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バレンタイン市場を席巻する推し活マーケティング・企業事例を完全解説

バレンタイン市場を席巻する推し活マーケティング・企業事例を完全解説


山﨑伊代

Jan 30, 2025

推し活をする若者たちの間で、バレンタインの贈り物のあり方が大きく変化しています。近年の調査では贈り先として「推し」が本命や義理を上回り、約8,000億円規模の市場へと成長しています。

今回の記事では、アイドル・アーティスト・キャラクターへの贈り物として広がる推しチョコの実態をまとめました。また、大手企業の推し活マーケティング戦略や、チョコレート以外の推し活グッズやイベントについても紹介します。

自社の製品やサービスを推し活市場で展開するために、まずは推しチョコブームの背景や各社の戦略事例を学びましょう。

バレンタイン × 推し活の動向

バレンタイン × 推し活の動向

バレンタイン × 推し活の動向を、以下のポイントから解説します。

  • チョコレートの贈り先に「推し」がランクイン
  • 「推し活」仲間にプレゼントするパターンも

近年のバレンタインと推し活がどのようになっているのかを、まずは大まかに理解しましょう。

チョコレートの贈り先に「推し」がランクイン

推し活とは、自分のお気に入りの人物(=推し)を応援する活動のことです。アイドルやアーティストなど実在の人物のほかに、キャラクターのような架空の存在も対象になります。

推し活市場は年々上昇を続け、2023年には約8,000億円に達したと予測されました。特に推し活が盛んなのが15歳~29歳の女性で、約6割が推し活経験ありと回答しています。

従来のバレンタインのチョコレートは、恋人にあげたり告白のために使われたり、職場の義理チョコとして配られたりしました。しかし近年は、推し活の一環としてバレンタインチョコレートを贈る傾向が見られます。ジェイアール名古屋タカシマヤのアンケートによれば、贈り先として推し活関連が2025年1月時点で約600票を獲得し、約150票の本命や義理を大きく上回っています。

参考:ジェイアール名古屋タカシマヤ「みんな教えて!アンケート(結果) | 2025 アムール・デュ・ショコラ ~ショコラ大好き!~ | ジェイアール名古屋タカシマヤ」,ジェイアール東日本企画「8,000億円規模⁉「推し活」市場を徹底解説


推し活仲間にプレゼントするパターンも

チョコレートをあげる対象は、「推し」だけではありません。近年は、共通の推しを持つ「推し活仲間」にもあげる傾向が見られます。

バレンタインを通じて共通の趣味について語り合ったり、お互いのグッズを見せ合ったりするといった交流が主なパターンです。バレンタインの楽しみ方は、従来の恋愛や義理チョコの文化から、より多様なコミュニケーションの場として定着しつつあります。

推しチョコがブームになっている3つの理由

推しチョコがブームになっている3つの理由

推しチョコブームの背景を理解し、どのようにマーケティングを進めていくかの判断材料にしましょう。

推し活市場の拡大

推し活市場は2023年に約8,000億円を超える巨大市場へと成長しており、一時的なブームではないと考えられています。推し活経験がある人は15歳~29歳の世代が男女ともに最も多く、推し活市場は若年層に支えられているといえます。

推し活が広まった理由のひとつは、SNSの普及です。情報検索や仲間探しが簡単にでき、SNSを多用する若い世代に浸透していったと考えられます。また、コロナ禍でオンラインでの交流が増え、情報発信やファン同士のつながりがより強化されたのも、推し活が定着した要因でしょう。

SNSでの「推しチョコ」投稿量の増加

SNSでのバレンタイン関連投稿は2024年に前年比112%と伸長し、「推しチョコ」という単語の出現頻度も増加しています。SNSで推しチョコの作り方やアレンジレシピなどが拡散され、より多くの人々が推しチョコ文化に触れる機会が生まれています。

また、2024年1月15日~2月15日のXでのバレンタイン関連投稿のトップ30は、すべて企業アカウントによるキャンペーン投稿でした。企業のキャンペーンでバレンタインの推し活をする人も、今後増えていくでしょう。

