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バイラルマーケティングとは

バイラルマーケティングとは?メリット、手順、成功事例を解説


山﨑伊代

Nov 25, 2024

企業のマーケティング担当者の方の中には、「広告宣伝費を抑えて成果を出したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが、バイラルマーケティング(viral marketing)です。

バイラルマーケティングとは、消費者の自発性により情報を拡散するマーケティング手法です。低コストで大きな効果が期待できるメリットがあります。本記事では、バイラルマーケティングの基礎から成功事例まで、実践的な情報をお届けします。

バイラルマーケティングとは?

バイラルマーケティングとは

バイラルマーケティング (viral marketing) とは、直訳するとウイルス性の(viral)マーケティングで、ウイルスが急速に広がるように、情報を人から人へと自然に拡散させるマーケティング手法です。

従来の広告のように企業側から消費者に向けて宣伝するだけでなく、SNS上の消費者同士のつながりや口コミを利用して情報を広めます。面白い動画や役立つ情報を流すことで、消費者が自発的に情報を拡散させるため、比較的低コストでブランドの認知を拡大できるのです。

マーケティングで行うことは、Web上の文書・画像・動画などコンテンツの作成です。消費者がだれかと共有したいと思うような魅力的な内容にします。情報を流す媒体も、ターゲット層に合わせて決めます。

バイラルマーケティングが注目されている背景

バイラルマーケティングが注目を集める背景には、デジタル技術の進化と消費者行動の変化があります。FacebookやYouTubeなどのSNSの急速な普及により、個人間のコンテンツ共有が日常化し、魅力的な情報が爆発的に拡散する可能性が高まりました。

同時に、消費者は従来の広告よりも、知人からの推奨やWeb上の口コミを信頼する傾向が強まっています(株式会社バニッシュ・スタンダードのプレスリリース 2022年12月調査)。

さらに、データ分析技術の発展により、企業はより精密なターゲティングと効果測定が可能になりました。これらの要因が相まって、バイラルマーケティングへの注目が高まっているのです。

バイラルマーケティングの種類

バイラルマーケティングには複数の方法があります。主な種類は以下の通りです。

1次的バイラルマーケティング

1次的バイラルマーケティングは、消費者の自発的な共有を促すアプローチです。例えば、面白い動画広告を作成し、視聴者が自然に友人と共有したくなるような内容にします。この方法は、強制感がなく自然な拡散が期待できますが、コンテンツの質が重要になります。

2次的バイラルマーケティング

2次的バイラルマーケティングは、共有に対してインセンティブを提供する方法です。例えば、友達紹介プログラムや、シェアすることで割引が受けられるキャンペーンなどが該当します。この方法は拡散のスピードを上げやすいですが、過度に利用すると強制的な印象を与える可能性があります。

紹介埋め込み

紹介埋め込みは、製品やサービスの利用過程であらかじめ埋め込まれた広告や紹介文が表示される方法です。

例えば、画像や動画につける透かし文字のウォーターマークを活用します。著作権保護のために企業名や制作者名のロゴなどを透かしで入れるのが通常の使い方ですが、ブランドの認知を広げるのにも効果的です。また、消費者がアプリを利用するたびに広告表示する方法もあります。

紹介埋め込みは、消費者の積極的な行動を必要としないため自然な拡散が期待できますが、過度な使用はユーザー体験を損なう可能性があるため、バランスが重要です。


バイラルマーケティングと似ているマーケティングとの違い

バイラルマーケティングは他のマーケティング手法と似ている点がありますが、それぞれに特徴的な違いがあります。ここでは、バズマーケティング、インフルエンサーマーケティング、ステルスマーケティングとの違いを明確にし、その特徴を解説します。

マーケティング手法主な特徴
バズマーケティング意図的な情報拡散を狙い、企業が積極的に介入
インフルエンサーマーケティングバズマーケティングの一つで、影響力のある個人を通じて製品やサービスを宣伝
ステルスマーケティング宣伝であることを隠して宣伝する違法行為

バズマーケティングとの違い

バイラルマーケティングとバズマーケティングの主な違いは、情報拡散が意図的かどうかにあります。バイラルマーケティングが自然な口コミを促すのに対し、バズマーケティングは計画的に拡散を狙うのが特徴です。

バイラルマーケティングは魅力的なコンテンツを作り、消費者の自発的な共有を促します。一方、バズマーケティングは企業が積極的に介入し、ハッシュタグキャンペーンやリポストキャンペーン、インフルエンサーの起用などを通じて意図的に話題を作ります。

インフルエンサーマーケティングとの違い

バイラルマーケティングとインフルエンサーマーケティングの違いは、バイラルマーケティングが大衆の力を、インフルエンサーマーケティングが個人の影響力を利用する点です。

バイラルマーケティングは魅力的なコンテンツを作成し、一般消費者の自発的な共有を促し、幅広い層に自然な形で情報が広がることを期待します。

一方、インフルエンサーマーケティングは、特定の影響力のある個人に依頼し、彼らのフォロワーや支持者に向けて製品やサービスの宣伝を行います。ターゲットを絞った効果的な情報発信により、認知度を高めることが可能です。バズマーケティングの一つです。

ステルスマーケティングとの違い

バイラルマーケティングとステルスマーケティングの決定的な違いは透明性です。

バイラルマーケティングは、消費者の自発的な口コミにより情報を拡散します。一方、ステルスマーケティングは意図的な宣伝であるにもかかわらず、あたかも自発的な口コミのように見せるため、消費者を欺く行為です。2023年10月1日の景品表示法改正により、ステルスマーケティングは違法行為となりました。

バイラルマーケティングのメリット

バイラルマーケティングには以下のようなメリットがあります。

  • 潜在ターゲットへのアプローチ
  • 高い費用対効果
  • ブランド認知度の向上
  • 広告よりも高い関心度

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

潜在ターゲットにアプローチができる

バイラルマーケティングを活用すれば、見落とされがちな潜在顧客層にリーチできます。例えば、クラウド会計ソフトの会社が「確定申告のコツ」というコンテンツを発信した場合、当初のターゲットである中小企業経営者はもちろん、確定申告が必要なフリーランスにも情報が届く可能性があります。

また、消費者間の共有によって、似た興味や課題を持つ人々に効率的にアプローチできるため、より的確なターゲティングができるようになります。

費用対効果が高い

バイラルマーケティングは、費用対効果が高いのもメリットです。一つのコンテンツが多くの消費者に共有された場合、広告費をかけずに大規模な露出を得られます。

コンテンツ制作には時間と労力がかかるものの、質の高いコンテンツを作れば継続的な情報拡散が期待できるでしょう。

ブランド認知度向上を狙える

バイラルマーケティングを活用すれば、短期間でブランド認知度を大幅に向上させることも可能です。ブランドのコンテンツが多くの人に共有された場合、ブランドの存在と理念を一気に広められます。

また、消費者の自発的な共有は意図的な宣伝ではないため、ポジティブな口コミはそのブランドへの信頼や支持を示すシグナルとなり、より強力なブランドイメージの構築につながります。特に新規参入ブランドや、市場でのポジショニングを変更したいブランドにとって、この効果は非常に大きいでしょう。

広告よりも興味を惹きやすい

バイラルマーケティングのコンテンツは、従来の広告よりも消費者の興味を惹きやすい傾向があります。

製品の購入に迷ったときに参考にする人で一番多かったのは、家族や友人でした(株式会社バニッシュ・スタンダードのプレスリリース 2022年12月調査)。宣伝目的で作られる広告よりも、身近な人から共有されたコンテンツのほうが信頼しやすいのでしょう。コンテンツの自然な拡散は、広告に抵抗感がある消費者にも効果的にアプローチできます。

バイラルマーケティングのデメリット

バイラルマーケティングには以下のようなデメリットがあります。

  • 再現性の低さ
  • ネガティブな情報の拡散リスク
  • 情報拡散の制御不能
  • 法的リスクの可能性

それぞれのデメリットを詳しく見ていきましょう。

再現性が低い

バイラルマーケティングの大きな課題の一つは、再現性の低さです。例えば、ある面白い動画広告が大きな話題を呼んだとしても、類似のコンセプトで制作した次の動画が同じように拡散するとは限りません。

消費者の興味や社会のトレンドが常に変化しているため、一度注目を集めた手法は新鮮味を失い、二度目には効果が薄れる可能性があるのです。そのため、バイラルマーケティングを継続的に成功させるには、常に新しいアイデアと創造性が求められます。

ネガティブな情報が拡散されてしまうリスクがある

ネガティブな情報が急速に拡散される可能性がある点もデメリットです。例えば、ある企業の製品に関する批判的なレビューが急速に広まり、短時間で多くの消費者の目に触れてしまうことがあります。

このような事態は、企業のブランドイメージに深刻なダメージを与える可能性があります。特に、インターネット上では否定的な情報がより注目を集めやすい傾向があるため、一度ネガティブな情報が広まると、それを打ち消すのは非常に困難です。また、誤った情報であっても、拡散のスピードが速いため、訂正しても信頼回復までに時間がかかることもあります。

