受注に繋がりそうな顧客に当たってみてはいるものの、商談設定や購買に行きつかず困っている。
もし上記のような課題を抱えている場合、リードクオリフィケーションが解決への糸口となるでしょう。
この記事ではリードクオリフィケーションの概要やメリットを踏まえつつ、実施手順やポイントを解説します。
リードジェネレーションやリードナーチャリングとの違いや、企業の取り組み事例についてもご紹介します。
リードクオリフィケーションとは?
リードクオリフィケーションを実施するメリット
リードジェネレーションやリードナーチャリングとの違い
リードクオリフィケーションの実行手順
リードクオリフィケーションを成功に導くポイント
リードクオリフィケーションの成功事例
まとめ
リードクオリフィケーションとは?
リードクオリフィケーション(Lead Qualification)とは、マーケティングにおける見込み顧客(Lead) の選定のことです。
BtoBビジネスにおいて見込み顧客が正式な顧客になるまでには、いくつかのプロセスがあります。以下の1~3をマーケティング部門、4を営業部門が担当します。
- 見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)
- 見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
- 見込み顧客の選別(リードクオリフィケーション)
- アポイント・商談
特にBtoB領域では単価の高いものを扱うということもあり、購買検討期間が長い傾向にあります。そのため、見込み顧客の購買意欲は、獲得した手法や育成経緯によって様々です。
すでに契約を検討している見込み顧客もいれば、興味を持つだけに留まっている見込み顧客もいます。
リードクオリフィケーションの役割は、受注確度の高い見込み顧客に絞って営業部門に引き継ぐことです。アポイントや商談にスムーズに繋がり、売上にも反映されるでしょう。
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リードクオリフィケーションを実施するメリット
リードクオリフィケーションを実施するメリットとしては、以下の点が挙げられます。
1. 営業活動の効率化
マーケティング部門からリードクオリフィケーションを通じて引き継いだ見込み顧客は、購買意欲が高まっているため、商談設定などにスムーズに繋げることが可能です。
仮に購買意欲が高まっていない見込み顧客を引き継いでも、結局商談を設定できず、アプローチにかけた時間が無駄になってしまいかねません。
その点、リードクオリフィケーションを実施すれば、営業部門は商談設定に繋がる可能性の高い顧客にのみ絞ってアプローチできるため、営業活動全体を効率化できるのです。
2. 見込み顧客の体験価値向上
リードクオリフィケーションは見込み顧客の体験価値を高める上でも、欠かせないプロセスとなります。
購買意欲が十分に高まっていない見込み顧客にとって、商談は価値がありません。さらに、営業のアプローチによっては自社に対して悪いイメージがついてしまうこともあります。
その点リードクオリフィケーションを実施すれば、「必要としているときに、タイミングよく商談が来た」という良質な体験になります。自らサービスを探す手間も省け、見込み顧客にとって商談は有意義な時間となるでしょう。
3.営業部門との関係の良化
社内のマーケティング部門がリードクオリフィケーションに取り組むことで、営業部門からの信頼が高まり、良好な関係を構築できます。
受注確度にばらつきのある見込み顧客を引き継いでしまうと、営業部門からすればアプローチしても無駄に終わってしまうケースも生じるため、マーケティング部門への不信感が募ります。
しかし、マーケティング部門が確度の高い見込み顧客に絞って引き継ぐことで、営業部門の負担を軽減できます。部門間の良好な関係は、仕事へのモチベーション向上にも繋がるでしょう。
リードジェネレーションやリードナーチャリングとの違い
リードクオリフィケーションと関連する概念として、リードジェネーレーションとリードナーチャリングがあります。それぞれの概要を確認し、その違いを押さえておきましょう。
