情報が多様化する現代において、得たい情報を集約して配信してくれるキュレーションメディアの価値は高いと言えます。正しい運用ができていれば多くのアクセスを獲得できるため、自社における事業目標達成の一助にもなるでしょう。
しかし、キュレーションメディアは他のWebサイトと異なる性質もあるため、理解しておかなければならないポイントも多くあります。
この記事では、キュレーションメディアの制作を検討している企業のWeb担当者さま向けに、キュレーションメディアの運用で生じやすい問題点や、成果を出すための作り方について解説します。
目次
キュレーションメディアとは
「キュレーション」という言葉の意味は、美術館や博物館にいる学芸員を意味するcurator(キュレーター)から来ています。キュレーターが多様な展示品を観やすく展示するように、Webサイトにおけるキュレーションメディアとは、情報を収集・整理して配信するメディアサイトのことを指します。
オウンドメディアのように自社のオリジナル情報のみ発信するサイトとは違い、一般的には、インターネット上のコンテンツを収集・再編集して配信します。
キュレーションメディアの役割
キュレーションメディアの役割は、ユーザーが興味のある情報を効率的に提供することです。
検索エンジンやSNSなど、情報収集の手段が多い現代では、情報が雑多に入ってきやすいという一面もあります。欲しい情報だけをピンポイントで収集することに対して、面倒に感じてしまう方も多いでしょう。
そんな中、情報がまとまっているキュレーションメディアは、特定のテーマに興味を持っているユーザーの情報収集を助けることができます。
キュレーションメディアの問題点
キュレーションメディアは現代において便利とされる一方で、いくつかの問題点を抱えています。中でも下記の2項目は重大で、この点を解決できないまま運営すると大きなトラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。
情報の正確性
キュレーションメディアは、インターネット上にある外部のコンテンツを収集・配信するという特性上、情報の正確性を担保することに課題が生じやすいです。
過去には株式会社ディー・エヌ・エーの運営していた医療キュレーションメディア「Welq」にて、不正確な情報の記事が多数掲載されていたことにより、大きな社会問題になったこともありました。
そのため、運営するキュレーションメディアでは、取り扱うテーマの有識者に、情報の正確性・妥当性を検証するファクトチェックの依頼が必要となる場合もあります。
著作権の侵害
インターネット上に掲載するコンテンツには著作権があります。そのため、インターネット上から収集した情報を、自社のものとして掲載することは著作権の侵害にあたる行為となります。
テキストや画像をコピペする場合はもちろん、メディア内のコンテンツに外部サイトの情報を使用する場合、出典元を明記したうえで「引用」であることがわかる形で配信することが必要です。
また、人物やキャラクターなどの場合は肖像権もありますので、使用する場合には事前許可の取得や使用料の支払いなど、手続きが必要な場合もありますのであわせて注意しましょう。
キュレーションメディアの収益化
キュレーションメディアの収益化には、おおまかに以下4パターンあります。
- 広告モデル
- 仲介モデル
- ECモデル
- 課金モデル
「広告モデル」はキュレーションメディア内に広告を掲載する方法で、クリック数に応じて収益を得るGoogleのAdSense広告や、他社企業から依頼を請けて固定費用で広告を掲載するケースもあります。
「仲介モデル」とは、サービスを宣伝したい企業の広告をキュレーションメディア内に掲載し、クリックしたユーザーがその先で成約した場合に、請負企業から手数料を得るモデルです。
「ECモデル」はキュレーションメディア内で自社の商品を販売して収入を得るモデルで、「課金モデル」は自社の提供する有料サービスに登録をしてもらうモデルです。
キュレーションの手法
キュレーションメディアを制作・運営する上で、他のWebサイト制作にはない「情報をキュレーションする」という工程があります。
ここでは、キュレーションメディアの記事を作る上でどのように情報をキュレーションするのか、その手法についていくつかのパターンを紹介します。
人が手動でキュレーションする
まず一つ目は、キュレーションメディア運営の担当者や監修する専門家が、人力でキュレーションする方法です。
インターネット上の情報を目視で探し、担当者の判断で観やすくコンテンツを配信することで、ユーザー目線のキュレーションメディアを作れます。
メリットはユーザーの共感を受けやすい点にあります。また、サイトが小規模の場合は、人の手によるキュレーションのほうが管理しやすいでしょう。
デメリットは、キュレーション専用人員の用意が必要なことです。サイト規模にもよりますが、キュレーションメディアの運営維持のために人的なコストや手間がかかることは理解しておく必要があります。
アルゴリズムでキュレーションする
ユーザーのサイト内行動や、回答してもらったアンケートなどを用いて、分析データを元にアルゴリズムでキュレーションする手法もあります。
AIに学習させることで、利用者に合わせた情報を適切に表示させることもでき、人が対応するよりも高い精度でユーザーの利便性向上を実現できます。
その場合、アルゴリズムをどのように導入すべきかの調査や、開発が必要な場合は別途費用がかかる点はデメリットとなります。ある程度大きい規模で運営するキュレーションメディアなら導入を視野に入れるという形になるでしょう。
ユーザーが投稿する
ユーザーが投稿する手法とは、専門のクリエイターやライターではなく、一般のユーザーが作成した情報(記事やSNS投稿など)をキュレーションメディアに掲載する手法です。
キュレーションする情報を手軽に入手できることや、コンテンツが豊富にあることはメリットですが、1件ずつの情報精度にはバラツキが生じます。
そのため、キュレーションメディアのテーマにもよりますが、コンテンツを監修できる専門家のファクトチェックが必要となるなど、配信前の管理は重要となります。
キュレーションメディアの種類
キュレーションメディアは、多様な情報を取り扱う「総合型」のサイトと、特定のテーマに絞って配信する「特化型」の2種類があります。
ここではそれぞれの特徴を掴みやすいように、国内の代表的なキュレーションメディアを紹介します。
総合型キュレーションメディア
総合型キュレーションメディアは、テーマを絞らずにさまざまなジャンルのコンテンツを取り扱うメディアです。
投稿するコンテンツの数が膨大になるため、継続的な配信や品質管理は大変になりますが、ターゲット層も絞られないため、幅広いユーザー層からのアクセスを狙えます。
「グノシー」や「Smartnews」といった、テーマが多様化するニュース配信メディアや、「Antenna」のようなエンタメやライフスタイル全般を扱うキュレーションメディアが該当します。
グノシー
グノシーは、株式会社Gunosyが運営するキュレーションメディアです。
ニュース配信がメインではありますが、エンタメジャンルのコンテンツも多いことが特徴です。ランキング形式で情報を表示したり、飲食店のクーポンを配布したりと、ユーザーに寄り添った形式が人気となっています。
アルゴリズムを用いることで、ユーザー毎に配信ニュースを調整する仕組みとなっており、情報収集効率も高い設計になっています。
利用者は男性60%、女性40%程度の割合で、ともに20〜30代がメインです。
Smartnews
SmartNewsは、スマートニュース株式会社が運営するニュース配信型のキュレーションメディアです。
取り扱うニュースのジャンルは幅広く、表示させるジャンルをユーザーが自由に設定できる機能や、高速な読み込み速度・軽快なUIなど、使いやすさに定評があります。
電波を受信していないオフライン状態でも閲覧可能なことが特徴で、アプリの世界ダウンロード数は4,000万件を超えている人気メディアです。
ユーザー層は20代〜50代と幅広く、多くの社会人に利用されています。
Antenna
Antennaは、株式会社グライダーアソシエイツが運営する総合型キュレーションメディアです。エンタメやカルチャー、ライフスタイルなど、暮らしが楽しくなるコンテンツを豊富に取り扱っています。
トップページから別ページに遷移せずとも、すべての記事ページへ飛べるように、読み込み無しで下方向にスクロールし続けながらコンテンツを探せる機能と構成が特徴です。
また、保存した情報を他ユーザーと共有できるクリップ機能があるため、情報収集もはかどります。
利用者層は若干女性が多いものの男女ほぼ半々で、20〜40代を中心に利用されています。
特化型キュレーションメディア
特化型キュレーションメディアでは、特定のテーマを取り扱います。
美容・旅行・食など、コンテンツのジャンルを絞って配信することで、訪問してくるターゲットが明確になります。そのため、総合型キュレーションメディアと比べるとユーザーニーズにより深く刺さるサイトが構築できます。
取り扱うジャンル内で網羅的にコンテンツを展開する必要があるため、ライターやクリエイターは一定以上の知見を持った方で対応することも多く、コンテンツの専門性を担保するにはファクトチェックを担当する監修者も別で必要となる場合が多いです。
MERY
MERYは、ファッション・美容・恋愛など、女性の関心が強いテーマに特化したキュレーションメディアで、株式会社MERYが運営しています。
記事内には多くの画像が使われており、InstagramなどのSNSを使い慣れているユーザーにも馴染みやすい構成が印象的です。
「自分らしく未来をアップデートしたい20代女の子」をターゲットとしており、ユーザーの約65%が20代で、約47%が会社員です。また、全体的に見ても中高生や大学生、若い社会人のいわゆるZ世代がユーザーの82%を占めています。
