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ABMとは?導入のメリットや手順、役立つツールを解説

ABMとは?導入のメリットや手順、役立つツールを解説


宮崎桃

Apr 30, 2024

マーケティング担当者の中には、リード(見込み客)の獲得や営業効率の向上に限界を感じている方もいるのではないでしょうか。そんな方に知ってほしいのがABM(Account Based Marketing)です。

ABMとは、特定の企業をターゲットに定め、個別最適化されたマーケティング活動を展開することで、売上の拡大を目指すマーケティング手法です。

本記事では、ABMの基礎知識やメリットに加えて、実施する手順、役立つツールなどを解説します。ABMを活用し、事業成長を加速させる方法がわかるので、ぜひお役立てください。

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)とは?

ABMは、Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)の略語で、近年BtoBマーケティング手法の1つとして注目を集めています。

自社の成長に大きく貢献する可能性を秘めた特定のアカウント(企業)を見極め、集中的にリソースを投下することで、売上の拡大と収益の向上を図るのがABMです。

従来のマーケティング手法では、セグメントレベルでターゲットを設定することが一般的でした。例えば、「大企業向け」や「〇〇業界向け」といった具合です。しかし、ABMではさらに一歩踏み込んで、「A社」や「B社」といった特定の企業にフォーカスし、その企業のニーズに合ったものを長期的に提供していきます。

▶あわせて読みたい:BtoBマーケティングの基本|手順や具体的な手法、成功事例を解説

LBM(リード・ベースド・マーケティング)との違い

Differences with lead-based marketing (LBM)

LBM(Lead Based Marketing:リード・ベースド・マーケティング)とは、多くのリードを獲得し、ナーチャリング(育成)を通じて、質の高いリードを選別する手法です。不特定多数の個人が対象なため、事前に想定していなかったターゲットからの受注を獲得できる可能性が高いのが特徴です。

一方、ABMは個人ではなく企業が対象になります。初めから自社にとって高い価値を持つと判断される企業にアプローチするため、ターゲット数は限定的となりますが、集中的にリソースを投下できるので、費用対効果を高めることが可能です。

デマンドジェネレーションとの違い

デマンドジェネレーションは、リードの獲得、育成、絞り込みのプロセスを通じて、受注の可能性の高いホットリードを増やすBtoBマーケティング手法です。事前に定義したターゲットセグメントに広くアプローチし、段階的に受注確度を高めていきます。LBMとほぼ同義ですが、デマンドジェネレーションの対象は企業であることが相違点です。

ABMとの主な違いは以下の通りです。

各項目ABMデマンドジェネレーション
ターゲット特定の企業不特定多数の企業
ターゲットの企業規模主に中堅~大企業あらゆる規模に対応
目的売上の最大化ホットリードの抽出
推進する部門マーケティング部門と営業部門マーケティング部門

ABMはターゲットが限定的なため、その企業との長期的な取引が前提となります。そのため、中堅以上の体力のある企業が対象とされることが多いです。

また、デマンドジェネレーションではマーケティング部門が主導し、獲得したリードを営業部門に引き継ぐのが一般的な流れです。ABMでは初めからターゲットが明確なため、2つの部門が連携して売上最大化を目指します。

▶あわせて読みたい:リードジェネレーションとは?手法や効果測定の方法、注意点を解説

ABMが注目されている背景

コロナによって営業手法が変化したことに加えて、マーケティング技術が進歩しているといった背景により、ABMは注目を集めています。

1. コロナによる営業手法の変化

新型コロナウイルスの影響により、対面での営業活動が制限されたことが、ABMが注目されている背景の1つです。営業活動をオフラインからオンラインに切り替える企業が増え、自社に蓄積されたデータを有効活用して、顧客にアプローチするABMの手法が普及しました。

例えば、展示会でリードを獲得していた企業は、MAを導入し、ウェビナーの開催やメルマガの配信により、オンラインでのリード獲得に注力するようになりました。さらに、データ分析によって、自社にとって重要な顧客を特定し、個別にアプローチを行っています。

2. マーケティング技術の進歩

マーケティング技術の進歩により、効率的かつ低コストでABMを実施できるようになったことも大きいでしょう。

ABMの概念自体は以前から存在していましたが、以前はアカウントの特定からアプローチを行うまでに、多大な労力とコストが必要とされました。しかし、近年、MA(マーケティングの自動化ツール)やCRM(顧客管理システム)といったツールが数多く登場しています。

ツールにより、アクセス解析が容易になっただけでなく、リードごとに自動的にコンテンツを配信することもできるようになったのです。

ABMのメリット

Benefits of ABM

ABMを実施するメリットとして以下の3つが挙げられます。

  1. ROI(投資利益率)の向上
  2. スピーディなPDCAの実施
  3. 良好な顧客関係の構築

それぞれのメリットについて、詳しく解説します。

1. ROI(投資利益率)の向上

特定の企業に絞ってアプローチするため、無駄なコストを削減し、マーケティング活動のROI(投資利益率)を向上させることが可能です。

ABMではターゲットの特性に合わせて個別最適化されたアプローチを実施するため、エンゲージメントの質が向上し、成約率を高められるのです。限られたリソースを有効活用するという点で、ABMは非常に効果的な手法と言えるでしょう。

2. スピーディなPDCAの実施

スピーディにPDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:検証、Action:改善)を回せます。ABMでは、限定されたアカウントを対象とするため、施策の効果をリアルタイムで詳細に測定・分析できるからです。

また、マーケティング部門と営業部門が密に連携するため、両部門間でのフィードバックもスムーズになり、ターゲットに対して精度の高い、最適化されたアプローチを実現できます。部門間の連携により、それぞれの部門の人材不足を補えるのもメリットです。

3. 良好な顧客関係の構築

ターゲットとなる企業と良好な関係を構築できます。ABMは、顧客の課題やニーズに真摯に向き合い、個別最適化されたアプローチを行うからです。

一貫性のあるコミュニケーションは信頼関係を強固にします。長期的な視点でwin-winの関係を築くことで、安定的な企業成長につなげられます。

ABMのデメリット

ABMはあらゆる企業に有効なわけではありません。

ABMは、特定のターゲットに対してクロスセル(関連する商材の販売)やアップセル(高額商材の販売)を行い、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化することに重きを置いています。そのため、複数の商材を持たない企業や、中堅以上の企業をターゲットとしない企業には、ABMの効果は限定的になる可能性があります。ターゲット範囲が広い企業にも向いていません。

ABMを実施する際は、自社に適した手法であるかを見極めることが大切です。具体的には以下の要件を満たせるかどうかで判断するとよいでしょう。

  • クロスセルやアップセルできる商品・サービスのラインナップがある
  • ターゲットとなる企業数は多くはないが、大きな取引ができる見込みがある
  • マーケティング部門と営業部門が密に連携できる

導入前に十分な検討を行い、ABMによる効果を最大化できる体制を整えることが成功への鍵です。

ABMを実施する手順

ABMを実施する手順は以下の通りです。

Steps to implement ABM.

各手順を順番に解説します。

1. 対象となるアカウント(企業)の選定

まずは、自社にとって高い価値を生み出す可能性のあるアカウントを見極めます。その際は、自社の理想とする顧客像(ICP)を明確に定義することが重要です。

ICPを定義する際は、業種や企業規模、所在地などの基準を設けるだけでなく、過去の取引実績や競合他社との関係性なども考慮に入れましょう。ターゲットリストを作成したら、自社のソリューションとの親和性が高いものから優先順位をつけていきます。

2. キーパーソンの調査

対象となるアカウントを選定した後は、各アカウント内のキーパーソン(意思決定者や影響力のある人物)を特定し、調査します。

個別最適化されたアプローチを行うには、キーパーソンへの理解が不可欠だからです。役職名や担当部署などの基本情報に加え、関心事、過去の購買履歴なども調べます。FacebookやLinkedInなどのSNSやニュース記事などから、キーパーソンの動向を調査することが可能です。

3. キーパーソンへのアプローチ方法を検討

次に、キーパーソンに適したアプローチ方法を検討します。ABMの目的は、アカウントとの強固な関係性を構築し、エンゲージメントを高めることなので、キーパーソンの特性に合わせて、最適な方法を選択しなければなりません。

業界のトレンドやターゲットの競合となる企業の動向、ベストプラクティスなど、キーパーソンにとって価値のある情報を提供すれば、信頼関係を深められます。

4. アプローチ方法の実施

検討したアプローチ方法を実行に移します。アプローチを実施する際に重要となるのが、マーケティング部門と営業部門の密な連携です。組織として一貫性をもってターゲットとコミュニケーションを取ることで、信頼関係を強化できます。

ツールを活用して顧客データを組織で一元管理し、リアルタイムで情報を共有できる仕組みを構築しましょう。

5. 効果検証

アプローチを実施した後は、効果検証を行います。リード獲得数や商談化数、売上高などの指標を分析し、どのようなアプローチが効果的で、どの部分に改善の余地があるのかを明らかにします。

効果検証の結果をもとに、戦略をブラッシュアップさせれば、アプローチの精度を高めることが可能です。例えば、効果の高かったコンテンツやチャネルにリソースを集中させたり、アプローチの頻度やタイミングを調整したりするとよいでしょう。

ABMで役立つツール

ABMを実施する際に役立つツールを4つ紹介します。

ABMで役立つツール説明
名刺管理ツール名刺をスキャンしてデジタルデータ化するツール
MA(マーケティング自動化ツール)見込み客に対する営業活動を自動化するツール
SFA(営業支援システム)営業プロセスの効率化を支援するシステム
CRM(顧客管理システム)顧客情報を一元管理し、顧客満足度を向上させるツール

1. 名刺管理ツール

キーパーソンをはじめ、ターゲット企業に関係する人物の名刺情報をデータ化し、一元管理できます。連絡先や役職などの情報を部門間で簡単に共有できるのがメリットです。

また、名刺交換した際に話した内容や、社内でその顧客と接触を持った人などを管理することも可能で、これまでのアカウントとの関わりを可視化できます。

代表的な名刺管理ツールとして、Eight TeamSansanホットプロファイルなどが挙げられます。

2. MA(マーケティング自動化ツール)

MAは、リードの獲得、育成、選別など、デマンドジェネレーションの業務の効率化に役立つ機能がメインです。アカウントの属性情報や行動履歴にもとづいて、最適なタイミングで関連性の高いコンテンツを自動で配信できる機能もあるので、ABMでの業務効率化も図れます。

さらに、MAの分析機能を活用することで、アカウントごとのメール開封率やコンテンツの閲覧数などエンゲージメント指標が測定でき、ABM戦略を最適化できます。

代表的なツールはAccount EngagementAdobe Marketo EngageMarketing Hubなどです。

3. SFA(営業支援システム)

SFAを活用すれば、アカウントごとの営業プロセスを可視化できます。マーケティング部門と営業部門がスムーズに連携でき、一貫性のあるアプローチを実施可能です。SFAのデータ分析機能では、売上予測もできるので、リソースの配分を最適化することもできます。

Salesforce Sales CloudDynamics 365Mazrica Salesなどが代表的なツールに挙げられます。

4. CRM(顧客管理システム)

CRMを活用すれば、アカウントの基本情報だけでなく、購買履歴や問い合わせ履歴、キャンペーンへの反応などの多岐にわたる情報を一元管理することが可能です。アカウントの全体像を包括的に把握できるので、潜在的なニーズや課題も特定しやすくなります。

代表的なツールはOracle Sales CloudZoho CRMkintoneなどです。

まとめ|ABMを実施して売上の最大化を目指そう

ABMは、自社にとって高い価値を生み出す可能性のある企業を見極め、個別最適化されたアプローチを行うことで、売上の拡大を図るマーケティング手法です。ROIの向上やスピーディなPDCAサイクルの実施、良好な顧客関係の構築といったメリットがあります。

一方、ABMはすべての企業で成果を期待できるわけではないので、自社に適した手法であるかを見極めるのが重要です。実施する際は、MAやSFA、CRMなどのツールを活用しながら、マーケティング部門と営業部門が密に連携することが成功の鍵となります。ABMを実施して、売上の最大化を目指しましょう。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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