングを実施する手順を紹介します。
1. 目的の明確化
まずは、何のためにソーシャルリスニングを実施するのかを明確にしましょう。その際、4P(Product:商品、価格:Price、販売促進:Promotion、流通:Place)を参考にするのがおすすめです。
Product:消費者はどのような商品を求めているのか
Price:どの価格帯が好ましいか
Promotion:好印象を与えられるプロモーションは何か
Place:どこで購入してもらうか
4つのうち、どれに焦点を当てるかを考えれば、目的が定まってきます。
2. 調査するメディアの選定
次に、調査するメディアを選定をします。ポイントは以下の通りです。
- 対象メディアに欲しい情報があるか
- 情報の信頼度は高いか
- リアルタイム性はあるか
例えば、幅広い意見を収集したい場合はX(旧Twitter)がおすすめです。国内で利用されているSNSで月間アクティブユーザー数No.1を誇り、簡単なメッセージ投稿で済むのでリアルタイム性もあります。情報量が膨大なため、収集したい情報をある程度しぼっておくことがポイントです。
自社商品・サービスの購入者を対象にしたい場合は、自社の公式アカウントのあるメディアを調査対象とするとよいでしょう。
主な対象メディア一覧は以下の通りです。
- X(旧Twitter)
- TikTok
- YouTube
- LINE
- ブログ(Amebaブログなど)
- Q&Aサイト(Yahoo!知恵袋など)
- 掲示板(5ちゃんねるなど)
3. データの収集と分析
最後に、知りたい情報に関連するキーワードを選定して、情報を収集・分析します。もし、想定していた情報量を確保できない場合は調査対象メディアやキーワードを再検討するとよいでしょう。
分析する際は、SNS上の発言内容を「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」に分類して深掘りします。
無料ツールの場合、データ収集はできても分析ができないことが多いです。したがって、収集から分析までを効率的に行いたい方は有料ツールをおすすめします。
ソーシャルリスニングの分析手法
有料ツールを活用した際に実施できる分析手法は以下の通りです。
- 数値分析
- トレンド(キーワード)調査
- アカウント分析
- セグメント分析
それぞれ解説します。
1. 数値分析
選定したキーワードから抽出された投稿数やリーチ数、ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルの割合を把握します。投稿数では、広告の効果や季節的なニーズの変動などを察知することが可能です。リーチ数では、自社の投稿を何人見たかが分かります。
ポジティブやネガティブといった投稿内容からは、自社の商品やサービスに対する消費者のブランドイメージを把握できます。自社が理想とするイメージとギャップがある場合は、どのように埋めていくか改善を図ると良いです。
2. トレンド(キーワード)調査
ソーシャルリスニングの有料ツールでは、何百万もの投稿を瞬時にスキャンし、特定のキーワードがどれだけ発信されているかをリアルタイムで収集できます。これにより、最新のトレンドを把握することが可能です。リアルタイムデータにもとづいて、マーケティング戦略を立てれば、ターゲット層に対して効果的なメッセージを発信できます。
3. アカウント分析
アカウント分析では、自社SNSアカウントの投稿に反応した消費者の性別や年代、居住地などの属性を把握することが可能です。ポジティブな発言をしている属性をターゲットに絞ってプロモーションを実施すれば、効率的に成果をだしやすくなります。
どの投稿にどれだけの反応があったのかが見られるのも、アカウント分析でできることです。X(旧Twitter)のリツイート数やFacebookでのシェア数をもとに算出できます。
また、フォロワー数を多く抱えていて影響力が大きいアカウントを抽出することもできます。自社商品のインフルエンサーを見つけ出して共同で企画を行うなど、プロモーションに活かせることがメリットです。
4. セグメント分析
セグメント分析では、数値分析やアカウント分析を実施して抽出したデータを、投稿の内容によりセグメント(種類)ごとに分類します。
セグメントは、商品・サービスへの「興味関心度合い」や「購入したかどうか」などです。そして、購入した消費者と興味を持つだけにとどまった消費者が、それぞれどのような特徴を持っているかを読み取ります。課題を抽出し、施策に反映するなどして、プロモーションをブラッシュアップできます。
