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コンテンツマーケティングとは?メリットや手順、成功事例を解説

コンテンツマーケティングとは?メリットや手順、成功事例を解説


山﨑伊代

Oct 16, 2024

企業のマーケティング担当者の中には、新規顧客の獲得に苦労している方もいるのではないでしょうか。消費者の広告離れや広告の費用対効果の低下により、広告に代わるマーケティングが求められています。そんな中、注目を集めているのがコンテンツマーケティングです。

本記事では、コンテンツマーケティングの概要や実行する手順、成功事例まで、実践で使える情報をお届けします。

コンテンツマーケティングとは?

コンテンツマーケティングとは

コンテンツマーケティングとは、顧客に価値ある情報を提供することにより、自社のブランド認知度アップや顧客獲得を目指すマーケティング手法です。直接的な商品宣伝ではなく、顧客の興味や課題に沿ったコンテンツを通じて信頼関係を構築し、最終的に購買行動につなげます。

コンテンツとは、インターネットやテレビ、紙媒体などのメディアが提供するお役立ち情報のことです。業界によって定義が多少異なりますが、コンテンツマーケティングにおいてはインターネット上で提供される情報を指すことが多いです。以下のようなコンテンツが扱われます。

  • ブログ
  • 動画
  • SNS投稿
  • メールマガジン
  • ホワイトペーパー
  • プレスリリース
  • オンラインセミナー
  • 電子書籍


以下の表で、コンテンツマーケティングとそうでないものの違いを具体例を挙げて比較します。

コンテンツマーケティングコンテンツマーケティングではないもの
・料理レシピブログの投稿
・DIY動画の投稿
・顧客のケーススタディ
・業界動向レポートの公開
・テレビCM・駅構内のポスター、Webサイトのバナー広告、雑誌の全面広告などでの商品紹介
・訪問営業・カタログの郵送

コンテンツマーケティングの特徴は、顧客の自発的な行動を促す点です。情報を与えられるというよりも、自身で見つけ出すという感覚を引き起こすことが、広告とは大きく異なります。企業はブログ記事や動画、インフォグラフィックなど、様々な形式のコンテンツを用意しておき、顧客のニーズに間接的に応えます。

コンテンツマーケティングで成果を出すには、ターゲット顧客の深い理解と継続的な高品質のコンテンツの提供が不可欠です。SEO(検索エンジン最適化)と組み合わせることで、より多くの潜在顧客にリーチできるでしょう。

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コンテンツマーケティングが注目される理由

コンテンツマーケティングが注目を集める理由は、主にインターネット広告への消費者の嫌悪感と広告効果の低下にあります。

従来の押し売り的な広告では、売ることばかりを優先にしているように見えてしまうため、顧客が自身のメリットを感じにくくなってきているのです。特にネット広告は簡単に大量の広告が作れるため、質が低いものが多く出回ったことも、広告のイメージ低下につながりました。

さらに、ネット広告の利用率は年々上昇しているため競争が激しく、約6割の企業が費用対効果が悪化していると回答しています。(参照:株式会社 キーワードマーケティング

こうした状況下で、顧客に価値ある情報を提供し、自然にブランドへの興味や信頼を醸成するコンテンツマーケティングが注目を集めています。一度作成したコンテンツは長期間に渡って使えるため、コスト効率が良いのも魅力です。

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コンテンツマーケティングとコンテンツSEOとの違いとは?

コンテンツマーケティングとコンテンツSEOは、似ているようで実は目的が異なります。簡単に言えば、コンテンツマーケティングは「お客様との関係づくり」が目的、コンテンツSEOは「検索エンジンでの上位表示」が目的です。

コンテンツマーケティングは、顧客に役立つ情報や面白い内容を提供することで、ブランドへの好感度を高め、最終的に商品やサービスの購入につなげる手法です。

一方、コンテンツSEOは、検索エンジンで上位表示されるようにコンテンツを最適化することを指します。キーワード分析や適切な見出し設定など、検索エンジンに評価されるテクニックを使うのが特徴です。

ただし、この2つは完全に別物ではありません。優れたコンテンツマーケティングを行えば自然とSEO効果も高められるからです。

コンテンツマーケティングのメリットとデメリット

コンテンツマーケティングには、様々なメリットとデメリットがあります。以下の表で簡潔にまとめてみました。

メリットデメリット
・潜在顧客との接点を作れる
・Webサイトの訪問者数を増やせる
・広告費を削減できる
・SNSでの露出を高められる
・コンテンツが資産になる
・売上に直結しづらい
・手間と時間がかかる
・即効性が見込めない
・継続してコンテンツを作成する必要がある

メリット・デメリットについて、詳しく解説します。

コンテンツマーケティングのメリット

コンテンツマーケティングの最大のメリットは、潜在顧客との自然な接点を増やせることです。価値ある情報を提供することで、潜在顧客の興味を引き、ブランドへの好感度を高められます。質の高いコンテンツは検索エンジンでも評価され、Webサイトへの訪問者増加につなげられます。

広告費用の削減も大きな利点です。一度作成したコンテンツは長期的に効果を発揮し、継続的な広告出稿に比べてコスト効率が良いとされています。さらに、SNSでの拡散によって露出機会を増やせるのも魅力です。

現代の顧客は自身で情報を探し出すことで購買決定する傾向にあるため、コンテンツマーケティングは時代に適したアプローチといえるでしょう。

コンテンツマーケティングのデメリット

コンテンツマーケティングの最大のデメリットは、即効性に欠けることです。質の高いコンテンツを制作し、顧客の信頼を得るには時間がかかります。そのため、短期的な売上増加や具体的な成果を求める場合には不向きな手法といえるでしょう。

また、常に新鮮で価値あるコンテンツを提供し続けなければならず、人材やリソースの確保も課題となります。

競合他社もコンテンツマーケティングに取り組んでいる場合、自社の独自性も必要でしょう。

コンテンツマーケティングの種類

コンテンツマーケティングの種類は、顧客の購買プロセスに沿って異なります。以下の表で、各フェーズに適したコンテンツの種類と届け方をご覧ください。

フェーズコンテンツの種類
認知ブログ記事、SNS投稿
興味関心ホワイトペーパー、動画
比較検討メールマガジン、セミナー
(事例紹介、製品比較表など)
製薬後ブログ記事、メールマガジン
(使用方法の動画、導入マニュアルなど)

自社または自社の商材を知ってもらう段階では広く情報を伝えるため、SNSでの発信や、検索エンジンから自社のWebサイトへの誘導が有効でしょう。そして、興味関心から購買への段階を経るにつれて、より詳細な情報を伝えていきます。契約後も価値ある情報を届け続けることで、リピート利用につなげます。

ただし、実際の顧客の行動は必ずしもこの順番どおりとは限りません。認知をしたあと衝動的に購入に至るケースもあります。顧客の状況に合わせて最適な情報を提供できるよう準備しておきましょう。

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コンテンツマーケティング戦略を立案する手順

コンテンツマーケティング戦略を立案する手順

コンテンツマーケティング戦略を立案する手順は、以下の6ステップで進めます。

  1. KGI・KPIの設定
  2. ペルソナの設計
  3. カスタマージャーニーの設計
  4. 制作するコンテンツのテーマリストを作成
  5. コンテンツ制作と配信
  6. 効果測定

各ステップを丁寧に踏むことで、効果的なコンテンツマーケティングを実現できます。それでは、各ステップの詳細を見ていきましょう。

1. KGI・KPIの設定

まずはKGIとKPIの設定から始めましょう。KGIは「年間売上10億円」などの最終目標を、KPIは「月間サイト訪問者数10万人」などの中間指標を設定します。KPIは集客、エンゲージメント(反応)、コンバージョン(成約)の3段階で考えるのがおすすめです。

例えば、集客ではサイト訪問者数、エンゲージメントではページ滞在時間、コンバージョンでは資料ダウンロード数などが指標となります。GA4やSNSの分析ツールを活用し、週次や月次で数値を追跡すると良いでしょう。定期的にレポートを作成し、数値の推移を見ながら戦略を柔軟に調整することが大事です。

2. ペルソナの設計

ペルソナの設計

ペルソナ設計とは、ターゲット顧客を具体的に描き出すことです。既存顧客のデータや市場調査を基に、主要ターゲット層を特定したうえで、ペルソナを設計します。基本情報(年齢、職業など)、行動特性(趣味、情報収集習慣)、価値観、課題と悩み、目標を明確にするのがポイントです。

例えば「35歳、マーケティングマネージャー、年収700万円、業務効率化に悩む」といった具合です。ペルソナには名前をつけ、写真やイラストを使うと顧客像がよりリアルになります。

