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マーケティング戦略

マーケティング戦略とは?立案の手順や便利なフレームワークを解説


山﨑伊代

Feb 1, 2024

マーケティング活動を実施する際、具体的なターゲットやそのニーズ、提供すべき価値の設定は欠かせません。

これらの要素を明確にし、顧客にどうアプローチするのかを規定したものがマーケティング戦略です。

この記事ではマーケティング戦略の概要や重要な理由を踏まえつつ、立案の手順や役立つフレームワークを解説します。

効果的なマーケティング戦略を立案したことで成果を挙げた企業事例も併せてご紹介します。

マーケティング戦略とは?

What is a marketing storategy?

マーケティング戦略とは、顧客像や市場ニーズを踏まえ、どのように顧客にアプローチしていくのかを策定したものです。

「誰の」「どんなニーズに対して」「どんな価値を」「どのように提供するのか」といった点を明確にすることで、マーケティング活動全体の方向性を定めます。

そもそもマーケティングとは「製品・サービスが売れる仕組みを作ること」です。その仕組み作りを市場のデータ分析などを利用して具体的に作成したものが、マーケティング戦略なのです。

マーケティング戦略が重要な理由

マーケティング戦略を立案することが重要な理由としては以下の4点が挙げられます。

1. 顧客ニーズを把握できる

マーケティング戦略を立案する過程では、ターゲット設定を通じて、顧客ニーズを詳細に把握できます。

ターゲット設定では、顧客の購買動機は何か、どのような悩みがあるかなども細かく分析していくため、誰に対して製品・サービスを提供するのかも明確になります。

2. 競争優位性を確立できる

マーケティング戦略では顧客ニーズや競合他社の動きを把握するため、自社が市場においてどのようなポジションに置かれているのかが見えてきます。

ポジショニングを行うことで他社と差別化でき、競争優位性を築くことができます。

3. 効率的に売上を向上させるための指針となる

マーケティング戦略を立案することで、活動や施策の方向性も定まるため、効率的に売上向上に繋げることが可能です。

もしマーケティング戦略がなければ、ターゲットや訴求すべき価値も定まらず、効果の出ない非効率的なマーケティング施策を展開してしまうでしょう。

4. 一貫性のある施策展開ができる

マーケティング戦略が明確になることで、マーケティング活動に関わる担当者それぞれの活動に一貫性が生まれ、顧客に対してブレのないアプローチを実現できます。

戦略がない場合、担当者によって訴求点やターゲットにばらつきが生じ、マーケティングによる成果が出にくくなるでしょう。

マーケティング戦略立案の手順

Marketig strategy planning procedures

ここからはマーケティング戦略立案の手順を、6つのステップに分けてご紹介します。

STEP1. 環境を分析する

マーケティング戦略において、まず取り組むのは環境分析です。環境分析とは経営環境の分析のことで、内部環境と外部環境に分けて現状を整理していきます。

それぞれ以下のような項目について確認しましょう。

内部環境外部環境
・製品・サービスの特徴
・製品・サービスの種類や数
・自社で保有する技術や特許
・マーケティングや営業スキル
・拠点数(代理店など含め)
・既存顧客数
・顧客ロイヤルティ
・ブランドエクイティ
・資本金
・パートナー・アライアンス企業
・競合製品・サービスの特徴
・顧客の持つ製品・サービスのリテラシー
・新規参入業者
・代替品となりうる製品・サービス
・事業と関連する法律などの改正
・事業と関連する規制強化や緩和
・株価や金利
・消費動向
・人口動態

環境分析で役立つ3CやPESTなどのフレームワークについては、後ほどご紹介します。

STEP2. ターゲット層の絞り込み

環境分析のあとは、ターゲット層の絞り込みです。

まずこれまでのマーケティング活動で獲得してきた顧客を、購買金額や購買頻度、抱えていたニーズ、購買経緯といった要素を基にいくつかのグループに分けます。

そのグループの中から、自社にとって最も重要度の高いグループを選びます。グループ内の共通点などを基に、具体的な人物像を作成し、ターゲットとして設定します。

STEP3. ターゲットのニーズ分析

続いてカスタマージャーニーの策定を通じて、ターゲット顧客が抱えているニーズや悩みを分析します。

カスタマージャーニーとは、ターゲットであるカスタマー(顧客)が製品・サービスを知ることから購買して利用に至るまでのプロセスのことです。カスタマージャーニーマップには、顧客のニーズや考えていること、それに対して企業側が提供すべき情報や取るべきアクションなどが段階ごとに一覧でまとめられています。

顧客によって抱えているニーズや考えていることが異なるのは勿論、同じ顧客でも各プロセスによって悩みが変わることがあります。

そのためカスタマージャーニーの策定を通じて、プロセスごとに顧客ニーズなどを整理しておくと、どのタイミングでどのようなアプローチをしたらいいか戦略が立てやすくなるのです。

ただし理想や想像で記載しただけのカスタマージャーニーでは、現実と乖離してしまいます。

顧客接点となっている現場担当者の意見や、これまで蓄積してきた顧客に関するデータを十分に取り入れることで、はじめてリアルなカスタマージャーニーを策定できるでしょう。

STEP4. ポジショニングで差別化を図る

次のステップでは、環境分析の内容やカスタマージャーニーで分析したターゲットニーズを踏まえて、他社との差別化を図ります。

差別化はポジショニングに取り組むことで見つけやすくなります。

ポジショニングとは、市場における自社の立ち位置であり、ひいてはターゲット顧客に自社や自社製品をどう思ってもらいたいかを策定することです。以下のようなマップとして表されます。

Posisionning map

図:ポジショニングマップ

ポジショニングマップの作成にあたってポイントとなるのが、縦軸と横軸の設定です。

このマップをどういった軸で構成すれば、独自性を発揮し競争優位性を発揮できるのかをターゲット層を踏まえたうえで検討します。

ポジショニングマップに用いた軸を基に、製品・サービスのコンセプトを設計することで、差別化要素を顧客に対して分かりやすく訴求できるようになります。

STEP5. 提供する価値(ベネフィット)を明確にする

続いてターゲット顧客に対して提供する価値(ベネフィット)を検討します。

顧客が本当に必要としているのは、製品やサービス自体が持つ機能ではなく、その機能を通じて得られる価値です。

マーケティングのプロモーションにおいては、機能面を前面に訴求することが多いですが、価値を追求することでその製品の特徴や改善点が明確になることがあります。

例えば、加湿器の機能は部屋の湿度を上げることです。しかし、顧客はその機能以上に、部屋で快適に過ごすことを価値として求めているかもしれません。リラックスできるように、加湿器のデザインを部屋になじむものにしたり、照明機能を加えたりするといった改善が考えられます。

提供価値を決めたら、あらゆるマーケティングプロモーションや顧客接点で一貫して伝えていくことが大切です。

STEP6. 具体的な戦術を決定する

最後にここまでのステップで整理してきたニーズや提供価値などを踏まえて、具体的なマーケティング戦略を検討します。

競合他社との差別化要素や提供価値を正しく顧客に伝えるには、どういったコミュニケーションが必要かを、考えていきましょう。

特に「製品・サービス」「価格」「提供チャネル」「プロモーション」の4点を軸に戦術を構築する手法を、マーケティングミックスと言います。

マーケティングミックスに利用される4P分析は、後ほどご紹介します。

マーケティング戦略立案に役立つ6つのフレームワーク

続いて、マーケティング戦略を立案する際に役立つフレームワークをご紹介します。

1. 3C分析

3C分析とは、「自社(Company)」「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」の3つのCを軸としたフレームワークです。自社に直接的に影響を与えるミクロ環境を分析します。

まずは各Cに該当する以下のような情報を整理します。

3C影響を与えるもの
自社(Company)・自社製品・サービスの特徴(強み・弱み)※競合との相対的な評価
・資本金
・保有する技術や特許
市場・顧客(Customer)・業界の市場規模や成長性
・顧客の抱えているニーズや悩み
・顧客の購買プロセス
競合(Competitor)・直接競合(ex.スターバックスに対するドトールなど)の製品・サービスの強みや弱み、提供している価値
・間接競合(ex.スターバックスに対するマクドナルドなど)の製品・サービスの強みや弱み、提供している価値

各項目について整理できた後は、以下の図のように各要素を掛け合わせ、他社との差別化要素や提供する価値を検討します。

3C Annalysis

図:3C分析

上記の図の中でも、「自社・競合含めて満たせていないニーズ」や「顧客自身も認識していないニーズやビジネス機会」は、新たな市場の開拓に繋がりやすいため、重点的に考察しましょう。

