自社の取り組みや商品、サービスを知ってもらうためには、企業PRが欠かせないと考えている方も多いのでしょう。同時に「プロモーションとの違いがわからない」「企業PRのやり方がわからない」方もいるのではないでしょうか。
本記事では、企業PRの概要やメリット、成果を上げるために知っておきたい5つのポイントを解説します。
企業PRとは?
企業PRとは、自社の理念や取り組み、価値などを社会の人々との双方向コミュニケーションを通じて伝えていくことを指します。PRと聞くと広告や宣伝、広報などと捉えられがちですが、本来は「Public Relations:パブリック リレーションズ」のことで、日本語では公衆との関係を意味します。
企業PRの目的は、社会の人々との信頼関係を構築して深めていくことです。そのためには、発信活動だけでなく、消費者や取引先などからの意見に耳を傾けて事業に反映することも欠かせない取り組みです。
プレスリリースや広告で企業の情報を発信したり、SNSやイベントなどで交流をはかったりする方法があります。
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企業PRとプロモーションや商品PRとの違い
企業PRと混同されやすい言葉にプロモーションや商品PRがあります。企業PRとの違いについて解説します。
プロモーションとの違い
プロモーション(Promotion)とは、費用をかけて商品やサービスを宣伝する販売促進のことです。PRが双方向のコミュニケーションであるのに対して、プロモーションは一方向の発信である点が大きな違いです。
両者はよく間違われやすいので、PRについて議論する際は認識のずれがないか確認しておく必要があります。
商品PRとの違い
商品PRとは、商品について消費者と双方的なコミュニケーションをとることを指し、商品やサービスを消費者に一方的に売り込むことではありません。社会的な情勢も考慮しながら消費者の意見を聞くことで、商品を改善したり商品へのロイヤリティを高めたりできます。
企業PRは企業の魅力を知ってもらうのが目的なのに対して、商品PRの目的は商品の魅力を知ってもらうことです。商品PRは、企業PRの一部といえます。
企業PRにおけるステークホルダー
企業PRの目的は社会の人々との信頼関係構築・維持です。そして、ここでいう社会の人々とはステークホルダー(利害関係者)のことを指します。企業には主に以下のようなステークホルダーが存在します。
- メディア
- 消費者 (顧客)
- 取引先
- 株主
- 従業員
- 金融機関
- 行政機関
- 地域住民
いずれも重要なステークホルダーですが、顧客が企業であるBtoB企業では、特に取引先や金融機関、行政機関に向けたPRが重要です。一方、顧客が消費者であるBtoC企業では、消費者や地域住民を対象としたPRが大事といえます。会社の外だけでなく、中の従業員がステークホルダーに含まれていることも、忘れてはならない点です。
企業PRのメリット
企業PRの主なメリットは以下の3つです。
- 自社の魅力を知ってもらえる
- 知名度が上がる
- ブランド力が向上する
それぞれ詳しく解説します。
1. 自社の魅力を知ってもらえる
ステークホルダーの意見を反映しながら関係性を深めることにより、自社の魅力や価値を知ってもらうことが可能です。魅力を知ってもらうと、マーケティングにも好影響をもたらし、競争優位性につながります。
これは、2022年に株式会社電通PRコンサルティングが実施した「第7回魅力度ブランディング調査」でも明らかです。調査では、生活者が企業に対してもっとも魅力を感じるのは「ビジョンを掲げ、業界を牽引している」ことだとわかっています。
さらに、魅力を感じた後、アクションを起こした割合は73.1%にも上ります。もっとも多かったアクションは「商品の購入やサービスの利用」です。企業PRは売上アップにもつながるのです。
企業の魅力を感じたあとのアクション(複数回答)
参照:企業広報戦略研究所(株式会社電通PRコンサルティング内)「第7回魅力度ブランディング調査」(2022年2月発表)
2. 知名度が上がる
企業PRを行うことで、ステークホルダーとの接触回数が増えるため、知名度を高められます。知名度のある企業は様々なメリットを享受できます。例えば、売上の向上です。
実際に、名前と内容が知られている商品ほど、消費者の購入意向も上がるというデータがあります(J-MONITOR)。企業PRをすれば、企業名や商品名だけでなくその内容も理解されていくため、商品の売上につながるでしょう。
人事採用でも同様のことがいえます。実際、就職人気ランキングの上位にランクインする企業は知名度のある企業が多いです。
3. ブランド力が向上する
企業PRを行うことで、ステークホルダーとの関係が強化され、自社へのロイヤリティを高められます。いわゆる「ファン」を増やし、すでに知名度がある企業もブランド力を高められるのです。ブランド力があると、価格競争に巻き込まれるリスクも低減でき、結果的に売上アップも期待できるでしょう。
