SNSはマーケティングや広報におけるツールとして活用する企業も多いですが、ブランディングにも役立ちます。
各SNSの特徴や利用者層などを把握し、適切なSNSを活用することでブランドの認知や浸透を効率的に進めることができるでしょう。
本記事ではSNSブランディングの概要やメリット、成功させるためのポイントを解説します。企業における成功事例についてもご紹介しています。
SNSブランディングとは
SNSブランディングが注目される背景
SNSブランディングのメリット
SNSブランディングのデメリット
SNSブランディングの成功事例
まとめ|SNSブランディングはブランドの認知拡大とリピート率向上に効果的
SNSブランディングとは
SNSブランディングとは、SNSを活用して企業や製品・サービスのブランドのイメージを外部へと浸透させていく手法です。ブランドの訴求ポイントをSNS上で発信し、ユーザーとのコミュニケーションを通じてブランドの価値を高めます。SNSは、X(Twitter)・Instagram・YouTubeなどが含まれます。
SNSブランディングの一例は、SNS上で新商品のお知らせや企業の環境問題への取り組みなどを発信することです。また、どのようなサービスがあったらいいと思うかアンケートをとったり、キャンペーンで製品の名前を募集したりするなど、ユーザーからの参加を促すこともできます。ユーザーにブランドへの親しみを持ってもらうことでブランドイメージのアップに繋げます。
似た概念としてSNS広報がありますが、SNSブランディングがブランドイメージの浸透であるのに対し、SNS広報はブランドが認知されることが目的です。しかしSNSブランディングは結果的にブランド認知にも繋がるため、SNS広報の一部として捉えることもできるでしょう。
SNSブランディングが注目される背景
SNSブランディングが注目される背景には、まずSNS利用者の増加が挙げられます。SNSの利用者は世界中で増加しており、日本国内でも2023年時点で1億580万人に達し、その後も増加が見込まれています。
またSNSの普及に伴い、購買プロセスが変化したことも大きな背景といえます。以前は購買の際に企業の広告やWebサイトの情報などを参照することが一般的でした。しかし、近年では2023年6月に株式会社トリドリが発表したレポートによると、8割近いユーザーが「SNSが購買行動に影響している」と回答しています。
引用:今、話題の“SNSがもたらす消費者の購買行動への影響“をインフルエンサーマーケティング企業toridoriが徹底調査!消費者×SNSの気になる3つの実態とは? - toridori
SNSは顧客とのタッチポイントとして欠かせないツールとなっており、ブランディングの外部浸透施策を展開する際にも利用されることが増えているのです。
SNSブランディングのメリット
ここでSNSブランディングのメリットをご紹介します。
広告費用が抑えられる
SNSブランディングに取り組むことで、ブランディングのための広告費用を抑えることができます。
SNSアカウントは基本的に無料のため、運用コストがかかりません。オプションでかかる費用も、広告より低コストに抑えられます。SNSからの発信が広告代わりとなるため、ブランディング予算を確保しにくい場合においても、活用しやすいといえるでしょう。
ブランド認知度の向上につながる
SNSブランディングに取り組むことでブランド認知度を効率的に高めることが可能です。
例えば、興味のあった投稿をユーザー自身のアカウントから再発信するリポスト機能や、「いいね!」をした投稿が自身のフォロワーのおすすめに表示される機能などがあります。
SNSは無料で利用できる上、他のチャネルよりも情報の拡散力に優れているため、より効率的に認知を獲得できる可能性があるのです。
リピート率の向上につながる
SNSブランディングに取り組むことで、リピート率の向上も期待できます。
ユーザーが自社の投稿に興味を持ちアカウントをフォローすれば、自社が発信する情報を優先的にチェックしてくれるようになります。製品・サービスの購買も促しやすく、一度の購入に留まらず、継続的なリピート利用にも繋げられるのです。
顧客満足度を高めれば、他社製品・サービスに流れにくい優良顧客の獲得も実現できるでしょう。
