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カルチャーツーリズムで実現する新たな未来とは

日本の伝統文化が観光を変える!カルチャーツーリズムで実現する新たな未来とは


山﨑伊代

Dec 24, 2024

モノを所有することに価値が置かれていた時代から、近年はそのときだけの特別な体験が重要視されるようになりました。カルチャーツーリズムは、旅行者に文化体験を提供する観光スタイルです。文化理解の促進と地域活性化につながるとして注目を集めています。

今回の記事では、カルチャーツーリズムの特徴・背景・海外や日本の成功事例についてわかりやすくまとめました。日本の伝統文化・芸能・生活様式を観光資源として戦略的に活用し、インバウンド需要の取り込みを図りましょう。

カルチャーツーリズムとは?

カルチャーツーリズムは「文化観光」とも呼ばれ、地域独自の文化体験を旅行者に提供する観光形態です。カルチャーツーリズムには、具体的に以下のようなものがあります。

カルチャーツーリズムとは?

旅行者は体験を通じて新たな学びを得ることができ、文化体験を提供する側にとっても文化の保存・継承・経済効果などメリットはさまざまです。地域の文化資源を活かした観光振興策として、日本の各地でカルチャーツーリズムへの取り組みが進められています。

カルチャーツーリズムが注目される背景

カルチャーツーリズムが注目される背景

カルチャーツーリズムが注目される背景には、消費者の価値観が「モノ消費」から「コト消費」へ変容している点があげられます。モノ消費とはお金を払って商品を所有する消費スタイルで、コト消費とはお金を払って体験を得る消費スタイルです。

政府は2020年に文化観光推進法を施行し、有形・無形の文化的所産を通じて日本文化への理解を深める観光を推進しています。日本は地域文化が多様で古くからの伝統が息づく土地です。観光客が訪れ経済的効果が出ることで、文化の再興も期待されています。

【オーストラリアの世界遺産から見る】カルチャーツーリズムの成功例

巨大な一枚岩の世界遺産として知られているオーストラリアのウルルは、自然保護の視点に立ったカルチャーツーリズムに転換し、注目を集めています。

以前のウルルでは、観光客が岩の登山中にゴミを投棄することが多くありました。ウルルは先住民アボリジニの聖地であり、アボリジニの人たちの尊厳を傷つけていることも問題でした。

そこで、2019年10月26日から登山を完全禁止し、1,100台以上のドローンやプロジェクションマッピングによる演出で、自然を保護しながら文化体験ができる工夫をしています。

一時的な観光客数の減少があったものの、1人当たりの滞在日数と消費額が増加し、観光収入は順調に回復しています。

日本におけるカルチャーツーリズムの事例

日本におけるカルチャーツーリズムの事例は、以下のとおりです。

  • 外国人向け学校体験「君ノ高校」
  • 静岡県の嬉野茶「ティーツーリズム」
  • 仁和寺での武道体験「武道(BUDO)ツーリズム」
  • 新潟の文化体験「NIIGATA Culture Tourism(ニイガタ カルチャー ツーリズム)」
  • 日本の祭り文化を楽しむ「東京高円寺阿波おどり外国人観光客向けツアー」
  • 地域固有の自然をアートと楽しむ「国東半島カルチャーツーリズム推進事業」

実際に行われているカルチャーツーリズムの事例を知り、日本文化をどのように保存・継承していくべきかを考えましょう。

外国人向け学校体験「君ノ高校」

外国人向け学校体験「君ノ高校」は、千葉県君津市の廃校を活用したイノベーティブなカルチャーツーリズムの取り組みです。

参加者は学ランやセーラー服に身を包み、昭和時代の日本の学校生活を1日かけて英語で体験できます。朝のホームルームからはじまり書道の授業・給食・運動会・卒業式と盛りだくさんの内容です。

ほかにも、日本舞踊など伝統文化体験の授業や、ヤンキー生徒との遭遇などユニークな演出もあります。給食では地元の食材が使用されることもあり、地域との連携も見られるプロジェクトです。