2. PEST分析

PEST分析とは、マクロ的な外部環境分析を行うためのフレームワークです。以下の4つの要因について、自社への間接的な影響度を測ります。

PEST分析主な要因
Political:政治的環境要因・法律や条例
・規制強化や緩和
・裁判における判例
・政権体制
・税制度
・公的補助や助成
Economic:経済的環境要因・景気
・物価
・株価
・為替
・金利
・消費者の平均所得
Social:社会的環境要因・人口動態
・流行
・宗教や文化
・教育
・生活習慣やライフスタイル
・自然環境
・世論
Technological:技術的環境要因・新技術
・特許
・イノベーション

それぞれの要因に潜むポジティブ・ネガティブな影響を見極め、自社のマーケティングにとってどう作用するのかを評価します。現状だけでなく、将来的な変化も視野に入れることが大切です。PEST分析は、長期的な対策を打つのに役立ちます。

3. SWOT分析

SWOT分析は自社の強みと弱み、外部環境の機会と脅威を軸にしたマトリクスを作成し、マーケティングにおけるアイデアなどを整理するためのフレームワークです。

外部環境
Opportunity:機会
外部環境
Treat:脅威
内部環境
Strength:強み
強みを活用し、機会を最大限に活かす強みを活用し、脅威を打ち破る、あるいは回避する
内部環境
Weakness:弱み
弱みで機会を逃さないように改善する最悪の事態を回避する

3C分析やPEST分析での内部環境と外部環境の影響を踏まえて、この4つの象限それぞれの打ち手を考えます。

自社の強みを活かすことは勿論重要ですが、弱みを知ることも新たなアイデアに繋がることがあるため、確認していきましょう。

4. STP分析

STP分析とは、顧客ターゲットの策定から競合との差別化ポイントを見極めるまでの流れを、より効果的に行うことができるフレームワークです。

STP分析には以下の3つのプロセスが含まれます。

  1. Segmentation(セグメンテーション):顧客セグメントの分類
  2. Targeting(ターゲティング):ターゲットセグメントの選定
  3. Positioning(ポジショニング):自社のポジションの策定

Segmentation(セグメンテーション)

セグメンテーションとは、以下のような変数に基づいて市場を分類することです。

  • 人口統計的変数:年齢や性別、職業や家族構成など
  • 心理的変数:価値観や趣味、嗜好など
  • 地理的変数:居住エリア、居住地の人口密度、環境など
  • 行動的変数:購買傾向や購買頻度、情報収集に用いるデバイスやツールなど

Targeting(ターゲティング)

ターゲットとする市場を絞り込むのが、ターゲティングです。

まず、上記のセグメントのうちどれをターゲットとするのかを、以下の6つの観点から検討します。

  1. Realistic(規模の有効性):売上や利益は見込めるのか
  2. Rank(優先順位):どのセグメントに対して優先的にアプローチすべきか
  3. Rate of growth(成長率):今後どのくらい成長するか
  4. Rival(競合):競合の売上やマーケティング戦略はどうか
  5. Reach(到達可能性):実際に製品・サービスを提供できるのか
  6. Response(測定可能性):マーケティング活動を行った際に効果を測定できるか

検討の結果、自社の製品・サービスとの親和性が最も高く、重要度の高いセグメントを、ターゲットセグメントとして設定するのです。

Positioning(ポジショニング)

ターゲットとなるセグメントが定まったら、その市場での自社の立ち位置を決めます。購買に繋がりそうな2つの要素を軸に決めて、先述したポジショニングマップを作ると、自社や競合他社の特徴が視覚的に分かりやすいです。

STP分析に取り組むことで、より精度の高いターゲット設定や差別化ポイントの設定が可能となります。

5. AISCEAS(アイシーズ)

AISCEAS(アイシーズ)は、消費者の購買行動モデルの一つであり、消費者が製品・サービスを認知するところから、購買後の行動に至るまでを整理するフレームワークです。

AISCEASでは消費者の購買行動プロセスを以下の7段階に分けます。

  • Attention(認知)
  • Interest(興味関心)
  • Search(検索)
  • Comparison(比較)
  • Examination(検討)
  • Action(行動)
  • Share(共有)

AIDMAやAISASなどの消費者行動モデルをベースとしていますが、インターネットが普及し、商品の比較や検討もWeb上で行われるようになったため、より適応するモデルとして開発されました。

カスタマージャーニー策定時に活用することで、購買プロセスごとのニーズ分析や戦略を打つことができるでしょう。

消費者の購買行動モデルが、自社のビジネスに合わない場合は、適したモデルを構築する必要があります。

6. 4P分析/4C分析

4P分析とは、自社製品を以下の4つの観点からマーケティング戦略するためのフレームワークです。

  • Product(製品・サービス)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(宣伝)

どのような製品・サービスを、いくらで、どのように顧客に提供するかを考えます。

また4Pを顧客側の視点から分析するフレームワークが、4C分析です。

4Cでは以下の4つの要素から、マーケティングにおける戦術を検討していきます。

  • Customer Value:顧客にとっての価値(4PにおけるProductに相当)
  • Customer Cost:顧客側の負担するコスト(4PにおけるPriceに相当)
  • Convenience:入手しやすさ(4PにおけるPlaceに相当)
  • Communication:顧客とのコミュニケーション方法(4PにおけるPromotionに相当)

4Pと4Cを組み合わせて考えることで、より効果的なマーケティングミックスになります。

例えば、製品の価格を検討する際、4Pのみだと製品を販売するまでにかかる費用だけを考えてしまいます。

しかし4Cも併せて考えることで、その製品の価値や顧客が店舗まで来る移動負担などの要素も含めた価格設定ができるのです。

こうした顧客側の視点も踏まえて各要素を適切に設定することで、顧客ニーズを的確に押さえたアプローチを実現できます。

▶あわせて読みたい:市場調査とは?メリットや調査方法、実施の流れを解説

マーケティング戦略の成功事例

最後にマーケティング戦略における成功事例をご紹介します。

1. 株式会社良品計画

「無印良品」を展開する株式会社良品計画は、ブランドコンセプトを軸に据えたマーケティング戦略を展開することで、成功を収めています。

無印良品は創業以来「これがいい」ではなく「これでいい」というコンセプトを基に事業を展開してきました。

流行を追わないため製品は尖った特徴がなく、シンプルかつナチュラルなデザインのものが大半を占めているのです。

機能性を重視する顧客から支持を集め、ムジラーと呼ばれる熱狂的なファンまで獲得しています。

顧客接点の中心となる店舗も、シンプルな設計が特徴です。コンセプトや提供価値が、一貫性を持って展開されている好事例と言えるでしょう。

2. 株式会社メルカリ

フリーマーケットアプリ「メルカリ」を展開する株式会社メルカリは、マーケティング戦略において提供価値を的確に訴求しています。2023年時点で月間利用者数2,200万人以上を達成しました。

既に利用者の多いメルカリにとって、「メルカリを知っているけど使っていない」という見込み顧客にいかに利用してもらうかが大きな課題となっていました。

そこで、「メルカリを使うことでどんな価値が得られるのか」「そもそもどうやって使うのか」といった点を改めて伝えるマーケティング戦略を構築したのです。

具体的には番組連動型のテレビCMで、その地域の人気インフルエンサーを起用し、メルカリの使い方を宣伝してもらいました。

こうした取り組みによって、メルカリの良さや価値が多くの見込み顧客に伝わり、ユーザー数の拡大を実現しています。

3. 株式会社SmartHR

クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供する株式会社SmartHRは、データを活用したマーケティング戦略を展開し、精度の高い施策立案や顧客獲得に繋げています。

SmartHRはデータ活用をマーケティング戦略の主軸とするため、2020年にデータマ―ケティングユニットという推進部門を新設しました。

データマーケティングユニットを中心に、顧客のコンテンツ閲覧状況や商談のプロセスなど組織全体のデータを一元管理し、そのデータを分析することで、各購買プロセスにおける適切なアプローチなどを割り出しているのです。

マーケティング戦略における各施策の効果分析も行っており、それらの内容を基にした的確な改善活動も実現しています。

データの一元化で組織を一体化させることで、スピーディーな意思決定を可能にした事例と言えるでしょう。

まとめ

今回はマーケティング戦略をテーマに、重要な理由や立案手順、役立つフレームワークなどをまとめて解説してきましたが、いかがでしたか。

マーケティング活動はあらゆる企業が行っていますが、明確な戦略を持って取り組んでいる企業もあれば、場当たり的に行っている企業もあります。

マーケティング戦略がなくても短期的に成果を挙げられる可能性はありますが、中長期で見た場合、継続的に成功することは難しいでしょう。

その点マーケティング戦略の立案は、顧客ニーズを踏まえつつ、独自性のあるマーケティングアプローチを実現でき、中長期的な成果を挙げることができるのです。

MeltWaterでは、2024年に注目すべきマーケティングトレンドを詳しく紹介しています。マーケティング戦略を構築するための有益な情報が提供されていますので、ぜひご活用ください。

この記事の監修者:

山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。

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