リードジェネレーションとは
リードジェネレーションとは、マーケティングにおける見込み顧客を獲得することです。
ターゲット像を設定したうえで、Web広告やSNS運用などによって自社の製品・サービスを宣伝し、新たな顧客を開拓します。
リードジェネレーションに活用する手法は多岐にわたり、手法によって獲得した顧客の購買意欲やニーズの状態は異なります。
リードナーチャリングとは
リードナーチャリングとは、マーケティングにおける顧客育成を指し、リードクオリフィケーションの前段階で行われる取り組みです。
状態やニーズの異なる見込み顧客に合わせて、適切なアプローチを実施することで、購買意欲の向上を目指します。
具体的にはホワイトペーパーやリターゲティング広告、インサイドセールスといった手法を使います。
購買意欲が高まるまでの時間は見込み顧客によって異なります。
そこで、次の段階として営業部門へ引き継ぐタイミングを見極めるリードクオリフィケーションを実施するのです。
リードクオリフィケーションの実行手順
リードクオリフィケーションは大きく以下のステップを踏んで取り組みます。
1. セグメンテーションの実施
まずはリードクオリフィケーションの対象を整理するために、見込み顧客をいくつかのセグメント(特定条件によって作られたグループ)に分けましょう。
BtoB領域の場合、企業の業種や規模、エリアなどを基準にします。
2. カスタマージャーニーマップを整理する
次に、セグメントごとにカスタマージャーニーマップを整理します。
カスタマージャーニーマップとは、見込み顧客が自社製品・サービスを認知するところから、実際の購買に至るまでの流れを予想し、整理した資料です。
各購買プロセスにおける顧客の悩みやニーズなどをまとめ、次の段階であるシナリオの設計でアプローチの方法を考えます。
3. シナリオの設計
続いてカスタマージャーニーマップを基にシナリオの設計を行います。
シナリオとは、認知から購買に至るまでに実施する施策のことです。
たとえば以下のように、段階ごとに施策を変えていきます。
- 記事コンテンツの掲載によるメルマガ登録の促進
- メルマガの配信
- メルマガによるセミナー案内の実施
- セミナー参加者に無料相談会を実施
- 相談会でトライアルやクーポンを案内
「購買までどういったルートを辿ると効果的に購買意欲を促進できるか」を意識しながら、シナリオを構築しましょう。
4. スコアリングの設計
シナリオ設計のあとはスコアリングの設計を実施します。
設計したシナリオをベースに、見込み顧客が取る行動や属性に対してスコアを付与していきましょう。
スコアリングに用いられる主な項目としては以下のようなものが挙げられます。
行動スコア | 属性スコア |
---|---|
・Webサイトへの訪問回数 ・重要なページの閲覧数 (製品・サービスの紹介ページや問い合わせページなど) ・資料請求やダウンロード ・メールマガジンのURLクリック ・セミナーへの予約や参加 | ・企業の資本金や規模 ・従業員数 ・拠点数 ・担当者の役職 ・担当者の決裁権の有無 |
購買への影響度などを考慮しながら、それぞれのスコアにどの程度点数を付与するのかを検討します。
過去のマーケティング活動の成果や営業部門の意見を取り入れつつ設計することで、より精度の高いスコアリングを実現できるでしょう。
5. スコアリングの実施と営業部門への引き継ぎ
次に実際のマーケティング活動を通して、スコアリングを実施します。
見込み顧客がスコアを付与した行動を取るたびに加点していきます。MA(マーケティングオートメーション)ツールで計算することも可能です。
一定のスコアに達したら、その見込み顧客を営業部門へと引き継ぎましょう。
営業部門へと引き継ぐ基準点は、あらかじめ営業部門の担当者と協議しておく必要があります。
6. シナリオのチューニング
スコアリングの実施とともに、適宜シナリオのチューニング(調整)も行わなければなりません。
実際にマーケティング活動に取り組んでいると、想定していたシナリオでは上手く購買意欲が高まらないケースも生じてくるため、改善が必要です。
シナリオの効果検証と改善を継続的に実施することで、リードクオリフィケーションの精度を高めていくことができるでしょう。