静岡県の嬉野茶「ティーツーリズム」

静岡県は、500年の歴史を持つ嬉野茶(うれしのちゃ)を核とした新しいカルチャーツーリズムを展開しています。

茶農家自らが茶師となり、茶畑に設けられた「天茶台」で特別なお茶体験を観光客に提供します。生産者との会話を楽しみながら茶畑の風景を一望できるのが大きな魅力です。

また、温泉と肥前吉田焼という嬉野の歴史ある資源を組み合わせたサービスも特徴です。温泉付きの宿泊施設では「茶泊」というプログラムを展開し、ティーバトラーが滞在中のお茶のお世話を担当します。さらに、夕食では鮮やかな絵付けが特徴の肥前吉田焼の器に盛られた料理と、お茶のペアリングを楽しめます。

仁和寺での武道体験「武道(BUDO)ツーリズム」

世界遺産である京都府の仁和寺では、スポーツ庁により「武道ツーリズム」が提供されています。

合気道・空手の板割り・忍者体験など、日本の伝統的な武道の体験や見学ができます。さらに、「武道ツーリズム」を知ってもらうために、2024年には「武道ツーリズムフェア」という自由参加型のイベントが開催されました。武道体験のほか、おにぎりワークショップや華道体験など、日本文化を総合的に体験できるプログラムです。

イベントの目玉として、東京2020オリンピック空手女子形銀メダリストの清水希容氏による演武披露や、室伏スポーツ庁長官と都倉文化庁長官によるトークセッションなども行われました。外国人観光客だけでなく、日本人も楽しめる内容となっています。

新潟県の文化体験「NIIGATA Culture Tourism(ニイガタカルチャーツーリズム)」

新潟県は県主導で、地域固有の文化を体験する観光プログラム「NIIGATA Culture Tourism」を展開しています。

新潟県を5つのエリアに分け、各地域に根付いた伝統芸能・食文化・文化財などの体験を提供しています。笹箕寿司(ささみずし)作りやたらい舟乗りの体験、100種類以上の鮭料理などを楽しめます。

エリアごとの体験を提供することで、新潟県が持つ多面的な魅力のアピールにもつながっています。

日本の祭り文化を楽しむ「東京高円寺阿波おどりの外国人観光客向けツアー」

東京高円寺阿波おどりでは特別体験ツアーを、観光庁のインバウンド消費拡大事業の一環として2024年8月に実施しました。

参加者は本番前に法被と鉢巻を着用し、阿波おどりの基本ステップと掛け声を学びます。通常は「連(れん)」所属のおどり手のみがおどる中央演舞場で、参加者も本番に参加できるのが最大の魅力です。

ツアーには英語・中国語の通訳ガイドが常駐し、祭りの歴史や文化的背景について丁寧な解説を提供しています。

地域固有の自然をアートと楽しむ「国東半島カルチャーツーリズム推進事業」

国東半島カルチャーツーリズム推進事業は、アートを通じて地域の魅力を発信する新しい観光の形を提案しています。

半島の景観をアートの一部として捉え、作品が屋外に設置されているのが特徴です。干潮時や夜にしか見られない作品や、オブジェの影を活かした作品もあります。2014年に開催された国東半島芸術祭を契機にはじまり、新たな作品も追加されました。

国東半島はアートを通じて観光客を呼び込むとともに、アーティストたちの表現の場としても注目を集めています。

カルチャーツーリズムを通じて日本文化を世界に広めよう!

「モノ消費」から「コト消費」への価値観の変化を背景に、カルチャーツーリズムが新たな観光形態として注目を集めています。伝統文化・歴史的体験・地域文化体験などを通じて、文化理解と新たな価値を提供できるのがメリットです。観光客が訪れ経済が活性化すれば、文化の保護にもつながります。

国内では「君ノ高校」「ティーツーリズム」「武道ツーリズム」など、独創的な取り組みが各地で展開されています。観光資源を活用し、インバウンド需要の創出と地域経済の活性化を実現しましょう。

この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。

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