コンテンツへスキップ
logo
レピュテーションリスクとは?原因や事例、対策を解説

レピュテーションリスクとは?原因や事例、対策を解説


宮崎桃

Aug 5, 2024

レピュテーションリスクとは、企業に関するネガティブな評判によって起こるリスクのことです。バイトテロやコンプライアンス違反などの報道が相次いでいる現代では、レピュテーションリスクへの対応の重要性が高まっています。

本記事では、レピュテーションリスクの定義から、その原因や対処法までを詳しく解説します。事例を交えながら、企業が直面するレピュテーションリスクを紹介するので、ぜひお役立てください。


レピュテーションリスクとは?

レピュテーションリスクとオペレーショナルリスクの違い

レピュテーションリスクへの対策が重要視される背景

レピュテーションリスクが顕在化した場合の損失

レピュテーションリスクの種類

レピュテーションリスクが顕在化する5つの原因

レピュテーションリスクの測定方法

レピュテーションリスクの事例

レピュテーションリスクへの対策

レピュテーションリスクに備えた保険

レピュテーションリスクが顕在化した場合の対処法

まとめ|レピュテーションリスクを回避するには予防が大事

レピュテーションリスクとは?

レピュテーションリスクとは?

レピュテーションリスク (Reputation Risk) とは、企業やブランドの評判が悪化することによって生じる企業側のリスクのことです。ネガティブな評判が広まると、顧客離れや投資家の信頼低下を招き、売上減少や株価下落など、経営に深刻な影響を及ぼします。レピュテーションリスクにおける評判には、事実に基づくものと基づかないものが含まれます。

SNSの普及により情報がリアルタイムで拡散される現代では、企業の不祥事や不適切な対応が即座にレピュテーションリスクにつながります。このリスクを管理し、企業価値を守るための取り組みがレピュテーションマネジメントです。

レピュテーションリスクとオペレーショナルリスクの違い

レピュテーションリスクとオペレーショナルリスクは、いずれも企業にとって重要なリスクであり、レピュテーションリスクはオペレーショナルリスクの一部です。

オペレーショナルリスクとは、日常業務や運営など企業の内部から起こるリスクのことです。ネガティブな評判だけでなく、人的ミスやシステム障害、自然災害なども含まれます。

一方、レピュテーションリスクは、企業のネガティブな評判が出回り、信頼性が損なわれるリスクです。不適切な広告や商品の品質問題など企業の内部から起こるリスクという点ではオペレーショナルリスクと同様ですが、評判の性質上、外部からの影響を強く受ける点が異なります。

両者は密接に関係しており、例えば、顧客情報の漏洩(オペレーショナルリスク)が企業に対する信頼の低下(レピュテーションリスク)につながったりするのです。

レピュテーションリスクへの対策が重要視される背景

レピュテーションリスク対策が重要視される背景には、以下の2つが考えられます。

  • 企業に対する価値観の多様化
  • SNSの普及

価値観の多様化により、思わぬところでネガティブな評判が生まれる可能性があります。SNSが普及したことで評判は瞬時に広まり、レピュテーションリスクになりかねません。

かつては売上や利益などの財務指標が主な評価基準でした。しかし現代では、企業の社会的責任や環境への取り組み、従業員への待遇、顧客満足度など、数値化しにくい要素も重視されるようになりました。

消費者は商品やサービスの質だけでなく、企業の姿勢や倫理観にも敏感になっているのです。新しい価値観を踏まえずに経営を進めると、企業の不足部分がSNSにより即座に世間の目にさらされ、ネガティブな評判が生まれてしまいます。

このような価値観の変化と情報社会の進展により、企業は利益を追求するだけでなく、社会との良好な関係構築を通じた評判の維持・向上が不可欠となっています。

レピュテーションリスクが顕在化した場合の損失

レピュテーションリスクが顕在化すると、企業は深刻なダメージを被る可能性があります。

最も直接的な影響は収益の低下です。商品やサービスへの信頼が失われると、顧客離れが起こり、売上が急激に減少する可能性があります。例えば、食品偽装問題が発覚した企業では、商品の不買運動が起きて売上が激減することもあるでしょう。

企業イメージの悪化も重大な損失につながります。ブランド価値の低下により、新規顧客の獲得が困難になったり、優秀な人材の確保が難しくなったりします。さらに、株価の下落や取引先からの信用低下など、経営全体に波及する影響も考えられるでしょう。

これらの損失は長期にわたって企業の成長を阻害し、最悪の場合、企業の存続自体を脅かすこともあります。

レピュテーションリスクの種類

レピュテーションリスクにはどのようなものがあるか見ていきましょう。

レピュテーションリスクの種類説明
1. 製品・サービス提供する製品やサービスの品質が下がることにより、企業の評判を損なうリスク
2. 革新開発の遅れなどにより、企業の革新性や将来性に対する信頼を低下させるリスク
3. 職場従業員の質や職場の待遇・環境が悪いことにより、企業の評判が傷つけられるリスク
4. ガバナンス/td>情報の非公表や法令違反などにより、企業の透明性や公正さへの信頼を失うリスク
5. 市民社会貢献や環境への配慮に欠けているため、企業の評価が下がるリスク
6. リーダーシップ経営陣の不祥事や企業ビジョンの不明確さなどにより、社会的信頼を損なうリスク
7. パフォーマンス業績の悪化などにより、市場での競争力がないと見なされるリスク

これらのレピュテーションリスクは、企業の評判を形成する主要な要素を反映しています。

各リスクは互いに関連しているのが特徴です。1つの問題が複数の領域に影響を及ぼすこともあります。そのため、企業は包括的なアプローチでこれらのリスクに対処しなければなりません。

レピュテーションリスクが顕在化する5つの原因

レピュテーションリスクが顕在化する5つの原因

レピュテーションリスクが顕在化する原因は多岐にわたります。ここでは、特に重要な5つの原因を詳しく解説します。原因を把握しておき、適切な対策を講じておくことで、レピュテーションリスクを低減させることが可能です。

1. 経営者や従業員の不祥事

経営者や従業員の不祥事は、企業の評判を一夜にして失墜させてしまいます。例えば、経営者の贈賄行為や従業員のセクハラ・パワハラ問題が発覚した場合、企業の信頼性は大きく損なわれるでしょう。不祥事の影響は、直接関与した個人だけでなく、企業全体に及ぶことが多いです。

メディアによる報道やSNSを通じて情報が急速に拡散され、顧客離れや株価下落などの深刻な結果をもたらすでしょう。対策としては、定期的な倫理研修の実施や内部通報制度の整備などが求められます。不祥事の予防と早期発見・対応が、企業の評判を守る鍵となります。

2. 内部告発 

内部告発とは、従業員が行政機関やメディアに企業内の不正を知らせることです。不正会計や労働法違反などの内部情報が外部に漏洩すると、企業の信頼性は著しく低下します。

内部告発は往々にして、組織内部で問題が適切に処理されなかった結果として起こります。透明性の高い経営体制の構築や内部通報制度の整備に加えて、日頃から従業員の声に耳を傾けることが重要です。

3. コンプライアンス違反

コンプライアンス違反は、粉飾決算や製品の品質データ改ざんなどの法令違反を指し、企業の信頼性を根底から揺るがす重大なレピュテーションリスクになります。企業は法的制裁を受けるだけでなく、顧客や投資家からの信頼を失い、経営的にも大きなダメージを被るでしょう。

定期的なコンプライアンス研修の実施や、内部監査体制の強化などが対策として挙げられます。

また、問題が発生した際の迅速かつ透明性のある対応も、信頼回復を図る上で重要です。コンプライアンスを企業文化として根付かせることが、持続可能な企業経営につながります。

4. 自社商品・サービスの品質低下

自社商品・サービスの品質低下は、顧客満足度を悪化させ、企業の評判を著しく傷つける可能性があります。顧客からの苦情や返品が増加すると、SNSなどで否定的な評価が拡散されやすくなるでしょう。単に売上が減少するだけでなく、ブランド価値の低下にもつながるのです。

対策としては、商品・サービスの品質を厳密にチェックする体制を整えるのがおすすめです。同時に、顧客の声に耳を傾け、問題点を見つけたら迅速に改善することも、重要な業務のひとつに加えておきましょう。