▶あわせて読みたい:VOC分析とは?メリットや効果を最大化する3つのポイント
ソーシャルリスニングを成功に導くポイント
ソーシャルリスニングを成功に導くには、キーワード選定が最も重要です。的確なキーワードでない場合、自社が求めるデータを収集できないからです。検索キーワードは、メインキーワードのほか、サブキーワードも設定するとよいでしょう。
例えば、商品の使いやすさについて消費者の評価を知りたい場合を考えてみます。この場合「商品名」に加えて、サブキーワードとして「使いやすさ」「便利」などを組み合わせれば、目的に叶った情報を収集できます。炎上リスクを把握したい場合、サブキーワードに「使いにくい」といったネガティブワードを設定するとよいでしょう。
その際、否定的な意見に振り回されないようにするのがポイントです。消費者の中には、ただ周りと同調するためにネガティブなことを言う人もいます。ネガティブな意見は一定量あるものなので、全体に占めるネガティブの割合を定量的に把握することが重要です。
ソーシャルリスニングの事例
ソーシャルリスニングを実際に行った企業に、どのような効果があったか見ていきましょう。
1. Google
世界的に有名なIT企業であるGoogleは、ソーシャルプログラム開発のため、顧客の動向をグローバルに把握する必要がありました。ソーシャルメディアリスニング分野では以前から対策を行っていましたが、自社のチャネルだけでなく、世界中のあらゆるチャネルから情報を追跡・分析するのが課題でした。
この課題に対処するため、Meltwaterのソーシャルリスニングツールを導入。ソーシャルメディアの情報を効率的に収集・分析し、トレンドや市場動向をグローバルに把握できるようになったのです。
2. 東急ハンズ
生活雑貨を取り扱う東急ハンズは、以前は紙媒体やテレビに依存したメディアモニタリングを行っており、オンライン上の情報収集も手作業であることが課題でした。
そこで、Meltwaterの分析ツールを導入し、リアルタイムでオンライン上の情報収集を始めます。結果、店頭の品ぞろえや顧客対応の質など現場の情報をスピーディに把握し、経営改善に役立てることができました。さらに、競合分析を通じて自社の魅力も見えるようになったのです。
3. 日本テレビ放送網株式会社(日本テレビ)
国内での民放開局第1号である日本テレビは、自社コンテンツに対する視聴者からの反響をデータとして把握するために、Meltwaterの分析ツールを導入しました。各番組のIDを、分析ツールにより自動的に取り込まれるデータと連携させることで、反響のあるハッシュタグを特定したり、各番組の配信数を把握したりできています。
データを分析することで、コンテンツの魅力アップ、広告販売事業やネット通販事業の拡大に成功しました。導入から日が浅いにもかかわらず、事業の成長に大きく寄与しています。
参考:日本テレビ放送網株式会社|Meltwater|導入事例
業界別・業種別の課題に対し、ソーシャルリスニングを用いて解決されたかを、事例をもとに解説
⇒【ウェビナー】「ソーシャルリスニング徹底解説シリーズ第一弾!」はこちらから
まとめ|ソーシャルリスニングについて解説しました
個人がSNSで意見を手軽に発信できるようになった現代。ソーシャルリスニングを実施すれば、アンケート調査と違って、リアルタイムで消費者の本音を知ることが可能です。SNSでの炎上リスクを素早く察知して事前に抑えられ、ビジネスのスムーズな運営に役立ちます。
一方、SNS上では常に何億もの情報が発信されているため、消費者の声を手作業で探すのは難しいのが現状です。効果的にソーシャルリスニングを実施するにはツールは不可欠でしょう。
Meltwaterは「ITreview Grid Award 2023 Autumn」の「ソーシャルリスニング」を含む4部門において、最高位である「Leader」を受賞しました。さらに「SNS分析」部門においては、顧客満足度の優れたサービスとして「High Performer」を受賞しました。ソーシャルリスニングを実施したい方はぜひ検討してみてください。
関連ページ:「ITreview Grid Award 2023 Fall」にて最高位「Leader」を4部門にて初受賞
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山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。