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レピュテーションマネジメントとは?重要な理由や方法、事例を解説

レピュテーションマネジメントとは?重要な理由や方法、事例を解説


宮崎桃

Aug 5, 2024

企業の評判は、ビジネスの成功を左右する重要な要素です。そこで重要なのがレピュテーションマネジメントです。レピュテーションマネジメントとは、組織の信頼性と評判を構築、維持、改善する取り組みのことです。

本記事では、レピュテーションマネジメントの基本から実践的な方法、最新の事例まで詳しく解説します。デジタル時代における評判リスクへの対応策や、ステークホルダーとの信頼関係構築のヒントをおつたえします。広報・マーケティング担当者の方はぜひお役立てください。

レピュテーションマネジメントとは?

レピュテーションマネジメントにおける主なステークホルダー

レピュテーションマネジメントが重要な理由

レピュテーションマネジメントに取り組むメリット

レピュテーションマネジメントには「攻め」と「守り」がある

レピュテーションマネジメントの方法

レピュテーションマネジメントの事例

まとめ|レピュテーションマネジメントを実施して自社の評判を向上させよう

レピュテーションマネジメントとは?

レピュテーションマネジメントとは?

レピュテーションマネジメント (Reputation Management)とは、企業が自社の評判を戦略的に管理し、向上させる取り組みのことです。日本語では「評判管理」とも呼ばれるこの概念は、ソーシャルメディアの普及で良い評判も悪い評判も急速に広まる今日、企業の存続にも関わる重要な経営課題となっています。

具体的には、ブランドイメージの構築や顧客満足度の向上などポジティブなレピュテーションを作り上げる面と、風評被害への対策などネガティブなレピュテーションに対応する面が含まれます。特にネガティブなレピュテーションを受けたときの信頼回復に重点が置かれます。

レピュテーションマネジメントの目的は、ステークホルダー(企業との利害関係者)との長期的な信頼関係の構築です。自社に関する情報で誤ったものが拡散した場合、正しい情報を公式サイトに提示したり記者会見を行ったりして、ステークホルダーが納得いくようコミュニケーションを続けます。

もしもの事態を想定して対応の流れを作っておくことが重要です。

レピュテーションマネジメントにおける主なステークホルダー

レピュテーションマネジメントの対象として、様々なステークホルダーを考慮しなければなりません。ステークホルダーは、それぞれ異なる場面で企業の評判に影響を与えます。

ステークホルダー与える影響
株主投資決定、株価変動
顧客製品・サービスの購入決定、顧客満足度、他の消費者の購買決定
取引先取引の継続、新規取引の可能性
従業員企業文化の形成、生産性・モチベーション、企業イメージ
地域住民地域社会との関係性、企業の社会的評価
著名人・インフルエンサーブランド認知度、消費者の購買決定
メディア情報拡散、世論形成

優れたレピュテーションマネジメントは、すべてのステークホルダーを考慮に入れ、バランスの取れたアプローチを取ることで実現されます。企業理念に基づいた一貫した姿勢が大切です。

レピュテーションマネジメントが重要な理由

レピュテーションマネジメントは、企業の存続と成長に直結する重要な取り組みです。その理由は主に2つあります。

  • SNSの普及により個人の発信力が高まっているため
  • ポジティブな評判は売上向上につながるため

まず、SNSの普及により、情報の拡散速度と影響力が飛躍的に高まっている点が挙げられます。顧客の不満の声が数時間で数十万回シェアされるような事態も珍しくありません。このような環境下では、企業の些細なミスや不適切な対応が「炎上」を引き起こし、ブランドイメージに致命的なダメージを与える可能性があります。

そのためレピュテーションマネジメントを通して、自社にとって不利な情報が拡散されたときの対策を打っておくことが求められます。SNSからネガティブな評判を抽出するSNS監視も、レピュテーションマネジメントの一つです。


2つ目の理由は、消費者の購買決定においてブランド評判が極めて重要な役割を果たすことです。ポジティブな評判は企業に大きな利益をもたらし、製品やサービスの選択に直接影響を与えます。

スマートシェア株式会社が2023年4月に行った調査では、全世代の約70%が毎日SNSをチェックし、約50%の人が口コミなどのレビューを参考にしてから製品を購入することがわかりました。このことからも、レピュテーションマネジメントの重要性がうかがえます。

(出典元: スマートシェア株式会社のプレスリリース


レピュテーションマネジメントに取り組むメリット

レピュテーションマネジメントに取り組むメリット

レピュテーションマネジメントに取り組むことで、企業は多くのメリットを得ることが可能です。以下では、主要な3つのメリットについて詳しく解説します。

1. 潜在的なニーズの把握

SNSや口コミサイトでの投稿を分析することで、製品やサービスに対する消費者の生の声や隠れたニーズを把握できます。

例えば、食品メーカーであれば、SNS上で「健康」に関する投稿を分析し、新商品の開発や既存商品のリニューアルにつなげることが可能です。さらに、市場トレンドを早期にキャッチすることも可能になるため、経営戦略の立案にも役立ちます。

2. ブランドイメージの向上

レピュテーションマネジメントは、企業のブランドイメージを大きく向上させる役割も果たします。潜在的なニーズに合わせた製品改善は、企業に良いイメージを与えるでしょう。

また、ポジティブな意見だけでなく、ネガティブな意見にも真摯に向き合い、適切に対応することで、企業の誠実さを伝えられます。不祥事発生時でも、迅速かつ透明性のある対応によりむしろ評判が高まったという事例もあります。

このような対応を取ることで、自社に無関心または否定的だった層の認識を好意的なものへと変化させられます。新たなファン獲得にもつなげられるでしょう。

3. トラブル発生時の早期解決

レピュテーションマネジメントは、炎上リスクのある情報の早期発見と迅速な対応を可能にします。SNSや口コミサイト、メディアの報道などを常に観察し、トラブル時の対応方法もあらかじめ決めてあるからです。

例えば、SNSでの顧客の不満をすぐに発見し、個別に対応することで、問題が大事になる前に解決することが可能です。また、製品に関する軽微な苦情を分析し、品質改善につなげることで、将来的な大規模リコールを防ぐこともできます。

ネガティブな評判が広まってしまったときも、だれがどの媒体に正しい情報を提示するのかなど決めていれば、平静を保ちながら対処できるでしょう。

先手を打つアプローチにより、企業は大きな危機に発展しかねない問題に素早く対処できるのです。

▶あわせて読みたい:「炎上」よりも怖い企業にとってのコミュニケーションリスクとは?

レピュテーションマネジメントには「攻め」と「守り」がある

レピュテーションマネジメントは、企業の評判を管理する上で「攻め」と「守り」の両面からアプローチすることが重要です。以下では、「攻め」と「守り」それぞれの特徴と役割について詳しく解説します。

攻めのレピュテーションマネジメント

攻めのレピュテーションマネジメントは、企業の評判を積極的に向上させる取り組みです。

「攻め」では、企業の強みや社会貢献活動を効果的に発信し、ポジティブなイメージを構築します。例えば、環境保護活動の定期的な報告や、革新的な製品開発の背景にある企業理念の紹介などが挙げられます。

SNSや企業ブログを活用した日常的な情報発信も、攻めの一環です。顧客との対話を通じて信頼関係を築き、ブランドロイヤリティを高められます。

守りのレピュテーションマネジメント

守りのレピュテーションマネジメントは、企業の評判を損なう可能性のある事態に備え、対応する取り組みです。

「守り」では、潜在的なリスクを事前に特定し、対策を準備します。例えば、製品の欠陥や情報漏洩などの事態を想定し、迅速な対応手順を確立しておくことが重要です。

また、問題が発生した際の透明性のある情報開示や、誠実な謝罪と改善策の提示も守りの一環です。これにより、信頼の回復と評判の維持を図れます。

レピュテーションマネジメントの方法

レピュテーションマネジメントを効果的に実施するには、様々な方法を組み合わせて総合的なアプローチを取ることが重要です。以下では、主要な4つの方法について詳しく説明します。これらの方法を適切に実施することで、企業の評判を維持・向上させられるでしょう。

1. 従業員への教育

レピュテーションマネジメントにおいて、従業員教育は基盤となる要素です。

企業の評判は、従業員の日々の行動や態度によって大きく左右されます。そのため、全従業員にレピュテーションの重要性を理解させ、適切な行動を促すことが不可欠です。

例えば、SNSの適切な使用方法や顧客対応のベストプラクティスなどを定期的に研修を行うことが効果的です。また、企業理念や価値観を共有し、それらを日常業務に反映させる方法を指導することで、一貫した企業イメージを外部に発信できます。

結果として、従業員一人ひとりがレピュテーションマネジメントの担い手となり、企業全体の評判向上に貢献できます。

2. 一貫した広報活動

様々な広報チャネル(プレスリリース、SNS、Webサイトなど)を通じた広報活動も、ポジティブなレピュテーションの形成には必要です。大切なのはどのチャネルでも一貫したメッセージを発信することです。

製品だけでなく、企業の社会貢献活動や革新的な取り組みなど企業理念に関わる部分も定期的に発信することで、ポジティブなイメージを構築できるでしょう。

また、危機的な状況においても、迅速かつ透明性のある情報開示を行うことが重要です。これにより、ステークホルダーの信頼を維持できます。

3. 危機管理体制の整備

危機管理体制の整備は、企業の評判を守り、信頼を回復する上で不可欠な要素です。

体制を整備するためには、まず潜在的なリスクを特定しておきます。製品のリコールやサービスへのクレーム、従業員の不正行為、情報漏洩などの事態が想定できます。

次に対応策の準備です。定期的な訓練や模擬の記者会見の実施により、実際の危機時に冷静かつ適切に対応できる能力を養っておくのも良いでしょう。

事前準備を行うことで、危機発生時の被害を最小限に抑え、企業の評判を守ることができます。適切な対応は、信頼回復の機会にもなり得るのです。

▶あわせて読みたい:クライシスマネジメントとは?リスクマネジメントとの違いや実施プロセスを解説

4. 専門業者へ依頼 

レピュテーションマネジメントの専門業者に業務を依頼することは、企業の評判管理を効果的に行う上で極めて有効な戦略です。

専門業者は、多様な業界での豊富な経験と最新のトレンドに関する深い知見を持っているので、的確なアドバイスと解決策を提供してくれます。さらに、レピュテーションマネジメントのノウハウを吸収することもできるため、企業全体のレピュテーションマネジメント能力の向上につなげられます。

