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クライシスマネジメントとは?リスクマネジメントとの違いや実施プロセスを解説

クライシスマネジメントとは?リスクマネジメントとの違いや実施プロセスを解説


宮崎桃

Aug 5, 2024

自然災害やテロ、従業員の不祥事などは、企業に甚大なダメージを与えることがあります。クライシスマネジメントは、そのようなリスクが高まっている現代において、企業を守る上で欠かせない手法です。

本記事ではクライシスマネジメントの概要やリスクマネジメントとの違いなどを踏まえ、重要性や発生要因の種類、実施プロセスを解説します。

クライシスマネジメントにおけるポイントや、企業事例も併せてご紹介します。

クライシスマネジメントとは?

クライシスマネジメントとリスクマネジメント、BCMとの違い

クライシスマネジメントの重要性

企業におけるクライシスの主な要因と具体例

クライシスマネジメントの実施プロセス

クライシスマネジメントを実施した事例

まとめ

クライシスマネジメントとは?

クライシスマネジメント (Crisis Management)とは、企業に多大な影響を及ぼす危機(クライシス)が生じた際に、その影響を最小限に抑える(マネジメント)ための手法です。日本語で直訳すれば「危機管理」となります。

クライシスの要因は、地震災害や経済危機など自社の外部から来るものと、社員の不祥事や製品の不具合など自社の内部から起こるものがあります。クライシスが起こると、売買の取引ができなくなったり、資金の流れが止まったりするなど、経営が立ち行かなくなる可能性があります。

クライシスマネジメントは上記のような事態を避けるために必要です。危機が生じてもできるだけ早く対応できるよう、事前に対策を考えておきます。クライシスを最小限に抑えるには、初動の早さがカギです。

2011年の東日本大震災や2020年の新型コロナウイルスの蔓延などをきっかけに、クライシスマネジメントへの注目が集まっています。

▶あわせて読みたい:レピュテーションマネジメントとは?重要な理由や方法、事例を解説

クライシスマネジメントとリスクマネジメント、BCMとの違い

クライシスマネジメントと関連した概念としてリスクマネジメントとBCPがあります。ここでそれぞれの違いを確認しましょう。

リスクマネジメントとの違い

リスクマネジメントとは、あらかじめ事業運営上想定されるリスクを洗い出し、リスクが顕在化する前に防止したり、リスクが起きた後に被害を最小化したりするために行うマネジメントです。定義は以下の通り複数あります。

【狭義のリスクマネジメント】

リスクマネジメント:リスクが起きる前の防止策

クライシスマネジメント:危機が発生した後の対応

【広義のリスクマネジメント】

リスクマネジメント:リスクが起きる前の防止策と、危機が発生した後の対応

(クライシスマネジメントの意味が内包される)

【危機の規模による使い分け】

リスクマネジメント:想定できるレベルでのリスク対応

クライシスマネジメント:企業存続を脅かすレベルでの危機対応

BCMとの違い

BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)は、事業継続にフォーカスしたクライシスマネジメントの一種です。災害やテロといった非常事態が起きた場合に、その被害を最小化し、事業を継続させるためのマネジメント全般を指します。

事業継続マネジメントの業務は、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の作成・改善、従業員の訓練などです。BCPの作成では、災害発生時に優先して復旧させる事業を選定し、リスクや影響などを想定しながら、目標復旧時間や対応策などを規定します。

クライシスマネジメントの重要性

クライシスマネジメントの重要性

クライシスマネジメントは、企業に対するイメージや信頼を維持する上で重要な役割を果たします。

クライシスが生じた際に対応が後手に回ってしまうと、被害規模が大きくなり、株主や顧客への影響も拡大してしまいます。今後の方針などを即時に示さなければ信頼を失い、自社から離れていくでしょう。

無事に事業を再開できても顧客が戻らず、結局事業の縮小や撤退などを余儀なくされる可能性があります。

また信頼を築くべき相手は、従業員も例外ではありません。従業員の命や生活水準を確保する上でも、クライシスマネジメントは重要な役割を担います。従業員を守ることは、離職防止や社内全体のモチベーションアップに繋がります。

クライシスマネジメントに取り組むと、危機の最中も収束した後も、経営の流れを止めることなく事業を維持できます。危機への誤った対応による二次被害なども防止できるでしょう。

企業におけるクライシスの主な要因と具体例

企業に影響を与えるクライシスが生じる要因には、外部要因と内部要因があります。

外部要因

企業の外側で起こる原因のことを、外部要因といいます。クライシスの外部要因としては、以下のような要因が挙げられます。

発生要因クライシスの具体例
自然災害・地震や津波などによる事務所の破損・倒壊
・悪天候などに起因したサプライチェーンの崩壊
感染症の蔓延・出勤できないことによる営業停止
・外出制限などによる顧客の激減
経済・市場動向・金融危機による資金繰り悪化
・為替変動によるコスト増加
インフラ障害・ネットワーク障害による営業停止
・大規模停電による営業停止
法律改正や規制・法律改正によるサービス廃止や大幅な変更
その他・取引先の倒産による業績悪化や連鎖倒産
・風評被害発生による企業イメージの悪化

内部要因

企業内部に起因したクライシスの要因としては、以下のような点が挙げられるでしょう。

発生要因クライシスの具体例
従業員の不祥事。不正会計や不適切な言動による企業イメージの低下
・不適切な情報管理による個人情報の大量流出
製品・サービスの品質・重大な欠陥による大規模リコール
・自社製品を利用したことによる事故の発生
その他経営者や役員などの急死による混乱

クライシスマネジメントの実施プロセス

クライシスマネジメントは以下の3つのプロセスで成り立っています。

  1. クライシス発生前の準備段階
  2. クライシス発生時の対応段階
  3. クライシス発生後の回復段階

それぞれ確認しましょう。

準備段階(クライシス発生前)