5. 風評被害

風評被害は、事実と異なる情報や誤解に基づく批判が広まることで、企業の評判が不当に傷つけられる事態を指します。

例えば、商品の安全性に関する誤った情報が拡散されることにより、風評被害を被ることもあります。実際に問題がなかったとしても、企業イメージを損ない、売上減少や株価下落を引き起こす可能性があるのです。

風評被害のリスクを低減させるには、SNSなどを常に監視して問題を早期に発見できる体制を整えておくのが良いでしょう。また日頃から積極的に情報を公開し、顧客や社会との信頼関係を築いておくことで、風評被害が起きても、影響を最小限に抑えることが可能です。

レピュテーションリスクの測定方法

レピュテーションリスクを管理するには、自社の評判を正確に把握することが不可欠です。ここでは、企業がレピュテーションリスクを測定するための3つの主要な方法を紹介します。これらの手法を組み合わせることで、より包括的に自社の評判を理解し、潜在的なリスクを早期に特定することが可能です。

1. 報道調査

報道調査では、新聞やテレビ、オンラインニュースなどで自社がどのように報じられているかを客観的に分析するのに役立ちます。例えば、「働きたい会社ランキング」や「顧客満足度調査」での順位をチェックするのも良いでしょう。自社が伝えたい企業イメージと外部が持つイメージと、ズレがないか確認します。

否定的な評判を見つけても落胆せず、改善のチャンスと捉えることが大切です。この方法で、企業は自社イメージを客観的に理解し、適切な対策を講じられます。

2. アンケート調査

アンケート調査は、株主や顧客、従業員、取引先などのステークホルダーから意見を収集するのに効果的な方法です。

調査内容には、企業イメージや商品・サービスの品質、顧客サービス、企業の社会的責任などが含まれます。匿名性を確保することで、より率直な意見を得られる可能性が高まります。

オンラインツールを活用すれば、大規模なアンケートも効率的に実施することが可能です。結果を分析する際は、数値データだけでなく、自由記述欄の意見も参考にしましょう。

定期的にアンケートを実施することで、企業イメージの変化を追跡できます。

3. SNS調査

SNS調査は、リアルタイムで広範囲な意見を収集できる手法です。X(Twitter)やFacebook、Instagramなどの主要SNSプラットフォームで自社名や関連キーワードを検索するエゴサーチと、分析ツールを利用する方法があります。

具体的には、自社に関する投稿の頻度、内容の感情分析(ポジティブ、ネガティブ、中立)、影響力の大きいユーザーの意見などを調査するのがおすすめです。顧客の生の声や最新のトレンドをリアルタイムで把握できます。

SNS分析ツールを活用することで、大量のデータを効率的に処理し、分析することが可能です。競合他社との比較も容易に行えます。根拠のない噂や批判的な投稿がないか確認し、ネット風評被害に備えることもできます。

レピュテーションリスクの事例

レピュテーションリスクが顕在化した事例を知っておくことで、その影響の大きさと対策の重要性がよりよく理解できるでしょう。ここでは、3つの代表的な事例を紹介します。

1. 飲食チェーンのアルバイト不祥事

2013年、大手飲食チェーン店でアルバイト従業員がキッチンの冷蔵庫に入っている様子を写真撮影し、SNSに投稿しました。冷蔵倉庫ではないため、人が入るのは不適切な行為です。この写真は瞬く間に世の中に拡散されました。

この事態を受け、店舗の衛生管理と従業員教育が厳しく批判されました。企業は迅速に謝罪し、該当従業員の解雇や店舗の徹底消毒などの対策を講じましたが、信頼回復には至りませんでした。最終的に当該店舗の閉店を余儀なくされたのです。この事例は、SNS時代における従業員の行動管理の重要性を浮き彫りにしました。

2. 通信業界大手の顧客情報流出事件

2023年、某通信大手企業は、元派遣社員による顧客情報の不正取得と第三者への漏洩が発覚したことを発表しました。900万件以上の個人情報が流出し、その一部が名簿業者に渡っていたことが判明したのです。

流出した情報は、氏名や住所、電話番号などです。同社は、被害者に個別連絡を行い、情報漏洩に対する危機意識の従業員研修や、情報セキュリティ管理体制の強化を約束しました。

