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PEST分析とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字を取って名付けられたフレームワークです。本記事では、PEST分析の実践方法やメリット、具体例をわかりやすく解説します。

PEST分析とは?目的ややり方、企業の活用事例まで徹底解説


宮崎桃

Mar 14, 2025

PEST分析は、企業のマーケティング戦略や事業戦略を立案する上で欠かせないフレームワークです。しかし、「具体的にどのように活用すればよいのか?」「他の分析手法とどう使い分けるべきか?」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、PEST分析の基本から実践的な活用方法までを詳しく解説します。市場環境の変化を捉え、競争優位を築くためのヒントを得られる内容となっているので、ぜひお役立てください。

PEST分析とは?

PEST分析とは、マーケティング戦略を立案するために必須の環境分析手法です。次の4つの英単語の頭文字を取って名付けられたフレームワークで、自社のビジネスを取り巻く環境を体系的に分析します。

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)

マーケティングの権威であるフィリップ・コトラー氏が提唱しました。

PEST分析を行うことで、自社が直面する外部環境の変化や影響を把握でき、中長期的な視点で意思決定ができるようになります。

なお、PEST分析はマクロ環境を分析するための重要なフレームワークです。マクロ環境分析とミクロ環境分析の役割について詳しく見ていきましょう。

マクロ環境分析の役割

マクロ環境分析とは、企業活動に間接的に影響を与える外部要因を把握するための手法です。政治動向や経済情勢、社会トレンド、技術革新といった、企業が直接コントロールできない大きな環境変化を捉えます。

この分析により、ビジネスチャンスやリスクを早期に発見でき、経営判断の質を高められます。例えば、少子高齢化から新たなシニア向けサービスの可能性を見出したり、環境規制の強化から製造プロセスの見直しが必要だと判断したりできるのです。

中長期的な視点で環境変化を予測し、先手を打つにはマクロ環境分析が不可欠です。

ミクロ環境分析の役割

ミクロ環境分析とは、企業活動に直接影響を与える外部要因を分析する手法です。市場規模や成長率、競合状況、顧客ニーズなど、より具体的で身近な事業環境を対象とします。

この分析手法を取り入れることで、自社が属する業界内での競争優位性を確立するための戦略を立案することが可能です。例えば、競合他社の動向を分析して自社の差別化ポイントを見つけたり、顧客ニーズの変化から新商品開発のヒントを得たりできます。

ミクロ環境分析では3C分析や5フォース分析が活用されるのが一般的です。両方の分析を組み合わせることで、より精度の高い戦略を策定できます。

PEST分析の目的とメリット

PEST分析の目的とメリット


PEST分析を実施する目的とメリットとして、以下の2つが挙げられます。

  • 市場の把握と変動予測
  • 外部環境が自社にもたらす脅威の明確化

それぞれ詳しく解説します。

市場の動向を把握し変動を予測する

企業が持続的に成長するためには、市場の動向を正確に把握し、将来の変化を予測することが重要です。ビジネス環境は政治、経済、社会、技術という4つの要素が複雑に絡み合って常に変化しており、その変化を見逃すと重要な機会を失うリスクがあります。

PEST分析では、これら4つの要素を体系的に分析することで、市場の変化の兆候を早期に察知できます。例えば、規制緩和から生まれるビジネスチャンスや技術革新による市場の構造変化などを事前に予測することが可能になるのです。

外部環境が自社にもたらす脅威を明確化する

外部環境が自社にもたらす脅威を明確にできるというメリットもあります。企業経営において、予期せぬ外部環境の変化は深刻なリスクとなり得るため、これを事前に特定することは極めて重要です。

例えば、以下のような外部要因は、企業のビジネスモデルや収益構造に直接的な影響を与えます。

  • 環境規制の強化
  • 経済状況の悪化
  • 消費者行動の変化
  • 新技術の台頭

PEST分析を通じてこれらの脅威を把握することで、対策を事前に準備できるため、危機発生時の対応力が高まります。

PEST分析の4要素

PEST分析の4つの要素について具体例を挙げて詳しく解説します。

  • Politics(政治的要因)
  • Economy(経済的要因)
  • Society(社会的要因)
  • Technology(技術的要因)

Politics(政治的要因)

