マーケティングという言葉を頻繁に耳にするものの、理解が曖昧なため、あらためて詳しく知りたい方も多いのではないでしょうか。
マーケティングを端的に説明するならば、「売れる仕組みづくり」と言えるでしょう。
本記事では、マーケティングの概要や実施する際の手順、ツール、成功事例などを解説します。マーケティングを正しく理解して、企業の成長に役立てましょう。
マーケティングとは?
マーケティングとセールスとの違い
マーケティング活動の基本的な手順
マーケティングのフレームワーク
マーケティングの主な手法
マーケティング施策を成功に導く3つのポイント
マーケティングに役立つツール
マーケティングにおいて必要なスキル
マーケティングの成功事例
まとめ
マーケティングとは?
マーケティングとは、商品・サービスの売れる仕組みを構築することです。
売れる仕組み作りと聞くと、広告宣伝や販売促進をイメージしてしまいがちですが、マーケティングには、市場調査や商品開発、営業など販売に至るまでのあらゆるプロセスが含まれます。
マーケティングの定義
代表的なマーケティングの定義を3つ紹介します。
- ピーター・ドラッカー:販売を不要にし、自然と商品・サービスが売れるようにすること
- フィリップ・コトラー:顧客ニーズに応えながら新しい価値を生み出し、利益を上げること
- 日本マーケティング協会(2024年):顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである
顧客目線に立って、顧客自身もまだ知らないような価値を生み出し、市場ニーズを満たせる商品・サービスを提供すれば、売り込まなくても売れていく。この状態を作るのがマーケティングです。
マーケティングの変遷
マーケティングは時代とともに変化を遂げてきました。フィリップ・コトラーが提唱したマーケティング理論では、価値観や技術の変化によってマーケティングの特徴も変化することがわかります。
年代 | 特徴 | |
---|---|---|
マーケティング1.0 | 1900~1960年代 | 商品・サービス中心 (大量生産・大量消費の時代) |
マーケティング2.0 | 1970~1980年代 | 消費者志向 (消費者が商品を選ぶ時代) |
マーケティング3.0 | 1990~2000年代 | 価値志向 (顧客ニーズを探る時代) |
マーケティング4.0 | 2010~2020年代 | 自己実現 (商品・サービスを通じて精神的な欲求を満たす時代) |
マーケティング5.0 | 2030年代~ | 高度なテクノロジー活用 (テクノロジーと人間の力を掛け合わせる時代) |
上記のように、現代は商品を通じて自己実現を目指す時代です。商品やサービスをただ提供するのではなく、個々の顧客に合わせた対応が求められます。今後はテクノロジーのさらなる活用が見込まれるため、分析ツールなどAIの力を借りながら行うマーケティングが一般的になるでしょう。
マーケティングとセールスとの違い
マーケティングの意味と近いものに、セールスがあります。いずれも企業の売上や利益をアップさせるために欠かせない取り組みです。一方で、両者には大きな違いがあります。
セールスとは、商品・サービスを顧客に購入してもらい、売上を上げることです。そのため、売るためにどうすればよいか考えます。
一方で、マーケティングとは売れる仕組みを作ることです。顧客が何を必要としているのかを探り、セールス活動をしなくても売れるようにするにはどうしたらいいか考えます。
マーケティングファネル(顧客が商品を認知してから購入するまでのプロセス)で言えば、見込み顧客の獲得から選別までをマーケティングが担い、商談獲得から販売までをセールスが担います。
マーケティング活動の基本的な手順
マーケティング活動を実施する際の基本的な手順は以下の通りです。
- 市場調査
- マーケティングの戦略設計
- 広告・宣伝活動
- 効果検証
順番に解説します。
1. 市場調査
マーケティング活動を行う上で、はじめに着手するのが市場調査です。市場調査とは、市場動向を把握するための情報収集のことです。
市場調査は定性調査と定量調査の2つに分類されます。
定性調査は、インタビューなどで顧客の声を聞き、数値では表しづらい情報を収集する調査です。顧客行動の背景などを深く考察し、潜在的なニーズを探るのに役立ちます。
定量調査は、アンケートなどを行い、数値化できる情報を収集する調査です。客観的な分析ができ、顧客の全体像を知ることができます。
定性調査と定量調査を組み合わせて実施することで、顧客がいま何を求めているのかをより正確に把握できます。
2. マーケティングの戦略設計
市場調査で収集した情報をもとに、マーケティング戦略を設計します。
マーケティング戦略とは、どの商品・サービスをどのターゲットに向けて、どのような方法で、いくらで販売するのかを検討することです。
ターゲットを深く理解していなければ、誤った戦略を立案してしまうおそれがあります。市場調査の結果を客観的に分析し、的確な判断を下しましょう。
3. 広告・宣伝活動
広告・宣伝活動は売れる仕組みを作る上で欠かせない取り組みです。顧客が商品・サービスを知らなかった場合、買ってもらうことさえできないからです。
折り込みチラシやパンフレット、Web広告、動画広告など、ターゲットの属性に合った手法を選びましょう。
4. 効果検証
マーケティング活動の効果を検証します。費用対効果を算出し、改善点を明確にするのです。
効果検証で重要なのは、PDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:検証、Action:改善)を回し続けることです。
施策を実施して終わりではなく、改善を繰り返すことで、マーケティング戦略をブラッシュアップできます。
マーケティングのフレームワーク
マーケティング活動を実施する際におすすめのフレームワークは以下の4つです。
PEST分析・3C分析・SWOT分析はマーケティング活動の初めの市場調査に、4P分析はマーケティング活動後半の施策立案に効果的です。
概要 | わかること | |
---|---|---|
PEST分析 | Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つが自社にどのような影響を及ぼすのかを把握するための方法 | ・自社の課題 ・将来的な市場の変化 |
3C分析 | 3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)を分析する手法 | ・顧客ニーズ ・競合の業界におけるポジション ・自社の強みと弱み |
SWOT分析 | SWOT(Strength:強み、Weakness:弱み、Opportunity:機会、Threat:脅威)を明らかにし、自社の内部環境と外部環境を分析する手法 | ・自社の強みと弱み ・競合他社との差別化 ・回避すべきリスク |
4P分析 | 4P(Product:商品、Price:価格、Place:販売場所、Promotion:販売促進) を分析する手法 | どの商品を・いくらで・どこで・どうやって販売するか、施策が打ち出せる |
マーケティングのフレームワークは、競合分析を実施する際にも役に立ちます。
マーケティングの主な手法
マーケティングの主な手法を8つ紹介します。
- マスマーケティング
- ダイレクトマーケティング
- インバウンドマーケティング
- CRMマーケティング
- Webマーケティング
- コンテンツマーケティング
- SNSマーケティング
- インフルエンサーマーケティング
1. マスマーケティング
マスマーケティングとは、不特定多数を対象に実施するマーケティング手法です。マス(mass)は一般大衆を意味します。
費用が高額になりやすいものの、幅広い層に使用される商品・サービスであれば効率よく集客できるのがメリットです。
マスマーケティングの具体例としては、テレビ・ラジオCMや新聞、雑誌などに掲載する広告などが挙げられます。テレビや新聞を日常的に利用しない層には、アプローチがしにくいのがデメリットです。
2. ダイレクトマーケティング
ダイレクトマーケティングとは、顧客一人ひとりに直接的にアプローチするマーケティング手法です。
顧客とコミュニケーションをとりながら実施されるマーケティングコミュニケーションの1つです。
マスマーケティングと違い、ターゲットを明確に設定した上で実施されるため、費用対効果を上げやすいのが特徴です。
ダイレクトマーケティングの具体例としては、ダイレクトメールやテレマーケティングなどが挙げられます。
3. インバウンドマーケティング
インバウンドマーケティングとは、顧客から自発的に自社に興味・関心をもってもらうマーケティング手法です。インバウンド(Inbound)とは、「外から中に入ってくる」ことを意味します。
Webサイトや動画、SNSなどで、顧客にとって有益な情報を提供し、自社に引きつけるのが特徴です。
顧客に積極的にアプローチするダイレクトマーケティングとは正反対の手法と言えます。
4. CRMマーケティング
CRM(Customer Relationship Management)マーケティングとは、顧客関係管理ツールを用いたマーケティング手法です。
顧客の年齢や性別、行動履歴、問い合わせ履歴などの情報をもとに一人ひとりにあわせてアプローチします。
例えば、注文が半年以上ない顧客に対して、購入を促進することを目的に、クーポン券を送付するなどがCRMマーケティングです。
5. Webマーケティング
Webを活用したマーケティング手法全般のことをWebマーケティングと言います。
多くの場合、自社のWebサイトに集客し、問い合わせや資料請求、商品・サービスの販売につなげることを目的としています。
Webマーケティングの具体例は、オウンドメディアやブログの運用、Web広告などです。
6. コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、自社が有益な情報を発信し、その情報を顧客が見つけることで、自社や商品・サービスに興味・関心をもたせるマーケティング手法です。
ターゲットとなる顧客の悩みや課題を解決できるような記事を作成し、自社のWebサイトに掲載したり、動画を作成してYouTubeに投稿したりします。
積極的に顧客にアプローチしない手法として、インバウンドマーケティングに分類されます。
7. SNSマーケティング
SNSマーケティングとは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用したマーケティング手法で、Webマーケティングの一部です。
X(旧Twitter)やInstagram、Facebook、LINEなどのSNSの普及により、近年注目を集めており、多くの企業がSNSの公式アカウントを開設・運用しています。
SNSでの広告配信やキャンペーンの実施がSNSマーケティングに含まれます。
8. インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、インフルエンサーを活用したマーケティング手法です。
インフルエンサーとは、SNSのフォロワー数が多く、人々の考えや行動に影響を与える人物のことです。
自社がターゲットとする顧客層に多くのフォロワーをもつインフルエンサーを起用することで、商品・サービスの認知度アップやブランド力の向上につなげられます。
絶え間なく進化し続けるインフルエンサー業界、AIの効果的な活用方法、急速に変化するSNSなど、マーケティング担当者にとっては、2024年は変化の年となることでしょう。
MeltWaterでは、2024年に注目すべきマーケティングトレンドを詳しく紹介しています。マーケティング戦略を構築するための有益な情報が提供されています。ぜひご覧ください。
マーケティング施策を成功に導く3つのポイント
マーケティング施策を成功に導くために押さえておくべきポイントは以下の3つです。
- 顧客ごとに最適な施策を立てる
- 顧客データを効率的に蓄積し活用する
- マーケティングツールを有効に活用する
順番に解説します。
1. 顧客ごとに最適な施策を立てる
マーケティング施策を成功に導くためには、顧客一人ひとりに最適化した施策を立案しましょう。
インターネットやSNSの普及によって、顧客は様々な情報を簡単に入手できるようになり、ニーズが多様化しているからです。
例えば、メルマガを配信するのであれば、一括配信では成果を期待しづらいので、顧客の属性や行動履歴にあわせて個別に配信する必要があります。
2. 顧客データを効率的に蓄積し活用する
マーケティング施策を成功に導くためには、顧客データを蓄積し、活用しなければなりません。
顧客データは、顧客それぞれに合ったアプローチをするために必要だからです。
情報の収集に時間がかかってしまうと、スピーディな意思決定ができなくなるので、効率性も重視する必要があります。
3. マーケティングツールを有効に活用する
マーケティング活動を行う際は、ツールの活用が不可欠です。取り扱う情報量が膨大になるため、手作業で実施するのは現実的ではないからです。
ツールを活用すれば、正確かつスピーディに情報を収集・分析できます。意思決定の精度も高められるでしょう。
近年は様々なツールが提供されているので、自社の目的にあったものを選定するのがポイントです。
マーケティングに役立つツール
マーケティングに役立つツールを3つ紹介します。
- MA / CRM
- アクセス解析ツール
- SNS分析ツール
1. MA / CRM
MA(Marketing Automation)とは、マーケティング活動を効率化するためのツールです。見込み顧客の購買確度を数値化したり、メルマガを自動配信したりする機能などを搭載しています。
見込み顧客の獲得から商談につなげるまでのプロセスで利用され、顧客一人ひとりに合わせたアプローチを可能にします。
CRMもMAと同様に顧客情報を管理するためのツールですが、受注後の顧客との関係維持のプロセスで使われるのが特徴です。既存顧客へのアップセル(顧客単価の向上)やクロスセル(関連商品の提案)、満足度向上を目的とした施策を実施する際に役立ちます。
代表的なツールに、Zoho CRMやHubSpot、Mazrica Marketing などがあります。
2.アクセス解析ツール
アクセス解析ツールとは、Webサイト上で訪問者がとった行動を解析できるツールです。
Webサイトのアクセス数やコンバージョン(成約)率、滞在時間などを定量的に把握できるのがメリットです。
課題を見つけてWebサイトの改善を繰り返せば、マーケティングの精度を高められるでしょう。
代表的なツールに、GoogleアナリティクスやAdobe Analytics、Clarityなどがあります。
3. SNS分析ツール
SNS分析ツールとは、インプレッション数やエンゲージメント率、コメントの内容などを分析するためのツールです。
SNS上にある膨大な顧客の声をリアルタイムで収集・分析できるので、新商品の改善や今後のトレンドの予測などがスピーディに行えます。
特定のSNSに特化したツールが多い中、複数のSNSアカウントを一括管理できるのがMeltwaterのSNS管理ツールです。
マーケティングにおいて必要なスキル
マーケティングは、あらゆる企業活動に影響を及ぼすため、担当者には様々なスキル・能力が求められます。
代表的なスキル・能力は以下の通りです。
- 情報収集スキル
- 分析力
- 企画力
- プレゼンテーションスキル
- コミュニケーションスキル
- マネジメントスキル
- 論理的思考力
情報収集や分析には専用のツールを利用することもできますが、法律の改定や自社の人事異動などツールだけでは読み取れない部分も補いながら、より正確に分析できる力が必要です。
そして、施策を実行に移すには、分析したことをわかりやすく説明し、多くの社員と結果を共有できる力も必要になります。そのためには、スキル・能力だけでなく、自社のミッションやビジョンへの深い理解も求められます。
複数人で担当し、意見交換しながら効果的な分析と企画への道を探っていくことが大切です。
マーケティングの成功事例
マーケティングの成功事例を3つ紹介します。
- 株式会社クラシコム
- ヤマト運輸株式会社
- 株式会社サンリオ
1. 株式会社クラシコム
株式会社クラシコムは雑貨や洋服、小物などを販売する企業です。運営するネットショップ「北欧、暮らしの道具店Ⓡ」に、オウンドメディアの要素を取り入れており、コンテンツマーケティングで成功を収めています。
Webサイトには「商品検索」に加えて、「読みもの検索」の機能を搭載しているのが特徴です。スタッフの愛用品や開発秘話などの記事を掲載し、ファンを獲得しています。
ほかにも、動画やドラマなどのコンテンツを発信しており、毎日アクセスしても飽きないのが魅力です。
参照:株式会社クラシコム
2. ヤマト運輸株式会社
荷物の配送事業を行っているヤマト運輸株式会社はダイレクトマーケティングで成功を収めています。
メッセージアプリのLINEを活用して顧客とつながり、受け取り日時・場所の変更や再配達の依頼を手軽に行える仕組みを構築しました。
顧客の利便性が向上したことで満足度アップを実現しただけでなく、再配達の手間を軽減し、コストの削減にも成功したのです。
参照:ヤマト運輸株式会社
3. 株式会社サンリオ
ハローキティやマイメロディ、ぐでたまなどの様々なキャラクターを有する株式会社サンリオはSNSマーケティングで成功を収めています。
サンリオのキャラクターは世界中で人気があり、SNS上では膨大な量のコメントが投稿されています。
SNS分析ツールを活用し、エンゲージメントや認知度アップを定量的に測定できるようになりました。社内全体のDX化や新たなキャラクター開発に役立てています。
参照:株式会社サンリオ
Metwaterの活用事例(事例紹介:株式会社サンリオ)もあわせてご覧ください。
まとめ|マーケティングを強化して企業を成功に導こう
マーケティングとは、売れる仕組みづくりのことです。顧客に商品・サービスを売ることを目的としたセールスの土台とも言えます。
昨今の多様化した顧客ニーズに対応するためには、一人ひとりにあわせたマーケティング施策を実施しなければなりません。
Meltwaterでは、マーケティング施策を最適化するツールをご用意しています。
マーケティング活動を実施する際のアイデア出しや分析を効率的に行いたいと考えている方はぜひご活用ください。
この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。