インフルエンサーマーケティングは、多くの事業者が活用する人気のマーケティング手法です。ジェネレーティブAI(生成AI)を利用したAIインフルエンサーの増加や、昨今のステマ規制の影響、SNSの影響力の変化など、インフルエンサーマーケティングの手法も常に変化を遂げています。これらの変化に対応し、効果を最大化するためには、ソーシャルリスニングツールでの消費者行動のモニタリングや分析が不可欠で、適宜戦略を見直す必要があります。
今回は、インフルエンサーマーケティングのキャンペーンを策定するための最新のマーケットトレンドと、需要のあるジャンルの活用事例からインサイトを得て、2024年から活かせるインフルエンサーマーケティング戦略について解説します。
インフルエンサーマーケティングの市場規模
まずは、2023年最新のインフルエンサーマーケティング市場規模を見ていきましょう。
世界のインフルエンサーマーケティング市場は年々増加の一途を辿っており、2023年には211億米ドル(約3兆円)以上にも上っています。
さらにMeltwaterのレポートによると、ブランドのインフルエンサーマーケティングへの投資額は275億ドル(約4兆1千憶円)を超えていることが分かっています。
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世界の市場規模
2022年、世界のデジタル広告費は6,673億ドルという驚異的な額を記録し、これは全メディアとチャネルにおける広告収入の73.3%に相当します。
他の一般的なデジタル広告と企画すると、インフルエンサーマーケティングへの投資額は275億ドルと比較的少額で、デジタル予算全体のわずか4.12%となっています。
国内の市場規模・成長率
日本国内のインフルエンサーマーケティング市場規模も、右肩上がりに上昇しています。
2023年の国内インフルエンサーマーケティング市場規模では、2023年には741億円に上ると予想されており、2027年には2023年の倍近くの1,302億円にまで達すると見込まれています。
2023年・2022年のインフルエンサーマーケティング支出額比較
企業がインフルエンサーマーケティングに対して支出する額を比較してみましょう。
Influencer Marketing Hubが3,500以上のブランド、代理店、マーケティング専門家を対象に実施した調査によると、2022年・2023年のインフルエンサーマーケティング支出額は全体の7割以上が2022年の予算を維持、または増加させたと回答しています。
回答者のうち、71%がROI(費用対効果)を測定している反面、29%は投じた費用に対してどれだけの利益が得られたかの効果測定ができていないということが分かります。
2020年のクリアー<Klear>の予算調査によると、インフルエンサーマーケティングはペイドメディアの6倍の効果があり、企業は1ドルのコストにつき6.2ドルの利益を得ていることが判明しています。
出典 Meltwater 「2023年インフルエンサーマーケティングの最新状況」
インフルエンサーマーケティングの市場トレンド
次に、2023年最新のインフルエンサーマーケティングにおける市場トレンドをチェックしていきましょう。
SNS利用者の人口は急増しています。全世界におけるSNS利用者数は、2023年1月時点のSNS利用者数は47億2,000万人と、前年比約3%の成長を記録しました。
参照: Meltwater 「2023年最新のSNSトレンドまとめ|マーケティングにおける動画の重要性」
世代・チャンネルトレンド
長い間、インフルエンサーマーケティングで最も人気なプラットフォームと言えば、Instagramでしたが、2023年にはTikTokが首位に躍り出て、Instagramは2位へ転落。次いで3位がFacebook、4位にYouTubeとの順となり、今年に入ってインフルエンサーマーケティングの主要広告チャネルにも大きな変化が見られています。
インフルエンサーマーケティングを実施する前に、企業やブランドはどのチャネルでの発信が最もキャンペーンを成功に導き、利益を生み出せるのか、投資先をよく検討する必要があります。
TikTokユーザーの急増を受け、55.5%もの企業がインフルエンサーマーケティングにTikTokを活用しており、Instagramよりも4.7%上回っています。
Facebookのアクティブユーザー数は2023年第3四半期時点で約30億人を抱えており、42.1%の企業が活用しています。InstagramやFacebookなどMeta社のプラットフォームは、お気に入りのブランドや商品をフォローするために利用するユーザーが多く、小売業界がインフルエンサーマーケティングに予算投資するには最適なプラットフォームと言えます。
出典:Statista 2023年第3四半期 フェイスブック(Facebook)の月間アクティブユーザー数(MAU)
Meltwater 「2023年インフルエンサーマーケティングの最新状況」
インフルエンサーの種類
インフルエンサーと一口に言っても、さまざまな種類のインフルエンサーが存在します。ブランドに最適なインフルエンサーの選定・採用を行うことで、ターゲット層へのリーチが可能になり、キャンペーン効果を最大化することができます。
インフルエンサーの4つのカテゴリー
出典 Meltwater 「2023年インフルエンサーマーケティングの最新状況」
インフルエンサーにはフォロワー数の少ない順から、ナノインフルエンサー(1千~1万人)、マイクロインフルエンサー(1万~10万人)、マクロインフルエンサー(10万〜50万人)、メガインフルエンサー(50万人以上)に分類されています。
2023年のクリアー<Klear>の分析では、優先して活用するインフルエンサーとして、39%のブランドや企業がナノインフルエンサーを採用すると回答しました。次いで人気なのがマイクロインフルエンサーです。マイクロインフルエンサーは比較的報酬が安価のため、小規模なブランドにとっても手軽に取り組みやすい点が魅力です。
「インフルエンサーを起用したマーケティングを実施したけど、思うような効果が得られなかった」という経験はありませんか?ターゲット層を深く理解した上で最適なインフルエンサーキャスティングし、キャンペーンを実施すれば、良質な口コミが大きく拡散されやすくなります。
インフルエンサーマーケティングは効果が出せるのか
インフルエンサーマーケティングは、専門知識を持つインフルエンサーや影響力の大きいインフルエンサーを起用することで、商品の認知度向上や購買意欲を刺激するなど高い効果が期待できます。IBISWorldによると、テレビ広告や雑誌、新聞など従来の広告は過去5年で減少傾向にあり、このような従来のキャンペーンのROI測定方法を確立できていないことも問題視されています。
対してインフルエンサーと企業の協業は、ターゲティングのしやすさだけでなく、SNSならではの口コミの拡散力や共感、信頼を得やすく、通常の広告宣伝よりもターゲット層へ受け入れられやすいなどのメリットがあります。SNS投稿後のROIの追跡や分析といった効果検証がすぐに行えることも大きなメリットです。
インフルエンサーを信頼する理由
出典 Meltwater 「2023年インフルエンサーマーケティングの最新状況」
14~26歳のZ世代では特に、マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーはフォロワーとの距離感が近いことから、エンゲージメント率が高くなる傾向があります。
Z世代の消費者に対して調査を実施した結果、インフルエンサーを信頼する理由として上記の結果となりました。
最も多い理由としては「スキルを教えてくれる」が全体の40%を占めています。次いで「経験に基づいた提案を行ってくれる」が37%、「価値観を共有できる」が36%とほぼ同じ割合となりました。
インフルエンサーマーケティングと相性の良いジャンル
インフルエンサーマーケティングを成功させるには、インフルエンサーマーケティングと相性の良いジャンルを知る必要があります。インフルエンサーマーケティングは特に、ECやD2Cと相性が良いと言われています。実際にインフルエンサーが商品を使ってみた使用感や感想がリアルな口コミとして発信されることから、インフルエンサーマーケティングでは以下の商品ジャンルと相性が良いと言えます。
- 通販
- 化粧品
- アパレル
- 家電製品
- 観光
インフルエンサーの予算設定についてKlear<クリアー>が行った調査では、美容やファッションでは女性インフルエンサーに偏っており、美容では女性インフルエンサーが92%、男性インフルエンサーが8%の結果でした。ファションでも、女性80%に対して男性20%と女性インフルエンサーが大半を占めています。
キャンペーンに男性の美容やファッションに特化したインフルエンサーを起用すれば、さらに多くの消費者にリーチができ、収益の機会を増やすことができます。
2025年までにソーシャルコマースの売上向上が期待できるジャンルの割合は以下のようになると予測されています。
出典 Meltwater 「2023年インフルエンサーマーケティングの最新状況」
インフルエンサーマーケティングで最も成功しているプラットフォーム
出典 Meltwater 「2023年インフルエンサーマーケティングの最新状況」
インフルエンサーマーケティングで主に活用されるSNSプラットフォームはInstagram、TikTok、Facebook、YouTube、X(旧Twitter)がメインです。
Influencer Intelligenceの調査では、最も成功しているプラットフォームは、Instagramが68%で最も高く、次いでTikTokが40%、Facebookが35%、YouTubeが32%、Xが27%となっています。
従来のインフルエンサーマーケティングでは写真や画像が主流だったのに対し、商品の特徴を詳細に伝えたり、訴求したりしやすい動画コンテンツはソーシャルコマースに向いていると言えます。
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インフルエンサーマーケティングが消費者インサイトに与えた影響
SNSの普及に伴ってマーケティング手法の一つとして台頭したインフルエンサーマーケティング。インフルエンサーマーケティングは、消費者自身も自覚していない本音である消費者インサイトにも大きく影響を与えています。
消費者インサイトとは
消費者インサイトとは、消費者自身が深層心理に抱く隠れた本音や感情を指します。
インサイト (Insight) とは本来、洞察や直感を意味し、マーケティング用語としては顧客の購買行動につながる無意識の感情や動機、心理を意味します。
消費者インサイトに与える影響
急速に変化を遂げるデジタルマーケティングの世界で、インフルエンサーマーケティングは消費者インサイトを再構築しています。
具体的に消費者インサイトにはどのような変化が起こっているのでしょうか?
- 信頼性と関連性
消費者にとって身近な存在のインフルエンサーは、ブランドや企業と消費者との間のギャップを埋める役割を果たします。多くのフォロワーから支持され影響力のあるインフルエンサーが発信するコンテンツは、フォロワーから「同じ体験をしたい」と共感性を得やすく、エンゲージメントに結びつきやすくなります。
- データ主導の意思決定
インフルエンサーマーケティングでは、いいね!の数、コメント、シェア、コンバージョン率といった豊富なユーザー行動のデータを得ることができ、より詳細な消費者インサイトの分析を行うことが可能です。
このデータ分析を行うことで、どの商品が消費者の共感を得られるか、どのような発信が効果的か、消費者がブランドや企業にどのようにつながるかを理解することができます。
- マイクロインフルエンサーとニッチインサイト
小規模でもエンゲージメント率の高いフォロワーを持つマイクロインフルエンサーは、ニッチな市場に対して特有なインサイトを提供します。マイクロインフルエンサーと協業することで、ブランドは特定層へ訴求でき、オーダーメイドのマーケティング戦略を可能にします。このようなインフルエンサーは、自身のフォロワーについてより深く理解していることが強みで、ニッチな製品やサービスにとって貴重なニュアンスのインサイトを提供してくれます。
- 対話式のコンテンツ
インフルエンサーはQ&Aや投票、イベント、ライブ配信などで実際にフォロワーや消費者とのさまざまな交流を持ち、コミュニケーションを図っています。このような交流を持つことにより、消費者の好みやリアルな意見がリアルタイムで明らかになります。ブランドや企業はこの生きたフィードバックに基づいて、戦略の見直しや製品の改善に活かすことできます。
- 文化・地域的背景の理解
インフルエンサーは自身のフォロワーの文化的・地域的背景を深く理解しています。異なる地域や文化背景を持つインフルエンサーと協業することで、ブランドや企業は多様な消費者の行動や嗜好に関する深いインサイトを得ることができます。この文化的インテリジェンスは、海外マーケットへの参入やローカライズなど、異なる地域向けにマーケティング戦略をカスタマイズするグローバルブランドにとって極めて重要です。
出典:Linkedin Is Influencer marketing changing the landscape of consumer insights?
インフルエンサーマーケティングを成功させるコツ
インフルエンサーマーケティングを起用した広告活動は、消費者の記憶に残りやすく、勧める商品に消費者が好意的な反応を示すというメリットがあります。しかし、インフルエンサーに広告予算を投資すれば、必ずしも良い結果が期待できるとは限りません。
インフルエンサーマーケティングを成功させるために、次の6つの戦略ポイントをぜひ押さえてください。
- 共通の価値観とゴール
インフルエンサーの選定において最も注意すべきポイントは、自社の製品やブランドが今回のキャンペーンで追求する目的やゴール、ブランドの価値観に合致するインフルエンサーを選定することです。単にインフルエンサーのフォロワー数だけでなく、自社のターゲット層に近いフォロワーを持つインフルエンサーを特に重視し、ブランドの認知度向上や商品の理解といったブランドゴールに貢献できる候補を起用しましょう。選定したインフルエンサーがブランドの世界観や価値観と調和し、信頼性のあるメッセージを伝えることで、キャンペーンの成功につながります。
- ソーシャルコマース
インフルエンサーマーケティングを実施するにあたり、ターゲット層の行動や嗜好、商品のコンセプト、ブランドのメッセージに合致したプラットフォームを選択することが必要です。インフルエンサーマーケティングで活用されるプラットフォームは、Instagram、TikTok、YouTube、X(旧Twitter)、Facebookなどですが、ファッション、美容など視覚的なコンテンツを強調したいならInstagram、ターゲット層が若い世代で、短い動画形式が適しているならTikTokというように、自社ブランドや製品に適したプラットフォームを選択しましょう。
- マイクロインフルエンサー
先述したように、マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーは、メガインフルエンサーに比較的安価なため、小規模ブランドにとって取り組みやすいだけでなく、特定ジャンルに特化した専門知識を持ち合わせています。独自のフォロワーやユーザーコミュニティを持つことも特徴です。ターゲット層にリーチしやすいだけでなく、ユーザーとの距離感も近いため、高いエンゲージメント率が期待できます。
- ROIを最大化するプラットフォーム
インフルエンサーマーケティングを実施する際、キャンペーンを包括的に測定、管理できるプラットフォームを活用してROIを最大化しましょう。クリアー<Klear>のTrue Reachテクノロジー は、ブランドや代理店がペイドメディア業界の基準に照らし合わせてインフルエンサーの投稿のリーチやROIを追跡、分析して効果を測定。その結果をレポートとして発行するという使い方も可能です。
- インフルエンサーの多様性
多様性が尊重される現代、ブランドの信頼度を高めるためにもインフルエンサー人材の多様性を確保することは重要です。インフルエンサー人材に多様性を持たせることで、消費者はインフルエンサーとの信頼関係が構築しやすく、高い訴求力が期待できます。
- AR・VR・AI
インフルエンサーマーケティングの最新トレンドとして注目を集めているのがAR(拡張現実)やVR(仮想現実)、AI(人工知能)の活用です。ARやVRを活用することで、消費者は商品やサービスを仮想的に試すことができ、購買意欲の向上を図ることができます。AI技術の発展により、AIインフルエンサーもすでに登場し始めています。AIインフルエンサーの最大のメリットはコストパフォーマンスです。AIインフルエンサーは一度プログラミングしてしまえば、継続的な報酬を支払う必要がなく、人間のインフルエンサーに比べて低い運用コストで運営できます。
出典 Meltwater 「2023年インフルエンサーマーケティングの最新状況」
インフルエンサー検索ツール
自社の予算に見合い、さらに最適なインフルエンサーを発掘することは容易ではありません。ブランドや企業の価値観や、ターゲット層の価値観に合致するインフルエンサーを選定することで、消費者に対する信頼性を向上し、リスクを軽減、さらには広告宣伝費の軽減にもつながります。
インフルエンサー検索ツールクリアー<Klear>は、インフルエンサーマーケティングを導入する前に、インフルエンサーの選定やROI測定でリスクが軽減できるだけでなく、アプリ内での契約や報酬の支払いまでワンストップで完結できます。
インフルエンサーマーケティングの成功事例
最後に、業界別にインフルエンサーマーケティングの成功事例をご紹介します。
【旅行・観光】YouTube 葉山ホテル音羽ノ森×テディベアドッグのモコ
葉山ホテル音羽ノ森は、愛犬とも宿泊できる「ドッグフレンドリールーム」を設ける希少なホテルです。
YouTubeチャンネル「テディベアドッグのモコ」は2023年11月現在、チャンネル登録者26.4万人を抱える愛犬家インフルエンサー。愛犬をペットホテルに預けることなく、家族の一員として一緒に旅行を楽しみ、同じ部屋に宿泊できるというメリットを発信できた好事例と言えるでしょう。
【化粧品】YouTube 「lookfantastic(ルックファンタスティック)×MISAKI MAKEUP」
ヨーロッパ最大規模のコスメ通販サイト lookfantastic(ルックファンタスティック)は、ヘアケア、メイクアップ、スキンケア、美容機器、健康食品など400以上のブランドを取り扱うビューティーセレクトオンラインショップです。
美容・化粧品業界は実際に商品の使用方法を動画で説明したり、リアルな使用感を発信したりできることから、インフルエンサーマーケティングと非常に相性のよい業界です。MISAKI MAKEUPさんは海外で活躍するメイクアップアーティストで、2023年11月現在、約20万人がチャンネル登録しています。プロのメイクアップアーティストとして発言に説得力のあるインフルエンサーを起用し、さらにブラックフライデーなどのセール期間に合わせてキャンペーンを実施することでキャンペーンの効果を最大化できる成功事例と言えます。
まとめ
成功事例でもお伝えしたように、インフルエンサーマーケティングは消費者が身近に感じ、信頼性の高いインフルエンサーを起用することで、広告感なく自然に商品や製品をアピールすることが可能です。
キャンペーン効果を最大化するためには、自社製品に最適なインフルエンサーの選定が不可欠です。
Meltwaterは、インフルエンサーの選定から効果測定、契約と報酬の支払いまでワンストップで完結するツールをご提供しています。ぜひ自社のキャンペーンにお役立てください。
インフルエンサーマーケティングの課題はMeltwaterへご相談。 ブランドに最適なパートナーの発掘と長期的な関係構築、業務の効率化をサポートします。
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この記事の監修者:
岡田敬子 (Meltwater Japan マーケティングマネージャー)
武蔵野美術大学卒。グラフィックデザイナー・B2C領域のマーケティングで17年の経験を積む。2022年よりMeltwater Japan株式会社にて日本市場のマーケティングを担当し、「データに基づく意思決定」を後押しするMeltwaterソリューションの認知度向上のための施策に従事。