近年、動画マーケティング市場規模が拡大傾向にあります。その背景には、全世界におけるSNS利用者数の急増が挙げられます。2023年1月時点のSNS利用者数は47億2,000万人と、前年比約3%の成長を記録しました。
SNSの中でも、手軽に視聴できるショート動画は若年層ユーザーを中心に視聴時間が増加しており、一般ユーザーや企業のマーケティング担当から高い注目を集めています。実際に、ショート動画に特化したプラットフォームであるTikTokは、InstagramやYouTube、Facebookよりも速いペースで2021年に10億人ユーザーに到達しました。
今回は、世界と日本におけるSNS利用者数の推移や、動画ベースのSNSが急成長を遂げる背景、最新のSNSトレンドなどについて解説していきます。
世界と日本のSNSユーザー数
SNS人口は年々増加しており、今や世界中で47億2,000人がSNSを使用しています。
世界のSNSユーザー数は、2022年1月から2023年1月までの1年間で、46億2,000万人から47億2,000万人に増加しました。ユーザー数の成長率は前年比約3%となっており、今後もさらなる成長が予想されています。
SNSのユーザー数は、世界人口比でみると60%に相当。世界のインターネットユーザーは、世界人口の64.6%であることから、インターネットを利用する約95%は何らかのSNSを利用していることになります。
参照:Global social media statistics research summary 2023
ちなみに、2023年1月における日本のSNSユーザー数は9,200万人で、日本の総人口の74.4%に相当します。これは、10人に7人が何かしらSNSを利用しているという高い割合です。
インターネットを利用している人に限定すると、89.8%にまで上がります。
また、18歳以上の人口に限定した場合の利用率は、82.7%です。
参照:Digital 2023: Japan — DataReportal – Global Digital Insights
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動画ベースのSNSの台頭
近年では、SNSの中でもとりわけ動画ベースのプラットフォームが著しく成長しています。株式会社矢野研究所の2022年の調査によると、動画コンテンツビジネス市場は年々拡大しているようです。
(参照: 動画コンテンツビジネスに関する調査を実施(2022年) | 矢野経済研究所)
ここでは、実際にYouTubeとTiktok、その他動画ベースのSNSのユーザー数の推移や拡大の背景などについて解説していきます。
YouTube
YouTubeは、米グーグル社が運営する世界最大の動画共有サービスです。全世界での1日あたりの視聴時間は10億時間を超えており(2017年)、年に換算すると10万年以上に相当します。
また、2021年にはショート動画の撮影と編集、投稿ができる新機能「YouTubeショート」を日本でもリリースするなど、人気のショート動画SNS「TikTok」に対抗する流れも見られます。
以下は、YouTubeのおよそのユーザー数の推移です。2023年現在、世界中で27億人がYouTubeを利用しています。
年 | アクティブユーザー数 |
---|---|
2013年 | 10億人 |
2014年 | 11億人 |
2015年 | 13億人 |
2016年 | 15億人 |
2016年 | 16億人 |
2018年 | 18億人 |
2019年 | 20億人 |
2020年 | 23億人 |
2021年 | 25億人 |
2022年 | 26.8億人 | 2023年 | 27億人 |
YouTubeの世界のユーザー数(約)(参照:Flourish)
ちなみに、2023年初頭における日本のYouTubeユーザー数は7,840万人となっています。Meltwaterの調査では、YouTubeの広告リーチ率は、日本の総人口の63.4%に相当すると報告されています。
(参照:Digital 2023: Japan — DataReportal – Global Digital Insights)
TikTok
TikTokは、2016年に中国でリリースされた「Douyin」の国外版として登場したショート動画の作成・共有プラットフォームです。2021年9月にはアクティブユーザーの世界総数が10億人を突破。ユーザー数10億人に到達するまでにInstagramとYouTubeは8年の月日がかかったことを考慮すると、TikTokの成長速度の速さがうかがえます。
TikTokがこれほどまでの速さで成長を遂げた理由としては、運営元のByteDance社が何十億ドルもの資金を持つ巨大企業なことが挙げられます。豊かな資金を費やして、人気ユーザーが最新トレンドに表示される仕組みや、新規ユーザーでも簡単に人気になれるアルゴリズム作りに取り組んだことが、世界中の人々を夢中にさせたと考えられます。
年 | アクティブユーザー数 |
---|---|
2019年 | 3.6億人 |
2020年 | 7億人 |
2021年 | 9億人 |
2022年 | 14.7億人 |
2023年 | 16.7億人 |
TikTokの世界のユーザー数(約)(参照:Flourish)
TikTokのユーザーは若年層が主体となっています。日本におけるTikTokユーザーの平均年齢は34歳で、10代の利用が62.4%です(2021年時点)。
さらに、4歳から18歳までの若年層を対象とした調査では、YouTubeの視聴時間が減っている代わりに、TikTokの視聴時間が増加していることが分かっています。若年層は、手軽に楽しめるショート動画を好む傾向にあるようです。
TikTokの視聴時間(1日平均) | YouTubeの視聴時間(1日平均) | |
---|---|---|
2020年 | 82分 | 75分 |
2021年 | 91分 | 56分 |
4歳から18歳までのTikTokとYouTubeの視聴時間(参照:マイナビニュース )
TikTokは、2021年には、年間で最も多くダウンロードされた無料アプリとなりました。他の主要SNSと比べて比較的新しく登場したSNSであり、新規ユーザーの獲得余地が大きいため、今後もさらにユーザー数を増やしていくことが予想されます。
Instagramは2010年にリリースされ、FacebookやX(Twitter)と比べて比較的新しいSNSでありながら、25億人のユーザーが利用する人気SNSです。アプリ公開当初は、画像共有に特化していましたが、近年ではリール動画やライブ配信機能、投稿後24時間で消えるストーリーズなど、動画ベースになりつつあります。
Instagramは、2016年頃より成長スピードが加速しており、2018年から2021年の3年間にはユーザー数が2倍に増えています。
年 | アクティブユーザー数 |
---|---|
2013年 | 1億人 |
2014年 | 2億人 |
2015年 | 3.7億人 |
2016年 | 5億人 |
2016年 | 7億人 |
2018年 | 10億人 |
2019年 | 11億人 |
2020年 | 13億人 |
2021年 | 20億人 |
2022年 | 23億人 | 2023年 | 25億人 |
Instagramの世界のユーザー数(約)(参照:Flourish)
さまざまな形で画像や動画の共有ができるInstagramは、今後も目が離せないSNSの一つです。
テキストベースのSNSの成長について
動画ベースのSNSと比較して、テキストベースのSNSはどのような成長を遂げているのでしょうか?ここでは、主要なテキストベースSNSの成長について見ていきましょう。
X(旧:Twitter)
X(旧:Twitter)は、テキストで気軽に情報を発信できるのが特徴のSNSです。2022年10月にはイーロン・マスク氏がTwitterを買収したことで、話題になりました。マスク氏がTwitterを買収するに至ったのは、「人々がより自由に発言できる包括的な場が必要だ」という理由からです。
Twitterは2018年に、Reddit(3.7億人)にユーザー数を抜かれ、Flourishの主要SNSランキング外となりました。以下は2013年から2018年までのユーザー数の推移です。
年 | アクティブユーザー数 |
---|---|
2013年 | 2.4億人 |
2014年 | 2.8億人 |
2015年 | 3.0億人 |
2016年 | 3.2億人 |
2017年 | 3.3億人 |
2018年 | 3.2億人 |
Twitterの世界のユーザー数(約)(参照:Flourish)
2018年以降もユーザー数に大きな変化はなく、2023年のXのユーザー数は3.5億人となっています。日本では6,745万人がX(Twitter)のアクティブユーザーで、アメリカに次いで世界第2位のユーザー数を誇ります。2018年の調査によると、X(Twitter)は、グルメや美容、ファッション、インターネットなど、生活に関わる情報収集を目的に利用されることが多いそうです(参照:暮らしの情報とTwitter)。
しかし、マスク氏によるTwitter買収後、世界のユーザー数は減少傾向にあります。名称・ロゴの変更や機能制限などの迷走の結果、アプリのダウンロード数は30%減、ウェブサイト版の利用は10%減を記録しました。
また、マスク氏のTwitter買収後には、月額料金を支払うことで長い文章や動画の投稿ができるサブスクリプションサービス「Twitter Blue」が導入されました。2023年10月現在では、さらに全利用者を対象とした少額課金の導入が検討されており、無料サービスの有料化による利用者のさらなるX離れが懸念されています。
Q&A型SNS(RedditやQuoraなど)
RedditやQuoraなどに代表されるQ&A型SNSは、主に情報共有や意見交換の場として利用者数を伸ばしています。
Redditは2023年現在、約16億人のアクティブユーザーが利用。前年と比べて38.9%ユーザー数が増加しました。月間アクティブユーザーは約4億3000万人(2021年)です。
Quoraは、「解答の質の高さ」を特徴とした質問サイトで、2023年現在、全世界で月間3億人以上のアクティブユーザーが利用しています。日本ではYahoo!知恵袋やはてななどの競合質問サイトがあることから知名度はそれほど高くありませんが、本国のアメリカでは不動の人気を誇る質問サイトです。
Q&A型SNSは、他のSNSと比較して、専門的な情報や知識を求めるユーザーが多く使用しているのが特徴です。
人気なのは動画ベースのSNS
近年では、人気のSNSはテキストベースから動画ベースに移り変わっています。
Meltwaterの2023年1月の調査では、日本国内で1週間のうち何かしらの動画を視聴する人(16歳〜64歳)の割合は71.6%となっています。また、2022年の動画広告の国内での市場規模は約48億米ドル(1ドル147円換算で約7,056億円)を記録し、前年比と比べて10.0%増加しています。
(参照:Digital 2023: Japan — DataReportal – Global Digital Insights)
SNSの満足度を種類ごとに見ても、動画ベースのほうがテキストベースよりも高いです。
ICT総研が2022年度に行ったSNS満足度ランキングの順位は、上位が動画ベースのTikTokとYouTube、そして動画ベースになりつつあるInstagramと続きます。
SNSの利用率も併せて見ると、利用率と満足度は必ずしも比例しているわけではないこともわかります。
2022年度の日本国内におけるSNSの利用率と満足度ランキング(参照:ICT総研)
このように、近年では人々が動画を求める傾向にあります。アニメーション動画の制作を手がけるWyzowlがマーケティングの専門家とオンライン上の顧客に行った調査では、91%が「企業が提供する動画をもっと見たい」と回答しており、この数字は年々増加しています。
動画ベースのSNSは、「テキストから動画へ」という社会的なトレンドに沿っていることから、今後のマーケティングで利用する価値も高いと言えます。以下では、動画ベースとテキストベースのSNSのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
動画とテキストベースのSNSのメリットを比較
動画ベースとテキストベースのSNSのメリットを比較します。
動画ベースのSNS | テキストベースのSNS |
---|---|
・視覚的な情報の伝達が容易 ・情報量が膨大 ・エンターテインメント性が高い ・情報を得たい人の負担を抑えられる ・エンゲージメントを獲得しやすい | ・手軽に投稿できる ・必要な情報を素早く共有できる ・リアルタイム性が強く、拡散されやすい ・音声の使えない場面において活用できる ・調べる際に入念にチェックできる |
動画ベースのSNSは、視覚的な要素や音声を活用して情報を伝えられるため、テキストベースのコンテンツと比較して情報量が膨大です。言葉だけでは伝えるのが難しい感情や雰囲気を直感的に伝えたり、複雑な情報や手順などをわかりやすく伝えたりできます。
また、エンゲージメント(顧客との強い関係性)を獲得しやすいことも、動画ベースのSNSおよび動画コンテンツの大きなメリットです。動画は視覚的に魅力的であり、視聴者の注意を引きやすいという特徴があります。
実際にビジネス向けのSNS、LinkedInによると、通常のテキスト投稿と比べて、画像は2倍、動画は5倍、ライブ配信なら24倍ものエンゲージメントを獲得することがわかっています。動画がエンゲージメント向上に効果的である現象は、FacebookやInstagramでも確認されています。
このように、動画は情報を効果的に伝え、視覚的な魅力で視聴者の興味を引くため、デジタルマーケティングにおいて非常に有力なツールです。
一方、テキストベースのSNSには、動画と比較して手軽に投稿できる、必要な情報を素早く届けられるといったメリットがあります。しかし、スマホの普及や通信環境の進歩、動画配信サービスの利便性の向上などにより、テキストの動画への優位性は低下しつつあると言えます。
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動画とテキストベースのSNSのデメリットを比較
続いて、動画ベースとテキストベースのSNSのデメリットを比較します。
動画ベースのSNS | テキストベースのSNS |
---|---|
・制作コスト・時間がかかる ・閲覧環境に制約がある | ・エンゲージメントが低い ・表現が制約される |
動画ベースのSNSのデメリットは、投稿の作成にコストと時間がかかることです。魅力的なコンテンツを作り上げるには、専門的な編集技術や機材が必要になることもあります。
また、ユーザーが動画を視聴するには、適切なインターネット環境やデバイスが必要なことから、制約がかかることも考えられます。しかし、近い将来4Gの20倍もの通信速度をもつ5Gが普及することで、閲覧環境の制約は受けにくくなるでしょう。
一方、テキストベースのSNSは、「文字」は「映像」と比べて視覚的な魅力が少ないことから、動画と比べてエンゲージメントが低下しやすい傾向にあります。また、伝えたい情報によっては文字では的確な表現がしにくく、コミュニケーションの幅が狭まる可能性があります。
今後SNSトレンドを予想
今後、SNSはどのように進化を遂げていくのでしょうか?ここでは、3つのトレンドをもとに、SNSやSNSマーケティングの今後を予想していきます。
- 5Gの普及
- 動画サービスへの転換
- AI技術の進歩
5Gの普及
近い将来、従来の4Gと比較して20倍の通信速度をもつと言われる5G(第5世代移動通信システム)の対応エリアが拡大し、動画ベースのSNSのさらなる普及が進むことが予想されます。
5Gでは通信速度が飛躍的に向上します。たとえば、2時間の映画をたったの数秒でダウンロードできるほどの速さです。また、通信の遅延が少なく安定した接続が可能になるため、ライブ配信などのコンテンツも場所を問わず楽しめるようになります。
データ通信の高速化は、新たな形のコンテンツを社会に浸透させる力をもっています。たとえば、3Gから4Gへの移行時には、外出先でスムーズに画像を閲覧できるようになったことで、Instagramなどの画像サービスが以前よりも広く利用されるようになりました。
近い将来、5Gの対応エリアが拡大し、外出先や移動中でも大容量の動画をストレスなく視聴できるようになることで、動画コンテンツは私たちの日常にさらに溶け込んでいくでしょう。
また、動画コンテンツの需要の高まりに伴い、多くの企業や個人が動画マーケティング戦略に力を注ぐことも予想されます。これにより、動画コンテンツはさらなる発展を遂げていくでしょう。
動画サービスへの転換
動画化の流れに伴い、今後テキストベースのSNSが動画サービスに転換する可能性が考えられます。
たとえば、中国版X(Twitter)として知られる「Weibo(微博)」は、2018年に動画サービスへの転換を発表しました。ショート動画がメインのSNSの台頭や、アプリ内で動画コンテンツの投稿が増えたことなどの影響を受けての、根本的なプラットフォームの改変です。
また、中国ではオンラインショッピングや学習系コンテンツなど、さまざまなシーンでテキストが動画に置き換えられる現象が見られます。日本でも動画化の現象はすでにあり、以下はその一例です。
- マーケティング:動画を用いた商品・サービス紹介
- 教育:動画のオンラインコースや学習サービス提供
- 不動産:VR動画を用いた賃貸物件紹介
- フィットネス:動画を通じた指導やトレーニング提供
このように、動画は視覚的で多くの情報を効果的に伝えられる有効な手段であることから、さまざまなサービスがテキストベースから動画を活用する方向にシフトしています。動画サービスへの転換は、今後さらに広まっていくと考えられます。
AI技術の進歩
AIは、ユーザーの行動や好みを学習し、一人ひとりに適したコンテンツを提供することが得意です。AI技術、およびSNSプラットフォームにおけるAI活用の進展により、ユーザーエクスペリエンスが向上することが予想されます。
また、SNSマーケティングにおいてAI活用が進むことによって、以下のことが可能になります。
- SNSマーケティングやコンテンツ戦略の最適化
- AIチャットボットによる顧客対応
- コンテンツの自動生成
AI技術の活用により、企業はSNSマーケティングの作業の一部を自動化したり、コンテンツ作成や戦略を最適化し、効率を上げられるようになります。
ただし、AI技術を使うことで多くの企業がパーソナライズされた魅力的なコンテンツを提供できるようになれば、その分「差別化」のポイントが必要です。コンテンツ制作や分析、戦略の最適化にかかるコストが下がる分、クリエイティブな作業や経験に裏付けされた改善など、AIでは不足しがちな部分は人間の手で補っていく必要があると言えます。
まとめ
今回は、2023年の最新SNSトレンドを解説しました。近年では、SNSの利用者が増加の一途を辿っており、動画ベースのSNSが人気を高めています。中でも尺が短い「ショート動画」は、若年層を中心に大きな支持を得ており、マーケティングでの活用や広告の配信先として目が離せないプラットフォームです。
比較的新しいSNSであることから新規ユーザー獲得の余地が大きいTikTokを中心に、SNSのユーザー数は今後も増加していくことが考えられます。5Gの対応エリア拡大や、動画サービスへの転換、AI技術の進歩といった最新トレンドを押さえ、自社にとって適切なSNSマーケティング戦略を立てていく必要があるでしょう。
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この記事の監修者:
岡田敬子 (Meltwater Japan マーケティングマネージャー)
武蔵野美術大学卒。グラフィックデザイナー・B2C領域のマーケティングで17年の経験を積む。2022年よりMeltwater Japan株式会社にて日本市場のマーケティングを担当し、「データに基づく意思決定」を後押しするMeltwaterソリューションの認知度向上のための施策に従事。