ターゲットオーディエンスとは、自社の製品・サービスに対して親和性の高い顧客のグループです。適切なターゲットオーディエンスを設定できるかは、マーケティングの成否を大きく分けることになるでしょう。
この記事ではターゲットオーディエンスの概要や重要な理由を踏まえ、定義の方法や活用方法を解説します。またターゲットオーディエンスの活用事例についてもご紹介しています。
ターゲットオーディエンスとは?
ターゲットオーディエンスの定義が重要な理由
ターゲットオーディエンスの定義の方法
ターゲットオーディエンスを定義する時の注意点
ターゲットオーディエンスへの効果的なアプローチ方法
ターゲットオーディエンスの活用事例
まとめ|ターゲットオーディエンスを定義することで効率的にアプローチできる
ターゲットオーディエンスとは?
ターゲットオーディエンスとは、企業のターゲットとなる顧客グループのことです。自社の製品・サービスを利用するであろうと思われる顧客層を指し、年齢・性別・職業・趣味・居住地などによって定義されます。
例えば、労務管理システムは人事部門に勤める管理職、折り畳み式の家具は狭いアパートに住む学生などがターゲットオーディエンスとなります。
ターゲットオーディエンスを特定することで、伝えるべきメッセージの内容やチャネルなども明確となるため、効果的なマーケティングオペレーションが可能です。
ターゲットオーディエンスとターゲット市場の違い
ターゲット市場は、ターゲットオーディエンスよりも広範囲が含まれます。年齢や性別でターゲットとなる顧客層を分けるのは共通していますが、ターゲットオーディエンスのほうがより細分化されたグループです。
ターゲットオーディエンスが広告やキャンペーンの対象であるのに対し、ターゲット市場はマーケティングの対象ともいえます。例えば、6歳以下用のグッズのターゲット市場は6歳以下の子どもですが、ターゲットオーディエンスは親や幼稚園の先生などグッズを購入する人に当たります。。
ターゲットオーディエンスとバイヤーペルソナの違い
バイヤーペルソナとは、ターゲットオーディエンスに属する人物像を具体化したモデルのことです。省略してペルソナとも呼ばれ、年齢や役職だけでなく、価値観や志向などさまざまな要素で、リアルな人物設定をします。
バイヤーペルソナまで落とし込むことで、より最適化されたマーケティングアプローチの実現が可能になります。
ターゲットオーディエンスの定義が重要な理由
ターゲットオーディエンスを定義することが重要な理由としては、以下の4点が挙げられます。
顧客に合ったメッセージを発信できる
ターゲットオーディエンスを定義することで、それぞれの顧客に合ったメッセージを発信できます。あらゆる顧客に対して発するよりも、顧客層を限定したほうが「自分のためのメッセージだ」と感じられるため、広告効果がより期待できるでしょう。
無駄な費用の削減ができる
ターゲットオーディエンスを定め、そこに向けたマーケティングアプローチに集中することで、無駄な費用を削減できます。マスメディアは幅広い層に向けた広告として有効ですが、広告費用がかかります。ターゲットを絞り込むことで、SNSでの発信などコストを抑えたアプローチが可能です。
ターゲットのニーズに応じた差別化が図りやすい
ターゲットオーディエンスを定めるとターゲットのニーズが明確になり、新しいサービスを生み出すなど競合他社との差別化が図れます。製品・サービスの企画やマーケティングプロモーションにおいて、自社の独自性を打ち出しやすくなるでしょう。
顧客満足度が向上する
ターゲットオーディエンスを把握することで、顧客にパーソナライズされたコンテンツ提供やコミュニケーションを図ることができ、顧客満足度の向上にも繋がります。購買プロセスにおける体験価値やロイヤルティが高まれば、購買後もリピート購入やポジティブな口コミ投稿などをしてくれる可能性が高くなるでしょう。
ターゲットオーディエンスの定義の方法
ここからはターゲットオーディエンスを定義するための方法をご紹介します。
市場やトレンドの調査
ターゲットオーディエンスを定義するには、まず市場やトレンドについて深く理解する必要があります。
市場調査の手法は、公的機関のデータの他、自社で実施したインタビューやアンケート情報、エスノグラフィー(行動観察調査)、MROCなどです。
市場調査については以下の記事でも詳しく解説していますので併せてお読みください。
関連記事:市場調査とは?メリットや調査方法、実施の流れを解説
競合調査
適切なターゲットオーディエンスを定めるには、競合他社の動向についても理解しなければなりません。
競合調査においては、以下のような点を重点的に調査します。
- 競合他社の提供する製品・サービスの特徴
- 競合他社のターゲット顧客像
- 競合他社のマーケティングプロモーション(訴求点など)
- 自社と競合他社の異なるポイント
これらのポイントについて調査し、どの方向性であれば自社が優位性を発揮できるかを検討しましょう。
関連記事:競合分析とは?手順やフレームワーク、便利なツールを解説
Web・SNS分析
ターゲットオーディエンスの定義には、WebサイトやSNS投稿の分析を行うことも重要です。
自社のWebサイトに訪問している顧客の情報は、GoogleアナリティクスなどのWeb解析ツールを活用すれば、簡単に収集することができます。ユーザーの大まかな属性やサイト内での行動、流入してきた検索キーワードなどを分析することで、顧客の特徴をつかむことが可能です。
また、XやFacebook、Instagramなどに投稿された情報を分析するSNS分析も有効です。自社製品に対してポジティブな考えを持つ顧客層だけでなく、製品に不満を持っている顧客層や他社製品を使っている顧客層の情報を取得できます。
SNS分析は、ソーシャルメディア分析ツールなどを活用することで効率的に取り組むことができます。MeltwaterはソーシャルリスニングやSNS管理ツールなどを提供しておりますので、ご興味がありましたら、こちらからお気軽にお問い合わせください。
関連記事:SNS分析とは?注目される理由や活用方法、成功のポイントを解説
ターゲットオーディエンスを構成要素ごとに定義
競合分析やSNSでの分析を終えたあとは、これらの内容を基にターゲットオーディエンスを定義していきます。
ターゲットオーディエンスは、構成要素別に設定することで、全体像を定義します。構成要素は、大きく人口統計的属性(デモグラフィック)と心理的属性(サイコグラフィック)に分けられます。
ターゲットオーディエンスの構成要素 | 要素の具体例 |
---|---|
人口統計的属性 (デモグラフィック) | ・年齢 ・性別 ・居住地 ・職業 ・学歴 ・収入 ・配偶者の有無・家族構成 |
心理的属性 (サイコグラフィック) | ・価値観 ・興味関心 ・趣味嗜好 ・抱えている悩み ・購買動機・傾向 |
この他、Webサイトの訪問頻度や購入履歴も、ターゲットオーディエンスの定義の参考になります。
また、ターゲットオーディエンスに含まれない層についても把握しておきましょう。ターゲットオーディエンスへの訴求ポイントがさらに明確になり、広告を打ち出す際にも費用対効果が見込めます。
ターゲットオーディエンスを定義する時の注意点
ターゲットオーディエンスを定義することは、マーケティング活動の精度や効率を高める上で重要です。しかし、あまりにも細かく絞り過ぎると収益性が著しく低くなり、リーチできたとしても売り上げが見込めない可能性があります。
ターゲットオーディエンスを定義する際は、ターゲティングにおける6R(以下の6つの要素)を参考にすると良いです。
- Realistic Scale(規模の有効性):見込まれる売り上げや利益
- Rank(優先順位):アプローチの優先度
- Rate of Growth(成長率):今後の成長率
- Rival(競合):競合の特徴やマーケティングプロモーション
- Reach(到達可能性):実際に製品・サービスを提供できるか
- Response(測定可能性):マーケティングプロモーションの効果を測定できるか
ターゲットオーディエンスを設定したら、それが現実的なマーケティングに繋がるか検証しましょう。
ターゲットオーディエンスへの効果的なアプローチ方法
続いてターゲットオーディエンスへの効果的なアプローチ方法をご紹介します。
ターゲットオーディエンスのいるプラットフォームを特定
ターゲットオーディエンスを定義した後は、そのターゲットオーディエンスにリーチできるプラットフォームを特定しましょう。
10代後半から20代前半である場合はTikTokやInstagramなどのSNS、40代半ばのビジネスパーソンはビジネス系のWebメディアやFacebookなどを利用していることが多いです。
ターゲットオーディエンスとどこで出会えるのかを考え、マーケティングに使用するチャネルを決めていきます。
関連記事:マーケティングとは?定義や手順、主な手法をわかりやすく解説
ターゲットオーディエンスに関連するコンテンツの作成
ターゲットオーディエンスにリーチするためのプラットフォームを特定した後は、コンテンツの作成を行いましょう。コンテンツには、ブログ記事やSNS投稿用のメッセージ、動画などがあります。
ポイントは、ターゲットオーディエンスの悩みに応える形で作成することです。悩みを解決することで顧客からの信頼を得られれば、製品・サービスにも興味を持ってもらえるでしょう。
コンテンツ制作を外部に委託する場合は、ターゲットオーディエンスに関する情報を細かく伝えるなど、ディレクション上の工夫が必要になります。
ターゲティング広告の使用
ターゲティング広告の応用も、ターゲットオーディエンスへリーチするための方法の一つです。
