マーケティング施策の効果測定や、日々増加する消費者データの分析で悩むマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。そんな方におすすめなのがAIの活用です。本記事では、AIマーケティングの基礎から、具体的な活用方法、大手企業の導入事例などを解説します。AIの効果的な活用法と導入時の注意点を踏まえ、マーケティング戦略の強化につなげるポイントもお伝えします。
AIマーケティングとは?
マーケテイング分析にAIが必要な理由
マーケティングにAIを活用するメリット
AIをマーケティングに導入する際の注意点
マーケティング分析におけるAIの活用事例
AIを活用したマーケティング分析の事例
まとめ|AIをマーケティング分析に導入しパフォーマンス向上を狙う
AIマーケティングとは?
AIマーケティングとは、マーケティング業務にAI技術を組み込んで効果を高める手法です。顧客の購買履歴を分析して次に購入しそうな商品を予測したり、SNSの投稿から消費者の生の声を自動で集めたりと、データを活用した精度の高いマーケティングを実施できます。
また、ChatGPTを使った商品説明文の作成や、MidjourneyやDALL-Eといった画像生成AIを使った広告バナーの制作など、生成AI技術をマーケティングに活用できる場面が広がっています。
マーケティングにAIを活用することで、従来は1週間以上かけていた市場分析を数時間で完了させ、数万件の顧客データから迅速に新たなニーズを発見することが可能です。
マーケテイング分析にAIが必要な理由
消費者の購買行動のデジタル化の加速に伴いデータ量の増加や人材不足などが起きたため、マーケティングを取り巻く環境は大きく変化しています。このような状況下では、AIの活用が不可欠になってきました。
購買行動のデジタル化
消費者の購買行動のデジタル化により、AIを活用したマーケティング分析が不可欠になっています。
スマートフォンが普及するにつれて、商品の検索から購入までをオンラインで完結する消費者が増加しました。そのため、ECサイトでの購入履歴や商品レビュー、SNSでの口コミなど、蓄積されている消費者の行動データは日々膨大になっています。さらに、実店舗でもキャッシュレス決済の普及も進んでいるため、デジタルデータは膨大になる一方です。
このような大量のデータを人手で分析することは現実的ではありません。AIを活用することで、複数のデータから消費者の行動パターンや嗜好を正確に把握し、最適なタイミングで効果的なマーケティング施策が実施できます。
人材不足
人材不足もマーケティング領域でAIが求められる要因の一つです。特に、デジタルマーケティングやデータサイエンスの知識を持つ専門人材は、多くの企業で確保が難しい状況です。
実際、マーケティングデータの収集から分析、戦略立案まで、すべての工程を人手で行うには膨大な時間と労力が必要です。さらに、リアルタイムでのデータ分析や、複雑な消費者行動の予測など、手作業では対応が追いつかない業務も増えています。
AIを導入することで、データの収集・整理の自動化や高度な予測分析が可能になり、限られた人材でも効率的なマーケティング活動を展開できます。
マーケティングにAIを活用するメリット
AIを導入することで、マーケティング分野で以下のメリットを得られます。
- 膨大なデータの活用が可能になる
- 業務を効率化できる
- マーケティング施策のパフォーマンスを向上させられる
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
膨大なデータの活用が可能になる
大量のデータを、AIを使って有効活用できるようになります。例えば、顧客の購買履歴やWebサイトでの行動ログ、SNSでの反応など、さまざまなデータを統合して分析することが可能です。
AIは、ディープラーニングという技術により、データの中から重要なパターンを自動的に見つけ出します。人間が一つひとつ分析方法を指示する必要がなく、データから自動的に意味のある情報を抽出できるのが特徴です。
これにより、眠っていた自社のデータ資産を活用し、顧客一人ひとりの好みや行動パターンを理解することが可能になります。その結果、個別最適化されたマーケティング施策を展開できるのです。
業務を効率化できる
AIの導入により、マーケティング業務の効率を大幅に向上できます。従来は手作業で行っていたデータの収集・分析・レポート作成などの作業を、AIで自動化できるからです。
例えば、広告文やSNS投稿文の作成、画像の生成など、コンテンツ制作業務もAIに任せることが可能です。そうすることにより、人間は戦略立案や創造的な業務に集中できるため、チーム全体の生産性が向上します。
さらに、AIによる自動化で人的ミスが減少するため、データの分析精度が上がります。限られた時間とリソースで、より質の高いマーケティング活動が実施できるようになるのです。
マーケティング施策のパフォーマンスを向上させられる
AIを活用することで、マーケティング施策の効果を向上させられます。従来のような感覚的な判断ではなく、データドリブンな意思決定が可能になるからです。
特に効果が高いのが、ターゲティングの精度向上です。顧客の行動データから購買確率の高いセグメントを特定し、最適なタイミングで最適なメッセージを届けられます。これにより、広告の費用対効果が改善され、売上が伸びることが期待できます。
また、AIによる予測分析で解約リスクのある顧客を早期に発見し、適切な施策を打つことにより、顧客維持率のアップも期待できるでしょう。このように、AIはマーケティング活動全体のパフォーマンスを大きく改善する可能性を秘めています。
AIをマーケティングに導入する際の注意点
AIをマーケティングで活用する際の注意点は以下のとおりです。
- 思考プロセスがブラックボックス化する
- データ量が精度に影響する
- セキュリティ面に注意が必要になる
順番に詳しく解説します。
思考プロセスがブラックボックス化する
AIは高度な分析や予測を行いますが、その判断理由を人間が理解することは難しい場合があります。例えば、「なぜその商品をレコメンドしたのか」「どのようなデータを重視して結論を導き出したのか」といった思考プロセスが見えづらくなるのです。
そのため、AIの判断が間違っていても気づきにくく、そのまま誤った施策を実行してしまうリスクがあります。AIの出力結果は必ず人間が確認し、妥当性を検証するプロセスを設ける必要があるでしょう。
データ量が精度に影響する
AIは学習に使用するデータの量と質に大きく依存します。そのため、不十分な量のデータや偏ったデータを使用すると、分析の精度が低下し、間違った予測や提案をする可能性があるのです。
特に新規事業や新商品を検討している場合は、過去のデータが少ないため、AIだけに頼った意思決定は危険といえます。データが十分に蓄積されるまでは、従来の分析手法と組み合わせながら、段階的にAIの活用範囲を広げていくのが良いでしょう。
セキュリティ面に注意が必要になる
AIを活用する際には、顧客の個人情報や購買履歴など、機密性の高いデータを扱うことが多くなります。そのため、データの漏洩や不正利用を防止する適切なセキュリティ対策が欠かせません。
また、外部のAIサービスを利用する場合は、データの保管場所や利用規約の確認、個人情報保護法などの法令の遵守も必要です。社内でのデータアクセス権限の管理や、従業員の教育も重要なポイントとなるでしょう。
マーケティング分析におけるAIの活用事例
AIを活用したマーケティング分析は、主に以下の3つの領域で効果を発揮します。
- パーソナライズマーケティング
- SNSマーケティング
- インフルエンサーマーケティング
具体的な活用方法を詳しく解説します。
パーソナライズマーケティング
パーソナライズマーケティングとは、顧客一人ひとりの好みや行動パターンに合わせて、最適な商品やサービスを提案する手法です。AIは、購買履歴やサイトの閲覧データ、SNSでの行動など、複数のデータソースを統合・分析し、個別のニーズを予測します。
例えば、ECサイトでは、AIは顧客に対して過去の購入パターンから次に興味を持ちそうな商品をレコメンドしたり、最適なタイミングでクーポンを配信したりすることができます。メールマーケティングでも、開封率や購買履歴に基づいて、顧客一人ひとりに対して異なる商品を提案したり異なる文面でアプローチすることが可能です。従来の一律的な施策と比べて、顧客満足度と購買転換率の大幅な向上が期待できます。
SNSマーケティング
SNSマーケティングとは、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを活用し、ブランドの認知拡大や顧客との関係構築を図る手法です。AIを活用することで、消費者の声やトレンドの分析、コンテンツの最適化など、様々な側面で効果的なマーケティング活動が可能になります。以下で、主要な分析手法について解説します。
ニーズ、トレンドの把握
AIを活用すれば、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNS上の投稿やハッシュタグを分析し、リアルタイムで消費者のニーズやトレンドを把握できます。テキストマイニング技術により、特定のキーワードの出現頻度や関連語の変化を追跡することが可能です。これにより、タイムリーな商品開発や在庫調整が可能になるでしょう。
センチメント分析
センチメント分析とは、SNS上の投稿やコメントから消費者の感情や評価を読み取る分析手法です。AIを用いることで、「良い」「悪い」といった単純な判断だけでなく、「期待」「不満」「興味」など、より細かい感情の分類が可能になります。これにより、自社製品への具体的な反応や、競合製品との比較における消費者感情を定量的に把握できるでしょう。
