「商品の認知度を上げたいけれど、効果的なPR方法がわからない」
「予算が限られている中で、どうすれば商品の魅力を効果的に伝えられるのだろう」
そんな悩みを抱える企業のマーケティング担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、商品PRの方法や注意点、成功事例まで詳しく解説します。
商品PRとは
商品PRとは、組織や組織の周りの人とのコミュニケーションを通じて商品の魅力を伝える活動です。PRがPublic Relationsを意味することからも、単なる売り込みではなく、双方向的なやりとりを通じた信頼構築が目的です。消費者だけでなく、従業員や取引先の企業、メディア関係者も対象として含まれます。
例えば、新発売の服が以前の服と質がほぼ同じなのに、値段が高めだったとします。値段だけでは価値がわかりませんが、商品PRを通して環境への負荷をかなり抑えた製造過程や、生産国の経済や人を支えていることを知れば、商品に価値が見出せます。「安くて質がいい商品」から「環境を考えた質のいい商品」といった価値観の変容を促すことも、商品PRの役割です。
商品PR活動では、プレスリリースの配信やメディアへの情報提供、SNSでの発信など、さまざまな方法で商品の特徴や価値を伝えていきます。商品PRを行えば、商品の認知度向上だけでなく、ブランドイメージを確立することも可能です。
関連記事:PRとは?広告との違いやメリット・代表的な方法を解説
広告との違い
商品PRと広告の最大の違いは、情報発信者が誰なのかという点です。広告は企業がテレビCMや新聞広告などの枠を購入し、自社でコントロールできる形で情報を発信します。一方、商品PRはメディアや第三者を通じて情報を伝えるため、企業側で発信内容を完全にコントロールすることはできません。
しかし、第三者からの発信という特性により、消費者からの信頼度は広告と比べて高くなります。PRを通じた情報は、広告よりも客観的で信頼できる情報として受け止められやすいのです。
企業PRとの違い
商品PRと企業PRは、目的とする成果が異なります。企業PRは組織全体の理念や活動、社会的価値を伝えることで、企業としての信頼関係構築を目指します。例えば、製造過程や環境への取り組みなどを発信し、企業イメージの向上を図ります。
一方、商品PRは特定の商品の特徴や価値を伝え、認知度アップや購買を促進するのが目的です。ただし、両者は相互に影響し合う関係にあり、効果的な商品PRは企業PRにもつながります。
商品PRのメリット
商品PRを行うメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 販売促進効果が見込める
- 認知度を向上できる
- 自社の魅力を伝えられる
- コストを抑えられる
それぞれのメリットを詳しく解説します。
販売促進効果が見込める
商品PRを行うことで、売上アップが見込めます。商品PRでは、商品を作った背景や現在の社会でその商品が必要な理由などを取り上げながら、消費者に寄り添ったアピールをするのが特徴です。そのため、好感を得やすく、購買を促すことができます。特に、商品の開発背景やこだわりなど、ストーリー性のある情報は、消費者の心に強く印象づけられるでしょう。
認知度を向上できる
商品PRは、認知度アップにも役立ちます。メディアやインフルエンサーなど第三者からの発信が、一般的な広告よりも消費者の心に響きやすいからです。テレビや雑誌で取り上げられた商品は注目されやすくなります。また、SNSは双方向のやりとりができ、口コミが広がれば新規顧客を獲得することが可能です。
自社の魅力を伝えられる
商品PRは、企業全体のブランド価値向上にも寄与します。環境に配慮した製造工程や、地域の原材料へのこだわりなど、商品に込めた想いを伝えることは、同時に企業の理念を伝えることでもあります。消費者からの共感を得られれば、特定の商品だけでなく、企業が生産している他の商品にも興味を持ってもらえるでしょう。
コストを抑えられる
商品PRは、自社のWebサイトやSNSを活用できるため、最小限の予算で広範囲に情報を発信できます。また、プレスリリース配信サービスを利用すれば、多くのメディアに効率的にアプローチすることも可能です。特に予算の限られた中小企業にとって効果的な施策といえるでしょう。
商品PR方法
商品PR方法として代表的なものを紹介します。
- プレスリリース(送り先媒体:テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など)
- ニュースレター
- オウンドメディア
- SNS
- イベント
順番に解説します。
プレスリリース
プレスリリースとは、企業がメディア関係者に向けて発表した公式文書のことです。新商品の発売や新規事業の発表などの際に、よく利用されます。各メディアはプレスリリースを基に記事にするかどうか決めます。
プレスリリースを配信する際は、商品の特徴や独自性を簡潔に伝え、メディアの興味を引く工夫が必要です。配信後のメディアからの問い合わせにも迅速に対応できる体制を整えておきましょう。
関連記事:プレスリリースとは?書き方や成功に導くポイントを解説
テレビ
テレビの情報番組やバラエティ番組で商品を取り上げてもらう方法があります。企業はCM枠を購入するのではなく、プレスリリースなどでメディアに情報提供し、テレビ局側で興味があったら取り上げられるという流れです。短期間で認知を拡大できるのがメリットで、特に、全国規模で展開する商品や、幅広い年齢層をターゲットとする商品に効果的です。
ラジオ
ラジオを使って商品をPRすることも可能です。テレビと同様に、プレスリリースなどで商品の情報をラジオ局に提供します。番組内でのパーソナリティによる紹介の他、リスナー参加型のプレゼント企画に商品を提供することも効果的です。地域密着型の商品PRに適しており、通勤時間帯の放送は、特に訴求効果が期待できます。
新聞
新聞は、マスメディアの中でも信頼性の高い媒体です。プレスリリースの内容に合わせて、新聞社を選びます。全国紙の場合、一回の掲載で数百万人以上にリーチでき、地方紙では地域に特化した効率的な訴求が可能です。デジタル化の普及も進み、今もなお日常的に強い影響力を持っています。社会問題に関心のある層にアピールできるでしょう。
雑誌
雑誌はファッション誌や美容誌、趣味など専門性が高いため、ターゲットに届けやすいのが特徴です。商品との相性がいい雑誌に、商品に関する資料を送ってみるとよいでしょう。デジタル版も登場し、今後も一定数の需要が見られる媒体です。
ニュースレター
ニュースレターとは、顧客向けに定期的に配信されるコンテンツのことで、メールマガジンの中でも特に読み応えのあるものを指します。商品の使い方のヒントや、開発者からのメッセージ、季節に合わせた活用法など、顧客にとって価値のある情報を定期的に提供することで継続的な関係構築に役立ちます。。
メールマガジンの形式が一般的ですが紙媒体もあり、最近ではLINEやSNSのメッセージ配信機能を活用するケースも増えています。コンテンツの質と配信頻度のバランスを考慮するのが重要です。
オウンドメディア
オウンドメディアとは、自社で運営・管理するブログやWebマガジンなどの情報発信サイトのことです。企業サイトとは別に、商品の活用法や業界のトレンド情報、お客様の声など、読者にとって価値のあるコンテンツを発信します。また、商品の開発エピソードや生産者の想いなど、企業情報も発信できるのが特徴です。
動画は直感的に商品の使用感を伝えられるツールです。短時間で視聴者の興味を引く工夫と、ブランドイメージに合った質の高い映像制作が求められます。また、SEO対策を意識して作成することで、検索エンジンからの継続的な流入も見込めます。
SNS
SNSは、消費者とのやりとりのしやすさが特徴です。コメントに反応したり、キャンペーンを実施したりすることで、商品のファンを増やせます。
各SNSの特性を理解し、ターゲットに合わせてプラットフォームを選定することが重要です。幅広い世代にリーチするならYouTube、若年層にリーチするならInstagramやTikTokが適しています。投稿する時間帯や頻度も、ターゲットを考慮して設定すると良いでしょう。
イベント
展示会や期間限定ショップ開設などのイベントで、商品の良さを顧客に直接伝える方法もあります。試飲・試食や実演を通じて、商品の魅力を生で理解してもらえるのが特徴です。
また、メディア関係者の取材も期待でき、SNSでの情報拡散も見込めます。準備や運営に手間はかかりますが、顧客との直接的なコミュニケーションで信頼関係を築けます。
自社商品をメディアに取り上げてもらうコツ
自社商品をメディアで取り上げてもらうコツは以下の3つです。
- プレゼントパブリシティを活用する
- 直接、媒体に情報提供する
- 取り上げてもらいやすいコンテンツを作成する
それぞれ詳しく解説します。
プレゼントパブリシティを活用する
プレゼントパブリシティとは、メディアの読者向けプレゼント枠に商品を無償提供することで商品を宣伝する手法です。媒体は、新聞や雑誌、Webメディアなどがあります。商品を実際に体験してもらえば、認知度アップだけでなく、新規顧客の獲得も期待できます。
媒体ごとに商品の価格帯や提供数、発送方法などの規定が異なるため、事前に詳細を確認することが重要です。
直接、媒体に情報提供する
多くのメディアには、商品紹介のコーナーが設けられています。例えば、生活情報誌の新商品紹介コーナーや、Webメディアのトレンド商品特集などです。こうしたコーナーを設けているメディアに直接問い合わせれば掲載できる可能性を高められるでしょう。
掲載を希望するコーナーの過去の記事をよく研究し、商品の特徴や強みが企画の趣旨に合致するか確認すると、媒体を絞り込めます。
取り上げてもらいやすいコンテンツを作成する
メディアに取り上げてもらいやすいコンテンツの特徴として以下のことが挙げられます。
- ニュース性がある
- 数値やデータを用いている
- 視覚的な訴求力が高い
ニュース性については、業界初の取り組みや環境問題への取り組みなど、世の中の関心が高いテーマが該当します。数値やデータについては、市場調査の結果や商品開発時の検証データなど、客観的な事実に基づく情報が重要です。視覚的な訴求については、商品の特徴をわかりやすく伝える動画コンテンツが効果的で、メディアでも活用しやすく、読者の関心も引きやすい素材となります。
これらの要素を組み合わせたコンテンツを用意すれば、メディアでの露出機会を増やせます。
商品PRを成功させるためのポイント
商品PRを成功させるためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 商品の魅力を明確にする
- ターゲットを設定する
- 自社のサイトやSNSで周知する
- メディアリレーションに注力する
- トレンド性があるものを活用する
それぞれ詳しく解説します。
商品の魅力を明確にする
商品PRの目的は、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて商品の魅力を伝えることです。商品の魅力は何か、なぜ今この商品が必要なのかなどを、明確にします。キャッチフレーズとしてまとめたり、イメージ画像にしたりして視覚化すると、社内でも共通認識が持てます。
ターゲットを設定する
次に、届けたい対象を具体的に設定します。過去の販売データや顧客アンケートを分析し、年齢や性別、居住地域、ライフスタイル、価値観など、できるだけ詳しく設定するのがポイントです。
例えば調理器具のターゲットとして「30代の共働き夫婦で、時短・簡単調理に関心が高い層」のように設定できます。また、商品PRは考えの変容を促すのも役割の一つです。家事をしないことに罪悪感を抱くターゲットに、家事はできるだけ省いていいものだと感じられるような宣伝文句を考えるのも効果的でしょう。
自社のサイトやSNSで周知する
自社のサイトやSNSで商品の情報を発信します。特に商品の使用シーンや活用方法などの詳しい情報は、購入を検討しているユーザーの疑問を解消して購入につなげやすくなります。また、ユーザーからの反応や問い合わせを直接受けることで、商品改善のヒントも得られます。
SNSはターゲットに合わせた選定も必要です。若年層向けならInstagramやTikTok、ビジネスパーソン向けならFacebookやLinkedlnなどがよく使われています。他にも、短いテキストが強みのX(Twitter)や、テンポのいい短尺動画が強みのTikTokなど、それぞれの特性を活かすことが効果的です。
メディアリレーションに注力する
メディアリレーションとは、テレビ局や新聞社、Web媒体などのメディアと良好な関係を構築・維持する活動のことです。具体的な活動として、商品に関する最新情報の提供、取材依頼への丁寧な対応などが挙げられます。関係を築いていけば、メディアに取り上げてもらいやすくなります。
メディア向けの商品説明会を開催したり、商品サンプルを提供したりすれば、より商品の価値を理解してもらえるでしょう。
関連記事:メディアリレーションとは?成功に導く5つのポイントを解説
トレンド性があるものを活用する
社会の関心事と商品を上手く結びつけることも重要です。季節のイベントやSNSで話題のキーワードを取り入れることで、メディアや消費者の関心を引きやすくなります。
トレンドをうまく取り入れるには、市場動向やメディアの反応をリアルタイムで把握し、適切なタイミングで施策を展開する必要があります。
そこでおすすめなのが、Meltwaterの分析ツールです。テレビや新聞からSNSまで、幅広いメディアの情報をリアルタイムで分析し、最新のトレンドを把握できます。プレスリリースの反響や消費者の反応を数値化して可視化できるので、PR施策の効果測定も容易になります。詳しくは以下のページをご覧ください。
商品PRの成功事例
商品PRの成功事例を3つ紹介します。
淡麗グリーンラベル
キリンビールは、淡麗グリーンラベルの商品PRで、「ツイッターおにごっこ」と題したキャンペーンを実施しました。Twitter(現在のX)ユーザーが「#イインダヨ」とツイートし、30分以内に「#グリーンダヨ」と返信がなければ商品が当たるというユニークな企画です。商品のキャッチフレーズをキャンペーンに使うことで、商品の認知度アップにつなげました。
キャンペーンは一週間で、毎日20時から21時の1時間のみの実施でしたが、参加者数は16,000名以上、応募総数は30,000件を超える反響がありました。また、キャンペーン期間中にWebメディアで運営の舞台裏を公開し、ブランドへの親近感を高める取り組みも行われました。
GoPro
ビデオカメラのメーカー「GoPro(ゴープロ)」は、ユーザーが撮影した動画を活用した商品PRを展開しています。契約アスリートや社内制作チーム、一般ユーザーの動画をYouTubeで紹介することで、商品の活用方法や魅力を伝えます。再生回数1,000万回を超える人気コンテンツも多く生まれています。
動画を投稿すると報酬が得られることもあり、多くの動画が投稿され、その動画を見た人が商品を購入するという好循環を確立しました。商品と動画の相性の良さが活かされているといえます。
資生堂
資生堂は「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」というYouTube動画を制作しました。女子高生たちがいる教室の映像が流れ、途中からそれが巻き戻しになり、メイクを外していくと実は全員男子学生だったという内容です。何度も見返したくなるような動画で、SNSでも話題になりました。
10代向けにメイクアップの可能性をアピールするとともに、ジェンダーに対する企業の自由な考え方も伝わる事例です。
まとめ|商品PRで認知度を向上させよう
商品PRは、第三者を通じて商品の魅力を伝える活動です。商品の価値を伝えるのが目的ですが、商品PRの質が高まると共感を呼ぶため、結果的に認知度や売上アップにつながります。
商品PRで成果を出すには、商品の魅力とターゲットを明確にすることが重要です。プレスリリースやSNS、オウンドメディア、イベントなど、複数の方法を組み合わせれば、効果的に商品をPRできるでしょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム