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ネット風評被害とは?実例や発生する原因、対策について解説

ネット風評被害とは?実例や発生する原因、対策について解説


宮崎桃

Aug 5, 2024

SNSやWebサイトは、自社の情報を顧客に分かりやすく伝える上で有用なツールとなりますが、時に自社にとってネガティブな影響を及ぼすこともあります。

その最たる例の一つがネット風評被害です。

この記事ではネット風評被害の概要や実例などを踏まえつつ、原因や企業への影響についてご紹介します。

併せてネット風評被害の防止策や対策、ポイントなども併せて解説します。

ネット風評被害とは?

ネット風評被害の実例

ネット風評被害が発生する原因

ネット風評被害が企業にもたらす影響

ネット風評被害の防止策

ネット風評被害が発生した場合の対策

まとめ

ネット風評被害とは?

ネット風評被害とは

ネット風評被害とは、自社や提供している製品・サービスなどに関する根拠のない噂や誤情報が、インターネット上で拡散されることによって発生する被害の総称です。

企業のイメージや売上の低下、採用活動や資金繰りの難航などが被害の一例です。

対面での会話による風評被害とは異なり、ネット風評被害には以下のような特徴があります。

  • 匿名性が高く、情報の発信者を特定しにくい
  • 拡散スピードが速く、深刻な被害に繋がりやすい
  • 被害に関連した情報の完全削除が難しい

現代では、多くの人がインターネットのサイトやSNSで情報を発信しているため、どの情報が正しいか判別しにくくなりました。そのためネット上で自社に関するネガティブな情報が拡散されると、たとえそれが偽情報や誤情報であっても本当の情報であると思われてしまうことがあり、自社のイメージや売上に大きなダメージを及ぼします。

こういった状況においては、あらゆる企業はネット風評被害について正しく認識し、防止策や発生時の対処方法などを把握しておかなければなりません。

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ネット風評被害の実例

ここでネット風評被害の実例を確認しましょう。

1. 誤解の拡散によるネット風評被害

2021年8月頃、新型コロナウイルスのワクチンが入ったトマトが市場に出回るというデマが、SNSで拡散しました。

 その投稿内容には、ワクチン入りトマトの開発や市場流通に関わる企業名が複数記載されており、それらの企業に対する不買行動に発展するに至ったのです。

これらの企業は同年10月に設立を控えていた一般社団法人Plant Based Lifestyle Labの参画メンバーであったことから、このプロジェクト内容が曲解されたことによって、ワクチン入りトマトの誤情報が出たと推察されています。

2. 意図的に作られた偽情報によるネット風評被害

2024年3月3日、X(Twitter)で某銀行について、「3月14日に取り付け騒ぎが起こることに備えて行員に通知がありました」といった虚偽の投稿がありました。

取り付け騒ぎとは、銀行などへの信用低下によって、顧客が預金や貯金などを取り戻そうと、店舗などに殺到する現象です。

銀行はこの投稿が事実ではないことを公式ページで提示したり、記者会見を開いたりするなどして説明を重ねました。

投稿者は逮捕されましたが、銀行関係者や顧客に混乱を招いた事件と言えるでしょう。


▶あわせて読みたい:X(Twitter)の監視で企業の炎上を防ぐ5つの方法とは?炎上事例も紹介

3. 従業員の不祥事によるネット風評被害

2019年2月、某飲食店のアルバイトが調理場での不適切な動画をSNSで配信しました。動画は、一度ゴミ箱に捨てた魚の切り身を再度取り出して調理しているところを撮影したものです。

調理されたものはお客さまには出されなかったものの、店舗の運営会社は動画配信に関わったアルバイト従業員2人と投稿を拡散させた高校生に、法的措置をとる決断をしました。店の衛生面に誤解を与えたばかりでなく、株価の下落や時価総額の損失など甚大な被害を招きました。

アルバイト従業員がバイト先での不適切な行為をSNSで拡散させる不祥事、いわゆるバイトテロは国内で2007年から発生しています。バイトテロがあった店に行きたくないと思う人は9割以上いるという調査結果もあり(参照:【調査リリース】2021年7月調査)、従業員へのSNS研修がいかに重要かが分かります。


ネット風評被害が発生する原因

ネット風評被害が発生する原因としては、大きく以下の3点が挙げられます。

1. SNSや掲示板サイトの不適切な投稿

SNSや掲示板サイトの不適切な投稿は、ネット風評被害の発生に繋がりやすいと言えます。

SNSなどのメディアは匿名性が高い不特定多数のユーザーが利用していることから、信憑性のない不適切な投稿がされることも多くあります。たとえ情報源が信頼できるものでなくても、多数のユーザーによって取り扱われることで、「皆が言っているから本当だろう」と信憑性が高まってしまう難点があるのです。

また、従業員が個人のSNS上で不適切な投稿をし、その内容が拡散された場合、企業のネット風評被害に直結するケースもあります。

このようにSNSや掲示板サイトは、ネット風評被害の原因となりやすいため、活用する際は注意しなければなりせん。

2. 顧客の口コミ

顧客のネガティブな口コミからネット風評被害に繋がるケースもあります。

事実や実体験に基づいた批評や批判であれば、ネガティブな口コミであっても製品・サービス改善のヒントになるでしょう。しかし、根拠のないネガティブな口コミは被害の元となります。中には意図的にネガティブな口コミをするものもいるため、注意しなければなりません。

製品の購入検討時にインターネット上の口コミを参考にする人は、全世代の約55%というデータもあり、口コミの影響力の大きさがうかがえます。

(参照:【ネット上の口コミ情報に関する調査】2023年3月調査)

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3. マスコミによる報道

マスコミによる報道も、時にはネット風評被害を招く原因になります。

SNSのように個人が発信する情報と比べ、テレビや新聞(Web版含め)などのマスメディアは、信頼性が高い情報源と認識されています。

そのためマスメディアで誤情報や偽情報が報道されてしまうと、瞬く間にその情報が信憑性のある情報として拡散し、ネット風評被害に繋がる恐れがあるのです。

またマスコミが独自に情報を解釈した報道や、より注目を集めるために都合の良いように情報を切り取った報道も誤解を招きやすく、ネット風評被害に繋がる可能性があるでしょう。

ネット風評被害が企業にもたらす影響

ネット風評被害が企業にもたらす影響

インターネット上で企業に関する根拠のない情報が生じた場合、企業に対して以下のような被害をもたらします。

1. 企業・サービスの信用低下

インターネット上の風評により、企業や製品・サービスに対する信用が低下します。

ネガティブな投稿やセンセーショナルな投稿は世間の注目を集めやすいという調査結果があり、真実ではないにも関わらずSNSを中心に瞬く間に拡散されてしまうことが要因の一つです。

事実を公式に提示したとしても、一度低下した信用やイメージを回復するには相当な時間と費用がかかるため、企業への影響は計り知れないでしょう。

2. 売上の減少

企業への信頼低下により顧客離れが進み、売上や業績の悪化といった被害を受ける恐れがあります。

売上が減少すると、設備投資や従業員の給料にも影響が出て、製品の質が保てなくなったり従業員離れが進んだりしてしまうでしょう。

企業のイメージや信用の回復には時間がかかり、最悪の場合は倒産などに追い込まれかねません。

3. 株価の下落

株価の下落や低迷などを引き起こす可能性もあるでしょう。

インターネットでの風評が生じることで株主からの信用も下がります。「大きな影響が出ないうちに株を売ってしまおう」と考える株主が増えるとさらに株価が下がり、他の株主も次々と離れていくといった負のスパイラルが生じかねません。

また株価の下落や低迷が続くことで、取締役員が解任され会社が買収されたり、銀行からの信用も下がって資金繰りが悪化したりする可能性もあるでしょう。

4. 従業員のモチベーション低下

顧客や株主といった外部ステークホルダーからの評価やイメージが悪化すれば、従業員はその企業で働くことに誇りが持てなくなり、モチベーションが下がってしまいます。

外部から色眼鏡で見られたり、自分の責任でないにも関わらず顧客から厳しい言葉を投げられたりすることもあります。

従業員エンゲージメント(企業に貢献したいという意欲)が減少すると、業務が効率的に回らなくなるだけでなく、最悪の場合離職してしまう従業員も現れるでしょう。

5. 採用率の低下

インターネット上での風評により企業イメージが低下すれば、その企業に就職したいと考える求職者は少なくなります。

既に内定を出した候補者からの辞退も発生する可能性もあるため、採用率が大きく低下してしまうでしょう。

新入社員が入らないことで、既存従業員の負担も増えることになり、新たに離職者が発生するという悪循環が生じかねません。

ネット風評被害の防止策

それではどのようにネット風評被害を防止すればよいのでしょうか。

ここからは具体的な防止策として、以下の4つの方法をご紹介します。

1. 自社情報の定期的なモニタリング

ネット風評被害を防止するには、SNSやWebメディアなどの定期的なモニタリングが有効です。自社に関する情報をチェックすることで、不適切な投稿を発見した際に削除依頼や声明発表といった対応を早期に図ることができます。

害のある情報の早期発見には、以下の方法があります。

  • エゴサーチによる検索
  • メディアモニタリングのツールの利用


「エゴサーチ」とは、検索サイトやSNSで社名や製品名を用いて自社のことを検索・調査することです。ただし手動での作業のため、膨大な工数がかかってしまうのがデメリットです。

効率的なメディアモニタリングを実施するには、メディアモニタリングツールの導入をおすすめします。「Meltwater」では、メディアモニタリングツールを提供しております。

2. ソーシャルメディアポリシーなどのルール策定

ネット風評被害は顧客やマスコミからだけでなく、自社従業員の不適切な言動によっても起こり得ます。対策として、ソーシャルメディアポリシーなど、企業や従業員がSNSを活用する際のルールを策定しておくことがおすすめです。

特に従業員が個人名でSNSアカウントを運用している場合、そこでの誤った発言が「〇〇の会社の従業員の発言」として捉えられ、企業が責任追及されてしまうことがあります。

また、公式アカウントでのちょっとした投稿ミスもネット風評被害になりかねません。

そのため、情報を発信する際のルールが必要です。ソーシャルメディアポリシーは特に決まったものがあるわけではなく、自社でオリジナルのものを作成します。ソーシャルメディアを利用する目的や投稿時の禁止事項などを盛り込み、自社従業員の言動に起因したネット風評被害を防止しましょう。

3. 従業員教育の徹底

ネット風評被害を防止するには従業員教育の徹底も欠かせません。ソーシャルメディアポリシーの内容に基づき、SNSを正しく利用できるように情報リテラシー(情報を読み解き、適切に活用する力)を高めます。

どういった投稿が不適切なものとして判断されてしまうのか、またネット風評被害が生じた際にどういった対応をすべきかといった点も、事例を交えながら提示すると分かりやすいでしょう。

ネット風評被害への対応やポイントについては、後ほどご紹介します。

4. 危機管理体制の整備

ネット風評被害が発生した際にスムーズに対処できるよう、危機管理体制を整備しておくことも必要です。

ネット風評被害の発生時に「誰が、どういった対応を、どのタイミングで実施するのか」といった点を明確にします。

公式ホームページやSNSの公式アカウントに声明文を発表する担当者や発表の時期、記者会見の担当者、またそれらの人たちに指示を出す人も決めておき、マニュアルとしてまとめます。

マニュアルは社内で共有し、研修で被害発生時のシミュレーションを行うのも良いでしょう。

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ネット風評被害が発生した場合の対策

ここからはネット風評被害が発生した場合の対策についてご紹介します。

1. 事実確認と証拠保存を行う

SNSなどで自社に関するネガティブな情報が出回るようになったら、まずは情報の事実確認を行いましょう。情報が正しいにも関わらず誤情報として発表してしまうと、逆に批判を受けることになりかねません。

事実確認の結果、正しい情報であった場合は、謝罪や製品の回収などの措置をとることが必要です。

誤情報や偽情報であった場合は、投稿内容をスクリーンショットで保存し、日時やURLと併せて記録しておくことがポイントになります。法的な対処を行う際に必要になるため、忘れずに対応しておきましょう。

2. 誤解を解くための声明文を発表する

ネット風評被害が発生した際は、早急に自社サイトやSNS公式アカウントなどで誤解を解くための声明文を発表しましょう。削除請求や法的措置などは時間がかかるため、声明文を出すのが取り急ぎの妥当な方法です。

たとえば、2023年9月に天ぷら屋「天一 銀座三越店」で食中毒騒動が発生しました。名称が似ているラーメンチェーン店「天下一品」を運営する株式会社天一食品商事は、天一の食中毒騒動は天下一品とは関係ないことを公式サイトで発表し、風評被害が広がる前に誤解を解きました。

天下一品のウェブサイト

引用:銀座の天一・食中毒騒動に「天下一品」が見せた好守 巻き込まれ風評被害も、危機対応の妙が光った | インターネット | 東洋経済オンライン

3. 書き込みの削除請求をする

誤解を解くための声明文発表と併せて、書き込みの削除請求を行うこともできます。

削除請求の方法は以下の3つです。

  • 直接投稿者に削除依頼を行う
  • 送信防止措置により、Webサイトの運営者やプロバイダなどに削除依頼を行う
  • 裁判所に削除の仮処分を申し立てる

SNS投稿の発信者を特定できた場合、直接削除を依頼できます。

依頼に応じてもらえなかったり、掲示板で投稿者が特定できなかったりする場合は、送信防止措置でWebサイトの運営者やプロバイダなどに削除を依頼してみましょう。ただし、削除されるかどうかは、運営者やプロバイダの判断にゆだねられます。

もし送信防止措置依頼でも削除に応じてもらえなければ、裁判所に対して削除の仮処分を申し立てるというのも一つの方法です。弁護士の協力が必要となります。

これらの手続きをしても、既に拡散してしまった投稿はスクリーンショットなどで保存されている可能性もあり、完全に削除することは難しい点は留意しておきましょう。

4. 場合によっては法的措置を検討する

もしネット風評被害の元になった投稿が悪質であり、自社への影響も大きくなってしまった場合、法的な措置を検討することも必要です。

民事上の対応

民事上の対応としては損害賠償請求が挙げられます。損害賠償には、精神的な苦痛に対する慰謝料や、投稿者の特定のためにかかった費用などが含まれます。

損害賠償請求を行うには、まずネット風評被害の元になった投稿を発信した者を特定する必要があります。匿名性が高く簡単には投稿者を特定できない場合は、プロバイダに発信者情報開示請求などを行います。

刑事上の対応

投稿内容が悪質で多大なるネット風評被害を受けた場合、刑法上の罪が投稿者に適用される可能性があります。

ネット風評被害の罪に該当するのは以下のような罪です。

  • 名誉毀損罪
  • 信用毀損罪
  • 偽計業務妨害罪

警察に対して被害状況を報告する際は、投稿内容に関する情報はもちろん、その投稿によってどういった被害が出ているかを詳細にまとめた資料が求められるでしょう。

また手続きに関して弁護士のサポートが欠かせないため、警察への相談と併せて、信頼できる弁護士事務所に依頼することをおすすめします。

まとめ

ネット上の風評は、売上の低迷やステークホルダーからの信頼低下といった様々な被害を生じさせます。

インターネットは生活に欠かせないもので、ネット風評被害を完全になくすことはできないでしょう。そのため被害を想定して対策を練り、適切に対処することが必要です。

普段からメディアモニタリングを中心に防止策を徹底して行うことで、ネット風評被害として顕在化する前に事態を収束できることもあります。

ぜひこの記事を参考に、ネット風評被害の防止や対策に取り組んで頂ければ幸いです。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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