参考:明治「手作りで楽しむ「#推しチョコバレンタイン」」,ホットリンク「ホットリンク、X(旧Twitter)に投稿されたバレンタインに関するUGCを調査

自分用の「ご褒美チョコ」の定着

バレンタインシーズンにおける自分用の「ご褒美チョコ」は、確固たる消費文化として定着しています。株式会社松屋の2025年のバレンタインデーに対する意識調査では、自分チョコを購入する人は全体の約65%で、前年比約12%増でした。

自分のためにバレンタインデーを楽しむという新しい価値観が生まれています。それが、趣味の推し活をバレンタインデーでも楽しもうという流れを生んだと考えられます。

参考:株式会社松屋「「自分チョコ」の予算も昨年より約2.5倍、アンケート実施以来、過去最高金額に!! 松屋銀座 2025年バレンタインデーに関する意識調査

推し活 × バレンタイン戦略の例

チョコレートを販売している企業の推し活 × バレンタイン戦略の事例は、以下のとおりです。

  • meiji:推しチョコバレンタイン
  • Mary's:推しと、私と、チョコレート
  • 東急百貨店:推し色バレンタイン
  • イオン:推し活チョコ

各企業のバレンタインデーマーケティング戦略を見ていきましょう。

meiji:推しチョコバレンタイン

推しチョコバレンタインの事例

出典:明治公式サイト

明治は2025年のバレンタインに向けて、以下のような大規模なプロモーションを展開しています。

キャンペーン概要
サンリオキャラクターズコラボレーション施策明治のお菓子6商品の限定パッケージを展開。
サンリオの10キャラクターを起用。
推しとバレンタインを楽しむ「FRUITS ZIPPER」
コラボレーション施策
TikTokで商品をカメラ撮影すると、
ARで「FRUITS ZIPPER」のメンバーが現れ躍り出す。
明治の板チョコ3枚お買い上げで
オリジナルチョコ型1個
プレゼントキャンペーン
板チョコ3枚でサンリオキャラクターのチョコ型を進呈。
第1弾1月6日から、第2弾1月27日から。

手作りチョコの需要はコロナ禍前の水準まで回復し、「推しチョコ」の単語もSNS上で増えています。板チョコ3枚でチョコの型がもらえるキャンペーンは、推しチョコを手作りしたいという需要にも応えられるでしょう。

従来の「女性から男性へ」という概念から、好きなヒト・モノ・コトへの愛情表現として新しい楽しみ方を提案しています。

参考:株式会社明治「手作りで楽しむ「#推しチョコバレンタイン」

Mary's:推しと、私と、チョコレート

Mary's:推しと、私と、チョコレートの事例

出典:メリーチョコレート公式サイト


メリーチョコレートは「推しが尊すぎてしんどい」という消費者心理に着目し、推し活 × バレンタインの商品展開を行っています。

「推しごとチョコレート」では、9色のテーマカラーごとにキャラクター設定をし、推しに合ったチョコレートが選べるようになっています。

「推しぴ沼チョコレート」では、推しへの愛の深さを表現した遊び心のある商品を展開しています。自分が推しの沼にはまっている様子を、人型のチョコレートと粒状のピンクチョコレートで表現しています。

参考:メリーチョコレート「推しと、私と、チョコレート。|バレンタインコレクション2024

急百貨店:推し色バレンタイン

東急百貨店:推し色バレンタインの事例

出典:東急百貨店公式サイト

東急百貨店は、「推し色」、つまり推しを表す色に合わせてチョコレートを選べる「推し色バレンタイン」を展開しています。

単にパッケージが色違いというわけではなく、テーマの色によってチョコレートの種類も変わり、より特別感があります。例えば紫なら巨峰が使われていたり、黄色ならポケモンのピカチュウが使われていたりと、選ぶのが楽しくなりそうなラインナップです。