ターゲティング広告とは、見込み度の高い顧客に絞って配信するWeb広告です。Cookieを利用して自社サイトに一度訪問した顧客に表示するものや、閲覧したサイトの内容と関連のある広告を表示するものなどがあります。
ターゲットオーディエンスが定義されていれば、ターゲティング広告の配信対象もスムーズに決まるでしょう。
SNSのハッシュタグを使用
SNSのハッシュタグを活用するのも一つの手です。
SNSの投稿でターゲットオーディエンスの興味を引くキーワードをハッシュタグとして設定することで、ターゲットオーディエンスが投稿を見る確率が高くなります。
またTikTokは、特定のハッシュタグが付いた動画を閲覧しているユーザーに広告を投稿できる「ハッシュタグターゲティング」という機能があります。ターゲットオーディエンスと関連性の高そうなハッシュタグを見極めて広告を配信するといったこともできます。
インフルエンサーと協力
インフルエンサーと協力することで、ターゲットオーディエンスに効果的にリーチできるでしょう。インフルエンサーは特定ジャンルについてSNSで情報を発信しており、そのテーマに対して強い関心のあるフォロワーを抱えています。
キャンプ用品を売りたい場合、アウトドア関連のインフルエンサーを起用して自社製品を宣伝すれば、そのインフルエンサーのフォロワーに購買を促せます。身近な人からの口コミのような宣伝となり、ユーザーの信頼を獲得しやすいのが特徴です。
ターゲットオーディエンスの活用事例
最後にターゲットオーディエンスの活用事例をご紹介します。
活用事例1:すき屋
すき屋は国内牛丼チェーンにおいて、トップのシェア率を誇っています。その成功の背景には、他のチェーンとは異なるターゲットオーディエンスの設定があるといえるでしょう。
競合となる吉野家は「うまい、やすい、はやい」というコンセプトを掲げ、主にビジネスパーソンや独身男性をターゲットにしています。そのため、駅前や都市部でのカウンター席を中心とした店舗が多いのです。
その一方で、すき屋はファミリー層をターゲットオーディエンスとして設定し、郊外や道路沿いなど家族が訪れやすいところに店舗展開を図っています。カウンターだけでなく、テーブル席や子供用の椅子を準備するなど、家族でも利用しやすい店舗環境を整備したのです。
競合の牛丼チェーンが得られなかった顧客層を開拓でき、今の地位を確立したといえるでしょう。
参考:女性や家族で賑わう牛丼屋【ポジショニング戦略の成功事例(7)】 | ブランディング ナレッジベースSINCE.
活用事例2:QBハウス
QBハウスは「10分の身だしなみ」というコンセプトを基に、ヘアカットサービスを提供しています。仕事に追われるビジネスパーソンをメインのターゲットオーディエンスとして設定することで、独自のポジションを築いているのです。
一般的な理容室や美容院は、待ち時間やサービス時間を含めると30分以上かかることも多く、仕事で忙しいビジネスパーソンは休日の利用しかできないという課題がありました。
そこでQBハウスはメニューをカット一つに絞り、早く散髪できるサービスを開発し、仕事の合間や帰り道などに気軽に立ち寄れるヘアカット店としてのポジションを確立したのです。ショッピングセンターや駅ナカを中心に店舗を展開したことで、多くのビジネスパーソンを取り込むことに成功しました。
参考:QB HOUSE、国内累計来店客数3億人を突破!記録からみる3つの強みとは|キュービーネットホールディングス株式会社のストーリー|PR TIMES STORY
活用事例3:ライフネット生命
ライフネット生命は2008年の開業以来、オンラインの生命保険サービスを提供しています。背景には、若い世代をターゲットオーディエンスとして設定したことが挙げられます。
従来の生命保険は、40代や50代などのライフリスクが高まってくる世代をターゲットとすることが多いため、対面でのサービスが中心で、保険料も高いといった特徴がありました。
一方、ライフネット生命はオンラインにより手続きの手軽さと人件費を抑えた低額の保険料を提供することで、若い世代から多く選ばれる結果となっています。
参考:ライフネット生命が選ばれる理由|ライフネット生命保険、当社の強み|ライフネット生命保険
まとめ|ターゲットオーディエンスを定義することで効率的にアプローチできる
顧客の価値観や購買行動が多様化した状況においては、ターゲットオーディエンスを定めるのが、顧客ニーズにリーチする方法の一つです。ターゲットオーディエンスを的確に設定できれば、広告の打ち出し方やサービスの提供方法も自ずと決まってきます。競合他社やSNSを定期的に分析して、どのようなニーズがあるのかを把握しておくことも大切です。
ターゲットオーディエンスを設定し、費用対効果の高いマーケティングを実現させましょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム