SNSの利用者が年々増えている状況において、マーケティングや広報などの主要ツールとして活用する企業も多いでしょう。
しかしSNSはポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報も拡散させてしまう恐れがあり、常に炎上リスクが伴います。炎上対策に悩まされている担当者も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、炎上の概要や発生のメカニズムなどをおさらいした上で、炎上の事例や炎上対策をわかりやすくご紹介します。炎上発生時の対応についても解説しています。
炎上とは?
炎上とは、SNSなどのインターネット上の投稿内容に対して、批判的なコメントが殺到し、炎が勢いよく燃え上がるかのように収まりがつかない状況を指します。
炎上が生じるとそれが事実に基づいたかどうかに関わらず、企業イメージに悪影響を与えます。顧客減少や従業員の離職といった事態も招きかねません。
日本国内の炎上件数は、2011年にTwitter(現 X)が使われるようになったころからの急速な伸びが顕著です。2011年の炎上件数は341件で(参考:国際大学)、2021~2023年は上がり下がりの変動はありますが、1年に1,500件以上が続きました(参考:デジタル・クライシス白書)。平均して1日に4件以上の炎上が起きていることになります。
炎上を引き起こすのは、消費者による企業へのクレーム投稿のみならず、企業自身や従業員による不注意な投稿も一因です。企業としてSNS運用を正しく認識し、適切に炎上対策に取り組まなければなりません。
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炎上が発生するメカニズム
企業への炎上の発生原因はさまざまです。一般の人による不適切な投稿だけでなく、企業側が原因となることもあります。企業アカウントや従業員の個人アカウントを使っての不適切な投稿や、製品不良や顧客の情報漏洩といった企業の不祥事などが挙げられます。
主に以下のような流れを辿り、炎上へと繋がることが多いです。
- 企業による不適切な投稿や不祥事の発生
- SNSユーザーによる批判的な反応・不適切な投稿の拡散
- SNS上で影響力の強いインフルエンサーやネットニュースがさらに拡散させる
- マスメディアで報道される
また企業側の初動の遅さが、さらなる炎上に繋がることもあります。炎上リスクへの理解を深め、対策を打っておくことが早期の鎮静に重要です。
企業に迫る炎上リスク
ここで改めて企業の炎上リスクがどのようなところに潜んでいるのか確認しましょう。
企業SNSアカウントでの不適切な行為、情報の発信
企業のSNSアカウントによる不適切な投稿は炎上に直結します。
例えば以下のような投稿は炎上のリスクを高めるでしょう。
- 特定の政治思想に傾倒するような発言
- 人種差別的な発言
- 宗教に関する偏見を含んだ発言
- 国の記念日や大事件があった日に、それに対する配慮のない投稿
またSNS担当者が企業アカウントをプライベートアカウントと間違え、仕事関係者に関する悪口を投稿をしてしまうケースもあります。社会的に望ましくない投稿に対して、企業アカウントでリアクションをしてしまうことも、炎上に繋がりかねません。
誤解や情報が歪曲して伝達
情報が歪曲して伝達されることで誤解が生じるのも、炎上の一因です。
例えばXは投稿できる文字数に制限が設けられており、無料プランの場合は全角140文字までしか記載できません。炎上が発生したメディアのなかでも、Xは2023年の調査で65%と最も高い割合を占めています(参考:デジタル・クライシス白書2024)。
情報の一部分しか伝えないと事実が間違った形で伝わり、ネガティブな反応を引き起こしてしまうことがあります。SNSは手軽に情報発信できる分、情報量が十分でないことも多く、誤解を生じやすいと言えます。
従業員の不適切な行動や情報の発信
従業員のプライベートアカウントから炎上が生じることもあります。
例えば、著名人がアルバイト先の店に来たことや顧客との取引など、機密情報をもらしてしまうケースが一例です。また、アルバイト先で悪ふざけや不衛生な行為を動画に撮って投稿するバイトテロも、代表的な例でしょう。他にも、社名や上司の実名を挙げて批判の投稿をする従業員もいます。
「注目を集めたい」といった気持ちだけで、自身の立場を忘れて刺激的な情報を発信してしまうことが、炎上に繋がります。企業としては従業員の教育も徹底する必要があるでしょう。
消費者からのクレーム・批判
消費者のクレームや批判から炎上に繋がるケースもあります。
製品やサービス品質に対するクレーム投稿を見て、同じような意見を持つユーザーがその投稿を拡散し、事態が大きくなってしまうこともあるのです。
またクレームや批判に対して企業が適切に対応しなかったことが原因で、さらに多くのネガティブな反応を生み出し、大炎上へと繋がってしまったケースもあります。
企業が炎上した事例3選
続いて企業が炎上した事例についてご紹介します。
事例1:投稿のタイミングが悪く炎上
とあるテーマパークの運営会社は、公式SNSアカウントでテーマパークの作品に出てくる台詞を引用し、なんでもない今日を祝うといった主旨の投稿をしました。
しかし、投稿した日は長崎に原爆が落とされた8月9日でした。その投稿を見たユーザーから「なんでもない日とは不謹慎である」といった反応が次々と寄せられたのです。事態を重く見たテーマパーク運営会社は、同日中に投稿を削除した上で謝罪しました。
このように投稿内容自体に問題がなくとも、発信日やタイミングによっては、炎上に繋がる恐れがあるのです。
事例2:多様な受け取られ方がある点を考慮できず炎上
とあるファッションブランドがSNS上で行った広告キャンペーンが、戦争を連想させるとして炎上しました。
キャンペーンに使用された画像には、破損した壁や手足のない彫像、白い布に包まれたマネキンなどが映っていたことにより、戦争による被害を連想させたのです。これを受けファッションブランドは、本キャンペーンにおける画像の意図などを説明しつつ、不快感を与えてしまったことを謝罪しました。
画像から受ける印象は三者三様である他、戦争が現実に起こっている社会情勢に配慮できなかったことが、炎上に繋がってしまったといえます。
事例3:対応に問題があり炎上
とある住宅メーカーは、不適切な投稿をされ訴えましたが、そのやり方に問題があるとされ炎上を引き起こしました。
事の始まりは、モデルルームで住宅の欠陥を発見した来場者が写真を撮り、SNS上に投稿したことです。住宅メーカーは本投稿を不適切な投稿であると判断し、投稿者の所在県名とアカウント名を公開した上で、損害賠償などの準備をしている旨を公式に発表しました。
この発表に対して、住宅メーカーの対応に問題があるとSNS上で炎上が起きました。投稿削除の依頼のため来場者アンケートから投稿者の住所を割り出して自宅訪問した他、アカウント名まで公開した点について、個人情報の扱い方を問題視する声が多く寄せられたのです。
このように、不適切な投稿をされた場合でも、対応方法によっては逆に企業への炎上リスクが高まってしまうことがあります。
企業が実施すべき炎上対策
ここからは企業が実施すべき炎上対策をご紹介します。
SNSの運用ルール・ガイドラインを策定
炎上対策において、まず着手すべきはSNSの運用ルールやガイドラインの策定です。
炎上は公式アカウントからの不適切な投稿に起因することもあるため、アカウントを運用する上でルールを明確にしておきます。以下はルールの一例です。
- 顧客に関する情報は発信しない
- 事実確認ができないものは発信しない
- 個人情報に関した投稿はしない
- 人種や性別、宗教に触れる投稿はしない
- その他センシティブな話題には触れない
不適切な投稿に当たる具体例などもガイドラインに記載し、認識のズレがないようにします。規定違反した従業員への処遇なども明記しておくことで、従業員による不適切投稿をある程度防ぐことができるでしょう。
投稿の確認体制を整備
SNS運用ルールと併せて、投稿における確認体制を整備しておくことも有効です。
SNS運用の担当者が一人で投稿内容の作成を行っている場合、担当者の認識やバイアス(偏見)によって、知らぬ間に不適切な投稿をしてしまうリスクがあります。そのため、複数人による検閲を挟むことが炎上の防止策になります。さまざまな視点から投稿内容について検証し、偏った判断を避けます。
検閲を挟むことで投稿までに時間がかかるという難点があるものの、炎上発生時の対応と比較すれば微々たるものです。複数人による確認体制を構築しましょう。
従業員のリスク管理を高めるための情報共有
従業員のSNSに対するリスク意識を強化することも求められます。他社で起きた炎上事例を共有したり、策定したガイドラインを基に研修を実施したりすることが有効です。
自分では偏見や差別を含む投稿であると感じなくても、他の人から見るとそう感じる可能性があることを理解してもらいます。継続的に研修を行うことで、従業員起点の炎上を防止できるでしょう。
炎上リスクの早期発見のためにユーザーの動向を確認
炎上に繋がる恐れのある投稿を早期発見するために、常にユーザーの動向を確認しておくことも欠かせません。投稿した内容に対するユーザーの反応や、ユーザーの間でどのような言葉が多く使われているか監視します。
ユーザー動向の確認にはソーシャルリスニングツールがおすすめです。各SNSなどに投稿された膨大な情報を一元的に分析でき、炎上に繋がる恐れがある投稿をいち早く把握することが可能です。
「Meltwater」のソーシャルリスニング機能を活用すれば、SNS上での自社関連の投稿を効率的に把握できます。ご興味のある方はこちらからご確認ください。
炎上発生時の対応マニュアルの策定
いざ炎上が発生した際にどのように対応すべきかを、マニュアルとして事前にまとめておくことも必要です。謝罪や事実の公表のタイミング、社内での報告対象者や報告手順、メディア対応の担当者、投稿者への対応などをあらかじめ規定しておきましょう。
対応マニュアルが整備されていれば、スピーディかつ適切な初動を実現でき、炎上による被害を最小化できる可能性が高まります。
また実際の炎上発生時の対応を振り返りマニュアルを適宜改定していくことで、より効果的な対応を実現できるでしょう。
炎上が起こってしまった時の適切な対応
最後に炎上が起こってしまった際に取るべき対応についてご紹介します。
原因と経緯などの現状把握
炎上が発生したら、まずは冷静に以下のような発生原因や経緯などの現状を把握します。
- どの投稿から炎上が発生しているのか
- 原因となる投稿は誰によるものか
- なぜ批判的な意見が発生しているのか
分析結果により、取るべき対応を検討します。
企業としての方針を定め、謝罪
現状を把握した上で、企業としてどのような対応を取るか方針を定め、謝罪を行います。謝罪の方法には、公式サイトへの謝罪文の掲載や、記者会見への対応などがあります。
もし自社投稿に起因して炎上が発生した場合は、原因となった投稿を削除するとともに、関係者に対して謝罪や状況説明を実施しましょう。この際、再発防止策や改善策などを併せて説明することで、社会からの信頼回復に繋げることができます。
また、自社に落ち度がなく誤解などに起因した炎上であったとしても、決して放置することなく、関係者への謝罪と事実説明を行いましょう。
再発防止策の立案
炎上の事態収束に努めつつ、再発防止策の立案にも取り組まなければなりません。
今回の炎上が起きた原因を踏まえ、再発防止のための具体的な対策を規定します。もし従業員に起因した炎上である場合は、当該従業員に対する処分を行うとともに、全従業員に対してSNS利用に関する研修を再度実施することも有効でしょう。
炎上後の状況をモニタリング
炎上後の状況をモニタリングしておくことも必要です。
一度収束した炎上であっても、ユーザーの新たな投稿などにより再燃する可能性があります。そのため炎上した後も油断せずに、SNS上の投稿には注目しておかなければなりません。
もし再燃に繋がりそうな投稿を発見した場合は、速やかに対策を講じて再炎上を防ぎましょう。炎上後のモニタリングにおいても、ソーシャルリスニングツールを活用することで、より効率的に取り組むことができます。
<ソーシャルリスニング(クチコミ分析)ツール|Meltwater>
関係者へのフォロー
炎上した投稿の関係者に対しては、事態収束後も継続的なフォローを実施しましょう。
関係者とは、クレームの投稿者や、個人情報漏洩などの被害を受けた人、風評により売上が落ちた小売店などです。個別に連絡をとり改善状況などを報告しながら、より深い謝罪を行うことで信頼回復に繋げられます。
炎上に関してユーザーから寄せられる問い合わせなどについても、丁寧かつ透明性のある対応を行うことが重要です。
ブランドイメージの回復策を立案
ブランドイメージの回復策を立案することも必要です。
炎上が発生すると、たとえ企業側に非がなくても企業のブランドイメージは多かれ少なかれダメージを受け、従来よりもネガティブに評価するユーザーが増えることが想定されます。イメージが悪化したまま放置すると事業にも悪影響が生じるため、企業としては早急にブランドイメージを回復しなければなりません。
先に挙げた改善状況や再発防止の取り組みなどを公開し、真摯に対応している姿勢を積極的にアピールすることが重要です。取り組みの効果は、第三者機関などに依頼して客観的な評価をしてもらい、その内容を公開することで、より信憑性を持って社会に受け入れられるでしょう。
SNS運用を行う企業には炎上対策が必要
SNSはユーザー情報の取得しやすさや優れた拡散力を持つため、今や企業のマーケティングや広報活動において欠かせないツールとなっています。しかし、炎上の可能性についても把握しておかなければなりません。
日頃から炎上が発生しにくい体制を整えるとともに、発生した際に適切な対応が取れるように従業員の教育などに取り組むことが必要になるでしょう。
「Meltwater」が提供するソーシャルメディア分析ツールは、さまざまなSNSに投稿された情報を一元的に分析でき、炎上の火種となりうる投稿の把握に役立ちます。
ご興味ある方はぜひこちらのページからご確認ください。
この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。