レピュテーションマネジメントの事例

レピュテーションマネジメントの理論を理解することも重要ですが、実際の企業がどのように実践しているかを知ることも非常に有益です。ここでは、4つの事例を紹介します。

1. 批判にも毅然とした態度で貫いた企業理念|スープストックトーキョー

スープストックトーキョーは、2023年4月に離乳食の無料提供を発表した際、予期せぬ批判にさらさました。SNS上で、子連れ客増加への懸念や、店内環境の変化を危惧する声が相次いだのです。

しかし、同社の対応は見事でした。まず、安易な謝罪を避け、自社の理念「Soup for all!」を堅持しました。過去の食のバリアフリー施策を具体的に列挙し、今回の離乳食の無料提供も「子連れの外食」というバリアフリーの一貫であることを示しました。さらに、批判者を含むすべての顧客を大切にする姿勢を明確にし、対立を煽らない配慮も見せたのです。

この事例は、企業理念に基づいた毅然とした態度が、危機時にも効果的であることを示しています。適切なレピュテーションマネジメントが、企業の評判を守り、さらには高める可能性を示した好事例といえるでしょう。

2. 危機を企業イメージ向上に転換|龍角散

2017年1月、龍角散は予期せぬレピュテーション危機に直面しました。オリンピック出場経験のある陸上選手が、同社ののど飴にドーピング禁止薬物が含まれるという誤った情報をSNSで発信したのです。

この危機に対し、龍角散は迅速かつ適切な対応を取りました。まず、公式ホームページで正確な情報を即座に発表し、誤解を解くことに努めました。さらに、選手が直接謝罪に訪れた際には、選手の将来を考慮し、法的措置を取ることなく、寛容な態度を示したのです。

龍角散のこの対応は、単に危機を回避しただけでなく、企業イメージを向上させる結果となりました。誠実で思いやりのある姿勢が、多くの人々に好印象を与えたのです。迅速な情報発信と思慮深い対応が、企業のイメージ向上につながった事例です。

3. グループ全体のレピュテーションの管理を実践|神田外語グループ

神田外語グループは2020年から、包括的なレピュテーションマネジメントシステムを導入しました。ソーシャルリスニング、報道モニタリング、ニュースフィードを統合し、グループ全体の評判をリアルタイムで把握する体制を整えたのです。

この取り組みにより、同グループの施設がSNS上で人気があり、グループ全体の認知度向上に貢献していることが判明しました。また、競合校の情報をタイムリーに収集し、広報戦略に活用しています。さらに、収集した情報を月次でまとめ、全教職員と共有することで、組織全体のレピュテーション意識を高めています。

この事例は、データドリブンなアプローチがレピュテーションマネジメントに効果的であることを示しています。多様なステークホルダーを持つ組織にとって、包括的な情報収集と分析が評判向上の鍵となることを教えてくれます。

参考:導入事例|神田外語グループ|Meltwater

4. リアルタイムにお客様の声を把握|井筒まい泉

井筒まい泉は、2016年からオンラインメディアモニタリングを導入し、2022年にはソーシャルリスニング機能を強化しました。この取り組みにより、顧客の生の声をリアルタイムで把握し、ブランド価値向上につなげているのです。

具体的な成果として、SNS上の口コミがカキフライの売上向上につながった事例があります。また、顧客が投稿した魅力的な画像をユーザー生成コンテンツとして自社サイトで活用したり、製品パッケージの改善にも顧客の声を反映したりしています。

同社のレピュテーションマネジメントの取り組みは、「お客様のおいしい笑顔のために」という企業ビジョンの実現に直結し、顧客満足度の向上に寄与しているのです。

井筒まい泉の事例は、顧客の声に真摯に耳を傾け、それを積極的に事業に反映することが、効果的なレピュテーションマネジメントにつながることを示しています。

参考:導入事例||井筒まい泉株式会社| Meltwater


まとめ|レピュテーションマネジメントを実施して自社の評判を向上させよう

本記事では、レピュテーションマネジメントの定義から実践方法、事例まで幅広く解説しました。デジタル時代における評判管理の重要性、SNSの影響力、そして顧客の声を活かした戦略的アプローチの有効性がおわかりになったのではないでしょうか。

効果的なレピュテーションマネジメントには、SNSのモニタリングと分析が不可欠です。Meltwaterのソーシャルメディア管理ツールは、強力なソリューションを提供しています。リアルタイムの監視や、詳細な分析、レポート作成機能など、企業の評判管理に必要な機能を網羅しています。ツールを活用してレピュテーションマネジメントを効率的に行いたいとお考えの方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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