関連記事:ペルソナ分析とは?主な設定項目や手順、注意点を解説

3. カスタマージャーニーマップの設計

カスタマージャーニーマップの設計では、顧客の購買プロセスを表やフローチャートで可視化します。以下は表にまとめた例です。

カスタマージャーニーマップの設計

カスタマージャーニーマップを基に、各段階で提供すべきコンテンツを検討します。一貫性のあるコンテンツ戦略を実施しましょう。

関連記事:カスタマージャーニーとは?マップの作り方や具体例を解説

4. 制作するコンテンツのテーマリストを作成

コンテンツのテーマリスト作成は、制作を進める上で欠かせません。まず、ペルソナの課題から大まかなカテゴリーを設定します。例えば、中小企業の経営者を対象とした場合、「経営戦略」「資金調達」「人材育成」などのカテゴリーが考えられます。

次に、各カテゴリーに関連するキーワードをリストアップしましょう。「資金調達」なら、「銀行融資」「クラウドファンディング」「補助金」などです。これらのキーワードから具体的なテーマを決めます。「銀行融資の申請から審査までの流れ」「成功率を上げるクラウドファンディングの秘訣」といった具合です。

このようにして30〜100程度のテーマを用意し、優先順位を決めて計画的に制作を進めていきます。市場動向や顧客ニーズの変化に応じて、定期的にリストを更新することも大切です。

5. コンテンツ制作と配信

コンテンツ制作では、テーマリストに基づいて質の高い内容を作り上げます。アウトライン作成、執筆、編集・校正、ビジュアル要素の追加、最終チェックの順で進めます。このプロセスでは、自社が伝えたいことよりも、ペルソナが知りたい点に着目するのが大事です。

制作したコンテンツは、ターゲットの利用傾向に合わせて適切なチャネル(ブログ、SNS、メールマガジンなど)で配信します。最適な投稿時間の選択や魅力的なタイトル・サムネイルの使用、そしてハッシュタグなどの設定も忘れずに行いましょう。

6. 効果測定

効果測定は、コンテンツマーケティングの成果を把握したり、改善したりするために不可欠です。設定したKPIに基づき、Google Analyticsなどのツールを使用してデータを収集します。

アクセス数やコンバージョン数などの観点から分析を行い、週次・月次でレポートを作成します。想定よりも成果が出ていない場合は原因を分析し、改善策を検討し、実行に移しましょう。

このように、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)サイクルを継続的に回すのが最も重要です。

コンテンツマーケティングを成功に導くポイント

コンテンツマーケティングを成功に導くポイントは以下の3つです。

  1. コンバージョンに直結するコンテンツから着手する
  2. CTAを最適化する
  3. 継続的にコンテンツ制作できる体制を構築する

順番に詳しく解説します。

1. コンバージョンに直結するコンテンツから着手する

成果を早く出すには、購買決定に関連するコンテンツの制作から始めましょう。例えば、商品比較や導入事例など、検討段階の顧客に響くものがおすすめです。これらは直接的な成果につながりやすい特徴があります。

ただし、長期的な視点も忘れずに、認知段階向けのコンテンツも並行して準備することが大切です。コンテンツの優先順位を決める際は、カスタマージャーニーマップを活用し、各段階に適したコンテンツを計画的に制作していきましょう。

2. CTAを最適化する

CTA(Call To Action)の最適化は、コンテンツの効果を最大化する重要な要素です。CTAとは、「資料のダウンロード」や「無料相談を予約」など、顧客に特定の行動を促す文言が書かれたボタンのことです。

CTAの設置箇所は、コンテンツの終わりの部分が一般的です。記事の冒頭で興味を引き、本文で情報を提供したうえで、CTAを設置します。

ボタンを目立つものにするなど、デザイン面での工夫も必要です。A/Bテストを活用すれば、色やサイズ、文言の違いによる効果を検証することもできます。モバイル端末での表示も考慮し、タップしやすいようサイズや位置の設定にも注意しましょう。

3. 継続的にコンテンツ制作できる体制を構築する

コンテンツマーケティングで成功を収めるには、持続的なコンテンツ制作が不可欠です。例えば、週3本の記事制作を目標に設定し、社内で2本、外部ライターに1本を依頼するなど、具体的なコンテンツ数と役割分担を決めましょう。

既存コンテンツの活用も効果的です。人気ブログ記事を短い動画にまとめてSNSで配信したり、過去の記事を更新して「〇〇年最新版」として再公開したりするなどの工夫もできます。

成果が出るまで最低1年間は継続して取り組むことが重要です。途中で諦めずに粘り強く続けることで、徐々に成果が表れてくるでしょう。

国内のコンテンツマーケティングの成功事例

国内のコンテンツマーケティングの成功事例を3つ紹介します。各社がどのようにして顧客との関係を深め、成果につなげているかご覧ください。

1. コクヨ株式会社

コクヨは、文具のメーカーにこだわらないライトユーザーをファン化するために「コクヨマガジン」というオウンドメディアを立ち上げました。このメディアでは、日常生活の課題解決を切り口に、文具への興味喚起を図っています。

例えば、大学生向けの「ルーズリーフvsノート」の記事では、100人へのアンケート結果を活用し、複数のキーワードで検索順位1位を獲得しました。アンケートは、ルーズリーフかノートかどちらがいいか迷っているというSNSでの声を拾って企画されたもので、顧客とのコミュニケーションを重視しているのが分かります。

さらに、「視覚過敏者向けカラーノート」の企画や、コロナ禍での在宅勤務・家遊びに関する記事など、社会課題に応じたニーズにも素早く対応しています。

2. カゴメ株式会社

カゴメは、夏季限定商品「夏しぼり」のコンテンツマーケティングで成果を出しました。商品開発の背景やレシピなど、商品の魅力を伝えるコンテンツを1ページに盛り込みました。予約開始や発売までの期間に、複数回の更新によって顧客の期待を徐々に高めていったことが特徴です。

この戦略により、2016年は前年比3.8倍の売上アップに成功しました。企画後の満足度調査では約80%が好評価を示し、コンテンツの質の高さがうかがえます。

3. ベリーベスト法律事務所

ベリーベスト法律事務所は、「リーガルモール」という法律情報サイトを通じて、コンテンツマーケティングを展開しています。5年間の継続的な取り組みの結果、月間212万PVという驚異的なアクセス数を達成。さらに、月4,400件以上の問い合わせを獲得しました(2019年2月時点)。

成功の要因は、顧客にとって真に価値ある情報を提供することに注力した点です。法律の専門用語を分かりやすく説明し、多くの人が自身で問題解決できるよう正しい情報を提供しています。また、コンテンツ制作者向けにオリジナルのコンテンツ設計書を作成し、誰が書いても一定の質を保てる仕組みを構築しました。

この取り組みにより、SEO効果も高まり、1,000以上のキーワードで検索上位表示を実現し、広告費をかけずに多くの見込み客を獲得する成果を上げています。

海外のコンテンツマーケティングの成功事例

続いて、海外の成功事例を3つ紹介します。それぞれの企業がどのようにして顧客との関係を築き、ブランド価値を高めているかをご覧ください。

1. American Express

クレジットカード会社のAmerican Expressもコンテンツマーケティングに取り組んでいます。公式サイトでのコンテンツは、「会社が赤字になったときに取るべき4つの戦略」「純利益の計算方法」といった経営関連のものが豊富です。

この取り組みにより、American Expressは単なるクレジットカード会社を超え、ビジネスの成長を支援するパートナーとしての地位を確立しました。顧客との信頼関係を深め、ブランドロイヤリティの向上と新規顧客の獲得に成功しています。

2. REI

アウトドア用品小売業のREIは、「Uncommon Path」というブログを通じて、コンテンツマーケティングを展開しています。

ブログには、ハイキングやキャンプ、サイクリングなど、様々なアウトドアアクティビティでの道具に関するコンテンツが掲載されています。例えば、「紅葉狩りに最適なキット」や「クーラーボックスの詰め方」などです。

また、ビデオやポッドキャストなど、多様な形式でコンテンツを提供し、顧客の興味を引き付けているのが特徴です。コンテンツマーケティングにより、REIはアウトドア愛好家コミュニティの中で信頼を高めています。

3. Blendtec

ミキサーメーカーであるBlendtecは、「Will It Blend?」というユーモラスな動画コンテンツで自社の認知度アップに成功しています。この動画では、iPadやゴルフボールなど、様々なものをミキサーにかける様子を紹介しています。

斬新な企画が奏功し、BlendtecのYouTubeチャンネルの登録者数は84万人を超え、視聴回数は累計2億9,000万回以上に達しました(2024年9月時点)。


まとめ|コンテンツマーケティングで顧客との接点を増やそう

コンテンツマーケティングは、顧客に価値ある情報を提供することで、ブランド認知度向上や顧客獲得を目指す効果的な手法です。従来の広告手法とは異なり、顧客との信頼関係構築に重点を置いています。

国内外の成功事例から分かるように、コンテンツマーケティングは業界を問わず効果を発揮します。ただし、即効性はないため、最低1年は継続して取り組む覚悟が必要です。粘り強く続けることで、徐々に顧客からの信頼が築かれ、ビジネスの成長につながるでしょう。

この記事の監修者:

山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。

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