RETRIP
RETRIPは、株式会社trippieceが運営するキュレーションメディアで、旅行やおでかけ情報の配信に特化しています。
月間2,000万人以上が利用している人気メディアで、国内のみならず海外の情報もまとめられており、グルメスポットや施設名などのタグ検索も可能です。また、ユーザー投稿型のため、メディア内では誰でも発信可能なことが特徴です。
利用者は旅行、おでかけ好きなアクティブ層の20代〜40代が8割程度となっています。
macaroni
macaroniは株式会社トラストリッジの運営するグルメ系キュレーションメディアです。
お店の紹介や食材に関する知識、ダイエットのお役立ち情報など、食に関する情報を幅広く取り扱っています。また、自社のオリジナルコンテンツとして、InstagramやYouTubeなどビジュアルで見せる媒体と連動させて、料理のレシピなども公開していることが特徴です。
利用者層としては、料理好きや食事好きな女性がメインとなっています。
キュレーションメディアの作り方
成果の出るキュレーションメディアを作るには、綿密な計画立てが必要です。
事前準備の不足は失敗につながるため、あらかじめ押さえておきたいポイントや、キュレーションメディア作成において重要な工程についてそれぞれ解説します。
コンセプトを定める
はじめに、キュレーションメディアで扱う内容について決める必要があります。
PVなどのアクセス指標や、自社商品の成約など、設定するKPIは運営者の方針によっても変わりますが、キュレーションメディアで実現したいことをベースにコンセプトを決めます。
- 取り扱うテーマ
- メディアのタイプ(総合型 or 特化型)
- ターゲット層
- メディアのプラットフォーム(Webアプリもリリースするかなど)
- コンテンツの配信手法
上記内容を決めるためには、自社のデータを活用することはもちろん、競合となるWebサイト・メディアの調査も行うことも重要です。競合メディアのモニタリングは、Meltwaterのツールで行えます。
Webサイトだけでなく紙媒体やポッドキャストなど、さまざまなチャンネルからモニタリング&分析できるオールインワンツールです。
メディアを立ち上げる
コンセプトが決まったらメディアを立ち上げます。キュレーションメディアは継続的なコンテンツの作成や投稿が必要となるため、技術的な知識がない方でも更新できるシステムが必要です。
Webアプリをリリースする場合はエンジニアによる開発が必要となるため、別途外注計画などを立てる必要はありますが、Webサイトのみであれば比較的立ち上げやすく、その場合はCMSを導入することが一般的です。
CMSとは、マークアップ言語やプログラミング言語を使えない方でも、専用の管理画面からWebサイトの構築・更新ができる組み込みシステムで、有名なものだとWordPressがあります。
Webサイトであれば、ドメインの取得やサーバーを契約し、CMSを導入すれば早期にメディアを立ち上げられます。
キュレーター・ライターを集める
キュレーションメディアを継続的に運営するには、配信する情報をキュレーションするキュレーターと、独自のコンテンツを作成する場合はライターが必要です。
人員体制の構築には、自社で完結させるケースと外部へ委託するケースがあります。外部の協力を仰ぐ場合、自社のWebサイトやSNSで求人を出したり、クラウドソーシングなどを活用したりと、方法はさまざまです。
予算によって変わる部分ではありますが、重要なことは良質なコンテンツを配信し続けられる体制かどうかです。上で挙げた担当以外にも、メディアの成果を分析し、コンテンツ方針を決めていくプロデューサーや、公開スケジュールの管理や品質チェックを行うディレクターなども決めておくとよいでしょう。
メディアを運営する
メディアを立ち上げて体制も構築できたら、運用を開始していきます。
継続的にコンテンツを配信し続けることはもちろんですが、設定したKPIが達成されているか、メディアの目的に沿った運用ができているかなど、数値分析して改善していくことも重要です。
- 検索結果で上位表示できているか
- クリック率は低くないか
- サイト内コンテンツの回遊率は低くないか
上記項目は一例ですが、メディア運用で目指す数値の進捗が悪い場合は、SEOやSNSなどのマーケティング戦略からテコ入れしていく必要があります。
キュレーションメディアについてまとめ
キュレーションメディアは、ユーザーの情報収集を助ける有意義なメディアである必要があります。継続的に良質なコンテンツを提供し続けて、ユーザーをファン化させられるように意識して運営していきましょう。
自社メディアの分析を行うことはもちろんですが、競合のWebサイト・メディアの調査を行うことで、有益なヒントを得られることもあります。
効率的に調査を進めたい方は、さまざまなチャンネルをオールインワンで分析できるMeltwaterのツールを活用してみてください。