UGCの増加が見込める
SNSブランディングに取り組むとUGCの増加が見込まれます。
UGC(User-Generated Content)とは、ユーザーが生成したコンテンツのことです。製品・サービスに関するレビュー投稿やブランドに関する写真などが代表例として挙げられます。
UGCは実際に製品・サービスを利用した人の率直な感想などが含まれているため、製品・サービスの購買を検討している他のユーザーにとって、価値のある情報となります。自社ブランドに対して好意的なUGCが増えることで、さらなる購買を促進できるでしょう。
ユーザーと直接的なコミュニケーションができる
SNSを通じて、ユーザーと直接的なコミュニケーションができる点も大きなメリットといえます。
SNSの情報に反応してくれたユーザーにリアクションしたり、メッセージを送ったりすることで、ブランドを身近に感じてもらうことができ、良好な関係性を構築することが可能です。
またブランドに関する率直な意見を求めたり、キャンペーンで新商品のアイデアを募集したりして、ユーザーからの参加を促すこともできます。ユーザーが能動的にブランドと関わることは、サービス利用を促すことにも繋がります。
顧客ニーズの分析ができる
顧客ニーズの分析ができる点も、SNSブランディングの特長の一つです。
SNSは自発的な投稿のため、顧客の抱えているニーズや悩みなど本音が隠れていることがあります。投稿内容を分析し示唆を導き出すことで、製品・サービスの改善に繋げられます。
また自社製品・サービスに関する投稿だけでなく、同じ業界内での顧客の声にも日頃から耳を傾けておくことで、新しい製品・サービスの企画アイデアを得られる可能性もあるでしょう。
顧客ニーズの調査を効率的に実施したい方には、ソーシャルリスニングツールの導入をおすすめします。
<ソーシャルリスニング(クチコミ分析)ツール|Meltwater>
SNSブランディングのデメリット
次にSNSブランディングのデメリットを見ていきましょう。
SNS運用に時間がかかる
SNSブランディングではSNS運用に多大な工数や時間をかける必要があります。
ブランドの浸透は一朝一夕では実現できません。中長期にわたってユーザーと一貫したコミュニケ-ションを行うことで、ようやくブランドとして確立されるのです。
SNSは拡散力に優れているため、認知獲得自体は比較的短期間で実現できますが、そのブランドがユーザーのなかに根付くには時間がかかります。
そのためSNSブランディングに取り組む場合は、相応の時間をかけて取り組むことになる点を留意しておきましょう。
各SNSのアルゴリズムに影響される
SNS上でユーザーにどのような情報が表示されるかは、各SNS内のアルゴリズムに影響されます。
アルゴリズムとは、ユーザーの行動データなどによって表示されるコンテンツを最適化するルールのことです。ユーザーが興味を持つと思われる投稿を、優先的に表示させます。
そのため企業側の投稿が、必ずしも狙ったユーザーに表示されるとは限りません。想定しているユーザー層の認知獲得に思わぬ時間がかかってしまう可能性もあるでしょう。
炎上リスクがある
SNSを運用する以上は炎上リスクを避けられません。炎上とは、批判的なコメントが殺到することです。投稿内容によっては炎上を招き、ブランディングどころか、マイナスイメージを持たれてしまう可能性もあるのです。
SNSブランディングに取り組む場合は、SNSの運用ルールを策定するなど、適切な炎上対策を講じておく必要があるでしょう。
<関連記事:炎上対策についてはこちら>
SNSブランディングを成功させるポイント
続いてSNSブランディングを成功させるためのポイントをご紹介します。
ターゲットを設定する
SNSブランディングに取り組む際は、どういったユーザーに対してブランドの認知や浸透を図りたいのかを明確にし、ターゲットとして設定しましょう。
ターゲット像を具体化したペルソナを設定すると、より実態に即した対策ができます。年齢や性別といった基本的なプロフィールに加え、価値観や嗜好、行動傾向といったものまで具体的に定義します。自社と良好な関係を築いている優良顧客の特徴などが参考になります。
ターゲットを設定することで、SNS上でどのようなコンテンツを訴求すべきかが明確になり、より精度の高いSNSブランディングを実現できるでしょう。
ブランドコンセプトを設定し、一貫性のあるメッセージを発信する
SNSブランディングの成功には、ブランドコンセプトが明確化されていることも大きく影響します。
ブランドコンセプトとは、ブランドの核となる価値観であり、自社の独自性や製品の魅力を端的に表したものです。例えばディズニーランドは「夢と魔法の王国」というブランドコンセプトを掲げ、来場者に対して非日常的で特別な体験を提供しています。
ブランドコンセプトを設定することで、どのようなメッセージを訴求すべきかが明確になるため、SNSに限らずユーザーとのコミュニケーション全体に一貫性が生まれます。一貫性のあるメッセージを継続的に発信することで、はじめてブランドはユーザーに深く根付くのです。
<関連記事:ブランディングとは?メリットや実行の手順、成功事例を解説>
ターゲット層にあったSNSプラットフォームを選ぶ
ターゲット層にあったSNSプラットフォームを選ぶという点も、SNSブランディングにおいて重要なポイントになります。SNSと一口にいってもさまざまな種類があり、以下にある2022年のSNS利用率のとおりユーザー層の特徴も異なります。
引用:令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 総務省
それぞれの特徴を把握し、最適なSNSプラットフォームを選びましょう。
X(Twitter)
Xはショートメッセージが手軽に投稿でき、リアルタイム性があります。リポスト(リツイート)機能もあり、拡散力に優れたSNSです。
ショート動画や画像なども投稿できますが、メインとなるのはテキストコンテンツとなります。無料プランの場合は全角140文字まで、有料プランは最大25,000文字までの投稿が可能です。
国内のXの月間アクティブユーザー数は2017年10月時点時点で4,500万人を超えたと発表され、2024年4月では6,900万人超と予測されています。
ユーザーの年齢層は10代から60代までバランスよく分布していますが、特に20代と30代が多く、男女比にはそれほど差はありません。
Instagramはビジュアル面での訴求に強みがあるSNSです。Xと同じくハッシュタグ機能があり、興味があることを検索しやすいのも特徴です。投稿を特定のユーザーとシェアする機能もあるため、ある程度の拡散力も見込まれます。
Instagramには個人アカウントとビジネスアカウントがありますが、SNSブランディングに用いる場合はビジネスアカウントの利用をおすすめします。ビジネスプロフィールを掲載する機能や、アカウントのパフォーマンスをトラッキングする機能などが利用可能です。
Instagramの月間アクティブアカウント数は3,300万を超え(2019年3月時点)であり、10代から50代まで幅広いユーザーが活用しています。男女比で見ると比較的女性ユーザーの方が多い傾向です。
Facebookは実名登録制のSNSです。不特定な人とではなく、リアルな人と繋がれるため、ビジネスの利用に向いています。テキストや動画、画像などさまざまなコンテンツの投稿ができます。
個人アカウントとビジネスアカウント(Facebookページ)があり、どちらも無料で利用可能です。ビジネスアカウントでは、アクセス解析や広告運用機能などが利用できるようになります。また、ユーザーが企業のアカウントに「いいね!」をすると、そのユーザーの「いいね!」セクションにも企業のページが表示されるため、ユーザーのフォロワーに投稿を見てもらえる可能性が高くなります。
Facebookの国内月間アクティブユーザー数は2,600万人(2019年7月時点)です。30代と40代の利用者が多く、10代の利用者は少ないという特徴があります。
TikTok
TikTokはショート動画投稿に特化したSNSです。60秒以内の動画が多いですが、最大60分の動画も投稿でき、視覚と聴覚双方からの訴求が可能となっています。
TikTokのビジネスアカウントは無料で利用でき、投稿した動画の細かな分析や、プロフィール表示回数などを把握することが可能です。
TikTokの国内月間アクティブユーザーは1,700万人(2021年8月時点)と比較的少ないものの、10代・20代の利用者が非常に多く、若年層をターゲットとした場合は有力なSNSの一つとなります。
YouTube
YouTubeは動画投稿プラットフォームです。無料で企業用のブランドアカウントを開設でき、TikTokと異なり60分を超える長い動画も投稿できます。
テキストと音声の両方を用いながら、豊富な情報を投稿できるという強みがあります。「YouTube Shorts」のように1分未満の動画投稿機能もあります。
YouTubeの国内月間アクティブユーザーは7,120万人(2023年5月時点)で、年齢問わず多くのユーザーに使われていますが、特に10~30代の比率が高いという特徴があります。
<参考:令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 総務省>
キャンペーンを行う
キャンペーンを定期的に行うことで、ブランドの認知拡大を図りながらUGCの獲得にも繋げられます。
例えばフォローやシェアなどをキャンペーンの参加条件にすることで、効果的にブランドの認知拡大を実現できます。また特定のハッシュタグでレビューや作品を募り、クーポンや特典をプレゼントすることで、ユーザーとのやりとりを活性化させることもできるでしょう。
フォロワー向けのキャンペーンの企画や運用をするには、相応のコストがかかりますが、交流が盛んになれば認知拡大となり、コスト以上のブランディング効果を得られます。
<関連記事:企業のSNS運用とは?始め方やポイント、成功事例をわかりやすく解説>
SNSブランディングの成功事例
最後にSNSブランディングの成功事例をご紹介します。
事例1:無印良品
無印良品は「これがいい」ではなく「これでいい」というコンセプトを軸に、シンプルで機能性を重視した衣服や生活雑貨などを提供しています。
SNSも同一のコンセプトに根差した投稿をしています。例えばXでは製品画像とともに、製品の特徴を簡潔に説明しています。
一貫したコンセプトで投稿を継続的に行うことで、製品プロモーションだけでなく、無印良品のブランドの認知拡大や浸透を実現しているといえるでしょう。
事例2:丸亀製麺
丸亀製麺は「ここのうどんは、生きている。」をブランドコンセプトに据えた、讃岐うどん専門店です。「人の手で作るうどんのおいしさ」を伝えることを目的に各SNSの運用に取り組んでいます。
例えばInstagramでは、食欲をそそるうどんの写真を中心に投稿しています。時に以下のようにどのうどんが食べたいのかコメントを求めるのも取り組みの一つです。
丸亀製麺のうどんのおいしさを伝えながら、ユーザーからの反応も引き出し、ブランドの認知拡大を図っています。
<参考:「丸亀製麺が食べたい」を喚起するために何をしている?トリドールのコミュニケーションとチャレンジ (1/3):MarkeZine(マーケジン)>
事例3:トヨタ自動車株式会社
自動車メーカーで世界のトップシェアを誇るトヨタ自動車株式会社は、トヨタフィロソフィーという企業理念を掲げ、人の幸せや可能性を広げることを目的としています。その企業理念をより深く知ってもらうために、「トヨタイムズ」というYouTubeチャンネルを運営しています。
引用:トヨタイムズ
トヨタイムズには、トヨタの哲学や技術、製品などについて紹介する動画があります。会長を務める豊田章男氏が登場するコンテンツや、福祉や環境にフォーカスしたコンテンツもあります。本チャンネルの動画を観ることで、さまざまな角度からトヨタというブランドを感じることができるでしょう。
まとめ|SNSブランディングはブランドの認知拡大とリピート率向上に効果的
さまざまな製品・サービスがコモディティ化する時代では、製品の機能だけでの差別化は難しくなりました。差別化するには、ブランドの確立が有効な方法の一つです。特にSNSは利用者が増加し、購買行動にも大きな影響を与えるようになったため、ブランディングにおいて重要な存在となっています。
SNSをより効果的に活用したい方は、「Meltwater」のツールの活用をご検討ください。
<ソーシャルメディアマネジメント(SNS管理)ツール|Meltwater>
この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。