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ROIとは?併せて理解したい指標、計算式を解説

ROIとは?併せて理解したい指標、計算式を解説


宮崎桃

Dec 9, 2024

マーケティング担当者の中には、「ROIが重要だと分かっているけれど、具体的な活用方法が分からない」「投資効果を正しく評価できているか不安」といった悩みを抱える人も少なからずいるのではないでしょうか。

ROI(投資収益率)は、投資効果を客観的に評価できる重要な指標です。本記事では、ROIの重要性から計算方法や活用例まで、実務で役立つ情報を解説します。また、ROAS、ROE、CPAなど関連する指標についても詳しく説明しているので、ぜひお役立てください。

ROI(投資収益率・投資利益率)とは

 ROI(投資収益率・投資利益率)とは

ROI(Return On Investment)とは、投資に対してどれだけの利益が得られたかを示す経営指標です。日本語では投資収益率や投資利益率と呼ばれています。広告宣伝費や設備投資、人材採用など、あらゆるビジネス投資の効果を評価する際に活用されます。

ROIは数値が高いほど投資効率が良く、経営資源を効果的に活用できていることを意味します。

なぜ ROIが重要なのか

ROIは、企業の投資判断における最も重要な指標の1つです。なぜなら、投資効果を明確な数値で示すことができ、経営判断の客観性と精度を高めることができるからです。

特に近年のデジタル化により、さまざまなデータをリアルタイムで収集・分析できるようになりました。こうした環境下では、ROIを活用することで、投資効果の低い施策を早期に特定し、より効果的な施策にリソースを投下できます。

企業の経営資源は限られています。現代のビジネスでは透明性の高い意思決定と説明責任が求められており、ROIは経営判断を支える重要な指標としてますます注目されているのです。

ROIの計算式

ROI(投資収益率)の計算式は以下の通りです。

ROI(%)= 利益金額 ÷ 投資金額 × 100

この計算式を使って、具体的な例で見てみましょう。

【ある企業がECサイトのリニューアルに500万円を投資し、1,000万円の利益を得られた場合】

1,000万円 ÷ 500万円 × 100 = 200%

これは投資額の2倍の利益を得られたことを意味します。

ROIの目安

ROIの最低ラインは0%です。マイナスの場合は投資額を上回る損失が発生していることを意味し、事業継続の観点から見直しが必要です。ただし、業界や投資目的によって適正なROIの水準は大きく異なります。

事業投資の場合、一般的に10~20%が目安とされています。一方、マーケティング施策では200~300%という高いROIを達成することも珍しくありません。重要なのは、単一の数値の高低だけでなく、以下の3つの視点で評価することです。

  • 同じ条件で計測した他の施策とのROI比較
  • 業界平均や過去の自社実績との比較
  • 将来的な成長可能性

これらを総合的に判断し、各施策に適した目標値を設定することが推奨されます。

ROIと関連する重要な指標

ROIと関連する重要な指標

ROIと併せて理解しておきたい重要な経営指標は以下の6つです。

  • ROAS(広告の費用対効果)
  • ROE(自己資本利益率)
  • ROA(総資産利益率)
  • CPA(顧客獲得単価)
  • CVR(コンバージョン率)
  • LTV(顧客生涯価値)

それぞれ、計算式や具体例を用いて解説します。

ROAS(広告の費用対効果)

ROAS(Return On Advertising Spend)は広告費用に対する売上の比率を示す指標です。

【計算式】

ROAS(%)= 広告による売上 ÷ 広告費用 × 100

【SNS広告に10万円投資して50万円の売上が得られた場合】

50万円 ÷ 10万円 × 100 = 500%


ROIが利益ベースなのに対し、ROASは売上ベースで計算します。そのため、利益を考慮していない点に注意が必要です。一般的に100%以上が投資効果の最低ラインとされています。

ROE(自己資本利益率)

ROE(Return On Equity)は株主資本に対する収益性を示す指標です。

【計算式】

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

【自己資本が1億円で当期純利益が1,500万円の場合】】

1,500万円 ÷ 1億円 × 100 = 15%

ROEの目安は8~10%程度で、一般的に10%以上が優良企業といわれています。

ROA(総資産利益率)

ROA(Return On Assets)は企業の総資産に対する収益性を示す指標です。

【計算式】

ROA(%)= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100


【総資産2億円で当期純利益が1,000万円の場合】

1,000万円 ÷ 2億円 × 100 = 5%

ROEが自己資本のみを対象とするのに対し、ROAは借入金なども含めた総資産を基準とします。目安は5%程度です。

CPA(顧客獲得単価)

CPA(Cost Per Acquisition / Cost Per Action)は1件のコンバージョンを獲得するために必要なコストを示す指標です。コンバージョンとは、商品の購入や資料請求など企業が目指すアクションをユーザーが起こすことです。

【計算式】

CPA = 広告費用 ÷ コンバージョン数

【100万円の広告費用をかけて、50件のコンバージョンを獲得した場合】

100万円 ÷ 50件 = 2万円

CPAは業界や商材によって適正値が大きく異なります。

CVR(コンバージョン率)

CVR(Conversion Rate)は、Webサイトの訪問者のうち、何割がコンバージョンにつながったかを示す指標です。

【計算式】

CVR(%)= コンバージョン数 ÷ 総訪問数 × 100

【ECサイトに月間10,000人が訪問し、300人が商品を購入した場合】

300 ÷ 10,000 × 100 = 3%

CVRは業界やコンバージョンの定義によって大きく異なります。

LTV(顧客生涯価値)

LTV(Life Time Value)は、1人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益の総額を示す指標です。計算方法はさまざまで業種によっても違うため、一例を紹介します。

【計算式の例】

LTV = 顧客単価 × 粗利率 × 購買頻度 × 取引期間

【月額2万円のサブスクリプションサービス(粗利率30%)を平均3年利用した場合】

2万円 × 0.3 × 12カ月 × 3年= 21.6万円

特にサブスクリプションのビジネスモデルでは、解約率の低減がLTV向上の重要な要素となり、事業の収益性を左右します。

ROIを活用するメリット

ROIを活用することで、異なる規模や性質の事業でも、投資効果を客観的に評価・比較できます。例えば、年間売上1億円で利益2,000万円の新規事業と、売上10億円で利益1億円の既存事業があった場合、ROIを用いることで投資効率の違いが明確になります。

また、マーケティング施策においても、SNS広告やリスティング広告、インフルエンサーマーケティングなど、異なる手法の効果を統一的な指標で評価できます。投資効果が数値化されることで、経営資源の最適な配分が可能になり、より戦略的な意思決定を行えるのです。

ROIのデメリット

ROIは投資判断において有用な指標ですが、以下のデメリットもあります。

  • 長期的な評価に適していない
  • 数値化できない価値を評価できない

それぞれ詳しく解説します。

長期的な評価に適していない

ROIは投資に対する短期的な収益性を測る指標として優れていますが、長期的な投資判断には適していません。例えば、ブランド構築のための投資や研究開発など、成果が上がるまでに一定の期間がかかる場合、ROIを用いて評価するのは適切ではないのです。

新規事業への投資では、初期の赤字期間を経て収益化に至るケースも多く、短期的なROIだけで判断すると、将来性のある事業機会を逃してしまう可能性があります。投資の評価には、中長期的な成長性や市場環境の変化も考慮しなければなりません。

数値化できない価値を評価できない

ROIは金銭的な投資対効果を測る指標であり、定量化しづらい価値を適切に評価するのに向いていません。例えば、従業員の満足度向上や組織文化の醸成のような無形資産への投資は、直接的な利益として計測できないからです。

特にマーケティングの分野では、ブランド認知度の向上や顧客ロイヤリティの強化が、長期的な企業価値を高める重要な要素となります。これらの定性的な成果は、ROIだけでは正確に評価できないため、複数の評価指標と組み合わせながら、投資の効果を多角的に判断することが重要です。

ROIの活用例

ROIの活用例

ROIの活用は多岐に渡ります。ここでは以下の3つの活用例を解説します。

  • 経営戦略の投資評価
  • マーケティング施策の評価
  • 利益の目標達成に必要な投資金額の逆算

経営戦略の投資評価

ROIは経営における投資判断の指標として活用されています。例えば、マーケティング予算の配分を決める際、テレビCMとデジタル広告では必要な投資額が大きく異なりますが、ROIを用いることで投資効率を客観的に比較できます。

特に複数の投資案件を同時に検討する場合、各施策のROIを比較することで、限られた予算を最も効果的に配分することが可能です。デジタルマーケティングの進化により、投資効果の測定がより正確になった今、ROIを活用した戦略的な意思決定の重要性は増しています。

マーケティング施策の評価

ROIはマーケティング施策の効果測定において重要な指標です。投資額と売上の関係を明確に把握できるため、施策の成果を客観的に評価できます。

特に、昨今注目を集めているインフルエンサーマーケティングでは、ROIを活用した効果測定が欠かせません。複数のインフルエンサーと協業する場合、それぞれの投稿がもたらした売上やエンゲージメントを分析することで、より効果の高いインフルエンサーへの予算配分ができます。

Meltwaterの「SNSからROIを生み出すソーシャルコマース完全ガイド」では、ソーシャルメディアのROIを高めるポイントを解説しています。X(旧Twitter)やInstagramなどのソーシャルメディアを活用している企業の方はぜひご覧ください。

SNSからROIを生み出すソーシャルコマース完全ガイド

関連記事:インフルエンサー施策をさらにスケールアップ


利益の目標達成に必要な投資金額の逆算

ROIを活用すれば、目標利益を達成するために必要な投資額を算出できます。例えば、マーケティング部門が来期の利益目標を5,000万円に設定し、過去の実績からROI目標を160%と定めた場合を考えてみましょう。

【計算式】

160% = 5,000万円 ÷ 投資金額 × 100

投資金額 = 5,000万円 ÷ 160% × 100 = 3,125万円

つまり、目標ROIを維持しながら5,000万円の利益を達成するためには、3,125万円の投資が必要だと判断できます。この手法は予算策定時の根拠として活用でき、経営陣への提案も説得力のあるものになります。

ROIを改善する方法

ROIを改善する主な方法として以下の3つが挙げられます。

  • 売上を上げる
  • コストを削減する
  • MAを活用する

順番に解説します。

売上を上げる

売上向上はROI改善の基本的なアプローチです。具体的には、商品のバリューアップによる単価向上と販売数の増加があります。

例えば、顧客が使用中の商品から付加価値の高いモデルにアップセルしたり、関連商品とのセット販売でクロスセルを図ったりすることで、顧客単価を高められます。また、ターゲット層に合わせた販促施策の強化や、購買頻度を高めるための会員制度の導入なども有効です。これらの施策は、投資額を大きく増やすことなく売上を伸ばせるため、ROIの向上に直結します。

コストを削減する

ROI向上のためのコスト削減は、単なる予算カットではなく、投資効率の最適化を意味します。まず、既存の施策の費用対効果を詳細に分析し、効果の低い施策から見直しを進めます。

例えば、広告運用では、CVRの低い広告枠の配信停止や、費用対効果の高い時間帯への配信の集中などで最適化するのが良いでしょう。また、業務プロセスの効率化やツールの導入による工数削減なども、間接コストの削減に効果的です。品質を維持しながら無駄を省くという視点が大事です。

MAを活用する

マーケティングオートメーション(MA)を活用することでも、ROIの向上が期待できます。メール配信や顧客データ管理の自動化により、マーケティング担当者は戦略立案や分析により多くの時間を割くことができるからです。

特に、見込み顧客のスコアリング(購買意欲の数値化)と、それに基づく最適なコンテンツ配信は効果的です。購買意欲の高い顧客に適切なタイミングでアプローチすることで、営業活動の効率が大幅に向上します。また、各施策の効果測定も正確に行えるため、投資配分の最適化にもつながります。

まとめ|ROIで施策を評価し効果を最大化しよう

ROIは投資に対する収益性を示す重要な経営指標です。ROIの活用により、規模の異なる事業やマーケティング施策の効果を、客観的に比較・評価できます。また、目標利益からの逆算で必要な投資額を算出することも可能です。

ただし、ブランド価値向上などの定性的な成果や長期的な投資効果は、ROIだけでは評価が難しい点に注意が必要です。ROIの改善には、売上向上やコスト最適化、MAの活用など、複数のアプローチを組み合わせることが推奨されます。投資判断の精度を高め、限られた経営資源を最大限活用するために、ROIを積極的に活用しましょう。

なお、MeltwaterはPRやマーケティング、メディアリレーションズの分野でソーシャルリスニングおよびメディアモニタリングのソリューションを提供しています。マーケティング施策のROIを高めたいと考えている方はお気軽にお問い合わせください。


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この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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