ただし、ブランド力があるほど悪い情報も広まりやすくなり、1つの間違いで積み上げてきた信頼関係が一瞬で崩れてしまうこともあります。慎重かつ戦略的にPR手法を検討する必要があるでしょう。
オンラインによる企業PRの手法
オンラインによる企業PRには以下のような手法があります。
First column Heading | Second column Heading |
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企業PRの手法 | 内容 |
プレスリリース | 企業の公式文書をメディアに配信 |
動画 | 会社紹介PR動画を自社サイトなどで公開 |
動画 | 会社紹介PR動画を自社サイトなどで公開 |
SNS | InstagramやFacebook、Twitterなどで情報を発信 |
Web広告 | リスティング広告やディスプレイ広告など |
それぞれ詳しく解説します。
プレスリリース
プレスリリースとは、自社の取り組みや人事などの情報をまとめた企業の公式文書のことです。第三者であるメディアを通して発信されるため、情報の信頼性が高いのが特徴です。企業がステークホルダーへメッセージを伝えるための基本的な手段として用いられます。
プレスリリースの配信方法は、企業の公式ホームページやSNSの公式アカウントにリンクをつけたり、ニュースサイトへ転載したりするやり方が主流です。ほかにも、配信代行サービスを活用してプレスリリースを配信するケースも増えつつあります。
広告ではないため、掲載や内容の決定権はあくまでメディア側にあることが注意点です。
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プレスリリースとは?書き方や成功に導くポイントを解説
動画
動画投稿サイトの普及により、企業PRでも動画は広く活用されるようになりました。文字や画像に比べて視覚的にも聴覚的にも情報量が豊富で、短時間で魅力を伝えられます。感覚的なアプローチができるので、見た人の記憶に残りやすいでしょう。
無料の動画編集ツールを利用することで、撮影や制作のコストを最小限に抑えられる点もメリットです。
SNS
SNSは、企業とステークホルダーとの間でコミュニケーションを円滑に行うプラットフォームとして欠かせない存在です。無料で手軽に発信できることから、さまざまな企業が独自の戦略を立ててSNSを活用しています。
SNSで企業PRを行うことで、認知度を高めたりステークホルダーの意見を聞いたりできます。特に、話題性のある投稿は、他のSNSユーザーやメディアに取り上げられさらなる露出が見込めるでしょう。効果が非常に大きいので「どうすれば情報が拡散されるのか」を考えて発信することも重要です。
Web広告
Web広告の目的は販売促進だけではなく、企業PRにも効果的に活用されています。取り組みや価値を伝える広告を出稿することで、ステークホルダーにメッセージを伝えることが可能です。
Web広告には1クリック単位で料金が発生する広告や、ページビュー数に応じて課金される広告などがあります。
リスティング広告やディスプレイ広告は1クリック10円程度から、ネイティブ広告(Webメディアの記事に溶け込むような形で表示されている広告)は1クリック20円程度から利用できるものもあります。自社のニーズや予算に合わせて選んでみましょう。
オフラインの企業PR手法
オフラインによる企業PRには以下のような手法があります。
企業PRの手法 | 内容 |
---|---|
パンフレット | 企業の理念や沿革、事業内容などを記載 |
ポスター | 理念やキャッチコピーを記載 |
新聞 | 新聞広告や折り込みチラシ |
新聞 | 新聞広告や折り込みチラシ |
イベント | イベントに出展 |
それぞれ詳しく解説します。
パンフレット
パンフレットには以下の項目を記載するのが一般的です。
- 企業理念
- 沿革
- 代表者のあいさつ
- 事業内容
- 組織図
- 商品・サービス
会社のことをよく知ってもらい、理念に共感してもらうためにも欠かせないPR手法の1つです。渡した相手の手元に残るので、リマインド効果があります。
ポスター
ポスターは社内に掲示することで、ステークホルダーである従業員へメッセージを伝える際に役立ちます。日々、自然と視覚に入ることから、従業員に会社のミッションやビジョンを浸透させる効果があるのです。
もちろん、社外でも活用でき、目を引くキャッチコピーをとともに掲示すれば、認知度アップにつながります。
新聞
新聞広告や折り込みチラシを利用して消費者にメッセージを伝えられます。紙面の大きさを活かしたアプローチができ、Web広告よりも文による説明書きがしやすいです。
企業PRの前提は双方向コミュニケーションのため、商品やサービスの販売促進ではなく、企業の理念や取り組みを伝えられる内容で作成する必要があります。
イベント
イベントは、ステークホルダーと直接コミュニケーションをとれるPR手法です。企業自らイベントを開催する方法もあれば、ブースに出展する方法もあります。
イベント内容はホームページで公開したり、SNSで発信したりすることも可能です。オンラインでのPRにも使えるので、効率よく企業PRが行える点も大きな特徴です。
企業PRで成果をあげる5つのポイント
企業PRには様々な手法がありますが、成果を上げるためには以下の5つのポイントを押さえて実施する必要があります。
- 目的を定める
- ターゲットを明確にする
- KPIの設定を行う
- PR計画を作成する
- 効果測定を行う
それぞれ詳しく解説します。
1. 目的を定める
まずは企業PRを行う目的を定めましょう。企業によって異なりますが、以下が一般的な企業PRの目的です。
- 企業の知名度を高めるため
- 商品やサービスの認知度を高めるため
- ブランド価値を高めるため
- イメージを向上させるため
目的を定めないままやみくもにPRを行ってしまうと、内容に一貫性がなくなり、ステークホルダーとの信頼関係構築が難しくなります。目的を定める際は、企業の理念や事業の目的とPRを連動させることで一貫性のあるメッセージを発信するように心がけましょう。
2. ターゲットを明確にする
次は、誰に向けてPRを行うのかを明確にしましょう。年齢層や性別、職業などの観点からターゲットを明確にすることが重要です。ターゲットを明確にせずに、幅広い層に向けてPRを行ってしまうと、どの層にも浅くしか届かない可能性があります。
ターゲットを明確にするポイントは、目的から考えることです。
例えば、目的が自社商品の認知度を高めることだとします。商品を知らない層に向けてPRを行う必要があるので、過去の購買履歴を参照し、アプローチできていない層をターゲットに設定します。目的によって、ターゲットは異なるということを覚えておきましょう。
3. KPIの設定を行う
実施したPRの効果を検証するためには、目標の達成度を表すKPI(主要業績評価指標)の設定が欠かせません。以下のような観点で数値を使ってKPIを設定するとよいでしょう。
- メディアに掲載された数
- SNSのいいね数や拡散された数
- 広告換算値(掲載された記事を広告費に換算した場合の値)
KPIを設定することで、達成度が客観的に判断できるようになります。
4. PR計画を作成する
目的とターゲット、KPI設定を行った後は、PR計画を作成します。計画を立てる際は以下の項目を押さえておきましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
PRのプログラム | PRの内容(コンテンツ)を決める |
PR手法 | どのPR手法を用いるのかを決める |
日時や期間 | PRを実施する日時や期間を決める/td> |
PRの予算 | PRに投じる予算を決める |
役割分担 | PR業務を洗い出し役割を分担する |
会議の日程 | 定期的な会議をスケジューリングする |
PR計画を作成することで、やるべきアクションが明確になります。スムーズに進めるためにも欠かせない取り組みです。
5. 効果測定を行う
計画に沿ってPRを行ったら、あらかじめ設定していたKPIをもとに効果を測定します。重要なのはPDCAを回すことです。計画を立てて(Plan)実行に移したら(Do)、課題を洗い出して(Check)、改善策を立て(Action)、またPRを実施するといったサイクルを繰り返すことで、成果を出せる企業PRの型を作り上げていけるでしょう。
企業PRで成果を出した事例
実際に、企業PRで成果を出した事例を紹介します。
ホクト株式会社
きのこは鍋の季節である冬に需要が高まる商品ですが、ホクト株式会社は季節に関係なく日常的に食べてもらいたいという想いをもっていました。
そこで「菌」という字は訓読みで「きのこ」と読むことなどを関連づけて「毎日、菌(きのこ)を食べる生活=菌活」を打ち出し、プロモーションを行ったのです。
テレビや新聞、雑誌などで取り上げられ、キャンペーン後の調査によると、約40%が菌活を認知、興味をもった人は全体の約85%にも上りました。菌活の認知度を高めることに成功したのです。
株式会社埼玉西武ライオンズ
2019年当時、球団設立から70年を迎えた埼玉西武ライオンズは社会的意義のある取り組みができないか模索していました。
そこで、絶滅の危機が迫っている野生の「ライオン」に焦点を当て「SAVE LIONS〜消えゆく野生のライオンを救うプロジェクト〜」を立ち上げたのです。
結果、多くのメディアで取り上げられ、国内外の企業から賛同を集めることに成功しました。ライオンを保全する意識を醸成するだけでなく、球場への来場意向や球団への好意度も高められたのです。
参照:SAVE LINONS
まとめ|企業PRに注力して積極的に魅力を伝えていこう
企業PRのメリットや成果を上げるためのポイント、事例などを紹介しました。企業PRは一方向のプロモーションと違い、双方向のコミュニケーションが求められます。商品やサービスの販売促進ではなく、ステークホルダーと信頼関係を構築することが目的なのです。このことを押さえた上で、企業PRに注力して自社の魅力や価値を積極的に伝えていきましょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム