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市場調査とは

市場調査とは?メリットや調査方法、実施の流れを解説


山﨑伊代

Feb 1, 2024

新商品の開発や販売促進のために必要となるのが市場調査です。顧客ニーズや競合の動向など市場の動きが把握でき、経営の方向性が定まります。一方、重要性は理解しつつも、市場調査の定義が曖昧だったり、調査方法がわからなかったりするマーケティング担当者も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では市場調査の定義や実施する際の流れ、代表的な調査方法などを解説します。

市場調査とは?

What is a market research?

市場調査とは、企業がマーケティング活動を行うために、市場の情報を収集し分析する取り組みのことです。アンケートや公的機関などからデータを集め、競合他社の動向や顧客ニーズを探ることで、過去から現在の市場動向を把握できます。

数値で結果が出せる調査も多く、客観的で根拠のあるマーケティング施策を打ち出せます。また、感情など数値では表せない調査結果を得ることで、顧客ニーズの背景を深く考察することも可能です。

市場動向から自社の強みと弱みがはっきり見えてくるのが、市場調査の特徴です。商品やサービスのコンセプトが定まり、重要な部分にマーケティング活動を集中させるなど企業活動が効率的になります。

▶あわせて読みたい:マーケティングとは?定義や手順、主な手法をわかりやすく解説

市場調査とマーケティングリサーチの違い

市場調査と混同されやすいのがマーケティングリサーチです。

市場調査が、過去から現在の市場動向に着目しているのに対して、マーケティングリサーチは現在から将来的な市場動向に着目しているのが大きな違いです。

市場調査もマーケティングリサーチも商品開発に役立ちますが、マーケティングリサーチは新商品のテストや広告効果を図るのにも活用されます。

市場調査を実施するメリット

Benefits of conducting market research

市場調査を行う代表的なメリットは以下の3つです。

  1. 顧客の要求を把握できる
  2. 競合との差別化ができる
  3. リスクを軽減できる

順番に解説します。

1. 顧客の要求を把握できる

市場調査によって、顧客が何を求めているか把握できるので、新商品・サービスの開発や改良につなげることが可能です。

昨今は、スマホやSNSの普及により、消費者は簡単に情報を入手できるようになりました。顧客ニーズが変化するスピードも速まっているので、市場調査の重要性も高まっています。

顧客が「いま」求めているものを市場に提供できれば、売上も確保しやすくなるでしょう。

2. 競合との差別化ができる

競合他社の動向や市場シェアなどの情報を収集することで、差別化を図れます。

例えば、競合が低価格を売りにしているようであれば、高品質かつ高単価の商品で差別化できるかもしれません。

市場調査による競合分析は、自社が競争優位性を保てる領域を見つけやすくなるだけでなく、経営の意思決定にも役立ちます。

3. リスクを軽減できる

市場調査を行えば、事業のリスクを軽減できます。ニーズがありつつ他社と競合しない領域を把握できるからです。

市場調査でニーズのある市場を見つけ出し、商品・サービスを販売すれば、売上を確保しやすくなります。また、競合がひしめいているとわかれば、参入しないという意思決定を下すことで、過度な競争も避けることが可能です。

また、トレンドの変化にもスピーディに対応できるだけでなく、潜在的なリスクも察知しやすくなります。売上を高めつつ、損失を低減できるのです。

市場調査の5つの種類

市場調査を行う上で、まずどのような種類があるのかを知っておきましょう。代表的な市場調査は以下の5つです。

  1. 販促調査
  2. 価格調査
  3. 商品開発調査
  4. 認知度(ブランドイメージ)調査
  5. 顧客満足度調査

順番に解説します。

1. 販促調査

販促調査とは、費用対効果の高いプロモーション方法を導き出すための調査です。Web広告やチラシ、展示会への出展など、複数の施策について顧客にアンケートを実施し、評価が高かったプロモーション方法を選定します。

事前に調査を行っているので、効果の高いプロモーションが期待できるのがメリットです。

2. 価格調査

価格調査とは、自社の商品・サービスの販売価格を検討する際に役立つ調査です。高すぎたり、安すぎたりすることのない、消費者が妥当だと思う価格を導き出せます。

価格調査を実施する際は、複数の価格を提示して、消費者に妥当だと思うものを選んでもらう方法や、購入したいと思える価格をヒアリングする方法などがおすすめです。

複数の評価により客観的に妥当な価格を得られるので、新商品・サービスの販売前に実施しておきたい調査といえます。

3. 商品開発調査

商品開発調査とは、新商品・サービスのニーズを把握することを目的とした調査です。実際に商品・サービスを利用している顧客の声をヒアリングすることで、新たなヒントを得られます。

商品開発調査を実施する際は、Webや電話、メールでアンケートを取るのが一般的です。要望や不満を聞き出し、改良することで、顧客満足度を高められます。

4. 認知度(ブランドイメージ)調査

認知度(ブランドイメージ)調査とは、自社や競合他社およびその商品・サービスの認知度を把握するための調査です。

自社が思い描いているイメージとのギャップや他社との差などが明確になり、自社または商品・サービスの客観的な位置づけがわかります。

5. 顧客満足度調査

顧客満足度調査とは、自社商品・サービスの満足度を把握することを目的とした調査です。商品・サービスの使いやすさや問い合わせ窓口の対応などをヒアリングすることで、課題を抽出し改善につなげられます。

市場調査の方法は定性調査と定量調査に大別される

Market research methods can be broadly classified into quantative and quantiative research

市場調査の方法は定量調査と定性調査の2つに大別されます。

定性調査

定性調査とは、数値で表せないデータを収集する調査のことです。商品を利用した感想やサービスの使い勝手などを調査することで、生の言葉や行動などから消費者を深く理解できるメリットがあります。

一方、定性調査ではデータを数値化できないので、分析に時間がかかったり、調査者によって判断が異なったりするのがデメリットです。

定量調査

定量調査とは、数値で表せるデータを収集する調査のことです。購入者の年齢や購入単価、購入頻度など、調査者の主観が入る余地のない説得力のあるデータを集められるメリットがあります。

定量調査では、分析の正確性を担保するためにも、全ての対象者に同じ項目でアンケートを実施しなければなりません。そのため、追加の質問がしづらかったり、背景や理由を深掘りしにくいのがデメリットです。

具体的な市場調査の方法

代表的な市場調査の方法を9つ紹介します。

各調査方法
定性調査1.グループインタビュー
2. デプスインタビュー
3. エスノグラフィー(行動観察調査)
4. MROC(エムロック)
定量調査5.アンケート調査
6. ネットリサーチ
7. オープンデータ調査
8.会場調査(CLT)
9. ホームユーステスト(HUT)

1. グループインタビュー

グループインタビューとは、複数人から構成されるグループに対してインタビューを行う調査です。複数人の意見をまとめてヒアリングできるので、効率よくデータを収集できます。

また、参加者間でディスカッションできるので、普段得られないようなヒントも獲得できます。インタビューを円滑にすすめるためには、参加者が意見を言いやすい雰囲気を作るのが大事です。

2. デプスインタビュー

デプスインタビューとは、一対一で行われるインタビュー調査のことです。グループインタビューよりも、流れをコントロールしやすいだけでなく、丁寧に聞き取り調査を実施できます。

グループインタビューと比べると効率性は悪いですが、深い洞察を得られるのがメリットです。

3. エスノグラフィー(行動観察調査)

エスノグラフィー(行動観察調査)とは、顧客や消費者の行動を観察する調査のことです。自宅や職場などでどのような行動をとっているかを把握できるので、これまで気づけなかった顧客ニーズを見つけられます。

インタビューとは違い、対象者が自覚していない潜在的な課題や悩みを把握できるのがメリットです。

4. MROC(エムロック)

MROC(Marketing Research Online Communities)とは、オンライン上にコミュニティを作って、インタビューやアンケート調査、ディスカッションなどを行う調査のことです。

従来の調査と比べて、長期間にわたって行われるのが特徴です。定性調査と定量調査を組み合わせて行うこともでき、消費者の潜在ニーズの把握に役立てられます。

近年、マーケティングコミュニケーションの一種として注目を集めている調査手法です。

5. アンケート調査

アンケート調査とは、自社が知りたい項目を質問票にまとめたものを配布し、回答してもらう調査のことです。

郵送やメールに加えて、Webサイトにフォームを設置することで、大量のデータを取得できます。

質問事項を頻繁に変更すると、定点比較ができなくなるので、十分に精査してから作成する必要があります。

6. ネットリサーチ

ネットリサーチとは、インターネット上で行われるアンケート調査のことです。オンラインで調査が完結するので、コストを抑えられるのがメリットです。

不特定多数からスピーディにデータを回収できる一方、同じ人による重複回答が生じるリスクがあります。

7. オープンデータ調査

オープンデータ調査とは、政府や省庁、自治体といった公的機関が公開しているデータを収集する調査手法です。

正確性や公平性の高いデータを素早く集められるのがメリットです。大規模な調査は費用や時間がかかるので、自社で実施するのが難しい場合に活用するとよいでしょう。

8. 会場調査(CLT)

会場調査(Central Location Test)とは、イベント会場や展示会などの場で実施される調査のことです。人件費や出展費、交通費などがかかるものの、対面で調査できるので、信憑性の高いデータを取得できます。

実際に、自社の商品を手に取ってもらうことも可能です。表情やリアクションなど、言語以外の情報を収集できます。

9. ホームユーステスト(HUT)

ホームユーステスト(Home Use Test)とは、調査対象者に対して自社の商品・サービスを提供し、感想や意見をヒアリングする調査のことです。商品・サービスの開発や改良に役立てられます。

アンケートに回答してもらうことと引き換えに、商品やサービスを無償で提供したり、ポイントがついたりするのが一般的です。

市場調査を実施する基本の流れ

Basic flow of conducting market research

市場調査は以下の手順で実施します。

  1. 目的の明確化
  2. 調査計画の策定
  3. 調査の実施
  4. 分析・検証
  5. 意思決定

順番に解説します。

1. 目的の明確化

市場調査を実施する際は何のために、どのデータをどのように活用するのかを明確にしましょう。目的が曖昧な場合、適切な方法を判断できないからです。

例えば、自社のブランドイメージを把握したいのであれば認知度調査、新商品を開発したいのであれば商品開発調査がよいでしょう。

市場調査を実施する上で、最も重要なプロセスなので、時間をかけて議論する必要があります。

2. 調査計画の策定

目的を明確化したら、調査方法やコスト、スケジュールを決めます。市場調査では、調査方法によってコストの差が大きいのが特徴です。費用対効果を考慮して計画を策定しましょう。

例えば、Webアンケートであれば、顧客にメールを送信するため費用は人件費程度で済みます。一方、インタビューやホームユーステストでは、謝礼が必要になる場合もあります。

また、自社で調査を実施するのが難しい場合は、外部機関に依頼するのもひとつの方法でしょう。ポイントは、目的を達成するために最適な手段を選ぶことです。

3. 調査の実施

計画に沿って、調査を実施します。調査を実施する際のポイントは、調査対象者と調査者の選定です。

調査対象者に偏りがあると、市場の実態からかけ離れた数値が導き出される可能性があります。また、調査者には客観性が求められるので、可能な限り、複数名の担当者を割り当てるのがおすすめです。

4. 分析・検証

調査が終了したら、収集したデータを分析・検証します。課題の把握や商品開発に役立てられるポイントはないか、様々な観点で精査しましょう。

なお、レポートを作成する際は、個人の主観が入らないように注意する必要があります。都合のいいデータのみをピックアップするのではなく、全ての調査結果を可視化しましょう。

5. 意思決定

調査結果をもとに意思決定を行います。例えば、顧客満足度を高めることを目的に市場調査を実施した場合、顧客の不満や要望をもとに改善策を検討します。

接客態度が悪いようであれば、研修を充実させるのも手です。採用基準を見直すのもよいでしょう。

計画を実施したら、あらためて効果を検証して改善を繰り返して、成果につなげましょう。

市場調査を行う際に注意すべき3つのポイント

市場調査を実施する際に注意すべきポイントを3つ解説します。

  1. 費用と時間をかけすぎない
  2. 顧客の隠れた本音を引き出せる調査を行う
  3. 客観性を重視する

1. 費用と時間をかけすぎない

市場調査を実施する際は、費用と時間をかけすぎないように注意しましょう。費用がかさめば、費用対効果が悪くなります。

また、情報は鮮度が大事です。時間をかけすぎてしまうと、情報が古くなり、市場を正確に捉えられないだけでなく、せっかく収集したデータが無駄になるおそれがあります。

数ある調査方法の中で、どれがコストを抑えてスピーディに実施できるか精査した上で実施しましょう。

2. 顧客の隠れた本音を引き出せる調査を行う

顧客の本音を引き出せる調査を行うのも重要です。顧客は自分の意見や感想を全て言語化できるわけではないからです。

また、顧客は気を使って、本音を言わないケースもあります。そのような事態を避けるためには事前に「より良い商品・サービスにするために、不満な点を遠慮せずに話してほしい」と伝えておくのがおすすめです。

デプスインタビューでは、一人ひとりにじっくりと時間をかけられるため、本音を引き出しやすいでしょう。

他にも、ディスカッションやエスノグラフィーなど、調査者が直接質問をせずに顧客の発言や様子からニーズを探る方法もあります。

3.客観性を重視する

市場調査では、データの正確性や公平性などが担保されなければならないため、客観性が重要です。

自社で市場調査を実施する場合、担当者が都合のいいデータを取得できるようなアンケート項目を作成する可能性もゼロではありません。また、都合の悪い調査結果を無視してしまうおそれもあるでしょう。

市場調査を実施したものの事業に役立てられていない場合は、どこかに問題がある可能性が高いです。外部の調査機関やツールなどを活用して、精度を高めましょう。

まとめ|市場調査を実施して事業拡大につなげよう

新商品・サービスの開発や改良、顧客満足度の向上を行う際に欠かせないのが市場調査です。現在の市場を正確に把握することで、リスクを抑えて事業活動を実施できます。

市場調査には定性調査と定量調査があり、手法も様々です。調査する際は、客観性を重視するとともに、顧客の本音を引き出すように努めましょう。

この記事の監修者:

山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。

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