リードクオリフィケーションを成功に導くポイント
ここでリードクオリフィケーションを成功に導くポイントをご紹介します。
1. 部門間の連携を円滑にする
リードクオリフィケーションは、マーケティング部門から営業部門へと見込み顧客を引き継ぐためのプロセスであるため、いかに連携できるかに成否が左右されます。
たとえばシナリオ設計において営業部門から意見をもらったり、営業に引き継いだ後もアプローチ状況を共有したりするなど、日頃から密にコミュニケーションをとりましょう。情報共有には、MAツールが便利です。
風通しの良い関係を構築しておくことで、リードクオリフィケーションの質を高めていくことができます。
2. スコアだけに囚われない
スコアリングの合計点数だけに囚われると、リードクオリフィケーションの精度が下がる可能性があります。
合計点に達していても、企業情報を集めていただけで自社製品に対する購買意欲があるわけではないかもしれません。また、他サイトを閲覧して自社製品に興味を持つなど、外部の影響も考えられます。
そのため合計点数に加えて、「特定のアクションや組み合わせがあった場合、合計点が基準に達していなくても引き継ぐ」といったルールを加えることがポイントです。「キラーコンテンツにアクセスされたら営業にかける」というルールが作られた事例もあります。
3. MAツールを導入する
リードクオリフィケーションを高精度で行うには、MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入が欠かせません。
MAツールでできることは、主に以下の通りです。
- 見込み顧客に関する情報の管理
- スコアリング機能セグメントやシナリオに沿ったメールの自動配信
- 広告やコンテンツの効果測定
リードクオリフィケーションの成功事例
最後にリードクオリフィケーションの成功事例をご紹介します。
1. 近畿日本ツーリスト株式会社
一つ目の事例は、旅行の企画販売などのサービスを提供する近畿日本ツーリスト株式会社です。
同社では約1000人の法人営業担当者が、直接訪問などによる顧客アプローチを行っていましたが、見込み顧客の状況把握や確度の高い案件の選定を上手くできていないという問題を抱えていました。
そこでMAツールを導入し、顧客の関心度や購買意欲を的確に把握するとともに、スコアリング機能も活用することで、営業担当者が優先して対応すべき案件が分かりやすくなったのです。
その結果、より付加価値の高い営業活動を実施でき、顧客との関係構築や満足度の向上を実現しています。
参考:近畿日本ツーリスト、法人営業にマーケティングオートメーションを採用 - ITmedia エンタープライズ
2. SATORI株式会社
次にご紹介するのは、MAツールを提供するSATORI株式会社の事例です。
通常のスコアリングは複数の属性や行動を組み合わせて設計されますが、同社では「キラーコンテンツの閲覧=100万点=今すぐ客」というシンプルな設計をしました。
具体的には、これまでに商談化率の高かった「他社との比較」コンテンツをキラーコンテンツとして設け、アクセスされたら購買意欲の高い「今すぐ客」としています。
行動や属性による合計点ではなく、重要な顧客行動のみを拾ったシンプルな仕組みを作り上げたことで、運用の継続しやすさも担保した好事例と言えるでしょう。
参考:リードスコアリング失敗事例・成功事例~マーケティングオートメーションを成功させる「今すぐ客」のあぶり出し方~ - マーケティングオートメーションツール SATORI
まとめ
今回はリードクオリフィケーションをテーマに、概要やメリット、取り組みの手順などをまとめて解説しました。
獲得した見込み顧客をそのまま営業部門へ引き継いでしまうと、営業部門の負荷が高まる上、顧客の体験価値も下げてしまいかねません。
そのためマーケティング部門は見込み顧客の獲得や育成だけでなく、購買意欲の高まった見込み顧客を適切に選び出し、営業部門へと引き継ぐことが求められるのです。
ぜひこの記事を参考にリードクオリフィケーションに取り組んでください。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム