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潜在ニーズとは?見つけ方や重要ポイントを解説

潜在ニーズとは?見つけ方や重要ポイントを解説


宮崎桃

Dec 9, 2024

マーケティングに携わっている方にとって、顧客ニーズを分析することは重要な役割の一つです。特に顧客自身が気付けていない潜在ニーズをいかに捉えられるかが、成否を大きく分けることになるでしょう。

この記事では潜在ニーズの概要や重要な理由、具体的な調査方法などを解説します。

最後に潜在ニーズを活用した企業の成功事例も併せてご紹介します。

潜在ニーズとは

潜在ニーズとは

潜在ニーズとは、顧客ニーズのうち顧客自身が自覚できていない部分を指します。欲求としては存在しているものの、具体的に「〜がほしい、〜がしたい」というように言語化されません。

潜在ニーズが顕在化すれば提供できるサービスも明確になります。企業はさまざまなマーケティングアプローチを通じて、潜在ニーズを掘り起こす必要があるでしょう。

潜在ニーズと顕在ニーズの違い

顕在ニーズとは、顧客ニーズのうちすでに顧客自身が認識している部分です。顧客ニーズはよく氷山に例えられ、海上から見えている部分を顕在ニーズ、海中にある部分を潜在ニーズとして考えます。

例えば、「腰痛を癒すために温泉旅行をしたい」と考えている消費者がいたとしましょう。ここでの顕在ニーズは、すでに消費者が自覚している「腰痛を癒す」です。しかし、腰痛を治すなら近所の整体に行く方法もあります。温泉旅行をしたいと思うその奥には、「仕事や家事から離れる」「心のリフレッシュ」という潜在ニーズがあると考えられます。

そのため、温泉プランだけでなく、家事代行サービスや癒しグッズなどの紹介もできるようになります。潜在ニーズが見えてくると、サービスの提案が広がるのが特徴です。

ニーズとウォンツの違い

ニーズと類似する概念としてウォンツがあります。ニーズは目的で、ウォンツは手段です。

先の例でのニーズは「腰痛を癒す(顕在)」や「仕事や家事から離れる(潜在)」で、ウォンツは「温泉旅行をしたい」となります。つまりニーズを満たすための手段がウォンツです。

顧客が自分の要求を言語化する際、ウォンツを表出することが多いです。「温泉旅行に行きたい」というウォンツを聞いて具体的な手段を提供することは簡単です。しかし、ウォンツを通じて果たしたい目的(顕在・潜在ニーズ)を的確に把握することで、最適な提案や製品・サービスを提供することができます。顧客満足度の向上や競合との差別化を実現するためにも、潜在ニーズの把握は必要なのです。。

潜在ニーズとインサイトの違い

潜在ニーズと混同しがちな概念としてインサイトがあります。

インサイトとは消費者自身でも認識できていない本音や感情のことを指し、潜在ニーズよりもさらに奥、氷山でいえば最も深い位置に当たります。インサイトを見つけ出すことで、新たなサービスが提供でき、マーケティングの幅が広がります。

潜在ニーズは本人が気付けていないものの、アンケートやインタビューを行うことで、言葉として断片的に現れ、ふとした瞬間に本人が自覚するケースもあります。一方、インサイトは潜在ニーズよりもさらに深層にあるため、言語化されることはほぼありません。

そのため企業側として把握することが最も難しい要素であり、顧客の言動から「こういうインサイトがあるのでは?」という仮説を立て、検証していくことが求められます。

関連記事:消費者インサイトとは?事例や調査方法、活用のポイントを解説

潜在ニーズが重要な理由

潜在ニーズが重要な理由

潜在ニーズを把握することが重要な理由としては、以下の点が挙げられます。

商品開発に活かせる

消費者の潜在ニーズを把握することで、商品開発に活かせます。

先の旅行の事例で挙げたように、「腰痛を癒す」という顕在ニーズだけを把握していては、旅行や健康グッズなどの案しか打ち出せません。しかし、「仕事や家事から離れる」といった潜在ニーズを把握できれば、仕事や家事を楽にするグッズの開発にも繋げられるでしょう。

潜在ニーズを基に開発された商品は自社の独自性を発揮しやすいため、競合との差別化も図りやすくなります。


新規顧客の開拓につながる

潜在ニーズを起点にマーケティングプロモーションを行うことで、新たな顧客の開拓も実現できます。

潜在ニーズは把握しにくい分、まだ他社も対応できていない市場が眠っている可能性が高いです。先の旅行の例では、「腰痛を癒す」という顕在ニーズでは腰痛持ちの人のみが対象ですが、「仕事や家事から離れる」という潜在ニーズの把握でビジネスパーソンや主夫・主婦にも顧客層が広がります。

潜在ニーズの把握は、新しい市場や顧客を効果的に開拓するための一つの方法なのです。

商談で本質的な解決策提案に役立つ

潜在ニーズの把握は、商談において本質的な解決策の提案に役立ちます。

顧客の要望を聞くとき、顧客はウォンツを軸に話を進めることが多いですが、企業がその奥にあるニーズを把握することで課題の根本的な解決に繋がります。

仮に「業務の自動化ツールを導入したい」という顧客がいたとします。導入理由が人手不足による省力化であった場合、専門知識が必要なツールは導入しても使いこなすまでに時間がかかってしまうので、ツール選びが重要なことがわかります。また、業務の外部委託などツール以外の方法も、課題の解決の一案となるでしょう。