情報の拡散を制御できない

バイラルマーケティングでは、消費者の自発性に任せているため情報の拡散を完全に制御できません。批判的な口コミが広がると、企業の評判が落ちてしまいます。また、ポジティブな反応であっても、製品の需要が急激に高まった場合、供給が追いつかず機会損失を招く可能性があります。

あるいは、意図しない解釈や二次創作によって、当初のメッセージが歪められてしまうこともあるかもしれません。また、特定のターゲット層に向けて発信したつもりが、全く異なる層に拡散し、ブランドイメージにズレが生じることもあるでしょう。

違法になる可能性がある

バイラルマーケティングのなかでも、1次的バイラルマーケティングは消費者が自発的に情報を拡散し、紹介埋め込みは宣伝があらかじめサービスに含まれているため違法ではありません。

しかし、2次的バイラルマーケティングのように拡散のためにインセンティブが生じる場合は、広告と同様に扱われます。広告であることを示さないと、景品表示法に抵触してステルスマーケティングと見なされ、違法行為にあたる可能性があります。

広告であることは「このコンテンツにはプロモーションを含みます」といったように正しく明示しましょう。広告表示されていても、長文の中にあったり見にくい色を使っていたりするなどわかりにくい場合は、違法になる可能性があるため注意が必要です。

また、他者の作品や画像を無断で使用してしまうと、著作権や肖像権の法的トラブルに発展する恐れがあります。さらに、消費者の特性を知るためにデータ収集をする際に、消費者から利用に関する同意を適切に得ていないと、個人情報保護法に抵触する可能性もあるでしょう。

バイラルマーケティングで成功する秘訣

バイラルマーケティングで成功する秘訣

バイラルマーケティングで成功するためには、以下の要素が重要です。

  • 質の高いコンテンツを作る
  • 消費者の購買行動を理解する
  • 適切なバイラルマーケティングの種類を選択する

これらの要素を適切に組み合わせることで、効果的なバイラルマーケティング戦略を構築できます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

質の高いコンテンツを作る

バイラルマーケティングの成功には、共有したくなるようなコンテンツ作りが不可欠です。重要なのは、単なる宣伝ではなく、消費者に価値を提供することです。例えば、美容製品ブランドをアピールするだけでなく、肌ケアに関する有益な情報を提供します。
また、ユーモアや感動、驚きなど、感情を喚起するコンテンツも拡散されやすい傾向があります。感動的な企業ストーリーの動画や、驚きのある製品デモンストレーション、あるいは社会的な問題に対する独創的な解決策の提案などが効果的です。

消費者の購買行動を理解する

バイラルマーケティングの成功には、ターゲット層の購買行動の深い理解も不可欠です。年齢や職業、ライフスタイル、価値観によって情報収集方法や購買決定プロセスが異なることを認識し、適切な戦略を立てましょう。

購買プロセス(認知、興味、検討、購入、評価)に合わせたコンテンツ提供では、認知段階では注目を集める魅力的な動画を、検討段階では詳細な製品情報を提供するなどします。各段階で適切なプラットフォームやメッセージを選択することで、効果的なバイラルマーケティングが実現できます。

適切なバイラルマーケティングの種類を選択する

前述の通り、バイラルマーケティングには複数の種類があります。目的や状況に応じて適切なものを選択することが重要です。

また、ターゲット層の購買プロセスに合わせた手法を選ぶことで、メッセージが効果的に届き、購買行動の促進につながります。


バイラルマーケティングを成功させるための5ステップ

バイラルマーケティングを成功させるためには、以下の5つのステップを順序立てて実行しましょう。

  1. 目標とターゲットを決定する
  2. 配信チャネルを選定する
  3. シェアしたくなるコンテンツを作成する
  4. コンテンツを投稿する
  5. 効果を分析する

これらのステップを丁寧に踏むことで、効果的なバイラルマーケティングを展開できます。それぞれの各ステップを詳しく見ていきましょう。

1. 目標とターゲットを決定する

バイラルマーケティングの第一歩は、明確な目標設定とターゲット層の特定です。例えば、「3ヶ月以内に20代女性の認知度を30%上げる」といった具体的な目標を立てます。

この段階で重要なのは、目標とターゲットの整合性です。認知度30%アップのために最適なターゲット層を慎重に選定し、その特性を深く理解することが成功への鍵となります。年齢、性別、興味関心だけでなく、オンライン上での行動パターンも考慮し、ターゲット層を絞り込みます。

2. 配信チャネルを選定する

ターゲット層が決まったら、彼らが最もアクティブに利用するチャネルを選びます。例えば、若年層向けならInstagramやTikTok、ビジネスパーソン向けならLinkedInといった具合です。

また、各チャネルの特性も考慮しましょう。例えば、YouTubeは長尺の動画コンテンツに適していますが、Twitterは簡潔なメッセージが効果的です。複数のチャネルを組み合わせることで、相乗効果を狙うことも可能です。

3. シェアしたくなるコンテンツを作成する

バイラルマーケティングでは、消費者が自発的にシェアしたくなるようなコンテンツ作りが重要です。単なる宣伝ではなく、消費者に価値のある情報を提供します。

コンテンツ作成のアイデアは、Meltwaterが提供する2024年ソーシャルメディアカレンダーから得られるかもしれません。このカレンダーには、日本の様々な記念日が記載されており、SNS投稿のヒントとして活用できます。気になる方は以下よりダウンロードできます。

Meltwater:2024年ソーシャルメディアカレンダー

4. コンテンツを投稿する

コンテンツを投稿するタイミングにも、配慮が必要です。ターゲット層が最もアクティブな時間帯を把握しておきます。例えば、サラリーマン向けのコンテンツなら、通勤時間帯や昼休みが効果的でしょう。

また、初期の拡散を促進するために、既存の顧客ネットワークを活用することもおすすめです。さらに、ハッシュタグなど、各プラットフォームの特性を生かした投稿テクニックも使っていきましょう。投稿後も、コメントにスピーディに返信したり、関連コンテンツを追加投稿したりすることで、自然な拡散につなげていきます。

5. 効果を分析する

バイラルマーケティングの最後のステップは、効果を詳細に分析することです。主な指標は以下の通りです。

  • シェア数
  • リーチ数
  • エンゲージメント率
  • Webサイトへのアクセス数
  • 売上

これらのデータを総合的に評価し、目標の達成度を測ります。また、コメントの内容や拡散の経路などを分析することも重要です。

バイラルマーケティングの効果を詳細に分析するには、高度なツールが不可欠です。Meltwaterのソーシャルリスニングツールは、SNS上の自社に関する話題をリアルタイムで追跡し、消費者のニーズを理解するのに役立ちます。詳しくは以下のページをご覧ください。

Merlwater:ソーシャルリスニング(口コミ分析)

バイラルマーケティングの成功事例

バイラルマーケティングの成功事例を紹介します。

1. ロッテ(Fit's)

ロッテのガムブランド「Fit's」は、若者のガム離れを食い止めるため、斬新なバイラルマーケティング戦略を展開しました。「2年F組Fit's組~日本最強のクラス~」と題した動画シリーズを制作し、テレビCMを一切使わずにYouTubeで展開を行ったのです。

10代の人気アイドルや芸能人を起用し、高校の教室を舞台にしたドラマ仕立ての動画が話題を呼び、開始1カ月で動画再生回数1000万回、関連ツイート数10万を突破。若者の間で大きな話題となりました。
この戦略により、10代をターゲットとした「Fit's」の売上が前年同期比アップを実現しました。テレビからの影響が少ない10代の特性を活かした戦略と言えます。


3. 大塚製薬(ポカリスエット)

ポカリスエットは「ポカリガチダンス選手権」と称して、2016年にテレビCM用のダンス動画コンテストを行いました。インフルエンサーによるダンスのお手本動画を使うなど、インフルエンサーマーケティングも活用されています。難易度の高いダンスにも関わらず、わずか1週間で600件以上の応募があり、投稿動画の総再生回数は380万回を超えました。

応募対象の中高生だけでなく、20~30代でも大きな話題となり、ポカリスエットのブランドイメージ向上と認知度アップに貢献。また、ユーザー参加型のキャンペーンとしても成功し、話題性を維持しました。

まとめ|バイラルマーケティングを実践して認知度アップを図ろう

バイラルマーケティングは、消費者の自発的な情報拡散を活用したマーケティング手法です。魅力的なコンテンツを通じて、低コストで認知度向上を図れるのが最大の特徴です。

ターゲット層を超えた潜在顧客へのリーチも期待できるため、ブランディングにも役立てられます。本記事で紹介した手順や事例を参考に、自社の特性に合わせたバイラルマーケティングを実践し、新規顧客の獲得を目指しましょう。

この記事の監修者:

山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。

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