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ターゲットマーケティングとは?

ターゲットマーケティングとは?基本の分析手法と事例を解説


宮崎桃

Mar 19, 2025

近年、ライフスタイルの多様化に伴い、顧客一人ひとりの価値観に寄り添うマーケティングの重要性が高まっています。しかし、「どのように顧客層を絞り込めばいいのか」「効果的なアプローチ方法がわからない」という悩みを抱えるマーケティング担当者は少なくないでしょう。

そんな方におすすめなのがターゲットマーケティングです。本記事では、ターゲットマーケティングの基本から実践的な分析手法、成功事例までわかりやすく解説します。

ターゲットマーケティングとは

ターゲットマーケティングとは

ターゲットマーケティングとは、特定の顧客層に焦点を当てるマーケティング戦略のことです。テレビCMや新聞広告など、不特定多数に向けて宣伝を行うマスマーケティングの対義となります。年齢や性別、趣味といった要素で顧客層を絞り込み、アプローチしていくのが特徴です。

近年では、ライフスタイルの多様化に伴い、画一的な宣伝よりも、顧客一人ひとりの価値観に寄り添うアプローチが重視されています。ターゲットマーケティングを実践すれば、限られた予算で最大限の成果を目指せるのです。

STP分析を活用:ターゲットマーケティングの手順

STP分析を活用_ターゲットマーケティングの手順

ターゲットマーケティングで使われる主な手法はSTP分析です。STPとは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)のことで、市場を細分化した上で最適なターゲットを選び、競合との差別化を図ります。


以下のようにSTP分析を盛り込みながら、ターゲットマーケティングを進めていきます。

  1. 外部環境を分析
  2. 市場を細分化(セグメンテーション)
  3. ターゲットの決定(ターゲティング)
  4. ペルソナの設定
  5. 消費者インサイトのリサーチ
  6. 自社の立ち位置の決定(ポジショニング)

分析手法も交えて順番に解説します。

1. 外部環境を分析

まずは、自社に影響を与える外部の要素を把握しておきます。PEST分析は外部環境の分析手法の一つで、以下の4つの観点からビジネスを取り巻く環境を体系的に理解できます。

  • Politics(政治)…法的な規制、外交関係
  • Economy(経済)…景気動向、為替、失業率
  • Society(社会)…少子高齢化、流行、環境問題
  • Technology(技術)…AIの進展、特許


PEST分析により、市場の変化や潜在的なリスク、新たな事業機会を把握でき、より具体的なマーケティング戦略を立案することが可能です。

▶︎あわせて読みたい:リードナーチャリングとは?手法や手順、成功事例を解説

2. セグメンテーションで市場を細分化

セグメンテーションは、市場を属性によって分類する工程です。以下のような要素を基に、共通の特徴を持つグループに分けていきます。

  • 人口統計学的変数…年齢・性別・職業・年収・家族
  • 地理的変数…人口・気候・最寄駅
  • 心理的変数…ライフスタイル・趣味・性格
  • 行動変数…製品の使用頻度・製品への関心度

セグメンテーションにより、それぞれの層が持つニーズや購買行動の特徴が明確になります。

3. ターゲットの決定(ターゲティング)

ターゲティングは、セグメンテーションで分類した市場の中から、最も自社の商品やサービスが受け入れられそうな層を選定する工程です。市場の規模や成長性、競合の状況、自社の強みなどを総合的に判断して、最適なターゲット層を決定します。

6R

ターゲットを決める上で指標となるのが6つのRです。

  • Realistic Scale(市場規模)…市場における自社製品の規模はどのくらいか
  • Rate of Growth(成長性)…製品は今後需要があるか
  • Rival(競合状況)…競合がどのような製品を扱い、どのような所で展開しているのか
  • Rank(顧客の優先順位)…ターゲットは自社製品をどのくらい重視しているか
  • Reach(到達可能性)…製品をターゲットに届けることができるか
  • Response(反応の測定可能性)…ターゲットへのアプローチ度を測定できるか

これらの指標を用いることで、より実現性の高いマーケティング戦略を立案できるでしょう。

4. ペルソナの設定

ターゲットが「30代の男性会社員共働き夫婦」のような大まかな顧客層を指すのに対し、ペルソナはより具体的な一人の人物像として設定します。たとえば、「35歳・IT企業勤務・年収600万円・2歳の子持ち・マイホーム購入を検討中」など、その人物の価値観や行動パターンまで詳細に描写するのが特徴です。具体的な人物像を設定することで、パーソナライズされたアプローチを実現できます。

ペルソナ設定では、以下のような要素を基に顧客像を描いていきます。

【基本情報】

  • 年齢、性別、居住地
  • 職業、年収、役職
  • 家族構成、ライフステージ
  • 趣味、興味関心


【行動・心理面】

  • 日常生活での行動パターン
  • 情報収集の方法
  • 商品選びの基準
  • 現在抱えている課題や不満


具体的な人物像を設定することで、商品開発からプロモーションまで、一貫した顧客視点での戦略を立案することが可能です。チーム全員が同じペルソナをイメージすることで、ブレのない施策展開を実現できるのです。

ターゲットとペルソナの違い

ターゲットは「30代の男性会社員」のような大まかな顧客層を指すのに対し、ペルソナはより具体的に人物像を設定します。たとえば、「35歳・IT企業勤務・年収600万円・2歳の子持ち・マイホーム購入を検討中」など、その人物の価値観や行動パターンまで詳細に描写するのが特徴です。

ペルソナ分析について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ペルソナ分析とは?主な設定項目や手順、注意点を解説

5. 消費者インサイトのリサーチ

消費者インサイトとは、顧客が自覚していない深層心理や本音のことです。「なんとなく気になる」「思わず手に取ってしまう」といったような無意識の購買行動の背景にある心理が、消費者インサイトです。自覚のあるニーズに関してはすでに満たされていることが多いですが、消費者インサイトは本人も気づいていない部分なので、マーケティングの領域を広げるカギとなります。

従来、消費者インサイトの調査には、アンケートやインタビュー、グループディスカッションなど、多大な時間と労力が必要でした。しかし、Meltwaterの消費者インサイトツールのような分析ツールを活用すれば、効率的にリサーチすることが可能です。SNSでの消費者の発言や行動データを簡単に分析できるので、より深い顧客ニーズを把握できます。

6. 自社の立ち位置の決定(ポジショニング)

ポジショニングは、選定したターゲット市場における自社の立ち位置を明確にする工程です。ペルソナと消費者インサイトから、競合他社との差別化ポイントを見出します。たとえば、「高品質な原料にこだわった」「忙しい女性でも続けやすい」などです。価格帯や販売チャネルなども、自社の立ち位置に合わせると効果的です。

ポジショニングの後は、どのような製品をいくらでどう販売するかなど、具体的な施策を展開していきます。


ターゲットマーケティングの4つのメリット

ターゲットマーケティングの4つのメリット

ターゲットマーケティングのメリットとして、以下の4つが挙げられます。

  • 投資利益率(ROI)の最大化
  • 一貫性のあるマーケティング戦略の実行
  • 競合優位性の可視化
  • ロイヤルユーザーの獲得

それぞれ詳しく解説します。

費用対効果の最大化

ターゲットマーケティングは、高い投資利益率(ROI)を見込めるのがメリットです。特定の顧客層に絞ってアプローチするため、無駄な広告費用を削減できる上、購入率アップも期待できます。たとえば、テレビCMは膨大な広告費用がかかりますが、ターゲット層が多く利用するSNSや美容メディアに広告を集中させれば訴求力も強まり、効率的な予算配分が可能です。

一貫性のあるマーケティング戦略の実行

明確なターゲット設定により、誰に何を伝えたいのかが明確になり、すべての施策で一貫したメッセージを届けられます。たとえば、環境に配慮した商品を展開する企業なら、広告や商品パッケージ、SNS、店舗デザインなど、あらゆる顧客接点でエコフレンドリーな要素を取り入れることで、ターゲット層に自社ブランドを強く印象づけられるでしょう。

競合優位性の可視化

競合優位性とは、自社が他社よりも優位なポジションにいることです。ターゲットマーケティングにより、特定の顧客層に焦点を当てることで、競合他社との違いが明確になり、市場での地位が確固たるものになります。自社ブランドの価値が上がれば、従業員のモチベーションも改善されるでしょう。

ロイヤルユーザーの獲得

ターゲットマーケティングは特定の層のニーズを深く理解する必要があるため、ロイヤルユーザーの獲得と定着にもつなげられます。ロイヤルユーザーとは、特定のブランドを愛用し、継続的に使い続ける人のことです。ロイヤルユーザーは周囲への口コミも期待でき、広告効果もあります。

ターゲットマーケティングの成功事例

ターゲットマーケティングの成功事例

ターゲットマーケティングの成功事例を2つ紹介します。自社に役立てられるポイントがないかチェックしてみてください。

理容業界の事例: キュービーネットホールディングス株式会社

従来の理容室は、カットを依頼すると髭剃りやマッサージなどのサービスがついてくるのが一般的でした。そこに疑問を持ち、新たな理容室を展開したのが、QB HOUSE創業者の小西國義氏です。顧客のニーズを徹底的に分析し、時間がない働き手のために「カットのみの10分1,000円」という画期的なコンセプトを立案。予約不要、シャンプーなし、券売機での支払いなど、無駄を省いたサービスを設計しました。

出店前のマーケティング調査では、「利用してみたい」と思っている人が予想の6倍の30%という高い数字を獲得しました。価格帯がエリアの住人に合っていたことも成功の要因のようです。1996年の1号店オープン以降、2024年現在では国内外で600店舗以上を展開するまでに成長しています。市場で開拓されていないターゲット層に目をつけ、そのニーズに応えた成功事例です。

製菓業界の事例: 株式会社ラグノオささき

1884年創業の老舗菓子メーカー「ラグノオささき」は、主力商品「ポロショコラ」のターゲット層を明確にするため、Meltwaterのツールを活用しました。

まず、X(Twitter)上でのユーザーの声を分析して購買層の特徴を把握し、それに基づいて2021年6月に「ポロショコラ」専用のアカウントを開設。ターゲット層に向けて2回のキャンペーンを実施した結果、開設直後200人だったフォロワー数は、1回目のキャンペーン後に2,000人、2回目には5,000人を超えるまでに成長しました。


収集した消費者の声を商品開発や改良に活かすことで、より顧客ニーズに合った商品づくりを行っています。さらに、社内でポジティブな顧客の声を共有することで、製造現場のモチベーションアップの効果も生まれました。

まとめ|ターゲットマーケティングで顧客に響くアピールを

ターゲットマーケティングは、市場全体に広くアプローチするのではなく、特定の顧客層に焦点を当てます。ターゲット層のニーズを的確に捉え、それに応える商品やサービスを提供することで、顧客の心に響くアピールを実現できます。

本記事で紹介した分析手法やツールを活用し、自社のターゲット層と向き合うことで、限られた予算でも最大限の効果を生み出すことができるでしょう。


Meltwaterでは、ターゲットマーケティングに役立つインサイトやレポートを公開しています。資料のダウンロードはこちらからご利用ください。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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