ウォンツだけを聞くと表面的な解決に留まりますが、潜在ニーズを押さえることで、より本質的な解決策を提示できるのです。

潜在ニーズの見つけ方とポイント

それでは潜在ニーズはどのように見つければいいのでしょうか。ここからは潜在ニーズの見つけ方やポイントについてご紹介します。

アンケート調査を実施

アンケート調査は効率的に潜在ニーズを見つけられる手段です。一度に多くの人を対象に実施でき、デジタルアンケートなら結果もすぐに集計できます。

顧客の回答(ウォンツ)に対して、なぜこの回答が出てきたのか段階的に繰り返し考察することで、潜在ニーズを探り出します。あらかじめ「こういうニーズがあるのでは」と仮説を立てた上で設問を設定する工夫も大切です。

インタビューを実施

インタビューでは顧客と直接会話をすることで、潜在ニーズを調査します。アンケートとは異なり、その場その場の回答に応じて、柔軟に質問できるため、より潜在ニーズを発見しやすいといえるでしょう。

インタビューには大きく以下の2つの手法があります。

手法概要
グループインタビュー複数の調査対象者を集めて、インタビューを行う手法。質問に対して調査対象者同士でディスカッションしてもらうことで、多様なニーズを引き出すことができる。
デプスインタビューインタビュアーと調査対象者が1対1で対話する手法。個別で時間をかけて対話することができるため、より深いニーズを引き出すことができる。

インタビューでは顧客から出たウォンツを起点に、「なぜそう思うのか」といった質問を繰り返し、掘り下げていくことが基本です。例えば以下のような流れです。

①ホームページを作りたい

 ⇒なぜ

②Web上からの集客をしたいから

 ⇒なぜ

③既存顧客の売り上げが減少しているから

 ⇒なぜ

④より便利な商品が出てきたから

 ⇒潜在ニーズは商品開発

インタビューにおいてもあらかじめ仮説を構築し、質問リストを作っておくとスムーズに進めることができます。

行動観察調査(エスノグラフィー)を実施

行動観察調査(エスノグラフィー)も潜在ニーズを調査する上で有力な方法です。

調査員が顧客の生活空間や業務環境に入り込み、製品の購入を考えている顧客の様子やサービスが実際に使われる様子などを観察することで、潜在ニーズを抽出します。

行動観察調査は時間と手間がかかりますが、アンケートやインタビューとは異なり行動を観察できるため、新たな発見に繋がることがあります。製品・サービスを使用していないときの顧客の様子もわかるため、より精度高く潜在ニーズの抽出ができるでしょう。

ソーシャルリスニングを活用

ソーシャルリスニングも潜在ニーズの調査に活用されます。ソーシャルリスニングとは、SNSやレビューサイトなどに投稿されている消費者の声や情報を収集・分析する手法です。

SNSやレビューサイトには、製品・サービスを活用した消費者の本音が溢れています。これらの情報を適切に収集し分析することで、潜在ニーズやインサイトを発見できる可能性があるのです。

Meltwaterのソーシャルリスニングツールを活用することで、SNSをはじめとした多くのメディアから、情報を一元的に集約することが可能です。グローバルなデータをリアルタイムで分析することで、潜在ニーズを導き出すことができるでしょう。詳しくはこちらのページよりご確認ください。

潜在ニーズを活用した企業の成功例

最後に潜在ニーズを活用した企業の成功例をご紹介します。

成功例1:徳武産業株式会社

スリッパメーカーであった徳武産業株式会社は、行動観察調査(エスノグラフィー)を実施して、高齢者向けの介護靴を開発しました。

高齢者の顕在化ニーズは「転ばずに歩く」ことであり、その手段(ウォンツ)として「リハビリ」に取り組んでいました。徳武産業はこのウォンツとニーズに対して、靴を改良することで対応できないかを考えたのです。高齢になるとつまづいて転びやすくなるのはなぜかという問いを立て、実際に施設を訪ね、徹底的に観察を行いました。

観察の結果、靴のつま先の角度を変えることで転びにくくなることなどを発見し、「あゆみシューズ」の開発に至ったのです。

実際の高齢者の様子をしっかりと観察することで、「転ばない靴」という潜在ニーズを捉え、新商品開発に繋げた好事例といえるでしょう。

参考:潜在ニーズを引き出している事例の考察|金沢星稜大学

成功例2:ヨリタ歯科クリニック

大阪府にあるヨリタ歯科クリニックは、歯医者を治療のためではなく、予防のための場所として位置づけています。

きっかけは「歯医者に行くと、歯が削られたり詰め物をされたりして苦痛だ」という患者の声です。従来の歯医者は、歯が悪くなってから仕方なく行くところでした。

そこで院長は、歯医者に通うのが楽しくなるような企画を考えました。「スマイル&コミュニケーション」をコンセプトに、子どもから大人向けに予防のためのサロンを開いたり、キッズルームを設けたりしました。

「歯が削られて苦痛だ」というウォンツと「歯を治療する」という顕在ニーズから、「歯医者で治療しなくて済むようになる」という潜在ニーズを導き出し、発想転換した事例です。

参考:潜在ニーズを引き出している事例の考察|金沢星稜大学

まとめ|潜在ニーズを把握し顧客満足度を向上させよう

マーケティングの成否は、顧客のニーズを的確に捉えられるかで大きく左右されます。特に顧客自身も気付いていない潜在ニーズは、顧客満足度や競合他社との差別化に大きく関わる要素です

インタビューや行動観察調査などに取り組むことで、潜在的なニーズを的確に捉え、マーケティングアプローチに活かしていきましょう。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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