ほかにもハートや動物など、形から選べるチョコレートもあります。オリジナリティあふれる華やかなビジュアルデザインが特徴です。

参考:東急百貨店「2025年は色で選ぼう!推し色バレンタイン

イオン:推し活チョコ

イオン:推し活チョコの事例

出典:イオン公式サイト


イオンは2025年のバレンタインシーズンに向けて、推し活需要に応えるため、キャラクターとのコラボ商品を展開しています。

一つはSNS人気イラストレーター「ぢゅの」による「mofusand」というキャラクターを使用した商品です。チョコレート缶にかわいらしい猫のキャラクターが描かれています。


もう一つは人気アニメ「ハイキュー!!」とのコラボレーション商品で、チョコレート一つ一つがキャラクターの包装にくるまれています。

「mofusand」シリーズも「ハイキュー‼」も缶を使っているので、チョコレートを食べたあとも長く楽しめるのがうれしいポイントです。

参考:AEON「2025年バレンタインチョコレート販売開始

【チョコの販売訴求以外も】推し活 × バレンタイン戦略の例

チョコレートの販売以外での推し活 × バレンタインのマーケティング事例は、以下のとおりです。

  • リンツ:推しカラーハートバッグ
  • 不二家:ペコちゃんバレンタイン
  • キャンドゥ:推し活用のバレンタインアイテム

チョコレート以外の事例から、自社の製品やサービスをイベントで販売するマーケティング戦略の参考にしましょう。

リンツ:推しカラーハートバッグ

リンツ:推しカラーハートバッグの事例

出典:リンツ公式サイト

リンツはバレンタインに向けて、推し活グッズとしても活用できる「推しカラーハートバッグ」の販売を展開しています。バッグはリンドール約50粒が入る大きさで、日常使いができるショルダー付きの実用的な作りが特徴です。

ほかにも、SNS上で推し色投票や推しカラーハートバッグを使った撮影の投稿を募集したり、店舗に推しカラーハートバッグの撮影スポットを用意したりと、さまざまなイベントが用意されています。SNSの特性を活かした参加のしやすさがポイントです。

参考:リンツ「あなたの推しのカラーを教えて!リンツ 推しカラーハートバッグの発売を記念して「推しカラー投票」を開催

不二家:ペコちゃんバレンタイン

不二家:ペコちゃんバレンタインの事例

出典:不二家公式サイト

不二家は銀座三越で、「ペコちゃんバレンタイン」というイベントを開催します。

イベントでは「ペコちゃんケータイ風フレームキーホルダー」などペコちゃんの限定グッズや、スイーツなどが販売されます。さらに、銀座エリアの不二家店舗を巡るスタンプラリーでは、非売品の「オリジナルカラートートバッグ」が手に入るという特典付です。

イベント限定のグッズや、店舗巡りという体験型の要素を組み込み、バレンタイン期間だけの特別感を出しています。ペコちゃん推しの人もそうでない人も、楽しめる内容です。

キャンドゥ:推し活用のバレンタインアイテム

キャンドゥ:推し活用のバレンタインアイテムの事例

出典:キャンドゥ公式X(旧Twitter)

キャンドゥは2025年バレンタインシーズンに向けて、推し活に活用できる多彩なデコレーションアイテムを展開しています。

「推」「尊い」など推しへのメッセージが書かれたシリコンやシール、ラッピングなどが販売されます。110円という手ごろな値段で購入でき、組み合わせ次第でオリジナリティも出せるでしょう。

バレンタインデーに向けて自社独自のマーケティングを実施しよう

推し活の市場拡大にともない、バレンタインデーにチョコレートを贈る対象として「推し」が加わりました。本命や義理への贈り物を上回っており、需要の高さがうかがえます。


明治・メリーチョコレート・東急百貨店・イオンなど多くの企業が、推し活需要に応えるバレンタインデーチョコレートの商品展開やキャンペーンを実施しています。チョコレート以外でもリンツ・不二家・キャンドゥなどでは推し活グッズを展開し、SNSと連動した参加型施策も増加しています。

バレンタインシーズンに向けて自社独自のマーケティングを実施し、売上やエンゲージメントの向上を目指しましょう。

この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。

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