政治的要因とは、自社に影響を与える政府や行政の動きのことです。具体的には以下のような要素が含まれます。

政治的要因
法規制・規制緩和 食品表示法の改正、電力の自由化
国の政策 補助金制度、スタートアップ支援策
税制の見直し 消費税率の引き上げ、法人税率の変更
政府の動向 新政権による経済対策、行政のデジタル化推進
市民団体の活動 環境保護団体による反対運動、消費者団体の商品不買運動
外交関係 日米貿易協定、米中貿易摩擦

Economy(経済的要因)

経済的要因とは、市場の成長性や企業の収益に直接影響する外部環境のことです。

経済的要因
景気動向 バブル崩壊後の長期不況、コロナ禍後の経済回復
インフレ・デフレの進行 食料品や光熱費の価格上昇、商品の値下げ競争
為替相場 円安による輸入原材料コストの増加、円高による輸出競争力の低下
金利水準 住宅ローン金利の変動、金利上昇による企業の資金調達コスト増
経済成長率 GDPの伸び率低下、新興国市場の成長
失業率 若年層の就職難、人手不足による賃金上昇

Society(社会的要因)

社会的要因とは、人々の価値観や生活様式の変化を示す要素で、消費者ニーズに影響する外部環境のことです。

社会的要因 具体例
人口動態 65歳以上人口の増加、生産年齢人口の減少
世帯数の変化 一人暮らし世帯の増加、核家族化
世論・社会の意識 SDGsに対する関心の高まり、ワークライフバランス重視の傾向
環境問題 プラスチックごみの削減運動、カーボンニュートラルへの取り組み
健康志向 糖質オフ食品の人気、フィットネス市場の拡大
文化的価値観 ミニマリスト志向、エシカル消費の広がり

Technology(技術的要因) 

技術的要因とは、産業構造や競争環境を変革する可能性を持つ外部環境のことです。

技術的要因 具体例
技術革新 スマートフォンの普及、ガソリンエンジン車から電気自動車への移行
情報提供企業の投資動向 Amazonのクラウド事業の拡大、Googleの自動運転技術への投資
研究開発の最新動向 新型コロナワクチン開発、量子コンピュータの実用化
デジタルトランスフォーメーション レジのセルフ化、遠隔医療サービスの普及
通信インフラの発展 5G基地局の設置拡大、農村部へのインターネット普及
自動化技術 工場の製造ラインロボット化、無人コンビニの実験

PEST分析のやり方7ステップ

PEST分析のやり方7ステップ

PEST分析は以下の7ステップで実施するのがおすすめです。

  1. 目的を明確にしチームに共有する
  2. 情報収集と分析を行う
  3. PESTの4要素に分類する
  4. 「事実」と「解釈」に振り分ける
  5. 事実を「機会」と「脅威」に分類する
  6. 時間軸を「短期」もしくは「長期」に分類する
  7. 事業戦略に反映させる

順番に詳しく解説します。

1.目的を明確にしチームに共有する

まず「なぜこの分析を行うのか」という目的を明確にし、チームで共有しましょう。目的が曖昧なまま進めると、収集する情報の範囲や分析の深さにバラつきが生じ、有効な結論を導き出せなくなるリスクがあるからです。例えば、新商品の開発を行う場合、以下のような項目を共有することが効果的です。

共有すべき項目 具体的な内容例
分析の最終目標 新商品の市場投入判断のための環境分析を行う
分析の背景 現在の主力商品の売上が伸び悩み、新たな成長分野を探索する必要がある
目的 市場環境の変化を体系的に把握し、新商品の機会とリスクを特定する

このように情報を整理することで、チームメンバー全員が同じ方向を向いて分析に取り組めます。

2.情報収集と分析を行う

情報収集段階では、信頼性の高いデータソースから最新の情報を集めましょう。政府統計や業界団体の報告書、市場調査レポート、学術論文などの客観的データを扱うのがポイントです。

収集した情報は日付とソースを明記し、チーム内で共有できる形式(エクセルやスプレッドシートなど)にまとめておきましょう。この段階で十分な情報が集まらないと、分析の質が低下するため、時間をかける価値があります。

3.PESTの4要素に分類する

収集した情報を政治(P)、経済(E)、社会(S)、技術(T)の4つのカテゴリーに振り分けます。分類が難しい項目は、自社ビジネスへの影響度が最も高いカテゴリーに入れましょう。

例えば環境規制は政治的要因ですが、消費者の環境意識は社会的要因に分類します。各要素をさらに細分化すると分析が深まります。政治的要因なら「国内法規制」と「国際関係」、経済的要因なら「マクロ経済指標」と「業界動向」といった具合にです。

分類する際は、マインドマップなどで視覚化すると、全体像が把握しやすくなります。

4.「事実」と「解釈」に振り分ける

収集した情報を「客観的な事実」と「主観的な解釈」に振り分けます。例えば「65歳以上の人口が全体の約29%を占める」は事実ですが、「シニア向け市場は今後拡大する」は解釈です。

情報の出所を確認し、数値データや公式発表は「事実」、予測や見解は「解釈」として分類しましょう。表形式で整理する際は、左列に事実、右列に解釈を記入する方法を取るのがおすすめです。

解釈の部分には「〜と考えられる」「〜の可能性がある」といった表現を使い、事実との区別を明確にします。事実と解釈を分けることで、チームでの議論が建設的になり、バイアスも排除できます。

5. 事実を「機会」と「脅威」に分類する

自社にとって事実が「機会」なのか「脅威」なのかを判断します。「機会」もしくは「脅威」である理由も明記しましょう。例えば、「eコマース利用率の上昇」という事実は、オンライン販売チャネルを持つ企業にとっては機会ですが、実店舗しか持たない企業にとっては脅威となります。

分類作業では2×2のマトリクスを作成し、縦軸に「影響」(大・小)、横軸に「機会・脅威」を置くと優先順位付けがしやすくなります。

影響 機会 脅威
・オンライン決済の普及
・健康志向の高まり
・新規参入企業の増加
・原材料価格の高騰
・シニア層のITリテラシー向上
・地方創生政策の拡充
・特定添加物の規制強化
・為替変動の不安定化

他社にとっての脅威が、自社の強みを活かせる機会になるケースも少なくありません。チームでの議論を通じて、多角的な視点から評価しましょう。

6.時間軸を「短期」もしくは「長期」に分類する

機会と脅威を「短期」もしくは「長期」の時間軸に分類します。一般的に短期は1年〜2年以内、長期は3年以上先を指しますが、時間軸の定義はチーム内で統一しておきましょう。

2×2のマトリクスで「短期・影響度 高」「短期・影響度 低」「長期・影響度 高」「長期・影響度 低」の4象限に分類すると効果的です。

時間軸/影響度 影響度 高 影響度 低
短期(1~2年) ・原材料価格の高騰
・競合の新商品発売
・物流コストの上昇
・SNSマーケティングの変化
長期(3年以上) ・高齢化の進行
・環境規制の強化
・AIの業務活用
・海外市場の変化

時間軸を考慮することで、「短期・影響度 高」の項目には迅速に対応し、「長期・影響度 高」の項目に対しては計画的に準備するといった優先順位付けが可能になります。

7. 事業戦略に反映させる

最終ステップでは、分析結果を具体的なアクションプランに落とし込みます。特に「短期・影響度 高」の機会と脅威に優先的に対応しましょう。機会に対しては、それを活かすための具体策(新商品開発、新市場参入など)を立案します。

脅威に対しては、リスク軽減策や回避策を検討します。アクションプランには、担当者や期限、必要なリソースを明記しましょう。


半年から1年程度のサイクルで定期的にPEST分析を更新し、環境変化に応じて戦略を調整することも重要です。

PEST分析とSWOT・3Cの違い

PEST分析、SWOT分析、3C分析はいずれも経営戦略やマーケティング戦略を立案する際に用いられるフレームワークですが、それぞれ分析の目的や範囲が異なります。

PEST分析とSWOT分析の違い

SWOT分析は以下の4つを評価するフレームワークです。

  • Strengths(自社の強み)
  • Weaknesses(自社の弱み)
  • Opportunities(機会)
  • Threats(脅威)

強みと弱みは内部環境、機会と脅威は外部環境に関する要素です。SWOT分析は自社の競争優位性を明確にし、それを活かした戦略立案に役立ちます。

PEST分析と3C分析の違い

3C分析は以下3つの要素に着目したフレームワークです。

  • Customer(顧客)
  • Competitor(競合)
  • Company(自社)

特定の市場や業界内での競争状況を理解し、市場での自社のポジショニングを明確にするのが目的です。

その他のフレームワークとの違い

PEST分析と併用されることの多いその他のフレームワークを紹介します。

フレームワーク 概要
5フォース分析 マイケル・ポーターが提唱した分析手法。「競合他社との敵対関係」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」の5つの要因から業界の競争環境を分析する。PEST分析がマクロ環境を対象とするのに対し、5フォースは業界内のミクロ環境を分析する。
STP分析 市場を細分化し(Segmentation)、ターゲットを選定し(Targeting)、自社のポジショニングを決定する(Positioning)マーケティング戦略の立案手法。PEST分析の結果を踏まえて市場を細分化する基準を検討したり、有望なターゲット市場を特定したりする際に役立つ。
4P/4C分析 マーケティングミックスを製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)の4Pまたは顧客価値(Customer Value)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の4Cで整理するフレームワーク。PEST分析で特定した環境変化に対応するための具体的な施策を検討する段階で活用する。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント) 製品や事業を「市場成長率」と「相対的市場シェア」の2軸で評価し、「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」に分類するフレームワーク。PEST分析で把握した市場環境の変化を踏まえて、自社の製品・事業ポートフォリオの見直しを行う際に活用する。
VRIO分析 経営資源を「価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣可能性(Imitability)」「組織(Organization)」の4つの視点から評価し、競争優位を把握するフレームワーク。PEST分析で把握した環境変化に対応するために必要な経営資源を評価する際に活用する。

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PEST分析を成功させるコツ

PEST分析のやり方7ステップ

PEST分析で成果を出すには、以下3つを押さえておきましょう。

  • 目的に沿った形で分析を進める
  • 中長期視点で仮説をたてる
  • 他の分析手法も活用する

それぞれ詳しく解説します。

目的に沿った形で分析を進める

PEST分析では、明確な目的を持って行うことが重要です。新規市場に参入する際の判断材料を得ることなのか、既存事業の見直しなのか、中期経営計画の策定なのかを明確にしましょう。

目的が明確であれば、必要な情報の範囲や深さもおのずと決まります。また、最終的にどのように活用するかをイメージしておくことで、より実践的な分析が可能になります。目的意識を持って進めることで、膨大な情報の中から本当に必要な要素を見極められるでしょう。

中長期視点で仮説をたてる

PEST分析では、中長期的な視点で環境変化を捉えることも重要です。現状を把握するだけでなく、将来の事業環境を予測し、戦略立案に活かすことができるのがこの分析の強みです。

業界トレンドや技術革新、社会変化などを多角的に分析し、それらが自社に与える影響を予測しましょう。不確実性の高い時代だからこそ、複数の未来シナリオを想定しておくことが大事になってきます。

他の分析手法も活用する

PEST分析はマクロ環境分析に特化したフレームワークです。戦略を立案する際は、他の分析手法と組み合わせることが重要です。

SWOT分析では、PEST分析で得た外部環境情報を「機会」と「脅威」に分類し、内部環境と組み合わせて戦略を導きます。5フォース分析では、業界内の競争環境をより詳細に分析できます。

また、3C分析と組み合わせることで、顧客・競合・自社の関係性をより具体的に検討できます。目的に応じて複数の分析手法を組み合わせると良いでしょう。

PEST分析の注意点

PEST分析を実施する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 短期の意思決定には不向き
  • 必ずしも全ての分析が必要とは限らない
  • 手段が目的化しがち

それぞれ詳しく解説します。

短期の意思決定には不向き

PEST分析は短期的な意思決定には適していません。PEST分析の対象となるマクロ環境の変化は、数年単位で進行するためです。

例えば、法規制の変更には長いプロセスが必要ですし、人口動態の変化も緩やかに進みます。そのため、PEST分析は月次の営業計画や四半期の販促戦略よりも、中期経営計画や新規事業開発など、将来を見据えた戦略立案に適しています。

必ずしも全ての分析が必要とは限らない

PEST分析の4要素をすべて同じ比重で分析する必要はありません。業界や状況によって各要素の重要度が大きく異なるためです。

例えば、医薬品業界では政治的要因が、IT業界では技術的要因が特に重要かもしれません。限られた時間とリソースを効果的に活用するには、自社ビジネスへの影響が大きい要素に集中するのが賢明です。

分析の目的と自社事業の特性を踏まえて、重点的に分析すべき要素を特定し、そこにリソースを集中させましょう。

手段が目的化しがち

PEST分析の最大の落とし穴は、情報収集と整理そのものが目的化してしまうことです。分析プロセスが複雑で労力を要するため、手段が目的にすり替わることがあるのです。

例えば、少子高齢化のデータを集めても、それが自社ビジネスにどう影響するか考察せずに終わる、こんなケースもなくはありません。PEST分析はあくまで戦略立案のための手段であり、分析結果を具体的な行動計画につなげてこそ価値があります。

PEST分析でよくある疑問

PEST分析を行う際によく出てくる疑問について解説します。要素の区分けや各要因の重要性について、具体的な判断基準を紹介します。

「政治的要因」と「経済的要因」の区別

政治的要因と経済的要因の区分に迷うケースがよく見られます。両者は密接に関連しており、明確な線引きが難しいのも事実です。例えば、税制改正は政府の政策決定ですが、企業の収益性に直接影響するという側面も持ちます。

区分する際は、「誰が決定しているか」という視点が役立ちます。政府や行政が主導する要素は政治的要因、市場原理で動く要素は経済的要因と捉えるのが基本です。ただし、自社への影響度が高い要素に分類するなど、臨機応変に対応しましょう。

「技術的要因」の必要性

技術的要因の分析の重要度は、業界によって異なります。業種や事業の特性によって、技術革新の影響度が大きく変わるためです。

IT業界やメーカーでは技術的要因が競争力を左右する重要な要素ですが、一部のサービス業や伝統産業では他の要因と比べて影響が小さい場合もあります。

ただし近年はAIやIoTなどのデジタル技術が幅広い業界に浸透しているため、従来は技術とは無縁と思われていた分野でも、技術的要因の分析が重要になっています。自社の事業特性を考慮して、どの程度の深さで技術的要因を分析すべきか判断することが大切です。

PEST分析の具体例

PEST分析の具体例

自動車業界と人材派遣業界を例に挙げて、PEST分析の具体例を紹介します。

自動車業界のPEST分析

自動車業界は政治的・経済的・社会的・技術的要因が複雑に絡み合う典型的な例のひとつです。環境規制や税制などの政策変更、原材料価格や為替などの経済変動、消費者の価値観の変化、そして技術革新の波と、あらゆる外部環境要素の影響を強く受ける業界といえます。

自動車業界をPEST分析の枠組みで整理した表が以下です。

分析要素 具体的な影響要因
Politics:政治的要因 ・世界各国でガソリンエンジン車が廃止される動き
・税制面で電気自動車(EV)などの次世代車両が優遇される傾向
・自動運転関連の法整備が進行中
Economy:経済的要因 ・原油価格上昇の影響
・電力コスト増加により充電設備の拡充に課題
・部品不足による納期の長期化
Society:社会的要因 ・若年層を中心とした自動車保有率の低下
・カーシェアリングなど新たな利用形態の普及
・移動手段としての実用性重視と趣味性重視の二極化
Technology:技術的要因 ・EV関連技術の急速な発展
・自動運転技術の進化
・自動車のIoT化


人材派遣業界のPEST分析

人材派遣業界においても、外部環境の変化が事業に大きな影響を与えています。人材派遣事業に関わる環境要因をPEST分析の枠組みで整理した表が以下です。

分析要素 具体的な影響要因
Politics:政治的要因
  • 労働関連法規の改正(同一労働同一賃金など)
  • 働き方改革関連法による労働環境規制の変化
  • 政府による雇用調整助成金などの支援策
Economy:経済的要因
  • 特定業種の売上減少による人件費抑制傾向
  • 業界による景況感の二極化
  • 人材確保のためのコスト増加
Society:社会的要因
  • テレワークの普及による働き方の変化
  • 対面業務とリモート業務の選別
  • ワークライフバランス重視の価値観の浸透
Technology:技術的要因
  • 採用・マッチングにおけるAI技術の活用
  • リモートワーク対応ツールの普及
  • RPA導入による業務効率化


まとめ|PEST分析で効果的な事業戦略を

PEST分析は、政治、経済、社会、技術の4つの外部環境要因を体系的に分析するフレームワークです。この手法を用いることで、企業は自社を取り巻くマクロ環境の変化を把握し、将来的な機会やリスクを特定できます。

PEST分析を行う際は、目的を明確にし、中長期的視点で環境変化を予測することが重要です。SWOT分析や3C分析などの他のフレームワークと組み合わせれば、より包括的な戦略立案が可能になります。

Meltwaterは、ソーシャルメディアのデータを活用した市場調査ツールを提供しています。AIを駆使して膨大な非構造化データから消費者インサイトを抽出し、企業の戦略立案をサポートしているのです。


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この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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