コンテンツ分析
画像認識AIやテキスト分析AIにより、高いエンゲージメントを獲得している投稿の特徴を把握することが可能です。AIは、投稿の色使いや構図、文章の長さ、ハッシュタグの使い方など、細かい要素まで読み取ってパターンを導き出せます。この結果を基に、より効果的なコンテンツ制作の指針を策定できるでしょう。
競合分析
競合分析とは、ライバル企業のSNS活動を調査・分析する手法です。AIを活用することで、投稿頻度やフォロワー数の推移、エンゲージメント率など、さまざまな指標を自動で追跡できます。そのため、特に反応の良いコンテンツタイプや投稿タイミングを把握し、自社のSNS戦略の改善に活用することが可能です。競合との差別化ポイントも明確になり、より効果的な施策の立案ができるでしょう。
競合分析をより効率的に実施したい方には、Meltwaterのソーシャルリスニングツールがおすすめです。AIを活用したデータ分析により、競合他社の動向を包括的に把握し、マーケティング戦略の立案に活用できます。詳しくは以下のページをご覧ください。
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、SNSで影響力のある人物を活用し、商品やサービスの認知拡大や購買促進を図る手法です。AIを活用することで、投稿のパフォーマンスを自動追跡し、ROIを測定して次回の起用判断に役立てることが可能になります。AIにより、インフルエンサーマーケティングの効果測定をより効率的に行えるようになるのです。
AIを活用したマーケティング分析の事例
AIを活用したマーケティングの分析事例を3つ紹介します。
サッポロビール株式会社
サッポロビールは、AIツールの導入により、SNS上の消費者動向を効率的に把握しています。これにより、各ブランドのイメージ浸透度や、新商品に対する消費者の反応を数値化して商談資料に反映し、営業活動の質を向上させることに成功しました。
特に画像解析機能により、消費者の投稿から商品の使用シーンや反応を詳細に分析できるようになり、開発部門との効果的なデータ共有が可能になりました。さらに、新商品発売前後の消費者の声を時系列で追跡し、プロモーション効果も正確に測定できるようになっています。
参照:Meltwater「サッポロビール株式会社」
株式会社サンリオ
サンリオは、AIを活用したメディアモニタリングツールを導入し、SNS上での反応をキャラクターごとに効率的に分析しています。キャラクター別の露出度や投稿動向をさまざまな指標で測定し、「どのキャラクターがバズったか」といった情報を日次で社内共有しました。これにより、時代のニーズに合わせたキャラクタービジネスの展開を可能にしています。
2020年から2021年には、オンラインキャラクター大賞発表会を開催し、AIによる分析レポートでファンの反応を測定しました。さらに、カスタムダッシュボードを導入してイベントごとのエンゲージメント率を定量化し、マーケティング施策の効果測定を実現しています。
参照:Meltwater「株式会社サンリオ」
株式会社BitStarKDDI株式会社
BitStarとKDDIは、生成AIを活用して、投稿された画像や動画を解析し、企業の商品・サービスに最適なインフルエンサーを提案する技術を開発しました。従来の年齢や性別といった基本属性による選定から一歩進み、投稿内容をAIが深く分析します。これにより、商品名称や活動地域、趣味嗜好など、より詳細な要素で親和性の高いインフルエンサーを特定できるようになりました。
実際にKDDIの通信サービスのプロモーションでこの技術を導入したところ、キャンプやゴルフなど、さまざまな利用シーンに適したインフルエンサーをAIデータに基づいて選定し、幅広いターゲット層に効果的に訴求できるようになりました。また、エイベックス社のイベントでも、AIデータを活用して素早く高品質なインフルエンサーを選定し、定量・定性両面から分析しています。
参照:KDDI株式会社「生成AIで投稿画像や動画を解析、商品・サービスに親和性の高いインフルエンサーを提案する技術を開発」
まとめ|AIをマーケティング分析に導入しパフォーマンス向上を狙う
マーケティング分析にAIを導入することで、膨大なデータの効率的な活用や業務効率の改善が実現できます。例えば、個別最適化されたレコメンド配信や、SNSでの消費者行動の分析、インフルエンサーマーケティングの効果測定など、さまざまな場面でAIの活用効果が実証されています。
ただし、AIの判断プロセスが見えにくい点や、十分なデータ量の確保、セキュリティ対策が必要な点などには注意しなければなりません。AIは確かに強力なツールですが、あくまでもマーケティング活動を支援するものです。真の競争力向上のために、人間による適切な判断と組み合わせて利用しましょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム