「広告を出稿すれば商品を知ってもらうのに十分では?」
「どうすればオウンドメディアを長く運営し続けられるだろうか?」
このような疑問を抱え、オウンドメディアを始めるかどうか迷っている方もいるのではないでしょうか。
自社でコンテンツを発信するオウンドメディアは、商品理解促進やブランディング、リード獲得など幅広い目的において成功事例が増えています。
本記事では、オウンドメディアの強みやメリット、注意点を解説します。種類や成功事例、立ち上げる手順なども紹介します。
オウンドメディアとは?
オウンドメディア運営の目的
オウンドメディアとコーポレートサイトとの違い
オウンドメディアのメリット
オウンドメディアのコンテンツの種類
オウンドメディア運用で事前に知っておくべき注意点
オウンドメディアを立ち上げる手順
参考にしたいオウンドメディアの成功事例
オウンドメディアを成功に導くポイント
まとめ|オウンドメディアの目的からブレないように設計しよう
オウンドメディアとは?
オウンドメディア(Owned Media)とは、自社が保有するメディアのことです。狭義には自社で運用するWebメディア・ブログのことですが、広義にはメルマガ・SNS・コーポレートサイト・採用サイト・ウェブセミナーなども含まれます。
自社コンテンツをメディアで公開してユーザーとの適切なコミュニケーションを実現するマーケティングを、「コンテンツマーケティング」と言います。オウンドメディアはコンテンツマーケティングを実現する手段の一つです。
オウンドメディアはトリプルメディアの1つ
オウンドメディアがWebマーケティング業界で唱えられるようになった頃、「トリプルメディア」という概念が生まれました。
トリプルメディアは「ペイドメディア」「アーンドメディア」「オウンドメディア」で構成されています。
種類 | 概要 |
---|---|
ペイドメディア(Paid Media) | 費用を払って広告を掲載できるメディア。「認知」の獲得に適している。 |
アーンドメディア(Earned Media) | 消費者が中心に投稿するSNS・口コミ・個人ブログなどのメディア。「共感・信頼」の獲得に適している。 |
オウンドメディア(Owned Media) | 自社が発信するブログ・メルマガなどのメディア。「理解」の獲得に適している。 |
これらの3つを組み合わせてマーケティング活動を行うことで、ユーザーに商品を認知してもらい、理解・共感・信頼を得て、購入へと導けます。
オウンドメディア運営の目的
オウンドメディアを運営する目的は、大きく分けると以下の2つです。
- ユーザーとの接点を「蓄積」する
- 商品・サービスの「理解」を促す
広告やSNSなどと異なり、オウンドメディアはコンテンツを蓄積(ストック)できます。この特徴を活かして、過去のコンテンツでも適切なタイミングで閲覧してもらえるように導線を設け、ユーザーとの接触機会を増やしていきます。コンテンツがユーザーの悩みや疑問を解消することで、商品・サービスの深い理解に加え、最終的には購入につながるでしょう。
オウンドメディアとコーポレートサイトとの違い
コーポレートサイトはオウンドメディアの一つですが、それぞれターゲットが異なるため提供するコンテンツも異なります。
種類 | ターゲット | コンテンツ例 |
---|---|---|
オウンドメディア | ・見込み顧客 ・既存顧客 など | ・商品・サービスのノウハウ ・商品・サービスの導入事例 ・インタビュー ・アンケート結果 など |
コーポレートサイト | ・既存顧客 ・取引先 ・従業員 ・株主・投資家 など | ・企業情報 ・代表挨拶 ・事業内容 ・投資家情報 ・採用情報 など |
オウンドメディアは、見込み顧客や既存顧客とのコミュニケーションの場として活用します。自社の経営方針や商品・サービスについて知ってもらい、売上につなげます。
コーポレートサイトの主な目的は、ステークホルダーに自社のことを知ってもらうことです。売上向上のほか、投資や採用の強化にも働きかけていきます。最新ニュースを掲載して会社の直近の動きを見えるようにすることもあります。
オウンドメディアのメリット
オウンドメディアを運用することで、以下のようなメリットが得られます。
1. 広告費がかからない
オウンドメディアを運用することで、広告費をかけずに自社や商品の宣伝ができます。また、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを書くと、検索エンジンの評価が高まり、検索結果の上位に表示され、ユーザーが自然流入する可能性が高まります。
広告は予算によって期間や場所が限られていますが、オウンドメディアであれば制作コスト内に広告費を収められるうえに、会社の資産として長期的に有効活用できます。
2. まとめ|オウンドメディアの目的からブレないように設計しよう
オウンドメディアの運営によって、自社や商品の価値を高めるブランディングが可能です。
自社で運営しているメディアなので、コンテンツの内容やデザインをブランドのイメージに合わせて自由に決められます。自社サイトやメールマガジンなら一定の文章量をもって伝えられるため、自社の設立に至ったストーリーや商品開発への思いなどを届けることができます。
SNSや口コミといったアーンドメディアは、ユーザーが投稿するため、自社で内容をコントロールすることはできず、誤った情報が拡散されるリスクもあります。オウンドメディアなら、正しい情報を発信し、ブランド力を強化することが可能です。
3. 潜在顧客の育成・リード獲得が可能
オウンドメディアを活用し、潜在顧客の育成・リード(見込み顧客)獲得が期待できます。
ユーザーは必要なものが初めからはっきりわかっているとは限りません。コンテンツを読むうちに、ユーザー自身の課題が明確になることもあります。
オウンドメディアでは、商品・サービスを知らないユーザーに対してコンテンツを届け、課題の解決策を提示するため、商品購入の可能性を高められます。つまり潜在顧客から顕在顧客への育成を行えるのです。
同様にBtoBの領域でも、より理解を深めるようなコンテンツを用意し、メルマガ登録・資料請求などに誘導すれば、リード情報を得ることができます。
オウンドメディアのコンテンツの種類
オウンドメディアのコンテンツの種類として「ブログ型」「Webマガジン型」「ブランドストーリー型」「ニュース型」をご紹介します。
ブログ型
ブログ型は、自社の取り組みや日常の様子、従業員の声を届けるなど、カジュアルな情報発信を行うものです。自社のブランディングとして親しみやすさを感じてもらいたいときや採用活動に適しています。
Webマガジン型
Webマガジン型は、自社や商品・サービスに関連した専門的なコンテンツを発信します。課題別に用意しておくことで、ユーザーが必要な情報を探しやすくなります。また、ユーザーの理解が深まれば、自社に対する信頼が生まれるでしょう。
ブランドストーリー型
ブランドストーリー型は、自社の歴史やビジョン、商品・サービスに込められた思いなどを発信します。なぜこの事業を始めたかストーリー仕立てで具体的に書くことで、自社の思いが伝わるでしょう。環境問題など、社会的な取り組みを紹介する際にも用いられることが多い手法です。
ニュース型
ニュース型は、業界や自社の最新ニュースなどを発信するコンテンツです。オウンドメディアの一つであるコーポレートサイトでよく使われます。豊富な情報を提供することで、ステークホルダーとの信頼構築につながります。新聞や専門メディアなどで話題になれば、広範囲での宣伝になるでしょう。
オウンドメディア運用で事前に知っておくべき注意点
オウンドメディアの運用では以下の点に注意してください。
1. 広告運用より長期的な施策になる
オウンドメディアは効果が出るまでに時間がかかるため、「短期よりも中長期な施策」と捉えておきましょう。
広告運用であれば指定した予算・期間において、一定の認知を広めることができます。一方でオウンドメディアでは、検索エンジンに評価されるような良質なコンテンツを作る必要があり、そのコンテンツの検索順位が上がるまでにも一定の時間がかかります。
中長期的な視野で、じっくりとPDCAを回していく体制が必要です。
2. 運用・管理にリソースが必要となる
オウンドメディアは、長期的な運用・管理が前提になるため、運用チームや予算などのリソースが必要です。
全体の企画を担当するディレクターから、デザイナーやコンテンツ制作チームへ指示が出されることで運用されます。有益な情報を蓄積していくには、定期的にコンテンツを公開していくことが求められるため、チーム編成は必須です。必要があれば外部に委託します。
予算は、チームに加わる人たちの人件費やサイトの構築費がかかります。構築費はWordPressなどのサイトが作成できるシステム費用や、サブドメインなどサイトを公開する基盤の整備費などがあります。動画コンテンツを制作したり、デザインをイチから依頼したりする場合、さらに予算が必要になるでしょう。
3. 制作に専門知識が必要な場合が多い
オウンドメディアでの制作・運用においては、専門知識が必要になります。
たとえば検索エンジンからの自然流入を増やすためには、SEOの知識が必要です。キーワードが見つけやすいサイト構築や、外部サイトに自社サイトのリンクを貼ってもらえる被リンクの獲得、モバイルに対応した表示にできるようなシステムなどを意識しながら制作に関わります。
ほかにもターゲットの設定方法や競合・顧客のデータ整理、オウンドメディアの効果測定のスキルも求められます。
オウンドメディアを立ち上げる手順
オウンドメディアを立ち上げる手順を簡単にご紹介します。
1. 目的・ゴールの設定
オウンドメディアを用いて何を目指すのか、目的・ゴールを設定しましょう。よくある目的は、認知向上・ブランディング・売上拡大・人材採用などです。
そして、設定した目的に対して、ゴールとなる成果指標を設定します。認知向上であればSNS等での投稿数、売上拡大であれば問い合わせ件数などです。
2. ペルソナ設計・サイトコンセプト設計
オウンドメディアの読者となるペルソナを設計し、サイトのコンセプトを決定しましょう。つまり「誰に・何を提供するのか」を明確にします。
ペルソナとはターゲットの詳細であり、年齢層や居住地以外にも、休みの日の過ごし方や悩みなども設定していきます。サイトのコンセプトは、設定した目的とペルソナ、そして次のカスタマージャーニーとあわせて考えることをおすすめします。
3. カスタマージャーニーの設計
カスタマージャーニーとは、ペルソナの購買行動・思考をプロセスに沿って整理したものです。
ペルソナが、企業や商品・サービスをどのように認知して、興味関心を持ち、検索・検討して、購入などのアクションを起こすのかを仮説立てて設計します。
カスタマージャーニーがあることで、どんなコンテンツがあれば次のプロセスに進められるかを可視化できます。また、運用する中で適切なステップでユーザーの行動を促せているかどうか見直すことも必要です。
4. 運用体制の構築
人員リソースや予算をもとに運用体制を構築します。
オウンドメディアの立ち上げにおいては少人数で進められることがほとんどですが、運用が始まるとライターや校正担当、デザイナーなど、複数人の稼働が必要になります。社内でリソースを確保できない場合、外部ライターなどに依頼してコンテンツ制作を行うケースが多いです。
5. コンテンツのテーマ案作成
先述のカスタマージャーニーを参考にしながら、各ステップにおいて必要なコンテンツを洗い出します。SEO対策を行う場合には、検索ボリュームのあるキーワードの調査も行いましょう。
6. 運営方針やルールの作成
運営方針やルールを作成し、ミスを未然に防ぎましょう。
オウンドメディアが大事にしたい世界観や価値観を言語化したり、コンテンツの表記ルールを明確化したりします。方針やルールを共有することで、複数人がオウンドメディア制作に携わっていたとしてもスムーズに進行しやすくなります。
参考にしたいオウンドメディアの成功事例
オウンドメディアの成功事例として、ここでは3つのメディアをご紹介します。
1. となりのカインズさん|株式会社カインズ
「となりのカインズさん」は、「ホームセンターを遊び倒すメディア」をコンセプトに、株式会社カインズの社内外のブラ/ンディングを目的として運営されています。暮らしに役立つアイデアやヒントが発信されており、実用的なものから思わず笑ってしまうようなものまでさまざまです。
ポイントは、カインズを身近に感じられる工夫です。カインズの店舗メンバーやお客様、メーカー、クリエイターなどと一緒に毎日の生活を豊かにするためのアイデアを届けています。
URL:https://magazine.cainz.com/
2. サイボウズ式|サイボウズ株式会社
「サイボウズ式」は、グループウェア・業務改善サービスを提供するサイボウズ株式会社が運営しているメディアです。「新しい価値を生み出すチームのメディア」をコンセプトとし、テーマごとにコラムやインタビュー記事が発信されています。
一見するとサイトの運営目的が分かりにくいですが、アップデートしたい働き方やチーム力に関するコンテンツが並んでおり、読んでいくうちに会社への共感が高まってくるでしょう。
実際にサイボウズ株式会社には、多様な働き方をする社員が集まり、チーム力を育みながらもそれぞれが自主的に動きます。社員一人ひとりが気になる話題を提供することで、ブランディングや認知拡大につなげる事例です。
URL:https://cybozushiki.cybozu.co.jp/
3. mercan(メルカン)|株式会社メルカリ
「mercan(メルカン)」は、株式会社メルカリが採用目的で運営しているオウンドメディアです。「メルカリの『人』を伝える」をコンセプトに、メルカリ社員のインタビューや社内イベントのレポートなどが発信されています。
社内の日常や様子を伝えることで、企業の価値観を理解・浸透させることに役立っています。また、社員が働く理由や新卒社員へのインタビュー記事も公開されており、企業風土にフィットする人材を獲得できるような工夫がされています。
URL:https://mercan.mercari.com/
オウンドメディアを成功に導くポイント
オウンドメディアを成功させるには、以下のポイントを押さえて運営してみてください。
1. 読者の悩みに回答するコンテンツを提供する
読者であるユーザーの悩みが解決するようなコンテンツを提供しましょう。ターゲット層の悩みを予想し、コンテンツを考えます。「このサイトを見れば欲しい答えが見つかる」と思ってもらえれば、サイトの再訪率も上がるでしょう。
コンテンツでは自社商品をアピールする場合もありますが、あくまで付属的なものです。健康に関するコンテンツなら、病気の症状や対策を詳細に書き、最後に自社の健康食品を少し紹介するといったように、ユーザーの悩み解決がメインになります。
2. 売上に直接関連するコンテンツから作成する
顧客獲得が目的でオウンドメディアを運営するなら、自社商品やサービスに直接関連するキーワードや課題に対するコンテンツから作成していきましょう。
オウンドメディアは業界や自社への親しみやすさを目的として活用されることもあるため、業界の豆知識のような売上に直接つながらないコンテンツを掲載することもあります。
しかし、オウンドメディアで効果を出すには時間がかかります。事業内容を理解してもらうためにも、まずは自社商品やサービスに関連したテーマからコンテンツをストックしていくことが、SEO対策としてもおすすめです。
3. サイト内の導線を正しく設計する
ユーザーがサイト内をスムーズに動けるよう、サイト内の導線を設計しましょう。導線とは、ユーザーが目的のページまで行けるよう誘導することです。導線がわかりにくいと、サイトを離脱してしまう恐れがあります。
「商品について」「商品購入」「お問い合わせ」などサイトを訪れる目的となりそうなものは、常にページのトップに表示されるようにします。
あるページから、さらに詳細ページに進む際も、読者自身がどこにいるかわかるようにパンくずリストで表示しておくと、サイト内で迷うことがなくなるでしょう。初めて訪問する人でも使いやすいような、シンプルなデザインにすることがポイントです。
まとめ|オウンドメディアの目的からブレないように設計しよう
今回はオウンドメディアの目的やメリット、種類、注意点、立ち上げる手順などを解説しました。
広告よりも効果に時間がかかりますが、その分一度効果があれば持続しやすい面もあります。成功事例を見ながら、自社に取り入れられるポイントを見つけてみてください。
どんな目的・ゴールであっても、オウンドメディアで伝えたいことや世界観がブレることのないよう、ペルソナやコンセプト、カスタマージャーニーを設計することが重要です。また、運用中に立ち返れるよう、運営マニュアルを用意することもポイントです。
ユーザーファーストの視点で、ユーザーにとって有益な情報を提供することで、ブランディングやリード顧客獲得などの効果が期待できるでしょう。
この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。