3. 大手中古車販売会社の保険金不正請求問題

2023年、国内大手の中古車販売会社で、自動車保険の不正請求が発覚しました。車両の修理費を水増しし、保険会社に過大な請求を行っていたことが明らかになったのです。不正は組織的に行われ、長期間にわたって続いていたとされています。

問題が表面化すると、会社は謝罪会見を開き再発防止策の実施を約束しましたが、消費者からの信頼は大きく損なわれました。保険会社に対しても金融庁による検査が行われ、業務改善命令が出されました。


レピュテーションリスクへの対策

レピュテーションリスクを効果的に管理するには、予防的なアプローチが必要です。ここでは、企業がレピュテーションリスクに対処するための3つの対策を紹介します。これらの対策を適切に実施することで、企業は評判リスクを最小限に抑えられるでしょう。

1. 広報活動の強化

広報活動の強化は、レピュテーションリスク対策の要です。正確な情報をスピーディに発信し、自社の立場や取り組みを世間に伝えていきましょう。具体的には、プレスリリースの発行やSNSの活用、企業ブログの運営などが効果的です。

ネガティブな評判が発生した際は、迅速かつ透明性のある情報開示も重要です。このような継続的な情報発信により、企業は自社のイメージをコントロールし、レピュテーションリスクに対する耐性を高められます。

2. 従業員の教育

従業員教育は、レピュテーションリスクの予防に不可欠です。全従業員が企業の価値観や行動規範を理解し、日々の業務で実践できるようにしましょう。

従業員教育を行う際は、コンプライアンスや情報セキュリティ、顧客対応に関する研修が有効です。特にSNSの適切な使用方法や機密情報の取り扱いに関する教育は重要です。従業員が企業の「広報担当者」としての役割を担っていることを認識させ、責任ある行動を促すことで、レピュテーションリスクを低減できます。

3. 監視・チェック体制の強化 

業務が適切に行われているか確認する監視・チェック体制の強化は、レピュテーションリスクの予防に欠かせません。特に重要なのが、経営陣による相互間の監視強化です。非常勤取締役も積極的に採用し、監督機能を強化しましょう。

また、実際の業務では複数回に渡ってチェックする体制を構築するのも効果的です。担当者による1次チェック、バックオフィスによる2次チェック、内部監査部門による3次チェックなどの仕組みを整えておきましょう。

違反者への処罰は、制裁基準を明確にしたうえで実行に移すことが大切です。一貫した対応を社内全体に発信することで、不祥事の発生しにくい企業文化を醸成できます。

レピュテーションリスクに備えた保険

レピュテーションリスクに備えた専用保険も、企業のリスク管理戦略として注目されています。専用保険は、企業の評判が損なわれた際の財務的な損害を軽減するために設計されており、ミュンヘン再保険やAGIなどがその一例です。

主な補償内容には、メディア報道への対応費用やPRコンサルティング料、危機管理対策費用などがあります。保険会社によっては、事前のリスク評価や予防策のアドバイスも提供しています。
保険の加入を検討する際は、コストと効果のバランスを慎重に判断する必要があるでしょう。

レピュテーションリスクが顕在化した場合の対処法

レピュテーションリスクが顕在化した場合、以下のような対応を迅速に行うのが重要です。

  1. 情報収集と事実確認
  2. 迅速な情報発信と説明
  3. 原因の特定と問題の改善
  4. ステークホルダーへの対応
  5. 再発防止策の策定と実施
  6. 必要に応じた法的措置

特に、正確な情報発信と誠実な対応が信頼回復の鍵となります。また、第三者委員会の設置や外部専門家の助言を得ることで、より客観的で効果的な対策を講じることが可能です。長期的には、この経験を教訓とした企業文化の改革も検討すべきでしょう。

まとめ|レピュテーションリスクを回避するには予防が大事

レピュテーションリスクは、企業の存続に関わる重大な問題です。SNSの普及により、情報の拡散スピードが加速し、企業の評判はより影響力が高まっています。このリスクに対処するには、予防策を講じておくことが不可欠です。

広報活動の強化や従業員教育、監視体制の構築など、多角的な対策が求められます。また、リスクが顕在化した際の迅速かつ適切な対応も重要です。常にレピュテーションリスクを意識し、継続的な管理と改善を行うことで、企業の持続可能な成長を実現できるでしょう。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

LinkedIn