クライシスが発生する前の準備段階として、まずはCMP(クライシスマネジメントプラン)を作成します。

CMPとは、クライシス発生時における対応計画です。以下のようなことを規定しておきます。

  • クライシスのレベル基準
  • 状況の確認方法
  • 指揮命令プロセス・責任者
  • 社内外の情報伝達手段・プロセス
  • 事業継続のための計画(BCP)

危機的な状況下では従業員も混乱しやすく、被害が拡大する恐れがあります。そのため、組織全体を把握している経営トップからの指示が必要です。クライシスのレベルによって意思決定のプロセスを考えておきます。実際に危機が発生した際も冷静に指示が出せるよう、シミュレーションを繰り返し実施しておくことも有効な取り組みです。CMPが実態に適したものかどうかの見直しにもなります。


これらの取り組みに加え、市場動向や法改正などについて、日頃から意識してモニタリングしておくことで、クライシスに繋がるリスクを早期発見できるでしょう。顧客の声のモニタリングには、ソーシャルリスニングやSNS分析などが有効です。

対応段階(クライシス発生時)

クライシスが発生した際は、まずは情報収集を行い、危機発生の原因や被害状況などについて事実確認を行いましょう。

次に把握した情報について社内外で共有し、CMPに基づいて対策方針を明示し、実行に移します。被害の拡大や二次被害発生を防止し、事業復旧に向けた対応を行います。

発生したクライシスが社内に起因したものであれば、ごまかすような言動はせずに事実を公表し、各関係者に対して謝罪する必要があるでしょう。

回復段階(クライシス発生後) 

クライシスによる被害が収束した後は、クライシス発生要因の分析と再発防止策の検討、そしてステークホルダーからの信頼回復が必要です。

クライシスが起きると責任を追及することに意識が向きがちですが、重要なのは「なぜ起きたのか」「再発しないためにはどうすべきか」を考えることです。特定の部門だけに任せるのではなく、企業全体で対応することが求められます。

CMPの効果を検証し、より実態に即した形に改善することも必要になるでしょう。クライシス対応の専門家の力を借りることも、一つの方法です。

また、ステークホルダーとの関係を修復するための取り組みも実施しなければなりません。経営トップの謝罪回り、公式ホームページへの改善策実行の提示、販売再開の際のクーポン配布、従業員のボーナスアップなどの方法が考えられます。


クライシスマネジメントを実施した事例

最後にクライシスマネジメントの実施事例をご紹介します。

1. チョコレートの虫混入事件

2013年6月11日、SNS上に購入したチョコレートに虫が混入していたという内容が投稿されました。その投稿にはチョコレート内部から芋虫が出てきた画像が添付されていたことから、瞬く間に拡散され、ネガティブなコメントも多く寄せられました。

この事態が生じた際、チョコレートを提供する運営会社は的確な対応を行い、クライシスの影響を最小化したのです。

具体的には以下のような対応を実施しました。

  1. 写真の商品特徴から出荷日が2012年12月25日であることを把握
  2. 写真の芋虫の状態を専門家の知見に基づき生後30~40日であると推測
  3. 出荷日と芋虫の生後日数から工場で混入したものではないと確認
  4. SNS上で上記見解を発表

事実確認や専門家の知見に基づいた論理的な考えに基づいた発表を行ったことが、重要なポイントと言えるでしょう。

また、担当者がSNSをリアルタイムでモニタリングしていたことも成功の要因として挙げられます。問題の早期発見と迅速な対応により、投稿からわずか3時間で公式発表に至ることができたのです。

2. 薬の毒物混入事件

1982年、頭痛薬に毒物が混入されたことで、7名が死亡する事件が発生しました。

当該の薬を提供していた会社は本事件が発生した後、詳細な調査を行い、毒物が混入したのは工場ではなく小売店であることを突き止めます。

しかし会社は、小売店への責任追及に注力するのではなく、記者会見やメディア出演などを通じて正確な情報を届け、一般消費者の医薬品への不安払しょくに努めました。消費者向けの相談窓口を設置するとともに、意見を募るためのアンケートも実施しました。


これら一連の取り組みを通して、「自社の利益ではなく、消費者の安全を重視している」と評価され、本事件による影響を最小化したのです。


H3 3. 熊本地震から学ぶ複数拠点の重要性

日本は地震大国であり、熊本地震も甚大な被害を生んだ地震の一つです。2016年4月14日と4月16日の二度にわたって震度7の地震が町を襲いました。


庁舎は被災の際、クライシスマネジメントの拠点となるため、事前にできるかぎりの防災対策が重要です。庁舎が被災すると初動が遅れてしまいます。被災地の一つである益城町の庁舎も防災対策はしていましたが、結局一部崩壊し、代替場所として考えられていた総合体育館も被災してしまいました。

企業における防災対策の際も、重要拠点を複数決めてBCPを作成すると良いでしょう。また、建物全体だけではなく、天井やガラスなど非構造部材の耐震性も確認しておく必要があります。企業によっては従業員の安否確認システムを取り入れ、定期的に訓練を行っているところもあります。


まとめ

今回はクライシスマネジメントをテーマとして、概要やリスクマネジメントの違い、実施プロセスなどをまとめて解説しました。

昨今、異常気象をはじめとした自然災害やSNSに起因した風評被害などが増加しており、企業にとって予測できないクライシスが生じる可能性が高まっています。危機発生時の影響を最小化するにはクライシスマネジメントが欠かせません。
Meltwater」のツールをご活用いただければ、各SNSや様々なメディアの情報を効率的にモニタリングでき、クライシスに繋がる情報をいち早く把握できます。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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